大学教務実践研究会第5回大会に参加してきました。
名古屋大学東山キャンパスで行われた大学教務実践研究会第5回大会に参加してきました。全国各地から教務系の担当者が参加されていたようで、内容的には教職課程担当者が多いように感じました。
同大会で話された内容を簡単にまとめましたので共有します。なお、あくまで私が理解できた範囲において記載したものであり、内容の正確性は保証しません。
教職課程認定申請・変更届実務における職員の力量(山口 文部科学省初等中等教育局教職員課課長補佐)
- 教職課程とは、今回初めて認定基準に掲載された言葉であり、免許法により免許状の授与の所要資格を得させるための教育課程のことである。この教職課程の認定を行う行為が課程認定である。
- 各法人等から文科大臣へ課程認定申請が行われた後、中教審へ諮問を行い、審議・答申を経て、各法人へ認可を行うこととなる。
- 学校教育が公教育であるがゆえに、教員免許状の授与については法律等で一定の制限を課しているものである。また、学校制度と連携して免許状の種類が定められており、原則として該当する免許状を有する者でなければ教壇に立てないこととしている。
- 大学等には、教職課程と学士課程とがうまく連携した状態で教育活動を行うことが求められている。そのため、大学としての多様性と資格としての標準制を両立する必要がある。教職課程には大学による養成の原則と開放制の原則がある。免許状制度は、大学の単位履修によって免許状が授与できるものとみなされた上で、教員採用試験により教員となるという二重構造になっている。
- 文科省に対し変更届が大量に届いているが、変更届を提出してない大学があるのではないかと危惧している。申請書は多ければ年間200校程度から提出がある。各大学と丁寧なやり取りを行いたいが、なかなか時間的に難しい現状もある。
- 申請を行う場合は学科の設置と同時並行と行うことが多く、学科の目的等の把握がポイントとなる。例えば、工学系の学科の場合、工業ではなく美術・工芸の免許種を取得する申請を行う場合、工業高校では教員採用されない可能性があることなどを指摘することになる。対して、変更届については、授業科目の編成などの変更に伴う際に提出することとなる。作成にあたっては、教員がどのような動きをしているのかをアンテナを張りながら情報収集する必要がある。特に、教員異動は突発的に発生することがあり、要注意である。
- 3年から2年半ほど前に教職課程の設置や申請する免許種を検討することとなる。必要に応じて、学科等の目的も見直しが必要である。その後、2年半から1年半前ほど前に教育課程の編成や教員組織の確定が必要である。教職課程に対する教員への理解も必要である。1年半前から1年前に文科省へ事前相談を行うこととなる。12月の最終週や2月上旬の予約が多いが、他機関も同じことを考えるため、12月中旬までに事前相談に来ることが望ましい。
- 文科省への連絡相談については、3年前から2年半前に学科等の目的・性格との相当関係などの相談を行うこととなる。漠然としたものではなく、具体的な相談内容を定めてほしい。また、旧学科から新学科への移行の相談も行うこととなる。その後、2年半から1年までに、メール等で教育課程や教員組織の配置の相談、1年前までに申請内容に関する相談や予定外の教員異動に関する相談等が発生する。
- 自大学だけではなく他大学等にも相談できる者がいるか、全学共通教育科目や他学科開講科目が変更になった場合教職課程への影響があるかを確認できるか、人事異動に関わらず窓口を一元化できているかなどがポイントとなる。また、業績不十分となった場合の対策検討、後任教員の確保、高齢者教員死亡等に係る危機管理などにも対応が必要である。特に、4つ以上の授業を担当する教員については、人事に関する危機管理が大切になっている。
- 文書作成の際は記述に矛盾がないようにしてほしい。また、口頭説明により補完するではなく、一つの文書のみで意味が完結するようにしてほしい。さらに、対外的に説明できない文書やプログラムが十分に練られていない教育課程も見受けられる。設置審に提出する文書との整合性も確認してほしい。教職課程は、学生に免許状を取らせるために設置する課程ではなく、教壇に立ちたい学生に教育方法を教育する課程であることを説明できる必要がある。教え方を実践できるような教育課程及びそれがわかる申請書にしなければならない。
- 緊急時に必要な対応として教員人事の不測事態や申請書の誤り等があるが、特に設置審査での指摘事項を適切に反映する必要がある。緊急に変更が必要な場合は、文科省に対し、変更箇所がどこでありどのような事実に基づいてなぜ変更するのか、変更しなければならないのかを説明してほしい。その後、変更案を何種類か手元に準備し、文科省へ相談することになる。必ず複数の変更案を準備してほしい。
- これまでの事例として、「教育の方法及び技術」シラバスの授業計画について、「パソコンでのレポート提出」とあったが、これは「情報機器及び教材の活用」の内容には該当しない。また、業績書においては、資料作りやポスター発表が業績として記載されていた事例があったが、業績として認められないこととなる。さらに、様式第8号においては、学生からの取得希望が教職課程を設置する理由として記載されている事例が毎年いくつもあるが、教員養成の理念・構想を記載してほしい。
- 様式第2号(概要)について、各学科等の認定年度はチェックしているため、忘れずに記載してほしい。直近の認定年度があるかは、審査側にとって重要なポイントである。10年以上前の認定は、基本的にはあてにしていない。また、備考欄には大学設置審査に関する情報などを記載することとなるが、記載された情報は必要に応じてこちらでも確認している。複数の団地がある場合は、必ず記載してほしい。
- 様式第2号(教育課程及び教員組織)について、選択必修科目などの場合は「備考」欄にその旨を記載してほしい。単位数の記載についても、数え間違いが多い。専任教員については、免許種によっては授業科目のどこに括弧無しの専任教員を記載するか割振が必要となることになる。
- 中高については教科名の記載忘れも多い。一般的包括的な科目について、削減する場合はその科目で一般的包括的な内容を満たせるのかをしっかりと確認する必要がある。また、共通開設欄の「他」については、他学部他学科や全学共通教育科目の状況を把握しておく必要がある。5月ごろに全ての授業科目について点検してほしい。「免許法施行規則に定める科目区分」は必ず法令上の表記と合致させてほしい。
- 養護に関する科目について、学問領域に合わせて科目区分を構成しているが、過去の答申等も参照して内容を精選してほしい。看護学科の科目だけで養護に関する科目に対応することは厳しい。栄養に係る教育に関する科目について、過去に通知文書を発出しているため、必ず参照してほしい。
- 教科又は教職に関する科目について、司書教諭の科目などが含まれることが多い。66条の6科目は全学共通教育科目であることが多い。セメスター制等学期制の変更に伴う単位数の削減は各大学で発生しやすく、注意してほしい。
- 教職に関する科目について、単位数の計算ミスが発生しやすい。全ての事項が必修科目となっているか確認してほしい。中高は単位数が異なっているため注意してほしい。
- 特別支援教育に関する科目については、領域を正しく記載してほしい。併せて、領域に合わせた業績を提出してほしい。表を作って確認すると良い。単位数の記載も誤りが多い。
- シラバスについて、コアカリができたたた授業計画は策定しやすくなったのではないか。コアカリに対応した授業回数は規定がないが、概ね3分の2がコアカリ内容、3分の1が発展的内容であると認識している。各授業回の内容は異なるものとわかるように表記してほしい。また、学生が予習復習を行えるようにするため、テキストや参考書・参考資料等も記載してほしい。
- 様式4号について、履歴書には科目の内容と連携するような事項等を記載してほしい。また、業績書は過去10年以内の業績を記載いただきたい。最大数は3枚であるため、担当授業科目に合致する業績を記載する必要がある。概要欄の200字は目安であり、短くとも良い。
(質疑応答は省略)
教職課程(免許法改正に伴う在学生、科目等履修生の取り扱いについて)(小野 龍谷大学文学部教務課)
- 免許法改正時に気にすべきは、教育課程の内容に加え、現行学生の未履修科目対応、編入学生・大学院生への対応、学力に関する証明書の変更、現行課程の廃止方法などもある。免許法は、条文だけではなく、附則も気をつけなければならない。特に、経過措置については、平成10年免許法改正時の状況も参照した方が良い。
- 平成10年免許法改正時には、卒業までに今のカリキュラムを習得すれば在学時のカリキュラムで免許を取得でき、また、卒業後に間をおかずに大学院生や科目等履修生として身分を繋げば一体として旧法適用身分を維持できるとしていた。また、編転入学年度が旧法の学年であれば旧法の適用となっていた。
- 教職実践演習導入時の免許法改正時には、科目等履修生を正規学生と見なさず、また、一部空白期間があっても旧法が適用されていた。さらに、総合演習が必修である旧法の学年に編入学した場合は、単位修得年度によって対応が異なっていた。
- 今回の免許法改正では、正規学生としての身分が途切れた段階で旧法のカリキュラム(以下、「旧課程」)が適用されず、また、新法のカリキュラム(以下、「新課程」)の授業内容を含む科目を旧課程の学生に受講させそれを新課程の科目に読み替えることができることとなっている。
- 条文解説として、卒業までに免許状授与の所要資格を得なかった者に対しては、改正後の規定に基づき必要な単位を修得する必要があるとしている。施行規則附則第3条では、旧課程と新課程の対応関係を示しており、科目区分ごとに読み替えられることとしている。なお、新課程の科目を旧課程の科目に読み替えることはできず、必要に応じて旧課程の科目を開講することになる。ただし、同一の科目を旧課程、新課程それぞれ異なる名称で開講し、入学年度が異なる学生(旧法年度の入学生及び新法年度の入学生)がともに履修する形で開講することは可能であると考える。
- 追加された事項が含まれる科目については、新たに当該事項を含む授業科目を履修する必要はなく、既存に修得した授業科目でみなすことができる。ただし、「特別の支援を必要とする幼児、児童及び生徒に対する理解に対する理解」(以下、「特別の支援」)と「総合的な学習の時間の指導法」(以下、「総合的な学習」)は、新課程の授業科目の追加履修又は履修状況に応じて単位修得をみなす対応が必要となる。
- 担当者としては、これらの情報を踏まえ、まずは旧課程と新課程の授業科目の読み替え表を作成することとなる。ここでは、旧課程の全科目が新科目に読み替え可能になると考えている。ただし、「特別の支援」については、追加履修が必要となるため、2018年度から当該内容を含む1単位以上の科目を新たに開設し、旧課程で所要資格を満たすことのできない可能性のある学生に履修させること対応が考えられる。また、「総合的な学習」については、教科又は教職に関する科目の中に当該事項を含む科目があれば、あるいは、「特別活動の指導法」授業の中に「総合的な学習」の内容を含んで開講していれば、読み替えの対象となる。
- 一般的な話として、科目等履修生が履修するカリキュラムの年度は大学の裁量で決められる。一番わかりやすいのは、入学年度のカリキュラムで対応することである。
- 2018年度入学の大学院生が一種免許状を取得しようとする場合、2018年度は旧課程、2019年度は新課程の授業を履修することになる。一方、同様の者が専修免許状の取得を目指す場合、2018年度2019年度とも旧課程の授業を履修することになる。これは、学部開講科目は科目等履修生として、大学院開講科目は正規学生としての身分を有するためである。
- 2019年4月1日以降に入学した3年次編入学生の場合、新課程の授業を履修することになるため、本来ならば2021年度から開講すべき新課程の3年次開講科目を2019年度から開講することになる。このままでは同一学年にも関わらず新課程と旧課程の2つのカリキュラムが存在することになり、現場での対応が非常に複雑になる懸念がある。必要に応じて、2018年度に開講する編入学生の募集要項にも記載する必要があるだろう。
- 旧課程の在学生がある程度少なった段階で、旧課程の科目を開講しない決定を慎重に行うこととなるだろう。
- 再課程認定においては、旧法の理解も十分に持つことが必要である。また、新ルールを理解するためのコツは「間違い探し」である。
- 法令違反ではないが無理矢理な形で教育課程を構成した場合、教育課程や業務内容が継承できない可能性が高くなる。危うい状態で教育課程を編成している場合、法令改正があれば、認定基準違反となる可能性もある。
- 書式の体裁が不適切であった大学、対応できる者が一人しかない大学、実際の状況が申請書等が大きく異なる大学等、事務体制が満足に整備されていないと思われる大学等があった。維持・継続できる体制を整備することが大切である。