「国立大学法人の戦略的な経営実現に向けて~社会変革を駆動する真の経営体へ~中間とりまとめ」への2,3の所感

国立大学法人の戦略的な経営実現に向けて~社会変革を駆動する真の経営体へ~ 中間とりまとめ(令和2年9月):文部科学省

国立大学法人の戦略的経営実現に向けた検討会議では、令和2年9月に「国立大学法人の戦略的な経営実現に向けて~社会変革を駆動する真の経営体へ~中間とりまとめ」を取りまとめました。

 国立大学法人の戦略的経営実現に向けた検討会議の中間まとめが公表されました。これに対し、所感を記しておきます。

1.そもそも誰に向けた会議体なのか

 この中間まとめは、「国立大学法人の戦略的経営実現に向けた検討会議」が作成しています。同検討会議は、令和2年1月28日高等教育局長決定のもとに設置されており、

1.趣旨

骨太の方針2019」に則り、指定国立大学が先導して、世界の先進大学並みの独立した、個性的かつ戦略的大学経営を可能とする大胆な改革を可及的速やかに断行することが重要。そのため、より高い教育・研究に向けた自由かつ公正な競争を担保するため、国立大学と国との自律的契約関係を再定義し、真の自律的経営に向け、国立大学法人法等関連法令の改正や新規創設を含めて検討を行う。併せて、各大学においてグローバル人材を糾合できる世界標準の能力・業績評価制度とそれに基づく柔軟な報酬体系の確立などにつき検討する。

また、各大学が一貫性ある戦略的経営を実現できるような学長、学部長等の選考方法の在り方について検討する。加えて、新たな自主財源確保を可能とするなどの各種制度整備の具体策、さらに、現行の「国立大学法人評価」「認証評価」及び「重点支援評価」に関し、廃止を含めた抜本的簡素化や、教育・研究の成果について、中長期的努力の成果を含め厳正かつ客観的な評価に転換することを検討する。

https://www.mext.go.jp/content/20200226-mxt_hojinka-000005220_2.pdf

となっています。

 中間まとめを見ると「国は~~が必要である。」「国立大学法人は~~べきである。」という勇ましい言葉が並びますが、そもそもこれは誰に向けた言葉なのかがわかりません。中央教員審議会であれば文部科学大臣に向けて答申を行うという形ですが、同検討会議はその枠組みの外に置かれています。おそらく、文部科学省はこの中間まとめを踏まえて制度改正等を行うものと思われるため、間接的には文部科学大臣や行政・立法組織に対しての言葉だとは思いますが、なかなか判然としないところです。

2.一部の事項は明記されていない

 当初予定されていた検討事項と今回公表された中間まとめを比較すると、以下の事項への言及がないことがわかります

  • 文部科学省職員現役出向等の今後の在り方
  • 学部長等の選考方法の在り方
  • 世界標準の教育研究実現に向けた教育研究評議会の在り方
  • 世界標準の能力・業績評価・報酬体系の確立
  • 授業料の自由化の是非
  • 日常的な英語による教育研究の早期実現(JDが代用?)

 このうち、授業料の自由化については、どこで見たかは思い出せませんが、今回の審議で結論を出すのを断念したという記事を見た気がします。いずれにしろ、この社会状況では授業料の自由化(おそらく「高くなる」方の自由)は打ち出しにくいところです。実際、先行大学の事例を受け、コロナ以前の2019年12月から1月にかけて授業料の値上げを検討していた国立大学は一定数存在していたと思います。その検討はコロナのためにいったん棚上げになった状態でしょうね。

 また、「文部科学省職員現役出向等の今後の在り方」はぜひとも最終まとめに盛り込んでほしいところです。

 なんにせよ、まだ中間まとめですので、年内に作成される予定の最終まとめを待ちたいと思います。

3.各論

 以下、本文中で気になった記載を抜粋し列挙します。

法人化当初に描いていた姿

一方、国の一組織であることを前提としたかのような国の管理の仕組みや大学間の結果の平等を偏重するマインドが国に残っていることも否めない。また、各大学においても、大学内部における横並びの慣習などにより、法人化当初に描いていた、「競争的環境の中で、活力に富み、個性豊かな魅力ある国立大学」の姿は未だ実現しているとは言い難い。(P2)

 言っていることはわかりますが、法人化当初に描いた姿に言及するのならば、法人法制定時の付帯決議の実現にも言及いただきたいところです。

財政的な責任

なお、ここでいう「自律的契約関係」とは、以下で述べる新たな中期目標及び中期計画により、国と国立大学法人それぞれの責任を明確にすることで、その関係性を自律的なものにすることを企図しており、公共的価値の創出を期待されている国立大学法人が、国から財政的に自立することを表現しているものではないことに留意が必要である。(P3)

(中略)

加えて、国は、国立大学法人に負託する役割や機能が発揮される環境構築に責任を持つ意味において、法人が予見可能性を持った財務運営に基づき業務を確実に遂行出来るよう、十分配慮する必要がある。(P4)

 国の責任は財政面であることを、回りくどく言っていると理解しました。

中目中計の在り方

国は、これまでの中期目標の在り方を見直し、総体としての国立大学法人に求める役割や機能に関する基本的事項を国の方針として提示するべきである。(P3)

(中略)

国立大学法人は、国が示す大枠の方針を踏まえ、それぞれの組織の特性を生かした6年間のビジョンや行動計画等を作成すべきである。これは、国立大学法人がその大学経営の目標に照らして、国が方針で示した役割や機能のうち自身のミッションとして位置付けるものについて自ら選択し、それを達成するための方策について、自らの責任で6年間で達成を目指す水準や検証可能な指標を中期計画に明確に規定することが不可欠である。(P4)

 中目中計の在り方が大きく変わりそうです。国が示す基本的事項も、おそらく、現在の3類型に沿ったものになる気がしています。

法人評価の在り方

こうした社会への説明責任が十分に確保されることを前提とした上で、新たな中期目標・中期計画に基づいて構築される自律的契約関係も踏まえ、国(国立大学法人評価委員会)による法人評価について、毎年度の年度評価を廃止し、原則として、6年間を通した業務実績を評価することとすべきである。(P4)

 法人評価の在り方も大きく変わりそうです。

事務職員の育成

具体的には、国立大学法人は、専門性の高い事務職員の育成を進めるとともに、公務員型から脱却した、能力や業績に応じた弾力的な人事給与システムを整えるべきである。(P5)

 事務職員に関する言及もありますね。専門性の高い事務職員の育成は結構ですが、当該職員の専門性に応じた専門性の高い業務があるかどうかがポイントだと思っています。

理事の定数

さらに、戦略的な経営実現やコンプライアンス強化の面から、新たに実施する業務に最適な外部人材の適時登用を可能とするなど、国は、国立大学法人が置くことができる理事の員数について柔軟性を持たせることが必要である。(P5)

 国立大学法人法別表第一に関する案件ですね。国立大学で唯一法人統合を果たした東海国立大学機構(岐阜大学及び名古屋大学)を除き、多くの国立大学では同じ組織のなかで理事と副学長が兼務されている状態です。法人の理事としての役割を果たせるように権限(資金など)が委譲できているのか、そうでなければ外部人材を理事として適時登用したとしても、満足な効果が上がるのかどうか疑問です。

学長選考会議

このように、 国立大学法人は 、学長が真にリーダーシップを発揮し、世界に伍する大学へと飛躍を遂げるため、 学長選考会議が自らの権限と見識において、法人の長に求められる人物像に関する基準をステークホルダーに対して明らかにするとともに、広く学内外から法人の長となるにふさわしい者を求め、主体的に選考を行うべきである。(P6)

 最近何かとお騒がせな学長選考ですが、学長選考会議がちゃんと選考をやれよと言ったことが書かれています。たしかに他の委員会も含め特に学外委員はお付き合いで委員に就任していた例もあるでしょうし、担当部署が作成した案を無言で承認するだけではなく主体性を持って役割を果たせということだと思います。

 本邦でも学長のリーダーシップに関する研究は進展中だという認識ですが、パートタイム委員が多い学長選考会議にその重責がどの程度果たせるのか、学長選考委員に求められる資質を明らかにしたうえで委嘱することも必要ではないかと考えています。また、学長選考に際し、最大のステークホルダーである学生に関わってもらう方法もあり得るのではないでしょうか。

内部留保

したがって、国は、国立大学法人自らの判断で戦略的に積立てができる内部留保の仕組みを作るとともに、法人が自ら獲得した多様な財源を、戦略的に次期中期目標期間に繰り越すことができるよう、目的積立金の見直しを行うべきである。(P7)

 これは弊BLOGでも従前から言及している仕組みです。現在の目的積立金及び積立金のようなものではなく、一般家庭における当座預金に近い形で余剰資金をキープできなければ、節約へのインセンティブは働きません。一方、過去にあった特別会計の積立金、いわゆる「埋蔵金」に近い形でもありますので、この建付けは財務省の説得が困難かもしれません。

債券の発行

そして、国は、この活用拡大のための要件緩和を行うべきとの本検討会議の議論を踏まえ、大学の先端的な教育研究の用に供するための「コーポレート・ファイナンス型」の活用を可能とする政省令改正を、令和2年6月に行っている。しかしながら、国立大学法人が発行する債券が、市場との対話でさらに魅力的な商品として高い価値を生み出していくことが、今後、より一層期待される。(P8)

最近では、東大が発行した大学債がニュースになりました。

www3.nhk.or.jp

東大のプレスリリースでは、大学債の使途は以下の2点です。

  1. 「ポストコロナ時代のグローバル戦略」としての最先端大型研究施設の整備(候補として、ハイパーカミオカンデ等)
  2. 「キャンパスの徹底したスマート化の促進」としてのウィズコロナ及びポストコロナ社会におけるキャンパス整備(学内オンライン講義スペースの拡充等の施設改修、セキュアなネットワーク及びデータ活用環境整備、キャンパス隣接地の取得による利活用等)

第1回国立大学法人東京大学債券債券内容説明書

債券の発行については、文部科学省HPに解説資料があります。

2 資金調達手段としての債券発行の意味:文部科学省

2資金調達手段としての債券発行の意味

(1)債券とは何か

(2)債券発行の実際

 債券を発行するとなると、投資家に対し、年々金利を支払うとともに、償還期間を終えた償還金を支払う必要があります。今回の東大の大学債は200億円発行し利率は0.823%(年)なので、支払う金利は年1億6千万円程度です。これだけの金利を毎年(40年間で66億円程度)支払いつつ、40年後には200億円を償還しなければなりません。

 東大の令和元年度財務諸表では、キャッシュフロー計算書上は資金期末残高が532億円程度ありますので、これが維持できるのであれば金利及び償還には十分に対応できるでしょう(おそらく償還金を積み立てるのだろうと思いますが、償還金の原資には制限があったようにも記憶していますので制度との兼ね合いでしょうね)。一方で、これだけキャッシュがありながら、なぜ大学債の発行を行うのかという疑問もありますが、現行の積立金制度のようにあらかじめ使途が限定された資金では運用上不都合が生じるため、自由度が高い債権発行による資金調達に踏み切ったと推測しています。

設置審査

このため、国は、学位の分野に変更がなく、収容定員の総数が増えない場合において、学部・学科の再編等を伴う定員変更に必要な手続きについて、抜本的に簡素化するべきである。(P9)

 弊BLOGでも従前から言及してきたとおり、国立大学と公私立大学では設置審査の手続きが大きく異なります。設置審査の簡素化は全設置者に共通した流れではありますが、国立大学のみ何らかの措置があるのか、気になるところです。

学部定員の柔軟化

したがって、国は、文理の枠にとらわれないSTEAMスティーム人材の育成や、地域の特性やニーズを踏まえた質の高い人材育成やイノベーションの創出、社会実装に本気で取り組むような場合に限り、これまで抑制的に取り扱ってきた国立大学の学部収容定員の在り方を柔軟に取り扱うことも含め、魅力的な地方大学の実現に向けた取組を強化するべきである。(P10)

 ありがたい話ではあるのですが、学部定員を増やすとともに、増員分を支援できる教育研究環境の整備を行わなければなりません。また、この前段にある

しかし、知識集約型社会への転換の中で、国立大学が知のインフラ基盤として果たすべき役割が増大し、例えばリカレント教育の重要性なども指摘されている状況下で、収容定員を18歳人口との関係のみで決めるのは、必ずしも合理的ではない。

という話について、現状で学部に入学する25歳以上の者の割合は極めて低く、現時点でこの話がどの程度説得力を持つかは未知数だと感じています*1

*1:文部科学省資料では、平成29年度で大学(通学)に在学する25歳以上の者は全体の1.1%

授業目的公衆送信補償金制度に関する留意点

 文化庁と一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会(以下、「SATRAS」という。)が開催した授業目的公衆送信補償金制度の説明会(以下、「説明会」という。)に参加し、何点が気になる点があったので、ここに記録しておきます。なお、今回の記事には誤りが含まれる可能性がありますが、それにより生じた損害には当方は一切責任を負いません。 

1.従前の取り扱いはほぼ変わらない

 SATRASの説明ではさもすべての著作物の利用について補償金が発生するような口ぶりにも感じられましたが、これは授業目的公衆送信保障金制度(以下、「本制度」という。)の前提に立っているからです。学校その他の教育機関における複製等や、引用など著作権者の許諾を得ずに著作物を複製等できる取り扱いは、従前から変更ありません。

平成30年著作権法改正による「授業目的公衆送信補償金制度」に関するQ&A(基本的な考え方)(令和2年4月24日文化庁著作権課)

問1 平成30著作権法改正により「授業目的公衆送信補償金制度」を創設した趣旨と制度の概要を教えて下さい。この制度により、教育現場で新たにどのような行為が行えるようになるのでしょうか。

(答)

1.教育現場での著作物利用に関しては、従来から、対面授業のための著作物のコピー・配布や、対面授業の様子を遠隔地に同時中継する際の著作物の送信は、権利者の許諾なく行えることとなっていました。

 本制度は、他人の著作物を授業等において公衆送信を行う際に適用される制度です。それは、平成30年度法改正時の新旧対照表を見れば明らかだと思います。そのため、そもそも公衆送信を行わないのであれば、本制度には該当せず、補償金支払いは発生しません。ただし、当然ながら、法令に定める著作権者の許諾を得ずに複製等できる範囲を逸脱すれば、各著作権者の許諾が必要になります。

改正前 改正後

(学校その他の教育機関における複製等)
第三十五条 学校その他の教育機関(営利を目的として設置されているものを除く。)において教育を担任する者及び授業を受ける者は、その授業の過程における使用に供することを目的とする場合には、必要と認められる限度において、公表された著作物を複製することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びにその複製の部数及び態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。







(新設)



2 公表された著作物については、前項教育機関における授業の過程において、当該授業を直接受ける者に対して当該著作物をその原作品若しくは複製物を提供し、若しくは提示して利用する場合又は当該著作物を第三十八条第一項の規定により上演し、演奏し、上映し、若しくは口述して利用する場合には、当該授業が行われる場所以外の場所において当該授業を同時に受ける者に対して公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行うことができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該公衆送信の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

(学校その他の教育機関における複製等)
第三十五条 学校その他の教育機関(営利を目的として設置されているものを除く。)において教育を担任する者及び授業を受ける者は、その授業の過程における利用に供することを目的とする場合には、その必要と認められる限度において、公表された著作物を複製し、若しくは公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。以下この条において同じ。)を行い、又は公表された著作物であつて公衆送信されるものを受信装置を用いて公に伝達することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該複製の部数及び当該複製、公衆送信又は伝達の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

2 前項の規定により公衆送信を行う場合には、同項の教育機関を設置する者は、相当な額の補償金を著作権者に支払わなければならない。

3 前項の規定は、公表された著作物について、第一項教育機関における授業の過程において、当該授業を直接受ける者に対して当該著作物をその原作品若しくは複製物を提供し、若しくは提示して利用する場合又は当該著作物を第三十八条第一項の規定により上演し、演奏し、上映し、若しくは口述して利用する場合において、当該授業が行われる場所以外の場所において当該授業を同時に受ける者に対して公衆送信を行うときには、適用しない

 また、説明会資料では、今回の法改正に伴い著作権者の許諾なしに利用可能になった行為がわかりやすく示されています。

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 自分の頭の中にある補償金制度に該当するかを判定するイメージをフローチャートとして作成しました。大まかには、これに従って判断しています。「許諾なしに利用できる範囲」とは、著作権法に定める著作権者に許諾を得ることなく複製等が可能な行為や範囲を指します。

著作物が自由に使える場合は? | 著作権って何? | 著作権Q&A | 公益社団法人著作権情報センター CRIC

定められた条件で自由利用

著作権法では、一定の場合に、著作権を制限して著作物を自由に利用することができることを定めています。しかし、著作権者の利益を不当に害さないように、また著作物の通常の利用が妨げられないように、その条件が厳密に決められています。 なお、著作権が制限される場合でも、著作者人格権は制限されません

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 また、各授業形態との対応は、文化庁が作成した「授業の過程における利用行為と著作権法上の扱いについて」がわかりやすいです。

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 著作権法第35条のみではなく、他の取り扱いも含め、従前のとおり適切に権利対応に取り組んでいく必要がありますね。

2.対象者数をどのように算定するか

 前項では、必ずしもすべての著作物を利用する授業が本制度に該当するわけではないことを示しました。ということは、申請の際に補償金の算出根拠となる対象者数も各授業の実施状況(受講状況)によりある程度は抑えられる可能性があります。

 しかし、この実際の受講者数を基にした申請は、少なくとも大学では現実的ではないと考えます。理由は以下の3点です。

  1. すべての授業に対して本制度の対象となる著作物の利用をしているか詳細な確認を行うことが困難であること
  2. 各授業の各回に誰が受講(アクセス)するのか/したかを把握することが困難である可能性があること
  3. 該当するすべての授業のすべての受講者を把握できる段階が遅いこと

 1.について、小規模大学では数十から数百程度、中大規模大学では数千程度の授業が開講されていることと思います。それら各授業の各回において、本制度の対象となる取り扱いを行っているか詳細に調べることはなかなか大変です。特に、学期初めに調査したとしても、13,14回程度のスライド内容はまだ不明という場合もあり得るでしょう。とりあえず、遠隔授業を行っているかで大きく網をかけて、そこから詳しく調べていくことになりますが、相当程度の時間を要することが想像できます。

 2.について、1.で対象となる授業を同定したとして、その授業の各回の出席者を把握する必要があります。LMS等である程度把握できる可能性がありつつ、各授業により異なるプラットフォームを用いている場合は若干出席者把握の困難性が高まるかもしれないな、と感じてます。

 3.については、例えば後学期の15回目に同制度の対象となる取り扱いを行う授業があった場合、対象者数は15回目の授業が終わらなければ確定しません。説明会では、申請・補償金支払いの前であっても著作権法第35条に沿った対応が可能と言われましたが、さすがに年度末近くなっての申請対応はいかがかとも感じます。

 これらを踏まえると、遠隔授業を行う可能性/予定があるのであれば、5月1日時点全学生(非正規生を含む)を対象者として申請することが無難なように思えます。各学部により対応が異なる場合であっても、教養教育など学部を超えて履修する科目の存在を考えると、あまり単純化はできないかもしれません。

 かといって、少なくない金額が動くにも関わらず、さも全学生を対象とすることが当然のように感じた協会の態度には思うところがありました。

3.実態調査はどのような内容か

 説明会では、著作権者への補償金の分配のため実態調査を行うといった話がありました。前項の通り、各授業の実態調査はそう易々と行えるものではないでしょう。どの大学が調査対象となるのか、調査内容や調査項目はどのようなものかを早めに提示いただかなければ、大学としての対応もなかなかむつかしいと感じています。

4.公開講座には対応する必要があるか

 説明会では公開講座に関する補償金の要件も言及がありましたが、この話は今までの取り扱いと異なる部分があると感じています。

 改正前著作権法第35条の学校での著作物の利用では、「授業の過程における使用」とはあくまで正課の授業での利用に限定されていたと解釈していました。例えば、「学校その他の教育機関における著作物の複製に関する著作権法第35条ガイドライン」(平成16年3月著作権法第35条ガイドライン協議会)では、「同条第1項に関するガイドライン」として、以下の記載があります。

事項 条件 内容
授業の過程における使用 「授業」は、学習指導要領、大学設置基準等で定義されるもの 授業の過程にあたるかどうかは、左記条件に照らして授業を担任する者が責任を持って判断すること。
○ クラスでの授業、総合学習、特別教育活動である学校行事(運動会等)、ゼミ、実験・実習・実技(遠隔授業を含む)、出席や単位取得が必要なクラブ活動
○ 部活動、林間学校、生徒指導、進路指導など学校の教育計画に基づいて行われる課外指導
×以下の場合は、「授業」にはあたらない。
 ×学校の教育計画に基づかない自主的な活動(例:サークル・同好会、研究会)
×以下の場合は、「授業の過程」における使用に当たらない。
 ×授業に関連しない参考資料の使用
 ×校内 LAN サーバに蓄積すること
 ×学級通信・学校便り等への掲載
 ×教科研究会における使用
 ×学校ホームページへの掲載

 ここから、公開講座や教員免許状更新講習などは「授業」や「授業の過程」に該当しないのではないかと思われたため、予防線として、担当教員には適正な引用の範囲内において著作物を利用するようお願いをしていました。

 一方、「改正著作権法第35条運用指針(令和2(2020)年度版)(2020年4月16日著作物の教育利用に関する関係者フォーラム)では、「授業」の例として以下の項目が挙げられています。

  • 講義、実習、演習、ゼミ等(名称は問わない)
  • 初等中等教育の特別活動(学級活動・ホームルーム活動、クラブ活動、児童・生徒会活動、学校行事、その他)や部活動、課外補習授業等
  • 教育センター、教職員研修センターが行う教員に対する教育活動
  • 教員の免許状更新講習
  • 通信教育での面接授業、通信授業、メディア授業等
  • 学校その他の教育機関が主催する公開講座(自らの事業として行うもの。収支予算の状況などに照らし、事業の規模等が相当程度になるものについては別途検討する)
  • 履修証明プログラム
  • 社会教育施設が主催する講座、講演会等(自らの事業として行うもの)

 「授業」の法解釈に変更がないとすれば私の解釈が誤っていただけなので別にそれはいいのですが、公開講座や教員免許状更新講習でも著作物の無許諾利用が一定程度可能であるのは私の中では大きな変化です。

 本制度への対応については、遠隔で行う可能性があるならば授業と合わせて申請といったところです。対象人数は講座の定員とするにしても、例えば年度途中で新たにオンラインで行う公開講座が発生した場合はどうするのかという点は明らかではありません。

5.大学コンソーシアムは「学校その他の教育機関」に該当するのか

  近年は大学間連携が推進されており、その場として各地に結成された大学コンソーシアムが活躍しています。インターネットを利用した講座等も行われる中、大学コンソーシアムが主催するオンライン公開講座は本制度に該当するのか、言い換えれば大学コンソーシアムは「学校その他の教育機関」に該当するのか、気になるところです。

授業目的公衆送信補償金制度のオンライン説明会に参加しました

 令和2年10月7日に行われた文化庁著作権課及び一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会(SARTRAS)主催の授業目的公衆送信補償金制度のオンライン説明会に参加しましたので、記録を示しておきます。なお、私が理解できた範囲での記録ですので誤りが含まれる可能性があり、本記事の内容に起因する行為への責任は当方は一切負いません。

制度の概要説明(趣旨と目的など)【文化庁著作権課】

・ 授業目的公衆送信補償金制度は著作権法に定められた制度であり,著作物の利用円滑化と著作権者の利益保護のバランスを図ったものである。他人の著作物は無料で使用できるわけではなく,基本的には利用において対価が発生する。教育活動での利用においても,基本的には同様である。

著作権制度は,流通・利用と権利制限とのバランスが重要である。

・ 権利者であれば,利用条件を決めることができ,他人の無許可利用を禁止できる。他人の著作物を利用する際には,原則として,著作物の利用ごとに許諾を得ることが必要である。

・ 公益性の高い利用や権利者の利益に与える影響が少ないなど,一定の条件下において,権利者の権利が制限される場合がある。これは著作権法第35条に明示されている。

著作権法第35条では,対象施設・対象主体・目的限度・行為・権利者利益への影響を整理し,学校その他営利を目的としない教育機関であること,教員を担当する者と授業を受ける者であること,授業の過程における利用に必要と認められる限度であること,複製・公衆送信などが対象となっていること,著作権者の利益を不当に害しないことであれば,権利者の許諾を得ずに著作物を利用できる。

・ 平成30年度に改正された著作権法における授業目的公衆送信補償金制度により,従来は個別に許諾が必要であった非同期型の授業利用等においても,補償金を支払うことにより各権利者の許諾を得ることなく著作物を利用することができる。

・ 補償金制度では,あらゆる種類の著作物についてワンストップで一括処理が可能となっている。教育機関は指定管理団体に補償金を支払うことで,各著作権者に補償金が分配される。非営利の教育活動であっても,創作者の対価還元を維持することで,創作の活性化や質の高いコンテンツの産出につながることにご理解をいただきたい。補償金については,文化庁の定める審査基準にのっとり,料金が設定されることになる。

・ 本年度は補償金額を無料としているが,次年度は有償での制度運用としている。年内を目途に文化庁で金額の審査を行う予定である。各機関の補償金負担の軽減のため,政府方針にのっとり,概算要求への財政措置の計上など,支援に取り組んでいる。設置者においても,支払い義務を適切に果たすことが大切である。

制度の運用等(運用指針やライセンス,来年度からの補償金額案と規程案等)の説明【一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会】

・ SATRASは2019年1月に設立された日本で唯一補償金の収受が許可された団体である。教育分野の著作物等の利用の円滑化を図ることが目的であり,幅広い分野の著作者団体により構成されている。

・ これまではインターネットを用いた著作物の利用に大きな手間があったが,制度改正により補償金が設定され円滑な著作物の利用が可能となった。

・ 補償金額の算出根拠として,高等教育では学術論文の公衆送信時の使用料を,初等中等教育では教科書の使用料を参考にした。意見聴取を経て,当初の提案額から一律して80円減額することになった。大学等は「720円/一人・年」として文化庁認可申請を行った。

・ 補償金の支払いは教育機関の設置者が行う。また,支払う補償金額は,公衆送信を利用した人数によって包括的に算出する。全校生徒の数を必ず根拠としなければならないわけではなく,利用状況を把握してもらうことになる。公開講座の算出方法について,算出単位を変更し,30名1単位として10単位3,000円を算出単価としている

・ 補償金の権利者への分配について,教育機関への実態調査を行い,それに基づき権利者へ分配を行う予定である。教育機関の負担軽減を図ったうえで,サンプリング調査を行う。各機関への調査は数年に一度等の頻度で行うことを検討している。

・ 著作物の教育利用については,関係者でフォーラムを結成し,著作物の利用推進を検討している。運用指針も同フォーラムで検討している。

・ 補償金の対象とならない著作物の利用(教材の共有や授業外会議,履修期間終了後の学生に対する公衆送信など)についても,ライセンスを付与できるよう準備をしている。

・ 現在は文化庁に対して補償金の認可申請を行っている。認可審査により補償金の金額が上下することはないと思われる。12月には金額が認可される見通しであり,次年度から各機関からの申請を受け付ける予定である。5月1日時点の学生数を基準に申請してもらうことになる。

・ 今後ICTを利用した教育を推進するために著作物の利用環境を整備していく必要がある。

質疑応答

Q:設置者の判断により本制度を活用しないことはあり得るのか。

A:公衆送信を行う場合は,本制度の利用は法令上の義務である。

Q:従前は無償であった対面での著作物の利用も有償となるのか。

A:従前のとおりである。

Q:同一敷地内での配信は有償となるのか。

A:学校内部のサーバのみを介して行われる送信は本制度の対象外である。ただし,外部サーバやインターネットを利用する場合は,本制度の対象となる。

Q:外国の著作物の著作物やSATRASに参画していない著作者団体の著作物などは利用できるのか。

A:外国の著作物でも利用できる。参画していない権利者団体の著作物なども制度の範囲内で利用できる。

Q:補償金を支払えば制限なく利用できるのか。

A:運用指針等の範囲内で利用できる。一切制限なく利用できることではない。

Q:どのタイミングで著作権のことを考えなければならないのか。

A:第三者の著作物を利用する際に考えてほしい。

Q:講師自身の著作物を自身が使用する場合は制度の対象か。

A:自身の著作物を利用する場合は制度の対象外である。

Q:オンデマンド教育においてすでに全員が購入している著作物を公衆配信する場合も補償金の支払いが必要か。

A:必要である。

Q:運用指針の検討状況を教えてほしい。

A:来年度に間に合うように準備している。

Q:包括的なライセンスの検討状況を教えてほしい。

A:補償金制度を補完するライセンスは必要であり,検討を進めている。教材の共有や教職員会議などを対象としたい。

Q:本制度に罰則規定はあるのか。

A:罰則規定はない。ただし,民事的な責任は発生し,SATRASから損害賠償請求がなされる場合がある。

Q:法人単位ではなく学校単位で申請することは可能か。
A:教育機関の設置者(学校法人など)が支払いの義務者であることが法令で定められている。

Q:遠隔授業を行う学校のみの申請でよいか。

A:オンライン授業を全く行わない場合は対象に含める必要がない。

Q:オンライン授業を利用するクラスのみ申請すればよいか。

A:オンライン授業を利用する人数を申請してほしい。

Q:年度途中からの利用はできるのか。

A:年度途中から申請できる。補償金額は年額を12分割することになる。

Q:学生数の根拠はどうか?

A:5月1日の在籍数となる。非正規生が1年を通じて利用する場合は,数に含める。

Q:来年度の申請は5月1日以降となるが,4月1日以降本制度を利用した授業を行っても良いのか。

A:本制度は、申請や補償金支払いが終わる前でも利用することができる。

Q:補償金の金額や徴収方法の時期を決定するのはいつか。

A:補償金額は2020年内に認可される予定である。各機関との契約業務は2021年度以降の対応になる。

Q:2021年度に改めて申請を行う必要があるのか。

A:年度ごとに申請を行ってほしい。自動更新は行わない。

Q:実態調査に備えて準備することはあるか。

A:実態調査はすべての機関に毎年行うのではなく,抽出して調査を行う。各教員に著作物の利用状況を確認(誰のどのような著作物をどの程度利用したか)することになるため,教員が著作物の利用状況を随時記録していれば対応しやすくなるだろう。

本年度後期や次年度の各授業科目の実施方法に係る留意点について

https://www.mext.go.jp/content/20200727-mxt_kouhou01-000004520_1.pdf

本年度後期や次年度の各授業科目の実施方法に係る留意点について

 文科省より、本年度後学期や次年度の授業に係る通知が出されました。いくつか気になる点がありますので、ここに明記しておきます。

1.大学設置基準第25条第1項について

 本年度後期や次年度の各授業科目の実施方法を検討するに当たっては,大学設置基準第25条第1項が,主に教室等において対面で授業を行うことを想定していることに鑑み,

 コロナ関係の通知でこの文言は初めて見た気がします。関連条文を確認します。

大学設置基準

(授業の方法)

第二十五条 授業は、講義、演習、実験、実習若しくは実技のいずれかにより又はこれらの併用により行うものとする。

2 大学は、文部科学大臣が別に定めるところにより、前項の授業を、多様なメディアを高度に利用して、当該授業を行う教室等以外の場所で履修させることができる。

3 大学は、第一項の授業を、外国において履修させることができる。前項の規定により、多様なメディアを高度に利用して、当該授業を行う教室等以外の場所で履修させる場合についても、同様とする。

4 大学は、文部科学大臣が別に定めるところにより、第一項の授業の一部を、校舎及び附属施設以外の場所で行うことができる。

 第2項から第4項まではできる規定であるため、原則としては第1項の対応であり、それは対面授業を想定しているとのことです。大学設置基準の解釈が通知に出てくることはそれほど多くないため、覚えておきたいところです。

2.面接授業の実施検討について

地域の感染状況や,教室の規模,受講者数,教育効果等を総合考慮し,今年度の授業の実施状況や学生の状況・希望等も踏まえつつ,感染対策を講じた上での面接授業の実施が適切と判断されるものについては面接授業の実施を検討していただき,授業の全部又は一部について面接授業の実施が困難と判断される際には,「2 遠隔授業等の実施に係る留意点」を踏まえた上で,遠隔授業等(面接授業との併用を含む。)の実施を検討いただくようお願いいたします。

 この文章からは、まずは対面授業の実施を検討し、実施が困難である場合は遠隔授業等の実施を検討するように読み取れます。

 前学期前に発出された「令和2年度における大学等の授業の開始等について(通知)」(元文科高第1259号令和2年3月24日)では、

面接授業に代えて遠隔授業を行う場合にも,大学は当該授業科目を履修した学生に対しては試験の上単位を与えることになるが,その方法は,一斉に実施する定期試験等に限られるものではなく,レポートの活用による学習評価等,到達目標に応じた適切な成績評価手法を選択することができること。

とあり、あくまで遠隔授業は面接授業の代わりであることとなっています。

 今回の通知ではそれが一層明確な印象を受け、面接授業の軸足を置くというコロナ以前の状態に回帰気味なのではないかと思っています。

 ちょっと気になるのは「学生の希望」という文言が含まれているところです。本来であれば、授業の実施形態は、最も教育効果の上がり到達目標は達成される方策を選択すべきだと考えますが、「学生の状況」はともかく、ここで「学生の希望」という文言が含まれた意味を考えてしまいます。

 この文言は、本通知中にもう一度出てきます。

ただし,感染の状況は日々刻々と変化しているものであることから,一度実施方針を決定した後においても,地域の感染状況や,学生の希望等も踏まえ,必要に応じてその実施方法の見直しや更なる改善に努めるようお願いいたします。

 「地域の感染状況」と「学生の希望」が並列で明記されています。この取り扱いは慎重に検討していきたいです。

3.受験生への情報提供について

以上を踏まえ,各授業科目の実施方法について御検討いただいた結果,本年度後期や次年度の授業の実施方法としては,面接授業のみ実施,面接授業と遠隔授業の併用実施,遠隔授業のみ実施等多様な授業の実施形態が考えられますが,いずれの場合も,授業計画(シラバス)等に明示し,学生に対して丁寧な説明に努めるとともに,その実施方針等については、受験生の進学先の参考となるよう,できる限り早めにインターネット等により公表していただくようお願いいたします。

 「受験生の進学先の参考」という言葉が出てきました。

 文章上は、「本年度後期や次年度の授業の実施方法としては,(中略)その実施方針等については、受験生の進学先の参考となるよう,できる限り早めにインターネット等により公表していただくようお願いいたします。」となるため、必ず各授業の形態を公表するというよりは、実施方針を公表するという取り扱いができると考えています。ただ、一度決定した後も見直しや改善に努めよとあるなかで、都度都度変更を公表することは、どの程度受験生の進学先の参考になるのか判断ができないと感じています。

4.レポート課題の不正防止措置について

その際,課題の提出や定期試験等の代替として行われるレポートの活用による学習評価等の際の不正防止対応方策を講じていること。

 レポート課題の不正防止対応方策が唐突に出てきました。当然、従前から何らか対応していると思いますが、ここでいう「対応方策」が個々の教員の努力で足りるものなのか、剽窃防止システムの導入など組織的な対応のみ該当するものなのかは判断が難しいところです。

大学は「授業科目を自ら開設」せずともよくなるのか

大学の授業科目の相乗りが可能に、再編にも影響か(ニュースイッチ) - Yahoo!ニュース

文部科学省は各大学の独自開設が原則の授業科目に対し、連携する他大学の科目をそのまま活用できる新たな仕組みを始める。この「連携開設科目」は1法人傘下の大学間か、新制度で文部科学相認定の「大学等連携推進法人」に参加する大学間が対象だ。

 大学等連携推進法人に関するニュースが出ていました。これは、7月15日に行われた中央教育審議会大学分科会(第115回)を受けての記事だと思います。今回は、この件について考えてみます。

1.現行法令

本件に関連する現行法令は、以下の通りです。

大学設置基準

(教育課程の編成方針)
第十九条 大学は、当該大学、学部及び学科又は課程等の教育上の目的を達成するために必要な授業科目を自ら開設し、体系的に教育課程を編成するものとする。

 ここにある通り、”大学は〜〜必要な授業科目を自ら開設し”とされており、基本的には授業科目は各大学にて開設するという前提で運営されています。今回のニュースは、この制限を緩和することと理解しています。

2.新たな仕組みの概要

 大学分科会の資料では、大学等連携推進法人や同一法人内の授業解説に関する特例は、以下の通り示されています。

一定の要件を満たす認定一般社団法人の社員が設置する大学(専門職大学及び短期大学を含む。以下同じ。)間及び複数大学設置法人が設置する大学間において、➀他の大学が当該大学と連携して開設する授業科目を当該大学が自ら開設したものとみなすことができる特例措置を設けるとともに、②共同教育課程を設ける場合の各大学で修得すべき単位数の緩和を規定。

①及び②いずれの教育上の特例にも共通する要件として認定一般社団法人及び複数大学設置法人に求める事項

(1).認定一般社団法人

 ア 法人の教学面の代表者が参画する組織(理事会)の設置

 イ 同理事会における大学等連携推進方針の策定・公表

 ウ イの大学等連携推進方針の文部科学大臣への届出

(2).複数大学設置法人

 ア 法人の教学面の代表者が参画する組織(連携推進管理体制)の設置

 イ (1).イの大学等連携推進方針に準ずるものの策定・公表

 ウ イの大学等連携推進方針に準ずるものの文部科学大臣への届出

①連携開設科目に係る規定等の整備

(1).認定一般社団法人の社員が設置する大学間及び複数大学設置法人が設置する大学間において、他の大学が当該大学と連携して開設する授業科目を当該大学が自ら開設したものとみなす特例措置を設けること

(2).(1).の場合において、大学は、以下のア及びイの要件を満たさなければならないものとすること

 ア 当該大学が自ら開設したものとみなす授業科目(以下、「連携開設科目)」が、大学等連携推進方針(複数大学設置法人が設置する大学間の場合にあってはこれに準ずるもの)に沿って開設されていること

 イ 連携開設科目を自ら開設したものとみなす大学及び当該科目を開設する大学等は、当該連携開設科目を開設し、実施するため、以下に掲げる事項の協議の場(教学管理体制)の設置を義務付けること

  (ア) 授業の方法及び内容並びに年間の授業計画

  (イ) 学修の成果に係る評価に当たっての基準

  (ウ) 連携開設科目の履修に係る学生の利便及び移動等への配慮

  (エ) その他連携開設科目の開設・実施に必要な事項

(3).大学は、学生が他の大学等において履修した連携開設科目について修得した単位を、当該大学における授業科目の履修により修得したものとみなすものとすること

(4).卒業の要件として修得すべき単位数のうち、連携開設科目の履修により修得したものとみなす単位数の上限は、30単位とすること

(5).当該大学以外の大学が開設する授業科目を連携開設科目として当該大学が自ら開設したものとみなす場合には、当該大学は、連携開設科目に係る以下の事項を公表しなければならないものとすること

 • 授業科目、授業の方法及び内容及び年間の授業の計画

 • 学修の成果に係る評価

②共同教育課程の修得すべき単位数の緩和について

(1).共同教育課程の全ての構成大学の設置者が同一である場合、又は認定一般社団法人の社員である場合であって、当該設置者又は認定一般社団法人が上記の要件を満たすときは、共同教育課程に係る授業科目の履修によりそれぞれの大学で修得すべき単位数について、学士課程で「31単位」又は「32単位」とされているものを「20単位」とするものとすること

(2).それぞれの大学において当該共同教育課程に係る授業科目の履修により修得すべき単位数のうち、連携開設科目の履修により修得した単位は除くこととする。

 緩和の特例(連携開設科目)を受けるためには、まずは、体制の整備や方針の策定が必要です。さらに、会議体で検討しなければならないこともあります。ただ、上記の文言だけ読むと、それほど難易度が高いとは思えません。むしろ、既存の教育課程にどのように連携開設科目を位置付けるかが難しそうだと感じます。

3.懸念

 まだあまり詳細な内容が明らかになっていないところもありますが、本件についていくつか懸念があります。

3−1.他の条文との関係はどうなるか

 大学設置基準には、第19条の他にも、教育課程に関する条文があります。

(授業科目の担当)
第十条 大学は、教育上主要と認める授業科目(以下「主要授業科目」という。)については原則として専任の教授又は准教授に、主要授業科目以外の授業科目についてはなるべく専任の教授、准教授、講師又は助教(第十三条、第四十六条第一項及び第五十五条において「教授等」という。)に担当させるものとする。

 第10条では、主要授業科目は原則として専任の教授又は准教授に担当させるとしています。この点は連携開設科目と相容れないものになる可能性がありますので、第10条も改正されるのでしょうか。個人的には、大学には教授が多いという批判は第10条に影響されているとも感じていますので、第10条の改正には注目しています。

 併せて、連携開設科目の内容によっては運動場や校地校舎の基準が緩和されるのか、(おそらくないでしょうか)気になります。

3−2.適用範囲はどうなるか

 すでに、各大学にて、他大学の授業を履修してその単位を認定する単位互換が行われています。ただ、選択科目として認定されている場合が多いのではないかと思っています。

 今回の連携開設科目については、必修科目まで他大学の開設科目で代替できるのか、その適用範囲は気になるところです。

3−3.質保証はどうなるか

 他大学の授業科目を流用するわけですので、その質保証をどのように行うのかは難しいと感じています。「協議の場」にて行うのでしょうが、教育課程は「みなす大学:授業流用大学」が、当該授業は「みなし大学(みなされる大学):授業開設大学」が責任を持つことになるのでしょうか。

一応、大学分科会の資料では、以下の通りとなっています。連携開設科目の開設に自ら開設したものとみなす側の大学の強い関与を法令上担保する観点から、連携開設科目の実施状況に係る自己点検・評価や認証評価における適切な指針となるよう、大学間の協議事項を告示で要件化するとともに、みなす側の大学に連携開設科目の情報公表を義務付けること。一方、みなし側の大学数の上限については法令上一義的に決定することが困難であること、他の類似する制度(共同教育課程等)において規定していないことから法令上上限を設けることはしないが、施行通知等において上限の目安を示すことを検討。

 また、「みなす大学」が学修の成果に係る評価を公表となっている点は気になります。評価の基準ではなく評価を公表となると、成績評価の分布などを公表するということでしょうか。

3−4.設置申請等が大変そう

  実際に連携開設科目を用いて設置申請や課程認定申請などを行うとなると、他大学との調整が必要なので、結構大変そうだなと感じました。

3−5.学生への配慮をどうするか

 他大学の授業科目を授業するため、学生への説明や理解を得ることがどこまでできるのかという点も気になります。特に、遠隔授業が(予期せぬ事態により)普及しているとは言え、図書館などの施設面も含めてどこまで学生の学修に配慮できるかは考えなければなりませんね。

「「法人化」を言い訳にする残念な人々」という記事を残念な思いで眺める。

国立大学の能力低下、法人化は失敗だったのか? NFIからの提言(10)「法人化」を言い訳にする残念な人々(1/5) | JBpress(Japan Business Press)

その中で、日本が抱える課題をどのように解決していくべきか。データを活用した政策形成の手法を研究するNFI(Next Generation Fundamental Policy Research Institute、次世代基盤政策研究所)の専門家がこの国のあるべき未来図を論じる。国立大学の法人化の是非を理事長の森田朗氏が問う(過去9回分はこちら)。

 非常に腹の立つ記事を見つけたので、あまり論考できていませんが、いろいろ言いたいことがあります。久しぶりに書き散らかし感があるエントリーとなりましたが、本来弊BLOGは都内某所への怒りから始めたところもありますので、初心を思い出しました。
 ちなみに私は、「”新たな価値により新たな資金を稼ぎそれを原資にさらに新たな価値を生みだし新たな資金を稼ぎ法人全体を成長させる”ということを”経営”と呼ぶならば、国立大学法人は制度上経営はできないようになっている」派なので、そもそも「国立大学の能力低下、法人化は失敗だったのか?」というタイトル自体が失当だと思っています。経営をするのは国立大学ではなく国立大学法人ですしね。

法人化と予算削減は分けて考えなければならない

これまで、予算は支出費目を指定されていたが、法人化後は使途を指定しない運営費交付金として付与する。ただし、大学自身で内部の効率化を図ることができるし、競争的研究資金を含め外部資金の導入も認められることから、運営費交付金に関しては毎年1%削減することとされた。

要するに、大学が「自由」と「カネ」を希望しても両方得るのはムリである。そのときの情勢からしてカネを増やすことは期待できない以上、自由を選択するのは合理的な選択であった。

 平成16年度から効率化係数が導入されたのは事実です。ただし、それと法人化を分けて考えなければ何が問題だったのかが整理できないと感じています。特に、国立大学法人法制定時の国会付帯決議は、

衆議院
六 運営費交付金等の算定に当たっては、公正かつ透明性のある基準に従って行うとともに、法人化前の公費投入額を十分に確保し、必要な運営費交付金等を措置するよう努めること。また、学生納付金については、経済状況によって学生の進学機会を奪うこととならないよう、適正な金額とするよう努めること。

参議院
十二  運営費交付金等の算定に当たっては、算定基準及び算定根拠を明確にした上で公表し、公正性・透明性を確保するとともに、各法人の規模等その特性を考慮した適切な算定方法となるよう工夫すること。また、法人化前の公費投入額を踏まえ、従来以上に各国立大学における教育研究が確実に実施されるに必要な所要額を確保するよう努めること。

となっていることは忘れてはなりません。付帯決議の実効性はさておき、国会審議をないがしろにするようなことは、仮にも当事者を自認するのであればするべきではないでしょう。言い方を借りるならば、知ったような顔をしてスマートぶったなことを言うよりは、「自由」も「カネ」も手に入れるように行動するほうがなんぼか役に立ちますよ。

競争的資金は大学経営に使えるとは限らない

すなわち、上手に経営を行うことができる大学は限られた資金であっても有効に使い、さらなる資金を獲得して研究も教育も発展させることができるであろう。他方、経営能力に欠ける大学は衰退し、将来的には統廃合の対象となるかもしれない。

 さも基盤的経費がなくとも競争的資金により大学経営が成せるように書かれています。しかし、使途の制限がない基盤的経費に比べ、競争的資金は一般的に使途が極めて限定的であり、必ずしもなんでも使えるとは限りません。

 例えるなら、Aという商品が売れたとしてもその売り上げはA'という商品の開発にしか使えず、赤字になっているBという商品には使えないようなものです。幅広い大学の業務の中でごくごく一部の事業のみ潤ったとしても、その根幹となる部分(人件費や整備費など)が貧弱なままであれば、運営すらおぼつかなくなりますね。

改革をすればうまくいくという論拠が不明

このため、法人化に際しては、大学トップである学長の選出は、外部の人材も加えた学長選考会議に委ねる仕組みが採用された。ただ、新設大学はともかく、伝統ある国立大学では教員の信任なきトップがリーダーシップを発揮することは難しい。その結果、多くの国立大学で、従来と同様の構成員による意向投票の制度が維持されたが、従来の慣習から脱却できないがゆえに、思い切った改革ができず、ジリ貧状態に陥りつつあるといえるのではないか。

その意味で、国立大学も、そろそろ腰を据えて自ら思い切った改革に取り組むべきときだと思う。学内の研究能力や事務運営の厳格な評価を行い、ムダを削減し効率性を高め、発展の可能性のある分野に資源を振り向けるべきである。

 さも改革すれば経営がうまくいくといった論調ですが、論拠は不明です。むしろ、改革を重ねることにより、構成員のフォロワーシップが低下し、大学全体の活力が低下する可能性もあるのではないでしょうか。教育政策に限らない話かもしれませんが、政策の方向性がよくないのか、政策の運用がよくないのか、どちらなのかはなかなか難しいなと感じています。

結局、財務当局と同じことしか言っていない

その結果、運営費交付金の削減はおかしい、法人化は間違いだったという主張になっているように思われる。しかし、現状の経営体制のまま、運営費交付金の増額を求める主張は納税者に対して説得力を欠くといわざるをえないだろう。

 突然「納税者」という言葉が出てきました。なるほど確かに総体としての国立大学法人の経常収益のうち、34%は運営費交付金収益です*1。ただ、納税者たる国民が国立大学の経営についてどれほど興味関心があるのでしょうか。たしかに気にすべき点ではあり無視はできませんが、どちらかといえば「納税者」という言葉を隠れ蓑にした財務当局のことでしょうね。となると、この記事で書かれていることは財務当局の主張と同じように感じてきます。

とは言え、最後の一文はそのとおり

いま必要なのは、大学人が大学を取り巻く環境について認識すること、すなわち大学人の意識改革だ。それなくして、ただただ財源の不足を指摘し、法人化は間違いだったと主張しても、国立大学の教育・研究の質が改善されるとはとても思えない。

 ここまでいろいろと指摘してきました。ただ、「意識改革」という中身のない言葉は嫌いですが、最後の一文はまぁそれもあるよねと思っています。私は法人化後の採用ですが、この10年間で国立大学の中は結構変わってきたと感じています。しかし、それ以上に様々な要求が国立大学に寄せられ、変化のメリットをはるかに上回る改革要求のデメリットが生じているのかもしれません。とは言え、この元記事に書かれたような内容を世間も認知しているのだとしたら、自分にはどのようなことができるのか考えてしまいます。

 本来ならば、改革に夢を見ず地道な変化を積み上げていくことが望ましいと思いますが、当の行政当局が改革に夢をみて恋焦がれている状況では、それをうまくいなしながら自分たちの道を作っていなかければならないと改めて感じました。

まち・ひと・しごと創生基本方針2020の大学関連個所について

関係法令・閣議決定等 - まち・ひと・しごと創生本部

 まち・ひと・しごと創生基本方針2020が閣議決定されました。骨太の方針2020と関連する箇所がありますが、骨太の方針2020と同じように、大学に関連する箇所を以下に示します。

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/sousei/info/pdf/r02-07-17-kihonhousin2020hontai.pdf

第2章 政策の方向

<今後の取組の進め方>

Ⅲ 強靭な経済構造の構築~危機に強い地域経済~

感染症の克服と強い地域経済の構築を進めるため、「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」(以下「地方創生臨時交付金」という。)の活用や、地方大学の産学連携強化と体制の充実、リモートワーク推進等による移住の推進等に取り組むとともに、結婚・出産・子育ての希望の実現に向けた取組を推進する。

2.新たな日常に対応した地域経済の構築と東京圏への一極集中の是正

(2)地方への移住・定着の推進
①地方大学の産学連携強化と体制充実

東京圏の大学に進学する者のうち、東京圏外からの進学者は減少傾向にあるものの依然として約3割を占めており、また、地方大学に進学・卒業した者についても、地域によっては半数以上が地域外に就職する傾向があるとの調査もあることから、進学・就職それぞれのタイミングで、地方定着を促していくことが必要である。
地方大学には、地域「ならでは」の人材を育成・定着させ、地域経済を支える基盤となることが求められており、地域の特性やニーズを踏まえた人材育成やイノベーションの創出、社会実装に取り組む地方大学の機能強化を図ることが重要である。また、若者を惹きつけるような魅力的な地方大学を実現するためには、このような地方大学の特色を活かした優れた取組を重点的に支援することが重要である。
このため、地域の課題やニーズに適切かつ迅速に対応できる魅力的な地方大学の実現に向け、地方公共団体や産業界を巻き込んだ検討を行い、地方においても今後更にニーズが高まるSTEAM人材等の育成等に必要な地方国立大学の定員の増員やオンライン教育を活用した国内外の大学との連携等を盛り込んだ、魅力的な地方大学の実現とともに魅力的な雇用の創出・拡大のための改革パッケージを早急に取りまとめる。また、複数の高等教育機関地方公共団体、産業界等が恒常的に連携する「地域連携プラットフォーム(仮称)」の構築や、これを活用した地域産業の推進等に資するエコシステムの構築を推進する等、若者をはじめ地域の様々なステークホルダーにとって魅力的な地方大学を目指す。あわせて、地方大学・地域産業創生交付金により地域の中核的産業の振興に向けた研究開発や人材育成の取組に対して重点的に支援を行い、「キラリと光る地方大学づくり」を進めていく。
また、地方のサテライトキャンパスの設置の促進や、地方における魅力的なインターンシップを推進すること等により、就職先を決める前の段階で地方や地方企業の魅力を知る機会を創出するとともに、奨学金返還支援の取組を更に広げていくことで、若者の地方への定着を強力に促す。

第3章 各分野の政策の推進

1.稼ぐ地域をつくるとともに、安心して働けるようにする

(1)地域の特性に応じた、生産性が高く、稼ぐ地域の実現
地域資源・産業を活かした地域の競争力強化
ⅳ地域発イノベーション等の創出と地域産業の新陳代謝促進退
【具体的取組】
(a)地域発のイノベーションの創出の促進

地方公共団体と地方大学が緊密に連携して、中長期的な見通しの下、その地域の活性化及び地域社会課題の解決に必要な研究シーズの社会実装や、そのために必要な人材を将来にわたって確保するために必要な取組を進めることを支援し、もって地方創生に資する科学技術イノベーションが地域において自律的・継続的に創出されるエコシステムを構築する。(文部科学省科学技術・学術政策局産業連携・地域支援課)

・企業ネットワークのハブとして活躍する大学等を選抜して伴走支援する「地域オープンイノベーション拠点選抜制度」において、新規市場の開拓や専門家の紹介等を支援する。また、地域企業によるイノベーション創出・生産性向上が進むよう、公設試験研究機関・大学等による企業支援体制を強化する。(経済産業省経済産業政策局地域経済産業グループ地域企業高度化推進課、産業技術環境局技術振興・大学連携推進課大学連携推進室)
・IoT・ビッグデータ・AI等の先進技術を活用して地域課題の解決を実現するとともに、地方の経済発展を推進する取組を「地方版IoT推進ラボ」として選定し、新事業の創出等を支援する。また、地域の中小企業・IT企業・大学等と高度なITスキルを有する人材をマッチングさせ、新たなビジネスモデルを創出する仕組みを構築する。(経済産業省商務情報政策局情報技術利用促進課)
(b)創業支援

・産学金官の連携により、地域の資源と資金を活かした創業や既存事業の新分野展開を後押しするローカル10,000プロジェクトを、事業の効果検証及び優良事例集の周知や効果的な広報を通じ、強力に推進する。(総務省自治行政局地域政策課)

・起業経験者の講師派遣等により教育現場での起業家教育の導入を推進するほか、学生を含む潜在的創業者を対象としたイベントを開催するなど、将来の創業者の育成や起業家となる人材の輩出に向けた創業機運を醸成する。(中小企業庁経営支援部創業・新事業促進課)
・外国人起業活動促進事業に関連する制度・運用の拡充や外国人留学生の大学卒業後の起業促進について、入国・在留管理等に係る制度・運用の見直し等を行い、留学生による我が国での起業の円滑化を実現する。(出入国在留管理庁政策課、経済産業省経済産業政策局産業創造課新規事業創造推進室)
③魅力ある地方大学の実現と地域産業の創出・振興等 【具体的取組】

(a)特色ある地方創生のための地方大学の振興

・「キラリと光る地方大学づくり」を進め、地域における若者の雇用機会の創出を促進する。2018年度に採択された事業については、取組が地域に根付いたものとなるよう資金面の自走化も含めて事業推進を加速する。また、新設した地方公共団体における計画作成の段階から支援する申請枠を通じ、製造業のみならず農林水産業、観光業、情報通信業、文化産業、スポーツ産業等において、特色ある取組を促す。(内閣府地方創生推進事務局)

・大学と産業界・地方公共団体との連携強化を推進し、地域のニーズを踏まえた人材育成等を促進するため、各地域における地域連携プラットフォーム(仮称)の構築や、これを活用した地域産業の推進等に資するエコシステムの構築を推進する。(文部科学省高等教育局高等教育企画課、科学技術・学術政策局産業連携・地域支援課)
・地方大学において、地域の特性やニーズを踏まえた人材を育成し、地域に着実に定着させるとともに、イノベーションの創出や社会実装により地方における新たな産業や雇用の創出を更に推進するため、STEAM人材の育成や分野融合の教育研究推進とその成果の社会実装等を強化する地方国立大学の定員の増員を含め、今後の地方大学の望ましい在り方を実現するための大胆な改革に向けた検討を速やかに行う。(内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局、文部科学省総合教育政策局地域学習推進課、高等教育局高等教育企画課、大学振興課、専門教育課、国立大学法人支援課、科学技術・学術政策局産業連携・地域支援課)

(b)学生等のUIJターンや地元定着の促進

奨学金返還支援事業に係る特別交付税措置の拡充等の支援策について情報発信等を行い、地域産業の担い手となる学生等のUIJターンや地元定着を促進する。また、各地の支援制度の活用を促すため、効果検証に係る調査研究を行うとともに、独立行政法人日本学生支援機構等とも連携し広報活動を強化する。(内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局、総務省自治財政局財務調査課、文部科学省高等教育局学生・留学生課)

・東京圏の大学等の地方へのサテライトキャンパスの設置を推進するため、地方公共団体と大学等との連携の強化等に取り組む。また、地方創生インターンシップに係る情報発信を行うとともに、質の高いインターンシップの実施に向けて研修会を開催し、学生が就職前に地方の魅力を知る機会を設ける。(内閣府地方創生推進室、文部科学省高等教育局専門教育課、私学部私学助成課)
(c)地域の専門人材の育成

高等専門学校の教育の高度化とともに、高等専門学校のシーズを地域の大学等及び地元企業等が活用できるようにすることで、地域課題の解決や地域産業の活性化を推進する。また、専門職大学専門職短期大学専門職学科について、開設する分野や地域の拡大を進め、実践的な職業教育や地域産業の振興を担う人材の育成を行う。(文部科学省高等教育局専門教育課)

・スーパーグローバル大学創成支援事業及び大学の世界展開力強化事業を通じて、地域の大学と海外の大学等との連携・交流を促進し、グローバルな視点を持ち、地域の振興に貢献できる人材を育成する。(文部科学省高等教育局高等教育企画課国際企画室)

4.ひとが集う、安心して暮らすことができる魅力的な地域をつくる

(1)活力を生み、安心な生活を実現する環境の確保
地域資源を活かした個性あふれる地域の形成
【具体的取組】
(d)スポーツ・健康まちづくり
・地域のプロスポーツチーム等と企業、大学等が連携したまちづくりや新たなサービスの創出を目指す地域版のスポーツオープンイノベーションプラットフォーム(地域版SOIP)の構築を促進する。また、地方公共団体を含む関係者との協働により、生活の中で多様なスポーツ機会を提供するための体制構築や、総合型クラブの登録・認証制度の整備、障害者、生活習慣病や運動器疾患等を有する住民等でもスポーツができる環境整備を行う。(スポーツ庁健康スポーツ課、参事官(地域振興担当)、参事官(民間スポーツ担当)、厚生労働省健康局健康課、社会・援護局障害保健福祉部企画課自立支援振興室、経済産業省商務情報政策局商務・サービスグループサービス政策課、国土交通省都市局まちづくり推進課、公園緑地・景観課、観光庁観光地域振興部観光資源課)

5.多様な人材の活躍を推進する

(1)多様なひとびとの活躍による地方創生の推進

・各省庁や大学、民間企業の協力の下、人材の派遣を行うとともに、派遣協力企業の専門分野等の情報をまとめた協力情報リストを拡充する。(内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局、内閣府地方創生推進室、総務省自治行政局地域自立応援課)

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 「魅力的な」「キラリと光る」「個性的な」などの文言が踊ります。文部科学省科学技術・学術政策局産業連携・地域支援課(いわゆる産地課)が「「組織」対「組織」の本格的な産学連携」とか言い出したときもそう思いましたが、何が「本格的」か、何が「個性的」か、何が「魅力的」かなどをお前らが決めるなよ、と感じますね。