文科大臣の言う「余地」とはなにか。

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萩生田光一文部科学相は19日、国立大学協会など国公私立の大学4団体の会長らと東京都内で面談した。新型コロナウイルス感染症の影響で中退した学生に配慮し、復学できる余地をつくるよう要望。各大学の事情に応じて対面授業を実施することも改めて求めた。面談後、記者団に明らかにした。

 この記事を読んで、あれっと思った箇所があります。それは「復学」です。

1.復学とは

東京大学学部通則 抄

(復学)

第22条 休学期間内に、その理由がなくなったときは、学部長の許可を得て、復学することができる。

  大学において復学とは、一般的には、休学が解消された学生(場合によっては、停学が解除された学生)が正課教育に復帰することを指します。そのため、元記事にある

新型コロナウイルス感染症の影響で中退した学生に配慮し、復学できる余地をつくるよう要望。

について、そもそも退学した学生は復学できません。

2.正しくは再入学である

東京大学学部通則 抄

(再入学)
第9条 本学を退学した者、第24条若しくは第25条の規定により退学を命ぜられた者又は第49条第7項の規定により学生の身分を失った者が、再び同一学部に入学を志願したときは、選考のうえ、再入学を認めることができる。

 退学した学生が再び同じ大学の同じ学部等に入学することを再入学と言います。おそらく、元記事の文科大臣の発言はこのことを指していたのでしょう。

弘前大学再入学に関する規程 抄

(再入学志願の手続)

第3条 再入学を志願する者は,次の各号に掲げる書類に学則に定める額の検定料を添えて,学長に願い出るものとする。

(1) 再入学願書

(2) 履歴書

(3) その他別に指定する書類

(再入学許可)

第5条 前条の選考の結果に基づき合格の通知を受けた者は,学則に定める額の入学料を納入しなければならない。

2 学則第35条第3号又は第4号の規定により除籍された者にあっては,前項の手続きのほか,未納の入学料又は授業料相当額を納入しなければならない。

(再入学年次)

第6条 再入学年次は,退学時又は除籍時の年次とする。ただし,第8条で認定された単位数により退学時又は除籍時の年次に再入学させることが適当でないと認められる者については,学長は,相当年次に再入学させることがある。

(既修得単位の取扱い及び在学期間の通算)

第8条 既修得単位の取扱い及び在学期間の通算については,教授会の議を経て,学部長が認定する。

(修業年限及び在学期間)

第9条 再入学を許可された者の修業年限は,学則第9条に定めるところによるものとし,在学期間は,退学又は除籍以前の在学年数を差し引いた年数とする。

 再入学時には、退学等前の履修単位の認定が行われるとともに、それを踏まえた学年への編入が検討されます。

3.余地は何か

 元記事では「復学できる余地をつくるよう要望」とありますが、この「余地」とは何を指すのか、はっきりしません。前述のとおり学修上の配慮はある程度可能となっていますので、可能性としては、コロナで退学した学生が再入学する際に検定料や入学料を再徴取しないことでしょうか。

 ただ、最近の文科省等の調査でも「コロナを原因とした退学~~」と言われていますが、退学等の要因をコロナに限定することは退学願い等を精査しても容易ではないと感じています。この点で、もし前述のような不徴収対応を求められた場合、コロナを原因とした退学等者からの再入学希望とそうでない者からの再入学希望をどのように分けるのか、難しい対応となりそうです。