ローカルルールの話はよく分からない。
河野太郎衆議院議員の対応が話題になっています。もともと会計周りの話には明るくありませんが、いろんな人がいろんなことをいろんな観点から言及しているので、どう進むのよく分からない状況ですね。河野太郎議員と言えば無駄撲滅プロジェクトというイメージですので、ルール一つ変えられない事務職員は無駄→事務職員削減→ルールは変わらず事務職員の仕事は教員が担う→教育研究時間が減る、というシナリオもチラつくところです。
分からないなりに何が分からないのか、整理してみました。
1.「ローカルルール」の定義が分からない。
そもそもローカルルールとは何を指すのか、明確な定義が不明です。そのため、どのようなルールが当該「ローカルルール」として分類されるべきなのか、それにどのように対応すれば良いのか、全くわかりません。ちょっと考えてみると「各機関に共通する当該公的資金のルール(適化法、科研費の使用ルールなど)以外に、各機関の裁定において定められる公的研究費の会計に関するルール」といった具合でしょうか。
コモンルールに対するローカルルールという像を明確にしなければ、全てのルールを撤廃しましょうという話になりがちです(それはそれで別に良いのですが・・・)。ローカルルールはコモンルールを細分化したものなのか、コモンルールとは全く別のものなのか、と言ったルール間の相関もルールの改正・廃止には重要な視点でしょうね。
2.どの公的資金に係るルールなのか分からない。
公的資金と言っても様々です。いわゆる公費と言われるものなのか、科研費なのか、寄附金なのか、それぞれの公的資金によりコモンルールがあり、それに対応する形でローカルルールが設定されている場合もあります。資金の性質が違う以上、一概には言えない部分もあるなと感じています。
3.誰が権限を有しているのか分からない。
財務会計は当該機関のみで完結するものではなく、文科省や財務省、会計検査院、もちろん広く国民にも関係してくるものです。長年の経緯による明文化されていないルールもたくさんあるであろう中で、誰がどの程度ルールを変える権限を有しているのか、大学がどの程度までルールを策定することができるのか、全くわかりません。このあたりは会計に長けた方ならばなんとなくわかるのかもしれませんが。。。
4.「〜〜できない」という範囲がわからない。
河野議員のサイトでは、「〜〜〜ができない」とたくさん出てきますが、それが全く不可能なのか、不可能に近いほどの条件なのか、ちょっと手を動かせばできる程度の難易度なのか、「できない」の程度が良くわかりません。個別事例を直ちに一般化してる可能性もあるため、当該事例の背景と明文化された規則等と見比べて、判断する必要があると考えています。
以下は、本件に係る個人的な見解です。
国立大学法人へ流入する資金の多くは、例え教員の科研費であろうとも、基本的には国等から一時的に預けられているものであるという認識です。これは、国立大学法人会計基準*1や補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律第15条*2からも明らかです。そのため、入手直後の資金は大学のものでも教員個人のものでもなく、資金の執行に当たっては一定程度の留保・判断が生じるというのは十分にあり得ると考えます。公的資金で行なわれている機関委任経理とは、この留保・判断を一定程度機関が行うということでしょう。
逆に言えば、留保・判断のルールを各機関で定められるからこそ、各機関ごとにルールが異なるのでしょう。であれば、これをきっかけとして、教員と職員がワーキンググループを組んで全学的に経費執行の改善を進めていけばいいのではないでしょうか。あるいは、国大協が中心になるか、せめてまずは旧帝大だけでも研究費に係るルールを統一するということも考えられます。(もしくは国が直接何かを決めてくるかもしれませんが・・・)
その中でできることやできないことがわかってくるでしょうし、権限の範囲もわかってくるかもしれません。本件は、ルールの緩和に係る権限の範囲が全く不明確で非常に検討しにくい案件だと感じています。そのうえで、教員と職員が溝を作るのではなく、何かしら前向きに対応できればいいなと、ぼんやり考えています。なお、本件は組織的な対応が必要だと思いますので、教授会等で徒党を組み全学組織に公的に訴えていくというやり方が良いのでしょうね。
PS 大学の経費執行に関する論文を探したのですがうまく見つけられませんでした。各大学の具体的な経費執行ルールの比較検討を行った論文や書籍をご存知の方はご教授願います。