学校教育法の改正は内部質保証の一助となるか。

 学校教育法等の一部を改正する法律案が公表されました。この中には、学校教育法や国立大学法人法私立学校法独立行政法人大学改革支援・学位授与機構法などの一部改正が含まれています。

 今回は、学校教育法の改正について、その内容を確認します。

 大きな改正条文は以下のとおりです。いずれも新設条文です。

  • 第109条⑤ 第二項及び第三項の認証評価においては、それぞれの認証評価の対象たる教育研究等状況(第二項に規定する大学の教育研究等の総合的な状況及び第三項に規定する専門職大学等又は専門職大学院の教育課程、教員組織その他教育研究活動の状況をいう。次項及び第七項において同じ。)が大学評価基準に適合しているか否かの認定を行うものとする。
  • 第109条⑥ 大学は、教育研究等状況について大学評価基準に適合している旨の認証評価機関の認定(事項において「適合認定」という。)を受けるよう、その教育研究水準の向上に努めなければならない。
  • 第109条⑦ 文部科学大臣は、大学が教育研究等状況について適合認定を受けられなかったときは、当該大学に対し、当該大学の教育研究等状況について、報告又は資料の提出を求めるものとする。

 学校教育法には認証評価に関する条文が追記されます。現行法令上、文部科学大臣は認証評価機関に対してのみ制約を発生し得る状況であり、細目省令で定められた基準を認証した後は、基本的には認証評価機関の裁量に任せられていました。

 また、あまり知られていませんが、認証評価機関が大学評価基準に適合しているかどうかを判定することも大学が評価基準に適合するよう努力することも、法科大学院以外は法令上に明記されず、各認証評価機関の定めの中で運営されてきました。

 法科大学院認証評価においては、法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律(いわゆる連携法)第5条において、「適格認定」等が明記されています。

法科大学院の適格認定等)

第五条 文部科学大臣は、法科大学院の教育課程、教員組織その他教育研究活動の状況(以下単に「教育研究活動の状況」という。)についての評価を行う者の認証の基準に係る学校教育法第百十条第三項に規定する細目を定めるときは、その者の定める法科大学院に係る同法第百九条第四項に規定する大学評価基準(以下この条において「法科大学院評価基準」という。)の内容が法曹養成の基本理念(これを踏まえて定められる法科大学院に係る同法第三条に規定する設置基準を含む。)を踏まえたものとなるように意を用いなければならない。

2 学校教育法第百九条第二項に規定する認証評価機関(以下この条において単に「認証評価機関」という。)が行う法科大学院の教育研究活動の状況についての同条第三項の規定による認証評価(第四項において単に「認証評価」という。)においては、当該法科大学院の教育研究活動の状況が法科大学院評価基準に適合しているか否かの認定をしなければならない。

3 大学は、その設置する法科大学院の教育研究活動の状況について法科大学院評価基準に適合している旨の認証評価機関の認定(第五項において「適格認定」という。)を受けるよう、その教育研究水準の向上に努めなければならない。

4 文部科学大臣は、法科大学院の教育研究活動の状況について認証評価を行った認証評価機関から学校教育法第百十条第四項の規定によりその結果の報告を受けたときは、遅滞なく、これを法務大臣に通知するものとする。

5 文部科学大臣は、大学がその設置する法科大学院の教育研究活動の状況について適格認定を受けられなかったときは、当該大学に対し、当該法科大学院の教育研究活動の状況について、報告又は資料の提出を求めるものとする。

 今回の改正では、大学評価基準に適合しているしている認定を与えること、大学は大学評価基準に適合するよう努力すること、認定を得られなかった場合は文部科学大臣から各大学へ直接指示が出せることが明記されました。これに際し、連携法の条文を参考にしたことは明白ですね。

 これらの条文の新設により、認証評価を用いた内部質保証体制が学校教育法上に明記されたという印象です。