教特法等改正案が教員免許状更新講習へ与える影響
先日閣議決定した教育公務員特例法等の一部を改正する法律案が公表されていました。本件については、すでにid:shinnji28さんが触れておられます。
大学が行う課程認定申請に関連する部分においては、私が見た限りでも科目の区分が変わること程度しかわかりませんでした。ただ、教員免許状更新講習に関することで幾つか気づいた点があるので、それを整理します。
1.更新講習を申請する組織が変わる
独立行政法人教職員支援機構法案
(業務の範囲)
第十条 機構は、第三条の目的を達成するため、次の業務を行う。
五 教育職員免許法(昭和二十四年法律第百四十七号)第九条の三第一項の規定による認定及び同法別表第三備考第六号の規定による認定(同法別表第四及び別表第五の第三欄並びに別表第六、別表第六の二、別表第七及び別表第八の第四欄に係るものを含む。)に関する事務を行うこと
ここで言う「教育職員免許法(昭和二十四年法律第百四十七号)第九条の三第一項の規定による認定」 とは教員免許状更新講習の認定のことです。
(免許状更新講習)
第九条の三 免許状更新講習は、大学その他文部科学省令で定める者が、次に掲げる基準に適合することについての文部科学大臣の認定を受けて行う。
教員免許状更新講習を開催する際には、事前に文部科学省へ申請書を提出しています。講師が変更になったなど当初の申請内容から変更になった際には、変更届の提出も必要です。これらの事務手続きは独立行政法人教職員支援機構へ移管されることになりそうです。
ただ、法律案要綱を見ると、独立行政法人教職員支援機構への事務移管は平成30年度からのようです。
第四 附則
一 この法律は、平成二十九年四月一日から施行するものとすること。ただし、外国語に係る小学校教諭の特別免許状の創設に係る改正規定については公布日から、独立行政法人教職員支援機構への事務の移管に係る改正規定については平成三十年四月一日から、免許状の取得に必要な最低単位数に係る科目区分の統合に係る改正規定については平成三十一年四月一日から施行するものとすること。
平成30年度開設の更新講習は平成29年度中に申請することも多いため、平成29年度中は文科省へ、平成30年度になれば独立行政法人教職員支援機構へ申請や変更届を提出することになりそうですね。
2.講習の新たな指針ができる?
教育公務員特例法改正案
(校長及び教員としての資質の向上に関する指標)
第二十二条の三 公立の小学校等の校長及び教員の任命権者は、指針を参酌し、その地域の実情に応じ、当該校長及び教員の職責、経験及び適性に応じて向上を図るべき校長及び教員としての資質に関する指標(以下「指標」という。)を定めるものとする。
任命権者である各都道府県教育委員会又は指定都市教育委員会は、教員としての資質の向上に関する指標を定めることになります。全国各地で開催する講習は、基本的にはその土地に居住している教員の受講が多いと推測できますので、更新講習自体もその土地の指標などを踏まえた内容とすることも、一つの手としてあり得るかなと思います。
3.協議会が更新講習のイニシアチブをとる?
教育公務員特例法改正案
(協議会)
第二十二条の五 公立の小学校等の校長及び教員の任命権者は、指標の策定に関する協議並びに当該指標に基づく当該校長及び教員の資質の向上に関して必要な事項についての協議を行うための協議会(以下「協議会」という。)を組織するものとする。
任命権者である各都道府県教育委員会又は指定都市教育委員会は、大学等と協議会を組織し、教員の資質向上を検討していくことになります。協議会が具体的に何を話し合うのかは現時点で明らかではありませんが、これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上について ~学び合い、高め合う教員育成コミュニティの構築に向けて~ (答申)(中教審第184号)では、
そのためには,教育委員会と大学等の関係者が教員の育成ビジョンを共有しつつ,各種の研修や免許状更新講習,免許法認定講習,大学等が提供する履修証明プログラムや各種コース等といった様々な学びの機会を積み上げることで,成長を動機付ける見通しが示され,受講証明や専修免許状取得が可能となるような体制が構築される必要がある。
このような学びの蓄積に関する取組は,工夫次第で現行制度においても対応が可能であるが,各自治体及び大学の創意工夫によって,こうした取組をより一層進めるとともに,共通のビジョンの下で様々な連携が可能となるよう,その基盤となる全国共通の制度として,「教員育成協議会」(仮称)の創設,教員育成指標の策定及び教員研修計画の全国的整備を実施することが適当である。(P44)
と更新講習も含めるような形で書かれています。もしかしたら新免許状取得者が受講し始める更新講習第2サイクルで発生する受講数増加問題に都道府県として対応出来る道筋ができるか、と思ったのですが、協議会に参加する大学も限られそうですし、ちょっと無理そうですね。(「その他の当該校長及び教員の資質の向上に関係する大学として文部科学省令で定める者」というのが何を指すのかは不明ですが。。。)
受講数増大問題については、文科省の試算により現状の2倍以上の受講者数による都道府県も存在するように聞いています。新潟や岐阜のように教育委員会などを含めたコンソーシアム型で更新講習を開講している県は総定員数のコントロールもやりやすいかもしれませんが、他の都道府県は更新講習のキャパシティをどのように確保していくつもりなのか、非常に注視しています。