認証評価は誰のために行うのか。

「負担の割に活用されない」 大学の認証評価で議論 | 教育新聞 電子版

大学の認証評価を巡って、現状の制度では、用意しなければならない膨大な資料の準備による教員の負担増加、日程などが制約される実地調査の有効性などの問題点が挙げられた。また、労力が多い割に、大学のステークホルダーや社会に対するアピールにつながっていない点も指摘された。

  中央教育審議会で認証評価に関して審議されたようです。当日の議事録はまだ公表されていませんが、大学側のコストが高いと言った話が出たようですね。これは当然で、私自身としては認証評価は行政のために行なっていると考えています。

 弊BLOGでも、認証評価については過去に言及してきました。

 一貫して考えていることは、現在の認証評価(特に大学機関別認証評価)の制度では、受審結果が大学の改善に繋がることは難しいのではないかということです。詳しい話は上記のエントリーに書きましたが、第三者評価として透明性を確保するという建前のもと、評価者と被評価者の関係性を皆無にしてきたため、大学側に認証評価結果を改善に繋げる内発的モチベーションが発生しにくくなっていると考えます。

 どちらかと言えば、透明性の高い評価により説明責任を果たすという行政側の立場に沿った制度であり、制度そのものが大学に利する可能性はそれほど高くないと思っています(本来は異なる組織が判断すべき設置認可時留意事項の対応状況の確認などもその証左でしょう)。一方で、自己評価書の作成を通じ課題を見出し大学が自発的に改善を行なっていることもあり、制度の枠組みに沿った大学の取り組みは決して悪いものではないと感じています。

 第3サイクルを迎え、形式的な事象はある程度各大学ともクリアしてきていると思いますので、やはり大学評価基準のさらなる厳選は必要だろうと考えています。そのうえで、認証評価の役割の優先順位を明確化し、それに合った形で制度を検討する必要があるでしょうね。

 そう言えば、改めて高等教育評価機構の受審の手引きを確認しましたが、訪問調査実施時に大学が宿泊先予約等を行うことは、私の感覚ではちょっと信じられないですね。

項目 内容 条件・備考
宿泊施設の手配 部屋の予約(宿泊者名の施設への連絡を含む) ・人数分(評価員+評価機構の担当者、最多で 8 人)の部屋(原則 2 泊)
・大学までのアクセスを勘案(片道 30 分以内が望ましい)
・1 部屋あたり朝食込みで原則 15000 円以内 /1 泊
宿泊施設での会議室の予約 ・宿泊場所と同じ施設であること
・原則、第 1 日(移動日の翌日)の 18 時~ 20 時
※夕食は評価機構で予約、支払いします。
担当者へ連絡 ・施設名、会議室名、担当者名を評価機構担当者へ連絡
移動手段の手配 評価員の移動手段の手配 ・第 1 日、第 2 日分の手配

(出典:公益財団法人 日本高等教育評価機構 平成29年度大学機関別認証評価 受審のてびきP49)

「みなさん、どうですか?」では誰も発言しない。

 複数の異なる大学・短大・高専の職員が参加したグループワークを観察する機会がありました。プロのファシリテーターではなく各グループのメンバー(つまり一般の職員)がファシリテーター役を務めていたのですが、どうもうまく発言できる空気ではないようなタイミングやグループがあったように感じました。ファシリテーター役の方は「みなさん、どうですか?」と盛んに問いかけていましたが、そんな空気のなかではそりゃあ誰も発言しないですよね。

 グループワークにおけるファシリテーターの問いかけとは、議論の方向性や場の空気を醸成するとても大切な役割があります。名古屋大学高等教育研究センターが公表している大学教育のヒント集「成長するティップス先生」では、「6章 学生を授業に巻き込む」 の中にディスカッションをリードするポイントとして、以下の6つが挙げられています。

  1. 事前の準備
  2. 口火の切り方
  3. 活性化のコツ
  4. 軌道修正のコツ
  5. 締めくくり方
  6. 大人数の授業での場合

 これは授業の際のポイントですのでファシリテーションに直接適用できるわけではありませんが、それでも押さえておきたい点はあります。例えば、ディスカッションの始め方として、

  1. 大きすぎる漠然としたものは不適切です。
  2. 読書課題、実演内容など学生に与えた素材に関連する具体的な問いでなくてはなりません。
  3. ただひとつの簡単な答えのある問いはディスカッション・オープナーとしては不適切です。2〜3の対立する回答を生み出すような問いは、そのあとにさらにディスカッションをつづけるために効果的です。 

が挙げられています。

 冒頭の「みなさん、どうですか?」は、まさに大きすぎる漠然とした問いかけであり、オープンすぎるオープン・クエスチョンであると言えます。また、特定の個人に問いかけているわけではなく特定多数の集団に対して投げかけられた問であるため、自分が答えていいものなのか、ある意味では参加者一人一人の「場に対する責任」がなかなか醸成されにくいことも想像できますね。また、もしかしたらファシリテーターの自信や予習の無さを参加者が感じ取り、協働した場づくりに後ろ向きになってしまう可能性もあります。

 私もグループワークのファシリテーターとして、あるいは、ファシリテーターに助言する立場として、いろいろな場を経験してきました。その際、このような場合には、例えば以下のような問いかけを行ってきたように記憶しています。(誇張してるので、コントロールしすぎですが…)

「AさんはAA大学で○○課に勤務されていますが、この点について、AA大学ではどのように処理をされていますか?」

「BさんもBB高専で同様の係に所属してらっしゃいますが、BB高専ではどのように処理をされていますか?先ほどのAさんの発言を聞かれて、どのような点がBB高専と違うと感じられましたか?」

「過去にこの業務に携わっていた方がいらしたら、どのように処理をしていただのか伺いたいのですが、いかがでしょうか。あるいは、大学と短大では処理が異なるようにも感じられるのですが、Cさんは勤務されているCC短大でどのような処理が行われているか、ご存じでしたらご発言いただければありがたいです。」

「ここまでのお話を伺っていると、大きくDDDのようなやり方とEEEのようなやり方に分けられるように感じられます。このような整理でよろしいでしょうか。では、それぞれにどのようなメリットやデメリットがあるか、すこし考えてみましょう。」

「Fさんは全く異なる業務を担当されていると思いますが、これまでの話を聞いてどのような印象を受けましたか?また、DDDとEEEでは、学生にとってどちらかが好ましいと考えますか?」

 事前に渡されたグループメンバーのリストに勤務先や所属があれば、それを踏まえメンバーが担当している業務を類推し、問いかけの参考にしています。また、そうでなくともおおよそ冒頭に自己紹介がありますので、それを記憶し活用しています。場の目的にもよりますが、上記の会話でもわかるように、まずは各者の具体的な体験や思い・考えを引き出し、それをグループ内で対比させることで違いを明確にし、なぜ違いが生じるのか、それぞれのメリット・デメリットは何かを各者に考えてもらうようにします。こうすることで、今まで自分になかった認識を得てもらい、それを自分の中で消化してもらうための第一歩することが多いですね。

 今回私が見学したグループワークは、1グループの人数が多く席も離れ気味であること、時間が短いことなど、なかなか議論を活性化するには難しい環境であったと思います。だからこそ、外からファシリテーターが四苦八苦している様子を見るに、自分ならどのように議論を進めるだろうかと考えていました。

教員とのコミュニケーションの最大奥義は書籍を読むことである。

 教職協働など特別な言葉でなくとも、職員として仕事をしていくうえで教員との連携は欠かすことできません。常日頃から、対面や電話、メールなどでコミュニケーションを取っているのですが、そんな中でも最も効果があると感じているのは、当該教員が執筆した書籍を読むことです。

 各大学の図書館には自大学の教員が執筆した書籍も収められていることと思います。その中から、日頃から関係する教員が執筆した書籍を読んでおき、ふとした機会にそのことや書籍の内容について話すと、垣根が一気に低くなり信頼を得やすくなると経験則として感じています。

 この場合の書籍とは、新書や専門書などなんでもいいのですが、比較的一般向けに書かれたものの方が良いという印象があります。論文は研究者コミュニティに向け書かれたものである一方、特に一般向けに書かれた書籍の場合は職員もその対象に含まれるため、対象者に読んでもらえたということに対し喜びを感じているのかな、と想像しています。(シラバス掲載図書があるなら、それも比較的読みやすい書籍の一つでしょうね。)

 私自身、評価書や業績書を作成する際に、その裏付けとして掲載されている論文や書籍を読み始めたことが、このことに気づくきっかけでした。もちろん、コミュニケーションのために書籍を読むわけではなくその内容や教員の研究内容に興味があるからなのですが、副次的な効果も薄々と感じているということです。また、医歯薬理工系の専門書ではなかなか難しいところがありますが、人文社会科学系や芸術系(私たちの業務範囲を踏まえると特に教育系)は専門書でも比較的理解しやすいものも多いと思います。

 自大学のリソースに興味を持つ意味でも、図書館に行き、試しに一冊読んでみても良いかもしれません。

行政文書の管理に関するガイドラインが変更される見込みです。

配布資料 第57回公文書管理委員会 - 内閣府

 内閣府公文書管理委員会の資料が公表されています。それによれば、おそらく加計学園問題の影響により、行政文書の管理に関するガイドライン(以下、「ガイドライン」という。)の変更が検討されているようです。国立大学が作成する行政文書も同ガイドラインに沿って管理されていますので、おそらく国立大学の業務にも影響を与えることになるでしょう。そのため、現在検討されている内容を確認してみます。

行政文書の管理において採るべき方策について

(1)作成する文書の範囲について

各行政機関においては、適正な行政文書の作成に当たり、以下の方策を講じる。

ア 公文書管理法第4条の趣旨を徹底する観点から、行政機関内部の打合せや行政機関外部の者との折衝等を含む、同条に掲げる事項及びガイドライン別表第1に掲げる事項に関する業務に係る政策立案や事務及び事業の実施の方針等に影響を及ぼす打合せ等(以下「打合せ等」という。)の記録については、文書を作成することとする。

 各種打ち合わせに係る記録を作成するように記載があります。おそらく、現在よりも記録を作成すべき範囲が広がるのでしょう。ただし、どの範囲で記録を作成するのかは、必ずしも明確になっていないように感じます。

(2)行政文書の正確性確保について

国民への説明責任を全うするため、意思決定過程や事務及び事業の実績を正確に表した行政文書を作成する必要があり、そうした趣旨により作成する行政文書について、以下の方策を講じる。

ア 行政文書の作成に当たっては、正確性確保の観点から、その内容について原則として複数の担当職員による確認を経た上で、文書管理者が確認する。作成に関し、部局長等上位の職員から指示等があった場合は、その指示を行った者の確認も経ることとする。

イ 各行政機関の外部の者との打合せ等の記録については、行政文書を作成する行政機関の出席者による確認を経ることとし、可能な限り、相手方の発言部分等についても、相手方による確認等により、正確性確保を期するものとする。作成する行政機関において、相手方発言部分等について記録を確定し難い場合は、その旨を判別できるように記載する。

 現在のガイドラインには複数の者による記録の確認という扱いは明記されていませんが、記録の確認についても明記されるようです。また、外部の者との打ち合わせの記録についても可能な限り当該者の確認を経るようにとなっています。場合によっては、記録の作成遅延などなかなか業務上難しいところもあるかもしれません。

(2)電子文書の保存について

電子文書については、紙文書同様、適正に管理される必要があるが、その際、更新が容易である、複数の者によるアクセスがしやすいといった特性に留意する必要があり、以下の方策を講じる。

ア 行政文書に該当する電子文書(電子メールを含む。)についても、文書管理者による確認の上、共用の保存場所(共有フォルダ等)に保存する。

イ 紙文書同様、ガイドラインに沿って整理を行う。行政文書ファイル上の分類に従った階層構造にする等、共有フォルダの構成を行政文書として管理しやすい構造とする。また、必要に応じてアクセス制限を設定する。

ウ 共有フォルダ内において、組織的な検討や内容確認等を経て随時その内容が更新される行政文書については、「検討中」という名称のサブフォルダを作成する等、他の行政文書と区別して管理するとともに、常に検討等の進捗を的確に反映し、整理する。

エ 個人的な執務の参考資料等については、当該職員のみがアクセス可能な個人フォルダに置くことを徹底する。

オ 行政文書に該当する電子メールについては、保存責任者を明確にする観点から、原則として作成者又は第一取得者が速やかに共有フォルダ等に移す。

(保存方法の具体例)

① 長期保存の観点から、電子メールをPDF/A形式に変換した上で共有フォルダへ保存

② 紙文書として印刷した上で、紙媒体の行政文書ファイルへ編てつ

③ 利用頻度が高いもの(編集して再送等)については、電子メール形式を維持したまま共有フォルダへ保存

 現在のガイドラインには、電子メールに関する取り扱いについてほぼ言及されていません。しかし、今後はかなり具体的な形で取り扱いが明記される可能性があります。共有フォルダの構造など、業務手順にも影響を与えるかもしれません。

 テクノロジーが進歩し事務業務が変化している中、行政文書の作成保存についても、それに合わせて対応すべきということでしょう(そのきっかけとなった事案については、皆さんもご存知のとおりです)。これをきっかけに、学内統一的な共有フォルダの運用方法の提案など、業務改善も進められるかもしれませんね。

気がつけば300記事を超えていました。

 気がつけば、弊BLOGの掲載記事が300を超えていました。いつもご覧いただき、ありがとうございます。

 今から4年前(!)にこのBLOGを始めたきっかけを振り返ると、文部科学省から学徒出陣の調査があった際、直接の担当者ではなかったもののあまりに理不尽で意味不明な調査に思うところがあり、記事を書き始めました。以降、全くの個人の思いの発露として、文教政策や各種記事などについて、書き続けてきたところです。更新ペースは以前よりも減退しましたが、なるべく感じたこと考えたことを書き続けていきたいと思っています。(最近更新ペースが良好なのは書き溜めたものを少しづつ公表しているためです)

 最近は、このBLOGについて、以下の3点を考えています。

1.役に立つものづくり

 これを見ていただいているみなさんの業務の手助け、あるいは、趣味のお手伝いとして、何か役に立つものを作成し、公表できないかと思っています。この間作成した教職課程の再課程認定に係る様式や質問集簡易データベースもその一環です。今妄想しているのは、以下のものです。なお、技術的な問題もあり、作成するとは言っていません(考えるだけでも勉強になるということで・・・)。

  • 自分の現在地から最も近い大学を表示するアプリ
  • 文科省新着情報等を表示するChrome Extension
  • 教員免許状更新講習の情報を表示するウェブサイト
  • 国立大学法人のウェブサイトを横串で一斉検索する仕組みの構築
  • javascriptRaspberry Piを用いた業務改善

2.実名化

 実名化をした方が色々と都合が良いところもあり、一時期は真剣に検討していました。ただ、実名化の先輩であるid:shinnji28さんにも相談し、今のところは見送ろうと考えています。中の人をご存知の方もいるとは思いますが、そのへんは曖昧な感じということで、一つお願いします。

3.自分用の公開データベース

 長くブログをやっている方はわかってもらえると思うのですが、ウェブ検索すると自分のBLOGがヒットすることがあるんですよね。結構わずらわしかったりもするのですが、逆に考えると、自分がどう考えているのか(考えていたのか)というログが残り簡単に振り返られる状態にあるということでもあります。自分用の公開データベースでもあるかなと思っています。

 今後ともよろしくお願い申し上げます。

<参考>

kakichirashi.hatenadiary.jp

教員免許状更新講習は受講希望者を受け入れられるのか。

 教員免許状更新講習は、現職教員にとって、法律にて受講が義務付けられているものです。

教育職員免許法

(効力)
第九条 普通免許状は、その授与の日の翌日から起算して十年を経過する日の属する年度の末日まで、すべての都道府県(中学校及び高等学校の教員の宗教の教科についての免許状にあつては、国立学校又は公立学校の場合を除く。次項及び第三項において同じ。)において効力を有する。

(有効期間の更新及び延長)
第九条の二 免許管理者は、普通免許状又は特別免許状の有効期間を、その満了の際、その免許状を有する者の申請により更新することができる。
2 前項の申請は、申請書に免許管理者が定める書類を添えて、これを免許管理者に提出してしなければならない。
3 第一項の規定による更新は、その申請をした者が当該普通免許状又は特別免許状の有効期間の満了する日までの文部科学省令で定める二年以上の期間内において免許状更新講習の課程を修了した者である場合又は知識技能その他の事項を勘案して免許状更新講習を受ける必要がないものとして文部科学省令で定めるところにより免許管理者が認めた者である場合に限り、行うものとする。

(免許状更新講習)
第九条の三 免許状更新講習は、大学その他文部科学省令で定める者が、次に掲げる基準に適合することについての文部科学大臣の認定を受けて行う。
(略)
2 前項に規定する免許状更新講習(以下単に「免許状更新講習」という。)の時間は、三十時間以上とする。

 制度開始から10年が経とうとしており、いわゆる新免許状取得者が更新講習を受講し始めるとともに2回の更新講習を受講する者もあり、さらに第10グループと言われる通常よりも受講見込み者数が多い集団が受講期間を迎えるなど、様々な要因を踏まえ、平成30年度以降全国的に受講者の増加が予見されているところです。文部科学省も、通知等により全国の講習開設機関に積極的な開設を呼びかけています。ただ、増加した受講希望者を教員免許状更新講習は受け入れることができるのでしょうか。 

 まずは、全国的な講習開催状況を整理します。文部科学省のホームページにて平成29年度免許状更新講習の認定一覧(平成29年9月現在)が公表されておりますので、対面講習について、必修領域講習、選択必修領域講習、選択領域講習に分け、講習開設数上位10位の開設機関を整理しました。なお、認定一覧は認定時の情報であり、定員等は実際とは異なる可能性があります。

必修領域講習

順位 講習開設機関 講習数 総定員
1 星槎大学 95 5,136
2 公益財団法人全日本私立幼稚園幼児教育研究機構 25 3,440
3 東京学芸大学 20 2,200
4 岐阜大学 19 2,230
5 熊本大学 16 960
5 北海道教育大学 16 2,910
7 長崎大学 13 1,470
8 和歌山大学 12 1,400
9 琉球大学 11 1,000
10 三重大学 10 845
10 新潟大学 10 950

 選択必修領域講習

順位 講習開設機関 講習数 総定員
1 星槎大学 95 5,136
2 北海道教育大学 68 3,507
3 琉球大学 37 1,245
4 東京学芸大学 31 3,190
5 鹿児島大学 30 1,930
6 熊本大学 28 1,225
6 秋田大学 28 1,160
8 兵庫教育大学 27 982
9 岡山大学 25 1,566
9 公益財団法人全日本私立幼稚園幼児教育研究機構 25 3,440
9 大阪教育大学 25 2,700

 選択領域講習

順位 講習開設機関 講習数 総定員
1 北海道教育大学 267 9,120
2 東京学芸大学 130 6,242
3 東京未来大学 120 5,760
4 岐阜県教育委員会 111 2,270
5 鹿児島大学 109 5,204
5 和歌山大学 109 4,347
7 秋田大学 105 2,540
8 岐阜大学 102 2,997
9 三重大学 101 2,402
10 琉球大学 99 2,252

 全体として、星槎大学東京学芸大学、公益財団法人全日本私立幼稚園幼児教育研究機構などが講習を多く開設していることがわかります。特に、星槎大学北海道教育大学は、全国各地や道内各地で講習を開設しており、他機関に比べても多く講習を開設しています。なお、これらの総定員ですが、実際には定員以上の受け入れを行っていることもあると聞いています。

 講習にはそれ相応の労力がかかるため無闇に多く開設すれば良いと言うものではありませんが、受講義務者だけではなく受講可能者(保育士、教員勤務経験者など)の受講もあり講習ニーズが読みにくいため、基本的には講習を多く開設すると言うことが無難なのだろうと思います。

 さて、先日文部科学省から各講習開設機関に依頼のあった開設予定調査では、第10グループの対象教員数推計が記載されていました。これまでで最も多い人数であるこの集団を用い、都道府県別の更新講習のキャパシティを算出しました。平成29年9月認定時点の開設都道府県別講習総定員を第10グループの対象教員数推計で除し、google chart geomapを用いて都道府県別にプロットしたものを以下に記します。100以上であれば、現時点の総定員にて第10グループの対象教員数を受け入れられる、つまり、将来的に増加する受講希望者を受け入れられる可能性が現時点であると言うことです。なお、選択領域講習については、講習を18時間受講しなければならないため、一人が3講習受講すると仮定し、対象教員数推計を3倍した数値を用いてキャパシティを算出しています。

必修領域講習

 

選択必修領域講習

 

選択領域講習

 

 3つの講習区分全てにおいてキャパシティが100%を超えている都道府県は、岐阜県京都府岡山県、鹿児島県のみです。京都府は高等教育機関が多いためと推測されますし、岐阜県は県内でコンソーシアムを結成しニーズに合わせ開講数を調整しているようです。岡山県、鹿児島県とも、地元の高等教育機関が積極的に講習を開講しており、特に鹿児島県教育委員会は独自に必修領域講習などを開講していることが見て取れます。

 前述した通り、定員を超えて受講生を受け入れている例もあるでしょうから、これらの数値が絶対という訳ではないでしょう。ただし、文部科学省の対象教員数は学校教員(認定こども園を含む)のみの推計値であり、保育士や教員勤務経験者、非常勤リスト掲載者などを含んでいません。つまり、実際の受講希望者数は推計よりも多くなる可能性が十分にあります。そのため、基本的には、一人でも多い総定員の設定を目指すべきだと考えます。

 とはいえ、状況は芳しくありません。キャパシティが50%前後の都道府県がある中、増加するであろう講習受講希望者をどれほど受け入れられるのか、非常に不安を感じています。その手段としては、2つほど思いつくところです。

 1つは、通信教育・インターネット配信を用いた講習の受講です。これらの手段により講習を開講している機関もあり、全国的に受講者を受け入れています。ただ、文部科学省は受講者確認を厳格に行うように通知を出しており、通信教育・インターネット配信であっても、修了認定試験は決められた日に決められた試験会場へ出向き試験を受けることになります。つまり、通信教育・インターネット配信は無尽蔵に受講者を受け入れられるのではなく、ここにも実質的には定員の上限が発生していることが多いと思います。(桜美林大学ではwebカメラを用いた試験を行うなど、一部例外があります。また、大学セミナーハウスでは、試験をセミナーハウスにある端末で行うことで、その日のうちに修了証明書を受領することができます。)

 もう1つは、文部科学省が全国各地で更新講習を開講することです。需要と供給のミスマッチは行政の不作為が一因でもあると思えるため、責任の一端として自ら講習開講を検討いただきたいと思っています。ただ、教育職員免許法では文部科学省は講習開設機関となり得ないため、独立行政法人教職員支援機構(旧教員研修センター)が開講することが現実的な線でしょうか(改正された教育職員免許法では、教員免許状更新講習の認定は教職員支援機構に委託されているため、同機構が講習を開講できるかどうか、私はまだ理解できていません)。

 もし、現職教員が定員超過により講習を受講できず失職した場合、訴訟を起こされる可能性はあるのでしょうか。その場合、被告は国なのか、文部科学省なのか、都道府県教育委員会なのか、講習開設機関なのか、どうなるのでしょうか。一人一人の職業人生がかかった制度であるにも関わらず、その安定性や将来性は非常に不安定だと感じています。このような状況にあって講習開設機関にできることは、多様な講習を開講し、1人でも多くの受講希望者を受け入れ、適切に講習を運営することでしょうね。

SHIROBAKOから見る仕事の作法

www.amazon.co.jp

SHIROBAKO - Wikipedia

SHIROBAKO』(シロバコ)は、P.A.WORKS制作、水島努監督による、2014年制作の日本のオリジナルテレビアニメーション作品。2011年制作の『花咲くいろは』に続く「働く女の子シリーズ」第2弾。制作進行・アニメーター・声優・3DCGクリエイター・脚本家志望としてそれぞれアニメーション業界に入って夢を追う5人の若い女性を中心に、作品の完成を目指して奮闘するアニメーション業界の日常を描く群像劇である。

 SHIROBAKOというアニメーションがあります。アニメーション制作会社などにて働くキャラクターたちが一本のアニメーションを作成するために奮闘するストーリーであり、Amazon Prime ビデオをザッピングしている時に見つけ鑑賞しました。私はこのようなお仕事系の漫画やドラマ、アニメが結構好きなのですが、本作も色々と考えながら見ることができました。

(以下、ネタバレあり)

 特に印象に残っているのは、最終話近くの流れです。原作で描かれていない最終話をアニメで作成するにあたり監督は原作者と調整を行おうとしますが、編集者を間に挟んでいるためか、なかなかうまくいきません。最終的には、監督は直接原作者とアポをとり、これまでうまく伝わっていなかったところを解消するとともに、原作者とともに最終話のストーリーを生み出します。

 ここから、仕事の作法として、報告・連絡・相談の大切さと、キーパーソンと対面して話すことの重要性を感じ取りました。そのほかにも、制作進行の遅延や職場の人間関係、若年者と老年者の関係など、どの業界にもあるよなという困難が頻発し、その都度キャラクターたちは対応に追われることになります。そこでも、報告・連絡・相談や謝罪、依頼など様々な手を用い、目標に向かっていく様子が描かれます。

 本作では、様々な方が様々な論考を発表しています。本作の視聴とともに、ご覧ください。

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