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認証評価結果に思う 〜優れた点と改善を要する点〜

大学一般

大学評価・学位授与機構 | 評価報告(H25)

公益財団法人 大学基準協会 - 評価事業/大学評価/公表方法・評価結果

大学機関別認証評価結果平成25年度

「全校が基準満たす」と判定/話題/デイリースポーツ online

 大学評価・学位授与機構は26日、2013年度の認証評価結果を公表した。対象となった21大学と国立高専14校について、全校が評価基準を満たしていると判定した。

ヘッドライン | 暮らし・話題 | 神戸夙川学院大を不適合 認証評価、他に11校も - 47NEWS(よんななニュース)

 日本高等教育評価機構は27日、2013年度に実施した大学の認証評価結果を公表し、神戸夙川学院大を「基準に不適合」と判定した。リーマン・ショックの影響で多額の運用資金を失い「財政が危機的状況にある」と評価した。

 平成25年度大学機関別及び専門分野別認証評価結果が各認証評価機関HPで公表されていました。メディアでも掲載されていましたね。

学校教育法

第百九条  大学は、その教育研究水準の向上に資するため、文部科学大臣の定めるところにより、当該大学の教育及び研究、組織及び運営並びに施設及び設備(次項において「教育研究等」という。)の状況について自ら点検及び評価を行い、その結果を公表するものとする。

2  大学は、前項の措置に加え、当該大学の教育研究等の総合的な状況について、政令で定める期間ごとに、文部科学大臣の認証を受けた者(以下「認証評価機関」という。)による評価(以下「認証評価」という。)を受けるものとする。ただし、認証評価機関が存在しない場合その他特別の事由がある場合であつて、文部科学大臣の定める措置を講じているときは、この限りでない。

3  専門職大学院を置く大学にあつては、前項に規定するもののほか、当該専門職大学院の設置の目的に照らし、当該専門職大学院の教育課程、教員組織その他教育研究活動の状況について、政令で定める期間ごとに、認証評価を受けるものとする。ただし、当該専門職大学院の課程に係る分野について認証評価を行う認証評価機関が存在しない場合その他特別の事由がある場合であつて、文部科学大臣の定める措置を講じているときは、この限りでない。

4  前二項の認証評価は、大学からの求めにより、大学評価基準(前二項の認証評価を行うために認証評価機関が定める基準をいう。次条において同じ。)に従つて行うものとする。

学校教育法施行令

(認証評価の期間)

第四十条  法第百九条第二項 (法第百二十三条 において準用する場合を含む。)の政令で定める期間は七年以内、法第百九条第三項 の政令で定める期間は五年以内とする。

 認証評価は全大学に義務づけられている第三者評価であり、機関別は7年以内に一度、専門職大学院を対象とした専門分野別は5年以内に一度受審しなければなりません。2004年に導入され、現在は各大学2回目の、所謂第2サイクルの認証評価が実施されています。数年前から、その年度の認証評価結果について、各認証評価機関合同で記者会見を開催しており、今回も記者会見後公表されたのでしょう。

 評価書を読むと認証評価機関によってだいぶ違うなという印象ですが、なにぶん数と分量が多いですので、国立大学の評価書に限って個人的に気になった点を挙げていきます。今回公表された国立大学の評価書は全て(独)大学評価・学位授与機構のものですので、当該機構HPに公表された評価書の冒頭にある「主な優れた点」「主な改善を要する点」を見ていきましょう。

【主な優れた点】 

「教員の多面的評価システム(Appraisal System for Teachers’ Activities, 略称ASTA)」を平成 18 年度から実施し、継続的にその評価項目等を見直している。評価結果については、各教員にフィードバックし教育活動の改善に向けた取組を促しているほか、処遇(俸給及び勤勉手当)に反映させている。(室蘭工業大学

 「平成17年度に試行した「教員の多面的評価システム(ASTA2005)」 に関する報告書」によれば、授業評価や実績評価を含め多角的に教員個人を評価する仕組みのようです。また、この制度を発展させた新たな教員業績評価制度(ESTA)の検討も行っているようですね。制度の詳細が知りたいところです。

寒冷地としての特性に配慮して、24 時間利用可能な自主学習環境を整備している。 (北見工業大学

 「寒冷地としての特性」という部分は評価書から読み取れませんでした。訪問調査の際に、評価員が何か気づいたのかもしれません。

ウェブサイトに、「研究者総覧」とは別に、「教育者総覧」(弘前大学版ティーチング・ポートフォリオ)を設け、授業評価アンケート等による学生からの意見に対して、各教員が改善策を含めたその対応を自ら記述するなど、教員に関する意識の向上に資するだけではなく、その改善を社会に公表している。 (弘前大学

弘前大学 教育者総覧

 所属教員の研究内容、業績等を一覧にすることは各大学で行われていると思いますが、教育面からそれを行うというのはあまり聞いたことがありません。文部科学省の特別経費事業「ティーチング・ポートフォリオを活用したFD活動の展開」にて導入されたようですね。webシラバスともリンクしているようですので、学生も確認することができます。ただ、やはり各教員により記述密度に差があることや、要求に対する具体的な改善内容が書かれていないことは気になります。また、パッと見て、いまいち誰に向けたものなのかわからないという印象を持ちました。

職員のキャリアアップの取組として、平成 16〜24 年度に延べ 16 人の技術系職員が大学院修士課程を修了し、修士(理工学)又は修士(保健学)の学位を取得している。(弘前大学

 自大学のリソースを活用した職員の能力開発については、以前幣BLOGでの言及しました。それを実践している良い例だと感じました。また、評価書を読むと、協定校であるテネシー大学マーチン校(米国)に職員を派遣し約2か月間の語学研修を実施しているようです。ただ、平成14年度から延べ7人という少しさみしい人数になっていますので、近年の実態がどの程度なのか気になるところです。

毎年、部局の組織評価を実施し、3区分によるランク付けを行い、区分によってインセンティブ経費を傾斜配分している。(山形大学

 評価書を読むと、経営協議会での審議の後評価結果を確定し、予算の6割を評価結果に基づき配分しているようですね。配分予算がだいぶ大きいように感じますが、実態としてどの程度傾斜をつけているのでしょうか。「国立大学法人山形大学の平成22年度に係る業務の実績に関する評価結果」によれば、インセンティブ経費は総額 4,000万円となっています。「予算の6割」というのは、「学長裁量経費などインセンティブ経費のうち6割」というという意味なのでしょうか。(それならば、インセンティブ経費にも関わらず4割を各部局へ基礎配分している意味がよくわかりませんね。)

FD研修・講習会等が多くの参加者を得て開催され、また、多くの学部において、相互授業参観と授業評価等、教員相互のピア・レビューを実施している。(信州大学

 評価書を読んでも詳細がわかりませんでしたが、教員相互の授業評価は良い取り組みだと思います。どのように行われているのか、詳細が知りたいですね。

原則的に水曜日の午後に講義、実習を配置せず、課外活動時間を確保している。(岐阜大学

 これはどのような意図で書かれたのか、ちょっとわかりません。水曜日といえば、どの大学も教授会があるという印象ですので、そのために水曜日午後を開けているのではないでしょうか。水曜日に教授会が開催されることについては、下記のレファレンス事例詳細でも「その理由は不明」とされています。

なぜ大学の教授会は、水曜日に開催されるのか。 | レファレンス協同データベース

職員の自己啓発と意欲喚起等を目的とする職員資格取得表彰制度を創設している。(大阪教育大学

 評価書を見ると、「「事務系職員が自身の業務能力向上や人間性の成長を目指す目的で、自己啓発として大学が指定する資格を取得した場合に、大学として表彰し、職員の自己啓発の意欲喚起と幅広い知識をもって業務サービスの質の向上を図る」(職員資格取得表彰制度実施要項)ことを目的」とし、平成24年度から創設されたようです。実績が知りたいですね。

教員相互の授業参観は、全学部で行われており多くの教員が参加している。また、当該授業へのコメントを交換することにより授業改善効果を高めている。(和歌山大学

 ここでも授業参観が取り上げられています。全学部ということで、信州大学よりも大規模に行われているように感じます。

評価委員にステークホルダーである現役学生及び卒業生を含め、大学の総合的な状況について外部評価を実施している。(和歌山大学

評価・監査に関する情報:和歌山大学

 「学生を加えた外部評価」とは、なかなか聞かない取り組みだと思います。外部評価報告書を見るとかなりしっかり取り組んでいるようですし、外部評価を受けてどのような取り組みが行われたのかということも公表してほしいですね。

国際交流業務に対応するため、英語能力に応じた語学研修を実施している。(北陸先端科学技術大学院大学

 評価書を見ると、「留学生やデュアルディグリープログラム等の国際交流業務に対応するため、英語能力に応じた語学研修を平成24 年度以降、大学が費用を負担して組織的に実施している。具体的には、採用後1年以内にTOEICテスト600 点以上の取得を目標とし、目標点に達していない30 歳以下の事務職員には、指定の語学学校での6か月以内のグループレッスン受講を、31 歳以下の事務職員にはTOEICテストの受験を義務づけている(平成24 年度TOEICテスト受験者7人)。」とあり、全若手事務職員に義務付けているようですね。同大の目標として「海外教育研究機関との連携を通して学生や教員の交流を積極的に行うとともに、教育や研究の国際化を推進し、グローバルに活躍する人材の育成を行う。」が掲げられているようですし、大学の目標にあった取り組みが行われているという印象を受けました。

【主な改善を要する点】

平成25 年度実施の大学機関別認証評価に向けた自己評価書において、根拠資料のほとんどが別添資料とされ、自己評価書本文中に記載されておらず、大学の教育研究活動の状況を社会に判りやすく示すものとして適切とは言い難い。(京都大学) 

大学評価・学位授与機構 | 自己評価書(認証)

 あまり見ない指摘事項です。自己評価書を確認すると、確認できた表は3つ程度と、他大学とはかなり異なるつくりになっています。自己評価書中に表を表示しなければならないという決まりはありませんが、確かに状況公表という点では課題があるのかもしれません。高等教育評価機構が実施する認証評価では、「エビデンス集」として細かいデータ集を各大学に提出させています(ただし、エビデンス集は非公表扱いです。)。このような形で、認証評価機関として別添資料やデータ集も公表するような形にならないでしょうか。

FD活動を強化する必要がある。

各専攻の情報が各基盤機関のウェブサイトに分散しており、大学全体として体系的に集約されているとは言い難い。(総合研究大学院大学) 

 総合研究大学院大学は、各大学共同利用機関法人等と協定を結び、研究者や学生の派遣を行っています。そのため、非常にバーチャル的な組織であり、組織的な取り組みが難しい部分があります。今回の指摘に背後にあるのは、そのような事情であると推測できます。

 総じて、主な優れた点は教員評価や文科省等採択事業が、主な改善を要する点は定員過充足・未充足が指摘されていました。各大学により取り上げられた事項にバラツキがあるのは、おそらく訪問調査を行った評価員の受け取り方も一因にあると思います。認証評価機関側で最終的に並びをとっているとは思いますが、なかなか解消できるものではないのでしょうね。認証評価機関のHPか各大学の評価書に訪問調査を行った評価員氏名を公表してもよいのではないかと思っています。

 このような結果や公表方法が「大学の教育研究活動等の状況を明らかにし、それを社会に示すことにより、公共的な機関として大学が設置・運営されていることについて、広く国民の理解と支持が得られるよう支援・促進していく」という大学機関別認証評価の目的に沿うものなのかは、わかりません。また、指摘事項についても、日本の制度設計時において、アメリカのWestern Association of Schools & Colleges Accrediting Commission for senior Colleges & Universities(WASC)のようなメンバーシップ型を採用しなかったことにより、改善への導きが十分に行われていないことは容易に考えがつきます。認証評価機関側も、協働し記者会見を開くなど新しい動きをしていますが、なかなかうまくいっていないのが現状だろうと思います。

 「他大学の良い取り組みを公表し共有しよう」というのは、国の施策に限らず学内でも行われています。ただ、情報を整理し公表しただけでは何も起こりません。情報へのアクセシビリティを高めるだけでは意味がなく、実際の取り組みまでの道筋を整理しなんらかアクションを起こす必要があります。それがいったいどのようなアクションなのか、継続して考えていきたいです。