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認証評価基準細目省令の改正に思う 〜多面的入試は認証評価基準になるのか〜

文科省:大学入試内容、評価項目に追加へ - 毎日新聞

 文部科学省は、大学の教育内容などを第三者機関が評価する「認証評価制度」の項目に、新たに入試内容を加える方針を決めた。中央教育審議会(中教審)が議論している大学入試改革の内容が「知識偏重型から多面的評価への転換」を求めているためで、入試を評価対象にすることで各大学の改革を加速させるのが狙い。年度内に省令改正する。

 認証評価基準のベースとなっている細目省令の改正に関する記事が出ていました。今、中央教育審議会で審議されている高大接続いわゆる大学入試とも関連する内容のようです。恐らく、11月14日に行われた中央教育審議会大学分科会大学教育部会(第31回)での審議を受けての記事なのでしょう。私は同部会を傍聴しておらずどのような内容の審議が行われたのか現時点ではわかりませんが、本当に認証評価基準に多面的入試に関する項目が加わるのでしょうか。順を追って確認したいと思います。

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 図1に、文部科学省と認証評価機関との関係を示します。文部科学大臣は認証評価機関候補機関に対し、大まかな基準の内容を示します。認証評価機関候補機関はこれを基に自機関が行う認証評価の大学評価基準を作成し、その他情報とともに、文部科学大臣へ認証評価機関の申請を行います。その申請を基に、文部科学大臣中央教育審議会に諮問し、中央教育審議会の答申を以て大臣が機関へ認証を与えることになります(大学評価基準以外にも機関の財政状況等も加味し、認証が行われます。)。冒頭記事では、文部科学大臣が示す大まかな基準いわゆる細目省令を変更するようですね。

 さて、冒頭記事中には、

 現行の評価基準は、教育課程や財務状況、施設設備が中心だったが、新たに学生の受け入れ方針(アドミッションポリシー)や入試方法を評価対象とする。

 とありますが、認証評価受審を経験された方はこれを見ておかしいと感じるはずです。現行の大学機関別認証評価機関である3機関の大学評価基準には、すでにAPや入試方法等に関する基準が含まれています。

(独)大学評価・学位授与機構

基準4 学生の受入

4−1 入学者受入方針(アドミッション・ポリシー))が明確に定められ、それに沿って、適切な学生の受入が実施されていること。

  • 4−1−①:入学者受入方針(アドミッション・ポリシー)が明確に定められているか。
  • 4−1−②:入学者受入方針に沿って、適切な学生の受入方法が採用されているか。
  • 4−1−③:入学者選抜が適切な実施体制により、公正に実施されているか。
  • 4−1−④:入学者受入方針に沿った学生の受入が実際に行われているかどうかを検証するための取組が行われており、その結果を入学者選抜の改善に役立てているか。

(公財)大学基準協会

[学生の受け入れ]

5 大学は、その理念・目的を実現するために、学生の受け入れ方針を明示し、その方針に沿って公正な受け入れを行わなければならない。

 大学は、入学者の選抜にあたり、その受け入れ方針を基礎とし、高等学校教育と大学教育との関連、社会人、帰国生徒および外国人留学生の受け入れ、飛び級、編入学、転科・転部など、国際的規模での社会的要請に配慮し、適切な選抜制度を採用し、また運用するよう努める必要がある。

(公財)高等教育評価機構

2−1.学生の受入れ

  • 2−1−①:入学者受入れの方針の明確化と周知
  • 2−1−②:入学者受入れの方針に沿った学生受入れ方法の工夫
  • 2−1−③:入学者定員に沿った適切な学生受入数の維持

 全ての大学機関別認証評価機関の大学評価基準において、受け入れ方針(アドミッションポリシー)や入試方法が既に評価対象となっており、それに併せ既に各大学は認証評価を受審しています。より細かい観点が加わるということでしょうか。

 また、大学入試改革との関連性はどのように規定されているのでしょうか。細目省令改正(案)に

(5)入学者選抜に関する評価

 大学評価基準に定めなければならない事項として、入学者選抜に関することを規定することとすること。

が明記されたのは、大学教育部会(第30回)(平成26年10月31日開催)からであり、大学教育部会(第29回)(平成26年10月7日開催)以前に資料として示されていた「認証評価制度の見直しに伴う細目省令等の改正の方向性(案)」には入学者選抜に関することは現れていません。つまり、10月7日から10月31日までにおいて、細目省令(案)に入学者選抜に関することが盛り込まれる何らかの要因が発生したということです。

 中央教育審議会高大接続特別部会(第21回)(平成26年10月24日開催)の資料2-1 「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について(案)」 には、以下の記述があります。

②各大学における個別選抜改革と教育の質的転換を実現するための、実効的な政策手段

 具体的には、以下のような事項についてルール作りを検討し、平成26年度中に可能なものから見直しの方向性を取りまとめ、大学入学者選抜実施要項に段階的に反映させること。

  • 各大学のアドミッション・ポリシーに求められる観点
  • アドミッション・ポリシーに基づいた個別選抜の具体的な方法や、選抜時の評価に活用する資料の種類等
  • 個別選抜の実施時期
  • 「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の積極的な活用方法と、応募条件として求める成績の具体的な提示方法
  • 高等学校生活への影響にも十分配慮した、「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の活用方法
  • 学力の三要素を十分踏まえた、個別選抜における学力評価の在り方
  • 特定分野において卓越した能力を有する者の選抜や、年齢、性別、国籍、文化、障害の有無、地域の違い、家庭環境等にかかわらず多様な背景を持った学生の受け入れの方法
  • 入学者の追跡調査等による、選抜方法の妥当性・信頼性の検証方法

(略)

 併せて、国は、各大学の取組み状況が社会的に共有され、さらなる改革が促されるよう、認証評価における新たなルールの遵守状況の評価、大学ポートレートなどを通じた情報公開など、大学評価や情報公開の在り方についても検討し、具体策を取りまとめること。(P22)

 大学教育部会の議事録が公表されていない以上はわからないところもありますが、この部分が細目省令(案)に影響を与えたと推測できます。つまり、ここで示されている「新たなルール」に沿い、各認証評価機関の大学評価基準もしくはその下に配置された観点等が変更になる可能性があります。

 もちろん、国としては大まかな基準を示すのみであり、実際の評価基準は各認証評価機関にて決定されます。しかし、許認可事情を考えると、改正する予定の大学評価基準を持って文部科学省へ事前相談を行っていないとは考えにくく、ある程度国の意向を反映したものになると想像できます。

 本来、大学機関別認証評価は各大学の改革状況を評価するものではなく、各大学の質を保証し向上を促すものです。特に最近では、内部質保証と言われる、大学自身が改善へ向けた体制を整備しそれが機能しているかということが問われています。そのため、認証評価基準に入試改革の実施状況を盛り込み各大学に対し一律に取組を促す方法は、認証評価の在り方から考えるとあまり適切ではないと考えます。(日本の大学評価制度が当初想定された制度設計から離れ複数の機能を有し、かつそれらがうまく機能していないことは複数の識者が指摘しているところです。)

 ただ、現状で各認証評価機関の大学評価基準に入試に関する事項が求められている以上、各基準の下にある観点等に「多面的評価による入試を実施しているか」などが追記されるようなところに落ち着くのかなとも思っています。何にせよ、現在大学機関別認証評価第2サイクルのただ中でもありますし、年度内に細目省令が改正されたとして、各認証評価機関の大学評価基準が第2サイクル中に改正されるのか注目しています。