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高度専門職の検討に思う 〜いったい何が良くなるのか〜

大学一般

 現在、中央教育審議会大学分科会大学教育部会では、職員の資質向上等に関する取組として、高度専門職について議論されています。ここで言う高度専門職とは、

IRや入学者選抜,教務,学生支援,人事や財務,広報等各分野に精通した「高度専門職」(中央教育審議会大学分科会「大学のガバナンス改革の推進について」(審議まとめ))

のことだろうと推測できます。また、大学教育部会第31回配布資料1−1には、

【定義】大学が行う「管理運営」、「教学支援」、「学生支援」等に関する業務について、大学運営上の専門的知見を有する者として国が定める一定の基準を満たす者であって、大学が認める者。

とも書かれています。

 このように記事を書き始めましたが、私はこの件についてあまり興味がありません。なぜ興味がないのかと自問すれば、どうにも腑に落ちないところがあるからだと考えています。どの点が腑に落ちないのか、整理しておきます。

①「高度」という言葉の意味が分からない。

 「高度専門職」というからには、なんらかのものが「高度」なのでしょう。しかし、いったい何が高度なのでしょうか?専門的知識なのか、能力なのか、経験なのか、専門性の範囲なのか。もしかしたら人格なのかもしれません。「高度」さの正体のなさが非常に気持ち悪く感じます。「高度」の対義語は「低度」ですが、皆さんの日頃の業務内容、対応状況やその結果、成果は高度なのでしょうか。高度専門職は何を以って「高度」と言えるのでしょうか、何故それが「高度」さを担保していると言えるのでしょうか。現状の公表資料だけでは、なんともわかりません。

②実際に高度専門職が活躍する姿がイメージできない。

 当たり前ですが中央教育審議会は制度設計側の機関ですので、現状でも制度設計の話が主であり、それが導入された際に大学がどのように変わるのか、今の議論の中からはイメージできません。もっと言うと、それが何故現状でできないのかという点が十分に審議されないまま、制度導入のみが先行している感もあります。補助事業などにも言えることですが、制度を設計しただけではうまく活動できないことは言うまでもありません。高度専門職がどのように活動することで大学をどのように活性化することができるのか、導入する大学側にもっとメリットを打ち出していないことにはなかなか受け入れてもらえないかもしれませんね。

③技術職員について全く触れられていない。

 大学教育部会第31回配布資料1−1では、技術職員の明記があるもののその存在に全く触れられていません。本来、技術職員こそが大学内における専門職そのものであり、彼らの行動や意識、メンタリティを振り返ることで、事務職員の専門職化に大きく影響を与えるはずです。現状で全ての技術職員が高度な専門的知見を有しているとは限りませんが、大学によっては技術職員の修士・博士学位の取得を促す取組も行われています。技術職員は「専門職の先輩」にあたるわけですから、事務職員の高度専門職の導入の際には、その効果や課題について十分に理解が必要かなと思っています。

 職員の専門性については、弊BLOGでもたびたび言及してきました。

 やはり、本件で最も気になるのは、「なぜ今まで「高度専門職」のような人材が生まれなかったのか?あるいは、現状でそれに近い存在の者がいるならば、なぜそのような存在になりえたのか?」という点です。単に制度の問題ではなく、高度な専門性を身につけ成果を出している職員はどのような属性を持っているのでしょうか。

 私としては「働き方(及び働かされ方)」が重要ではないかと考えています。「働き方」については、弊BLOG(Learning Agilityに思う 〜意思を実現するための姿勢〜教員の教育研究時間の確保に思う 〜教職恊働と能力開発〜)でも言及してきましたが、業務に立脚した能力や専門性は業務に関連して身につけることが最も有効だと推測できます。また、モチベーションマネジメントの観点からは、有能感と自己決定感を高めれば内的モチベーションが向上することが指摘されています。このような観点を基にした働き方の一例としては、プロジェクト型業務の導入などが想定できますね(プロジェクト型業務に思う ~トータル・アドミニストレーションという考え方~)。なんにせよ、職員や「高度専門職」が自主的自律的に働くことができる環境こそが、大学の活性化につながると思っています。

 ここまで書いてきましたが、本件については興味がないというよりも、単に個人的に気に入らないだけかもしれないとも感じています。もし、「高度専門職」が設置されれば業界内のプレイヤーの属性が増えることは間違いありませんし、それはそれで歓迎できることでしょう。

 ここで終わればただの文句になりますので、次回は職員にとっての「高度」さを企業等における能力評価を引用しながら考えてみます。