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IR・データ分析に思う 〜まず何をすれば良いのか〜

【調査研究】IRを活用してどのように教学改革を進めるか~汎用的能力への取り組みを例に│研究室トピックス│高等教育研究室トップ│研究所について│ベネッセ教育総合研究所

 ここで重要なのは、大学のIR(Institutional Research)機能の確立である。同事業の自己評価項目にもあるが、IRを設置し、専任の担当を置いて教学改革のみならず様々な経営課題に関する情報収集と改善のPDCAを進めることが求められている。しかし、IR等を設置していても、教学改革に活かすことは難しい、といったことをよく耳にする。

 ベネッセ教育総合研究所にIRに関する記事が出ていました。記事中にもあるとおり、私立大学等改革総合支援事業の申請に当たっては、各大学の教学支援等の状況申告が前提となっています。本件については、弊BLOG記事でも言及したところです。

私立大学等改革総合支援事業に思う 〜改革状況のルーブリックになりうるか〜 - 大学職員の書き散らかしBLOG

 日本の大学におけるIRについては、様々な論文等で言及されています。岩崎(高知大学)は、日本労働生産性本部の報告書(2012)を基に、約2割の大学にIR組織が設置されていること、他の設置者に比べ国立大学はIRの取り組みがやや積極的であること、総じて一部の大学がIRについて積極的に取り組んでいる印象を受けることを指摘しています。

研究紀要|関西大学 教育開発支援センター

 また、小林(東京大学)は、評価・IRシンポジウム(2014)にて、「日本のIRはまだ端緒についた段階」であると指摘しています。

2013年9月3日お知らせ - 評価・IRシンポジウム「大学に求められるIR機能の実現に向けて」を開催しました (8月22日) | 神戸大学

 そもそもIRのとらえ方が多用であり、アンケートの質問者回答者が同一のものを指向しているかなど、現実をどの程度に捕捉できているかは注意が必要だろうと感じています。ただ、これら論文等のとおり、日本の大学でのIRの取組は普及しているとは言い難い状況であることは間違いないでしょう。

 一方、ベネッセ教育総合研究所が2009年に行った「質保証を中心とした大学教育改革の現状と課題に関する調査」では、75%以上の大学がIRの必要性を感じていることが示されました。また、IR推進のための施策として、教員の意識改革や職員の専門能力育成が重要であると認識されています。

求められる教職協働と学長・学部長の統率力 ・特集:大学の新しい競争力 - Between 2010.春号

 IRについての講演等を拝聴することも多いのですが、先行事例として紹介されている大学は情報集約サーバーの設置やBI(BusinessIntelligence)ソフトの導入などが多く、そのまま取り入れようとしてもなかなか困難な場合が多いと感じています。また、例え学内で経費要求したとしても、学内の資金配分担当者にとっても「なんだかよく分からず効果もハッキリとしない。」となり、予算が付かないというケースも発生すると考えます(実際にこのような例を聞いたことがあります。)。

 IRの実施方法等論文や書籍で確認すると、調査設計段階から始まっていることも多いのですね。確かにデータ分析を見据えた調査設計は大切です。しかし、IRを見据え新規に調査を行うということはちょっと難しいなとも思っています。そのようなこともあり、IRにおける既存データの活用と言う点は、データベースの接続以外にはなかなか光が当たっていないのではないかと感じています。

 私自身は、IR部署のみが情報を確保し分析をするのではなく、構成員全体が情報分析を行いその結果を考慮した意思決定が行われることが良いと思っています。いわばEvidence Based Workingですね。これは、以前弊BLOGでも紹介したIMRADの考え方にも通じるものでしょう。そのためにも、学内への情報公開、データ公開を進めていく必要があると感じています。

IMRADに思う 〜思考のフレームワークとしての有効性〜 - 大学職員の書き散らかしBLOG

  さて、国立大学の事務職員は、旧国家公務員ということもあり、文系職員が多いと感じています。また、旧国家3種などの高卒人材も一定程度存在しています。そんな中、いきなりIRだ統計だと言ってもなかなか広まりにくいところがあります。では、私たち職員は、情報分析結果を考慮した業務に向けて、どのようなことから始められるのでしょうか。私が考える最初の2ステップを紹介します。

1.既存のデータをEXCELのテーブルにする。

 まずは、紙やpdfなどの既存のデータを、Microsoft OFFICEEXCELに集計します。その際、テーブル機能を使用した方が、後々データ操作がやりやすくなるでしょう。例えば、私はいつも下図のような項目立てをしてテーブルを作成しています。

テーブルとは【エクセル・Excel2007】

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 このテーブルは次ステップのグラフ作成に使用します。テーブル自体を印刷をするわけではありませんので、セル結合やセル内改行など、見栄え良くする必要はありません。むしろ、全角半角などの表記の揺れやセル内改行などがあると、同一要素だと認識されずに適切なグラフ化ができませんので、極力シンプルに同一表記で作成することを心がける必要があります。(余談ですが、この「表の印刷最適化」ということが、データの2次利用を妨げている一因だと考えています。)

 テーブルをどのように作るか(どのような項目を立てるか)は、後のグラフ化のことも考えながら慣れていくことになるのかなと思っています。(ここを突き詰めれば、データベースの正規化表現という領域になります。)私が気をつけているのは、「重複カウントや内数を極力なくす。」ということです。例えば、テーブル内の同一年度に全学生数と外国人学生数が入力されていると、グラフ化した際に当該年度の学生数が「全学生数+外国人学生数」で計算され、実際の学生数より過大の数が表示される可能性があります。この場合は、日本人学生数と外国人学生数に分けて、データ入力を行います。

2.テーブルをピボットグラフにする。

1.でテーブルにしたデータをピボットグラフにします。

エクセル2013(Excel2013)基本講座:ピボットテーブルからピボットグラフを作成する

 ピボットグラフは、わざわざ新規にグラフウィザード等を立ち上げることなく、グラフの種類や要素を動的に変化させることができます。そのため、ピボットグラフを用いると、様々な側面からの状況を少ない操作で確認することができ、その傾向を容易に把握することができます。自分1人で使用する場合はもちろんですが、他者と情報を共有する際も、操作可能なピボットグラフの形で共有することにより、新しい視点を提供することができるかもしれませんし、逆に相手方の分析により新しい視点を得られるかもしれません。

 以上、2ステップを紹介しました。データ分析とは、それを進めていくと回帰分析や有意差検定、モデル化などに行き着きます。ただ、大学運営に資するデータ分析において、それがどの程度必要なのかはそれぞれの個別具体の場合に依ります。しかし、何にせよ現状把握と傾向分析から始まることは間違いないでしょう。そのためにも、まずは、情報を可視化することを楽しむということが大切だと感じています。

 グラフをどのように見るかということは次回に。