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IMRADに思う 〜思考のフレームワークとしての有効性〜

カレッジマネジメント【184】 Jan.-Feb.2014 : カレッジマネジメント : リクルート進学総研

 リクルート『カレッジマネジメント』は、全国の大学、短大、専門学校など、高等教育機関の経営層向けにリクルートが発行している高等教育の専門誌です。リクルートが行う調査データ、国内外の先進事例、人材市場、専門家の解説などにより、「大学経営のサポート誌」としてタイムリーなテーマを発信しています。

 カレッジマネジメントはリクルート社が発刊する高等教育機関向け専門誌です。隔月の発行であり、発刊後はHPにも掲載されます。ただ、HPにはすべての内容が掲載されるわけではありません。THE CHRONICLE of Higher Educationの記事を翻訳している「アメリカ高等教育事情」もその一つです。最近号である第184号には、デレック・ボク前ハーバード大学学長の記事を翻訳した内容が掲載されています。

元記事:We Must Prepare Ph.D. Students for the Complicated Art of Teaching - Commentary - The Chronicle of Higher Education

 当該記事では、大学教育の質を高めるために、近い将来その任を担うであろうPh.D課程の大学院生に対し、最新の認知心理学等を意識した教授手法の訓練を行うことが必要であると説いています。この記事を見て、東大で行われているFutureFacultyProgramや京大で行われているプレFDが思い浮かびました。

大学教員をめざす | 東大FD | 東京大学

京都大学のプレFD

 記事中にあるように「院生の教職教育不足が大学改革のスピードを弱めている」とまで言えるかどうかはわかりませんが、言いたいことは理解できるなと思っています。

 もとの英文記事中、特に気になったのは、一番最後の部分です。

If the United States is ever to regain a significant economic advantage from the education of its people, it will have to come through the quality of instruction that our undergraduates receive and not just from the quantity of college degrees being offered. Such instruction will surely be slow to arrive without a faculty trained to bring to its teaching the same ample store of background knowledge, the same respect for relevant data, and the same questioning, innovative spirit that professors have long displayed in carrying out their research.

(同箇所のカレッジマネジメント和訳記事)

 国際社会の中で、アメリカが、教育の力によって再び経済的な優位を手に入れようと考えるならば、大学卒業生の数ばかりを増やせば良いのではなく、大学で行われる教育実践の質が高まらなければならない。そしてそのためには、大学教員たちが、教える仕事に、研究に対するときと同じ革新的な精神を持ち込むことがぜひ必要なのだ。それなしには、大学教育の変革の歩みは遅々としたペースでしか進み得ない。

 カレッジマネジメント記事中の「研究に対するときと同じ革新的な精神」とは、元記事中のteaching the same ample store of background knowledge, the same respect for relevant data, and the same questioningのことでしょう。この「研究活動における考え方」というのは、思考のフレームワークとしてとても大切だと考えています。

IMRAD - Wikipedia

 特に理系の学術論文で多く使用されている文章構成の型として、IMRADと呼ばれる型があります。Introduction,Method,Result And Discussionの頭文字を取った名称であり、実証分析を論じる際に適したフレームワークです。Introductionでは先行研究などを整理するとともに当該研究の目的・意義や課題を明確にし、Methodでその課題や課題解決の方法を実証する実験方法を提示、ResultでMethodで論じた実験結果を記すとともに、DiscussionでResultの内容を分析しIntroductionで論じた目的・意義や課題等に合致したものだった、更なる課題は何かを明らかにします。(大抵、Discussionの後にConclusionがあり、そこで当該研究を結論づけていることも多いです。)この考え方はあらゆる場面で使えるのではないでしょうか。

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 職員の業務を基に考えてみたのが、上記の図です。

 何かしら課題が生じた、あるいは課題に感じていることがあったとして、まずは前例がどうなのか・他大学がどのように対応しているのか、データによる現状把握を進めるとともに、なぜ課題を解決するのか・課題を解決したどのようになるのかなど、課題解決の目的・意義を考え、対応すべき課題を明らかにします。ここまで、前述したIntroductionと似ていますね。

 その後、どのように課題を解決するのか、他大学の例なども参考にしながら考え、課題解決の方法を決定します。ここまでが、Methodです。

 実際に解決方法を実施し、その結果がどうであったのかをアセスメントします。ここまで、Resultです。

 その後、解決手法の成果が課題解決に貢献したのか、どのような状態になったのかを考え、次の課題・アクションを検討します。ここまで、Discussionです。

 基本的に、私はこのフレームワークに当てはめて業務を行おうと意識していますが、このフレームワークを意識し始めてから、教員への提案事項がスムーズに受け入れられるようになったと実感しています。結果として、業務に対する志向方法を教員の研究活動におけるそれに寄せることで、理解してもらいやすくなったのでしょうか。

 もともと、教員は論理的思考のプロフェッショナルであり、(理想的には)材料を与えれば様々な考えを生み出してくれるはずです。だからこそ、基データや分析結果を担当部署が独占するのではなく、広く学内にデータを公表したIRの形が大切だと考えます。研究活動だけではなく、各教員が関与している教育活動や大学運営活動にも同じフレームワークが適用できるよう、整備(データ提供や作成会議資料の構成など)を進めていくことが、職員としてできることではないでしょうか。

 もちろん、これだけでうまくいくはずもなく、言い訳の材料を与えることになるかもしれません。ただ、それは思考のフレームワークの次元ではなく、ミッションや自由意思といった別次元の問題です。その辺りも併せて考えていかないといけませんね。

 フレームワークという言い方ではなければ、「仕事の型」という言い方もできます。仕事の型を徹底することで、より効率的な業務ができるでしょうし、事例集積が進めばある程度「直感的に」業務を見ることができ、個人の意思決定の迅速化にも繋がります。実際、IMRADに入る前に、課題が何でどの辺りがネックになっているのかという、直感・疑念を持つSuspicionがあると考えます。所謂、「勘所」と言われる部分ですね。この勘所を身につけるためにも、まずは、仕事の型である思考のフレームワークを自分自身に定着させる必要がある、と思っています。