経済財政運営と改革の基本方針2020(骨太の方針2020)の大学関連個所について
令和2年7月17日、「経済財政運営と改革の基本方針2020~危機の克服、そして新しい未来へ~」(骨太方針2020)が経済財政諮問会議での答申を経て、閣議決定されました。
骨太の方針2020が閣議決定されました。すでに報道されている各論もありますが、今後の政策にも大きく影響を与えるため、大学に関連する箇所を抜粋して示します。
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2020/2020_basicpolicies_ja.pdf
第1章 新型コロナウイルス感染症の下での危機克服と新しい未来に向けて
4.「新たな日常」の実現
(ⅲ)「人」・イノベーションへの投資の強化
「新たな日常」の実現に向けた社会変革の推進力となる人材が従来に増して必要となっていることから、教育の充実により、課題設定・解決力や創造力を発揮できる人材育成を推進する。また、科学技術・イノベーションを加速し、生産性向上を通じた経済成長を実現する。
5.感染症拡大を踏まえた当面の経済財政運営と経済・財政一体改革
(2)感染症拡大を踏まえた経済・財政一体改革の推進
感染症拡大により東京一極集中のリスクが認識され首都圏において地方移住への関心が高まっているこの機を捉え、スマートシティの社会実装、地方大学のSTEAM人材育成や二地域居住・就業の促進など地方への新たな人の流れの創出により、多核連携型の国づくりを行う。
教育の質の向上に向けて、予測不可能な未来を主体的に切り拓くことができるよう、アクティブ・ラーニングや学びのデジタル化、外部人材の活用等を通じ、個別最適化された深い学びを実現し、課題設定・解決力や創造力のある人材を育成する。このため、教育研究の定量的成果等に応じた財政支援のメリハリ付けの強化を進める。また、科学技術・イノベーション政策では、創薬研究、デジタル化・リモート化やAI・ロボットなどの社会課題解決に資する分野を中核に据えて取り組む。その際、予算の質の向上を図りながら、官民連携による戦略的な研究開発投資を促進し、「世界で最もイノベーションに適した国」の実現につなげる。
第2章 国民の生命・生活・雇用・事業を守り抜く
(2)雇用の維持と生活の下支え
新卒者については、感染症の影響を踏まえ、多様な通信手段を活用した説明会・面接等の実施、柔軟な日程設定や秋採用・通年採用等による一層の募集機会の提供に加え、第二の就職氷河期世代を生まないとの観点から、中長期的視点に立った採用を進めるよう経済界等に対し積極的に働きかける。あわせて、自衛隊員の新規採用を積極的に行うほか、都道府県警察や消防本部の行う採用募集活動を積極的に支援する。
低所得のひとり親世帯や、子供たちの学びの保障、家計急変など経済的に困窮する高校生・大学生等に対する支援を着実に実施するとともに、不安を抱える妊産婦に寄り添った支援を行う。
第3章 「新たな日常」の実現
1.「新たな日常」構築の原動力となるデジタル化への集中投資・実装とその環境整備(デジタルニューディール)
(3)新しい働き方・暮らし方
③ 教育・医療等のオンライン化
高校・大学の遠隔教育について、単位上限ルール等の見直しを検討する。また、義務教育段階の遠隔教育やデジタル教科書・教材の整備・活用を促進するとともに、デジタル教科書が使用できる授業時数の基準の緩和を検討する。
2.「新たな日常」が実現される地方創生
(1)東京一極集中型から多核連携型の国づくりへ
① スマートシティの社会実装の加速
人口が集積し、大学も立地している政令指定都市及び中核市等を中心にスマートシティを強力に推進し、企業の進出、若年層が就労・居住しやすい環境を整備する。
② 二地域居住、兼業・副業、地方大学活性化等による地方への新たな人の流れの創出
また、地方回帰に資するテレワークの推進、地方移住にもつながるサテライトオフィスの設置、デジタル産業等の起業、地方での兼業・副業支援を強化する。地域おこし協力隊等を強化し、若者、民間・専門人材の地方移転、産学金官の地域密着・経済循環型事業を促進する。大企業等から中小企業への経営人材等の移動の促進に取り組む。
魅力ある学びの場と地域産業を地方に創り、若者の地方定着を推進するため、理工系の女性を含むSTEAM人材の育成等に必要な、地方国立大学を含めた定員増や地域雇用向けの地元枠の設定、若手・実務家教員の別枠定員での登用、大学間のオンライン教育での連携等、魅力的な地方大学の実現等のための改革パッケージを年内に策定する。首都圏の大学の地方サテライトキャンパスの設置を促進する。
3.「人」・イノベーションへの投資の強化 ― 「新たな日常」を支える生産性向上
感染症による学校の臨時休業により、公教育のオンライン対応の遅れが顕著になり、学びを止めないことが課題となった。学びにおけるデジタル化・リモート化を推進し、優れた取組の横展開とPDCAの実行により、教育の質の向上と学習環境の格差防止に取り組み、子供たちの学びを保障する。ICT化は子供たちに世界の扉を開き、可能性を広げ、教師が教え子に向き合いやすくする。経済社会の変化とその形成に積極的に対応できる資質・能力を育成する観点から、一つの正解を導き出す画一的・横並び的な教育を脱し、その自由度を高め、学習者第一の視点に立って、課題設定・解決力や創造力のある人材育成を強化する。
(1)課題設定・解決力や創造力のある人材の育成
② 大学改革等
STEAM人材の育成に向けて、教育・研究環境のデジタル化・リモート化、研究施設の整備、国内外の大学や企業とも連携した遠隔・オンライン教育を推進するとともに、データサイエンス教育や統計学に関する専門教員の早期育成体制等を整備する。医工連携をはじめとする分野融合人材の育成、高等専門学校の高度化・国際化、専門職大学、専門学校、大学院等における企業等と連携・協働した社会のニーズに応える実践的な職業教育や博士課程教育をはじめとする高度人材教育の構築等を推進する。
優秀な人材を日本に惹きつける国際的な頭脳循環、トビタテ!留学JAPAN、大学間交流協定による単位互換や共同研究、教育プログラムの国際連携などを拡大する。
国立大学法人改革について、戦略的な大学経営を可能とする新たな法的枠組みを検討し、年内に結論を得る。国と新たな自律的契約関係を結ぶ国立大学法人は、グローバルな評価・処遇制度の下、人事の独立性を確保し、学生定員を自律的に管理、デジタル化を活かした質の高い教育を実践、リモート留学生・教員も含めたグローバルキャンパスを実現する。あわせて、戦略的経営を促す財務・会計の在り方等について具体的な検討を行う。国立大学法人運営費交付金の客観・共通指標による成果に基づく配分対象割合・再配分率を順次拡大しつつ、第4期中期目標期間の新たな配分ルールを検討する。
大学の連携・統合の推進、地域に貢献する公立大学への地方財政措置を含めた支援の実施、私学助成のメリハリある配分の強化を図る。
感染症による影響を含め、高等教育無償化等の実施状況の検証を行い、中間所得層における大学等へのアクセス状況等を見極めつつ、その機会均等について検討する。
③ リカレント教育
遠隔・オンライン学習、働く個人向けの教育訓練給付や事業主向けの人材開発支援助成金の活用、大学等によるプログラムの拡充も進めながら、例えば40歳を視野にキャリアの棚卸しを行うことにも資するよう、いくつになっても再チャレンジできるリカレント教育を全国的に推進する。産業界との連携・接続を強化した幅広い分野の実践的プログラムやデジタル・デバイドを防止する生涯を通じたe-ラーニングを強化する。機械やAIでは代替できない価値創造人材を育成するため、最新のIT・テクノロジーや教育手法を駆使した教育プログラムの開発を支援する。STEAM・デジタル人材の育成に向けた人材投資を促進するインセンティブ措置を強化した制度の検討を進める。
(2)科学技術・イノベーションの加速
「世界で最もイノベーションに適した国」に向けて、人文科学の知見も活用して未来を変革し、世界を先導していく。
次期「科学技術・イノベーション基本計画」において、これまでの取組の進捗・評価を踏まえ、デジタル化等の社会課題解決に資する分野を中核に据えて、人材育成を含めた優先順位付けやインセンティブ措置の強化を行うとともに、リーマンショック後の投資停滞を繰り返さないよう、新たな社会課題に応えるイノベーションの促進に資する指標を設定し、官民で連携し、研究開発投資の拡大に取り組む。関係司令塔の一層の機能強化・相互連携を図り、以下の取組を推進する。
世界トップレベルの研究力を実現するため、博士課程の処遇の向上、大学における安定的ポストの確保、産業界のキャリアパスの拡大等により、博士課程学生を含む若手研究者支援を強化する。研究の人材・資金・環境の改革と大学改革を一体的に展開し、基礎研究をはじめとする研究力の更なる強化を目指す。世界に比肩するレベルの研究開発を行う大学等の共用施設やデータ連携基盤の整備、若手人材育成等を推進するため、大学改革の加速、既存の取組との整理、民間との連携等についての検討を踏まえ、世界に伍する規模のファンドを大学等の間で連携して創設し、その運用益を活用するなどにより、世界レベルの研究基盤を構築するための仕組みを実現する。女性研究者の支援や研究者の移動の促進も重点化し、多様性を活かして人的資本を高め、国際協力を強化する。ムーンショット型研究開発及び創発的研究の支援により、破壊的イノベーションにつながる成果を創出する。知的財産利活用等の知財戦略を推進するとともに、官民が連携し、先端技術・システム等の機動的・戦略的な国際標準化に取り組む体制を強化する。また、官民連携による戦略的な研究開発投資について、企業による外部研究資源の活用や目利き人材によるマッチングなどの取組の支援、官民連携主体の外部化の検討、スタートアップ企業への投資促進支援、大企業とスタートアップ企業の契約適正化やスピンオフを含む事業再編を促進するための環境整備などを通じて、オープン・イノベーションを推進するとともに、イノベーション・エコシステムの維持・強化に向けた取組を推進する。
最先端の基盤的技術であるデジタル化・リモート化、AI・ロボット、量子技術、再生医療、バイオ、マテリアル革新力、革新的環境エネルギー、アルテミス計画等の宇宙探査、準天頂衛星等各省連携による衛星開発や基幹ロケット開発等の宇宙分野、北極を含む海洋分野の研究開発を戦略的に進める。効果的な治療法・治療薬やワクチンの研究開発等の感染症対策、防災・減災等の国及び国民の安全・安心に資する重要な技術分野への予算や人材等に重点化を図るとともに、シンクタンク機能を含む新たな体制の検討を進め、SDGs等の社会課題に対応した戦略的で質の高い研究開発を官民挙げて推進する。
研究開発への更なる民間資金の活用、世界の学術フロンティア等を先導する国際的なものを含む大型研究施設の戦略的推進、最大限の産学官共用を図るとともに、民間投資の誘発効果が高い大型研究施設について官民共同の仕組みで推進し、予算を効果的に執行する。また、科学研究費助成事業などの競争的研究費の一体的見直し、研究設備・機器等の計画的な共用の推進、研究のデジタル化・リモート化・スマート化の推進に向けた基盤の構築等を図る。
国立大学においては、
- 地方国立大学を含めた定員増や地域雇用向けの地元枠の設定、若手・実務家教員の別枠定員での登用、大学間のオンライン教育での連携等、魅力的な地方大学の実現等のための改革パッケージ
- 戦略的な大学経営を可能とする新たな法的枠組みを検討
- グローバルな評価・処遇制度の下、人事の独立性を確保し、学生定員を自律的に管理、デジタル化を活かした質の高い教育を実践、リモート留学生・教員も含めたグローバルキャンパスを実現
- 戦略的経営を促す財務・会計の在り方等について具体的な検討
- 国立大学法人運営費交付金の客観・共通指標による成果に基づく配分対象割合・再配分率を順次拡大しつつ、第4期中期目標期間の新たな配分ルールを検討
などと勇ましい言葉が並びます。定員増については、増加分の予算措置がなされるのかどうかが気になるところです。