「新しい経済政策パッケージ」における大学関連箇所

経済対策等 : 経済財政政策 - 内閣府

 平成29年12月8日に閣議決定された「新しい経済政策パッケージ」が公表されました。同パッケージから、特に大学に関連する箇所を抽出しました。なお、本記事では省略していますが、文章の補注にも重要な情報が記載されていますので、興味のある方はご一読ください。

第2章 人づくり革命

3.高等教育の無償化

(これまでの取組と基本的考え方)

 高等教育は、国民の知の基盤であり、イノベーションを創出し、国の競争力を高める原動力でもある。大学改革、アクセスの機会均等、教育研究の質の向上を一体的に推進し、高等教育の充実を進める必要がある。

 高等教育の負担軽減については、これまでも、授業料減免の拡大とともに、奨学金制度については、有利子から無利子への流れを加速し、必要とする全ての学生が無利子奨学金を受けられるよう充実を図ってきているほか、返還猶予制度の拡充による返還困難時の救済策の充実などに取り組んできた。また、今年度からは、意欲と能力があるにもかかわらず、経済的理由によって進学を断念することがないよう、給付型奨学金制度を新たに創設したほか、卒業後の所得に連動して返還月額が決定されることによって、所得が低い状況でも無理なく返還することを可能とする新たな所得連動返還型奨学金制度を導入した。また、無利子奨学金についても低所得者世帯の子供に係る成績基準を実質的に撤廃するとともに、残存適格者を解消することとした。

 最終学歴によって平均賃金に差があることは厳然たる事実である。また、貧しい家庭の子供たちほど大学への進学率が低い、これもまた事実である。貧困の連鎖を断ち切り、格差の固定化を防ぐため、どんなに貧しい家庭に育っても、意欲さえあれば専修学校、大学に進学できる社会へと改革する。所得が低い家庭の子供たち、真に必要な子供たちに限って高等教育の無償化を実現する。このため、授業料の減免措置の拡充と併せ、給付型奨学金の支給額を大幅に増やす。

(具体的内容)

 低所得者層の進学を支援し、所得の増加を図り、格差の固定化を解消することが少子化対策になるとの観点から、また、真に支援が必要な子供たちに対して十分な支援が行き届くよう、支援措置の対象は、低所得世帯に限定する。

 第一に、授業料の減免措置については、大学、短期大学、高等専門学校及び専門学校(以下「大学等」という。)に交付することとし、学生が大学等に対して授業料の支払いを行う必要がないようにする。住民税非課税世帯の子供たちに対しては、国立大学の場合はその授業料を免除する。また、私立大学の場合は、国立大学の授業料に加え、私立大学の平均授業料の水準を勘案した一定額を加算した額までの対応を図る。1年生に対しては、入学金についても、免除する。

 第二に、給付型奨学金については、学生個人に対して支払うこととする。これについては、支援を受けた学生が学業に専念できるようにするため、学生生活を送るのに必要な生活費を賄えるような措置を講じる。在学中に学生の家計が急変した場合も含め対応する。

 また、全体として支援の崖・谷間が生じないよう、住民税非課税世帯に準ずる世帯の子供たちについても、住民税非課税世帯の子供たちに対する支援措置に準じた支援を段階的に行い、給付額の段差をなだらかにする。

(支援対象者の要件)

 支援対象者については、高校在学時の成績だけで判断せず、本人の学習意欲を確認する。他方、大学等への進学後については、その学習状況について一定の要件を課し、これに満たない場合には支援を打ち切ることとする。具体的には、大学等に進学後、単位数の取得状況、GPA(平均成績)の状況、学生に対する処分等の状況に応じて、支給を打ち切ることとし、これを内容とする給付要件を定める。

(支援措置の対象となる大学等の要件)

 こうした支援措置の目的は、大学等での勉学が就職や起業等の職業に結びつくことにより格差の固定化を防ぎ、支援を受けた子供たちが大学等でしっかりと学んだ上で、社会で自立し、活躍できるようになることである。このため、支援措置の対象となる大学等は、その特色や強みを活かしながら、急速に変わりゆく社会で活躍できる人材を育成するため、社会のニーズ、産業界のニーズも踏まえ、学問追究と実践的教育のバランスが取れている大学等とする。具体的には、①実務経験のある教員による科目の配置及び②外部人材の理事への任命が一定割合を超えていること、③成績評価基準を定めるなど厳格な成績管理を実施・公表していること、④法令に則り財務・経営情報を開示していることを、支援措置の対象となる大学等が満たすべき要件とし、関係者の参加の下での検討の場での審議を経て、上記を踏まえたガイドラインを策定する。

(実施時期)

 こうした高等教育の無償化については、2020 年4月から実施する。なお、上記で具体的に定まっていない詳細部分については、検討を継続し、来年夏までに一定の結論を得る。

(生活困窮世帯等の子どもの学習支援)

 子どもの学習支援事業を高校中退者を含む高校生世代等において強化するとともに、社会的養護を必要とする子どもや生活保護世帯の子どもの大学進学を後押しする。

第2章 人づくり革命

8.来年夏に向けての検討継続事項

(1)リカレント教育

 人生 100 年時代においては、これまでのような、高校・大学まで教育を受け、新卒で会社に入り、定年で引退して現役を終え、老後の暮らしを送る、という単線型の人生を全員が一斉に送るのではなく、個人が人生を再設計し、一人一人のライフスタイルに応じたキャリア選択を行い、新たなステージで求められる能力・スキルを身につけることが重要である。また、人工知能などの技術革新が進む中で、生涯を通じて学び直しを行うことが必要である。このため、国も多様な支援策を用意していく必要がある。

 高齢者もひとり親家庭の方も義務教育を受けることができなかった方、自らの意志で高等学校や大学に進学しなかった方も、出産・育児等で離職した方も、フリーター・ニート・ひきこもりの方も、病気など生活上のハンディを抱える方も、誰にとっても「いつでも学び直し・やり直しができる社会」を作るため、幾つになっても、誰にでも学び直しと新しいチャレンジの機会を確保する。

 このため、人生 100 年時代を見据え、その鍵であるリカレント教育を抜本的に拡充するとともに、現役世代のキャリアアップ、中高年の再就職支援、様々な学校で得た単位を積み上げて卒業資格として認める仕組みの活用など、誰もが幾つになっても、新たな活躍の機会に挑戦できるような環境整備を、雇用保険制度等の活用も含めて、来年夏に向けて検討する。

(2)HECS等諸外国の事例を参考とした検討

 今後、引き続き、大学改革や教育研究の質の向上と併せて、オーストラリアのHECS等諸外国の事例も参考としつつ、中間所得層におけるアクセスの機会均等について検討を継続する。

第3章 生産性革命

3.Society 5.0 の社会実装と破壊的イノベーションによる生産性革命

(3)イノベーション促進基盤の抜本的強化

②若手研究者の活躍促進

- 国立大学及び若手研究者一人当たりの研究費と研究成果を見える化した上で、科研費の種目・枠組みについて本年度から能力のある若手研究者が研究費を獲得しやすくなる等の改革を進める。また、各大学が可能な限り若手教員に研究費を重点配分することを促すインセンティブシステムの導入を検討する。

- エフォート管理や業績の評価及び処遇への反映等の基本原則の設定、クロスアポイントメントや年俸制の導入、自ら外部研究費を獲得する力を身につけるべきシニアから今後活躍が期待される若手への本務教員ポストの振替や、シニア教員の流動性の向上等メリハリある処遇を含め多様なキャリアパスを踏まえた仕組みなど、人事給与マネジメントシステムの改革の在り方について検討を進める。

- 意欲と能力のある若手研究者に留学機会を付与する措置を拡充するとともに、海外大学との共同学位が取得できる国際教育連携を促進し、また海外の博士号の取得と帰国後の活躍の場が確保されるようなシステム改革について来年度中に検討する。

③大学のイノベーション拠点化

- 指定国立大学の一部で始まっている学長を統括補佐する副学長(プロボスト)の設置を促進しつつ、外部人材の経営層への登用を含め、トップのリーダーシップがより発揮でき、経営力が向上する最適な経営と教学の役割分担を促進する仕組みについて所要の改革を進める。

- 一法人複数大学化等の組織再編を含め、イノベーションを軸とした国公私立の枠を超えた大学の連携や統合・機能分担の在り方について来年度中までに成案を得て、所要の改革を進める。

- 大学及び国立研究開発法人等に対して自助努力による多様な資金獲得を促し、大学等への寄附を促進する観点から、評価性資産の寄附に係る非課税要件の緩和等について検討する。

④官民資金のイノベーションの促進

- 公共事業分野等における既存事業において、先進技術の積極的な導入等促進することにより、科学技術イノベーション転換を図る取組を来年度から実施する。公共調達分野においてもベンチャー活用等を促進するため、具体的な課題の設定、研究開発から調達、事業化までのステップアップの仕組み構築などを念頭においたガイドラインを来年度中に策定する。

- 「産学官連携による共同研究強化のためのガイドライン」の内容を着実に実行しオープンイノベーションを推進する。また、産学連携の実績に応じた資金配分、官民協同した研究課題コンペティションやアワード型制度など、民間の研究開発投資を呼び込む新しい研究開発支援手法の検討や公募型研究開発資金の基金化に取り組む。これらにより、国の研究開発資金の効果的活用を図るとともに、400 兆円を超える民間留保資金をイノベーションへの投資へと誘導する。また、地域ごとの産学官金連携・ベンチャー支援の仕組みを構築するとともに、出資可能研究開発法人の拡大や、大学・研究開発法人によるベンチャー支援に伴う株式・新株予約権の取得・長期保有を可能とする。

- SIPや挑戦的かつハイインパクトな研究開発である ImPACT 等の好事例について、国立研究開発法人・大学での研究継続、成果の企業への譲渡、ベンチャーによる事業化等の促進に取り組み、出口戦略を構築する。

第3章 生産性革命

3.Society 5.0 の社会実装と破壊的イノベーションによる生産性革命

(5)成長分野への人材移動と多様で柔軟なワークスタイルの促進

①個人の力を引き出す雇用・教育環境の整備

- 労働移動支援助成金(「雇用保険二事業」)等について、人材のキャリアアップ・キャリアチェンジを後押しすることに重点化して再構築する。また、年齢、就業年数、役職等の節目におけるキャリアコンサルティングの活用や中高年の再就職支援等を推進する。あわせて、転職・再就職が不利にならない柔軟な労働市場を確立するため、「年齢にかかわりない多様な選考・採用機会の拡大のための指針」を年度内に策定する。

- 社会人が各ライフステージで実効性のある学び直しを行うことができるよう、公的職業訓練(「雇用保険二事業」等)や教育訓練給付雇用保険の「失業等給付」)により支援する。

・IT業界にとどまらずITを活用する幅広い産業の人材が基礎的なIT・データスキルを標準的に装備するため、公的職業訓練や一般教育訓練給付の充実を図る。

・技術革新等に伴って新たに求められる専門的・実践的なスキルの習得を支援するため、専門実践教育訓練給付について、専門職大学等の教育課程を給付の対象とするほか、大学が提供する「職業実践力育成プログラム」、専修学校が提供する「職業実践専門課程」、IT・データ分野を中心とした「第四次産業革命スキル習得講座認定制度」等と連携して、対象講座の拡大を図る。

- プロジェクトマネージャーのマンツーマン指導による事業化・起業支援の人材育成プログラムの創設や、独創的な技術課題への挑戦に対する支援を通じて、イノベーションの担い手となる突き抜けた人材の育成や活用を強化する。

- 大学等において、産業界のニーズを継続的に把握しながら、企業の実際の課題やデータ等を用いた実践的な教育を行うことを推進するため、産業界と教育界による「官民コンソーシアム」の取組を本年度内に開始する。

- 学科縦割りの打破、学部・大学院の一貫制教育システムの促進など工学系教育改革を進めるため、本年度内を目途に大学設置基準の改正等を行う。