文科省以外の概算要求事項における大学関係予算
私は一応、国立大学法人職員のはずですが、役職上、私立大学や私立短期大学を対象とした補助金や文科省以外の省庁の予算等にも業務所掌が広がっています。そんなわけで、文部科学省以外の省庁の概算要求における大学関連予算を簡単に整理しました。
各省庁には平成30年度概算要求の概要等が公表されていますので、文部科学省及び文化庁以外の省庁で大学や学生に関する言及があるものを抜粋しました。当然、「研究機関」等実質的に大学が該当するものは除いていますので、これが大学関係予算の全てではありません。
府省庁名 | 事項 | 内容 | 金額(百万円) |
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内閣官房 | 地方創生インターンシップ事業 | 東京圏の地方出身学生の地方還流等を促進するため、シンポジウムの開催及び先導的な地方創生インターンシップ組織への人的支援を実施する。 | 505 |
内閣官房 | 地方へのサテライトキャンパス設置に関する調査研究事業 | 東京圏の大学の地方へのサテライトキャンパス設置を促進するため、地方公共団体と大学のニーズを把握し、マッチングする仕組みづくりに資する調査研究を実施する。 | 50 |
内閣府 | 地方大学・地域産業創生交付金(仮称)の創設 | 地域の人材・研究・産業を俯瞰する主体としての首長のリーダーシップの下、地方公共団体、地方大学、地元産業界等が参画する産官学連携の推進体制(コンソーシアム)を構築し、地域の中核的な産業の振興やその専門人材育成などを行う地方創生の優れた取組を支援する。 | 7,000 |
内閣府 | 地方と東京圏の大学生対流促進事業 | 若者の流動性を高め、地方と触れ合う機会を創出するため、地方と東京圏との複数の大学が学生の対流等に関して組織的に連携するとともに、東京圏の学生にとって地方の特色や魅力を経験できる取組等を推進する。 | 650 |
復興庁 | 被災した児童生徒等への就学等支援 | 被災により経済的理由から就学等が困難となった幼児児童生徒学生に対し、学用品費の支給や奨学金の貸与等による支援を実施。 | 10,100 |
総務省 | ICT イノベーション創出チャレンジプログラム(I-Challenge!) | ICT 分野における我が国発のイノベーションを創出するため、ベンチャー企業や大学等による新技術を用いた事業化への「死の谷」を乗り越えるための挑戦を支援 | 400 |
総務省 | 女性消防吏員の更なる活躍推進 | 消防吏員を目指す女性を増加させるため、女子学生を対象とした職業説明会や各種広報、アドバイザーの派遣を実施 | 50 |
総務省 | 消防団への女性・若者等の加入促進 | 女性や若者等の入団を促進するため、地方公共団体が、地域の企業や大学と連携して消防団員を確保する取組を支援(例:女性分団の新設に要する経費等を支援)するとともに、全国女性消防団員活性化大会や地域防災力向上シンポジウム等を開催 | 490の内数 |
総務省 | 企業・大学等との連携による女性・若者等の消防団加入促進 | 事業所の従業員や大学等の学生の入団を前提に、新規分団の設立や訓練に要する経費等を支援 | 490の内数 |
厚生労働省 | 地元就活支援コラボプロジェクトの推進 | 希望する地域で働ける勤務制度の導入等を促進するため、若者雇用促進法に基づく指針を改正し、社会的機運の醸成を図るとともに、文部科学省と連携し、より早期からの職業意識形成支援と、就職ニーズの把握に取り組むことで、大学生等が望む働き方・地域での就職の実現を図る。 | 8,400 |
厚生労働省 | ベンチャートータルサポート事業 | 医薬品・医療機器メーカーOB、病院・大学での研究開発研究者等、知財、薬事・保険、経営等に豊富な知見を有する国内外の人材(サポート人材)を登録し、知財相談、薬事承認申請相談、経営相談、製薬企業等との提携相談、海外展開相談等、医療系ベンチャー企業に対して各開発段階で生じた課題等に総合的な支援を行うとともに、これらのサポート人材について、医療系ベンチャー企業のニーズに応じたマッチングを行う。また、有望なシーズに関する市場性調査の実施や、知財管理に関する研修プログラムの策定等により、実用化のための事業戦略づくりを支援する。 | 490 |
厚生労働省 | オールジャパンでの医薬品創出プロジェクト | 創薬支援ネットワークにおいて、大学や産業界と連携し、革新的医薬品及び希少疾患治療薬等の創出を推進する。また、アカデミアにおける良質な臨床検体収集体制や先進的なオミックス解析技術と製薬企業における創薬ノウハウをつなげる産学官共同創薬研究プロジェクトやバイオ医薬品の設計技術開発等の創薬基盤研究を推進することで、創薬シーズ創出等の加速化を図る。これらに加え、疾患登録情報を活用した産学連携により臨床研究・治験を共同して実施する仕組みを形成し、患者の登録・組入れを効率的に進める体制を整備するクリニカル・イノベーション・ネットワーク(CIN)構想を推進することで、国内開発の活性化を促す。 | 11,300 |
厚生労働省 | 疾病克服に向けたゲノム医療実現プロジェクト | 大学病院等の医療機関からのゲノム情報等を集積するため、国立高度専門医療研究センター(NC)、大学等を中心としたゲノム情報等の集積拠点を整備し、がんや感染症、希少疾患等のゲノム情報等を集積・解析し、得られた情報を医療機関に提供することで個別化医療の推進を図る。 | 6,900 |
厚生労働省 | 自立を促進するための経済的支援 | ひとり親家庭等の生活の安定と自立の促進に寄与するため、児童扶養手当の支給や、母子父子寡婦福祉資金貸付金の大学院進学のための資金の創設など、支援の充実を図る。 | 177,500 |
厚生労働省 | 生活保護世帯の子供の大学等への進学の支援 | 「生活困窮者自立支援及び生活保護部会」における議論等を踏まえ、生活保護世帯の子供の大学等への進学について、必要な財源を確保しつつ取り組む。 | 不明 |
厚生労働省 | 職業能力・職場情報の見える化の推進 | ・ 求職者、学生等が、企業の職場情報を総合的にワンストップで閲覧できるサイトの運用を開始し、職場情報の「見える化」を一層推進する。 ・ 職業能力の「見える化」の観点から、技能検定やジョブ・カードの強化・活用促進を図る。 |
4,900 |
厚生労働省 | 女性活躍推進法の実効性確保 | ・ 女性活躍推進法に基づく取組が努力義務である300 人以下の中小企業について、相談支援等や助成金の活用により、行動計画策定やえるぼし認定取得に向けた支援を行い、女性活躍推進の取組の加速化を図る。 ・ 行動計画を策定・届出した企業について、女性活躍状況を検証し、取組の実施や目標達成のために必要な改善に向けた支援を実施する。 ・ 女性の活躍状況に関する情報等を掲載している「女性活躍推進企業データベース」について、学生をはじめとした求職者や投資家等ユーザーの利便性の向上を図るため機能強化を行うとともに、多くの企業の情報掲載が進むよう働きかけを行うことで、企業情報の見える化を更に推進する。 |
660 |
厚生労働省 | 外国人留学生等の就職支援 | 外国人留学生や海外学生の採用を検討している企業等に対して、外国人雇用サービスセンター等において、雇用管理に関する相談支援やサマージョブ等に係る支援を実施し、外国人留学生等の就職を促進していく。 | 440 |
農林水産省 | 産業動物獣医師の育成・確保対策 | 地域における産業動物獣医師の育成・確保のため、産業動物獣医師への就業を志す獣医大学への地域枠入学者・獣医学生に対する修学資金の貸与、獣医学生の臨床実習と獣医師の技術向上のための臨床研修、女性獣医師の産業動物分野への就業支援を実施します。 | 196 |
農林水産省 | 農林漁業者等のニーズに対応した技術開発の推進 | 農林漁業者、食品事業者のニーズを踏まえた明確な研究目標の下、農林漁業者、企業、大学、研究機関がチームを組んで行う、農林漁業者等への実装までを視野に入れた技術開発を推進します。 | 12,523の内数 |
経済産業省 | ・次世代人工知能・ロボット中核技術開発 ・次世代人工知能・ロボットの中核となるインテグレート技術開発事業 |
産総研・東大柏AI研究センターにおいて、ロボット・バイオ等の分野におけるAI技術の社会実装に向けた最先端の研究開発・実証を行うとともに、世界トップレベルの大学から卓越したAI研究者を呼び込み、最先端の研究開発を行う(カーネギーメロン大学やマンチェスター大学等と産総研との連携)。 | 7,350 500 |
経済産業省 | 貿易管理対策事業委託費 | 国内大学などにアドバイザーを派遣し、安全保障貿易管理に係る内部管理規程の策定に対する助言等を実施。 | 500 |
経済産業省 | 政府衛星データのオープン&フリー化及びデータ利用環境整備事業費 | 政府衛星データのオープン&フリー化を行うとともに、AIや画像解析用のソフトウェア等を活用したデータプラットフォームの開発を行うことで、民間企業や地域の大学等が衛星データを利用しやすい環境を整備し、新規アプリケーション開発による新規ビジネス創出の促進を目指す。 | 1,300 |
経済産業省 | 未利用熱エネルギーの革新的な活用技術研究開発事業 | 部素材・製品メーカー、大学等が、環境中に排出される未利用熱を効果的に、①削減(断熱、蓄熱、遮熱)、②回収(熱電変換、排熱発電)、③再利用(ヒートポンプ)するための技術開発と、④これらの技術を一体的に行う熱マネージメント技術の開発を行う。 | 690 |
国土交通省 | スマートシティ実証調査 | 本格的な人口減少・高齢化時代を迎える我が国の国際競争力を強化し、経済成長を促進するためには、人工知能(AI)・IoT 等の先進的技術をまちづくり分野に取り入れたスマートシティを推進し、都市機能の高度化、インフラ整備・管理や都市活動の生産性向上を図ることが必要である。このため、民間・大学等からの先進的技術活用に関わる幅広い提案をもとに実証実験を実施するとともに、実験実施に伴い地方公共団体が整備する必要のある施設について、社会資本整備総合交付金により支援するなど、実証的な取組を推進する。 | 1,048,400の内数 |
観光庁 | 観光産業における人材育成事業 | 観光先進国の実現を目指して、観光産業を我が国の成長に資する基幹産業とするためには、観光産業に携わる人材が質・量両面において不足している。そのため、トップレベルの経営人材、観光産業を担う中核人材、即戦力となる実務人材の各層において、観光産業の担い手の育成を図る。 | 389 |
注目すべき点は、内閣府や内閣官房から地方創生に係る大学関係の要求が出されているところでしょうか。特に内閣府の「地方大学・地域産業創生交付金(仮称)の創設」では、首長を中心とした大学関係コンソーシアムによる取り組みへの支援が打ち出されています。
気になるのは、この予算と現在募集されている私立大学等改革総合支援事業(タイプ5)との関係です。タイプ5では、特定の地域における高等教育の活性化を目的として形成された、高等教育機関及び当該地域の地方自治体や産業界等を含む連携体制としてプラットフォームを形成し、同プラットフォームが当該地域の高等教育(高等教育機関との表記もあり表記揺れが生じている)に関する中長期計画を策定することとしています。
タイプ5における中長期計画は、地方自治体ではなく高等教育機関が中心となって策定するような形が見えます。一方で、内閣府の「地方大学・地域産業創生交付金(仮称)の創設」では、首長のリーダーシップが強く打ち出されているように感じます。この辺りの違いもなかなか面白いところですね。