国立大学の留年状況を知る。

※リストから東京芸術大学が欠落していたため追記しました。 

 修学指導や学生支援などに関わる指標の一つとして留年率があります。認証評価においても、留年に関する言及があります。

大学改革支援・学位授与機構

6-1-① 各学年や卒業(修了)時等において学生が身に付けるべき知識・技能・態度等について、単位修得、進級、卒業(修了)の状況、資格取得の状況等から、あるいは卒業(学位)論文等の内容・水準から判断して、学習成果が上がっているか。

【根拠となる資料・データ等例】

・学部、研究科等ごとの標準修業年限内の卒業(修了)率(※1)及び「標準修業年限×1.5」年内卒業(修了)率(※2)(過去5年分)〔提出必須〕

・単位修得率、進級率、留年・休学・退学の状況、資格取得者数、卒業(修士・博士)論文、卒業制作

大学基準協会

<点検・評価項目>

学生支援に関する大学としての方針に基づき、学生支援の体制は整備されているか。また、学生支援は適切に行われているか。

<評価の視点>

・留年者及び休学者の状況把握と対応

日本高等教育評価機構

エビデンス集(データ編)一覧

表2-3 学部、学科別退学者及び留年者数の推移(過去3年間)

 また、学校教育法施行規則に定められた教育情報の公表の一部として、留年率を公表している大学もありますね。そのほか、大学ランキング系の各種冊子でも留年率が公表されています。

 ただ、大学の留年率がどの程度なのか、その相場感は意外と共有されていないと感じています。そのため、本稿では、改めて国立大学の留年率を確認します。

<留意事項>

  • 各数値は、大学改革支援・学位授与機構の大学基本情報の2017年度状況別卒業者数,入学年度別卒業者数から取得しました。
  • 編入生を除く卒業者数のうち、標準修業年限を超えて卒業した者の割合を留年率と定義しました。そのため、原級留置の者のみならず、休学等も留年として整理しています。
  • 大学院を除き、学部を対象としました。

各国立大学の留年率

大学名 卒業生 編入生 標準修業年限内卒業生 標準修業年限外卒業生 留年率
北海道大学 2510 52 2153 213 12.2%
北海道教育大学 1234 9 1151 57 5.8%
室蘭工業大学 557 32 454 47 13.1%
小樽商科大学 484 3 425 39 10.8%
帯広畜産大学 251 10 218 19 9.1%
旭川医科大学 182 10 152 14 11.0%
北見工業大学 382 5 321 37 14.3%
弘前大学 1377 33 1229 83 8.0%
岩手大学 1115 27 1001 50 7.8%
東北大学 2484 52 2200 166 9.5%
宮城教育大学 370 0 346 20 6.5%
秋田大学 995 37 880 58 8.0%
山形大学 1660 33 1495 92 7.5%
福島大学 939 39 828 51 7.7%
茨城大学 1536 33 1372 93 8.2%
筑波大学 2268 115 1849 232 13.9%
筑波技術大学 80 0 72 8 10.0%
宇都宮大学 996 52 812 103 13.7%
群馬大学 1175 79 1025 49 5.9%
埼玉大学 1649 59 1410 120 10.7%
千葉大学 2453 136 2106 151 8.6%
東京大学 3140 51 2417 539 21.3%
東京医科歯科大学 281 10 247 15 8.9%
東京外国語大学 776 34 253 418 65.5%
東京学芸大学 1131 1 994 100 11.4%
東京農工大学 912 72 759 51 8.6%
東京芸術大学 449 0 414 35 7.7%
東京工業大学 1113 12 968 94 11.3%
東京海洋大学 474 14 416 32 9.6%
お茶の水女子大学 495 0 449 38 9.1%
電気通信大学 652 35 513 60 15.9%
一橋大学 970 3 722 211 25.2%
横浜国立大学 1607 10 1371 159 13.7%
新潟大学 2310 109 2002 141 8.6%
長岡技術科学大学 495 407 81 4 8.0%
上越教育大学 169 0 165 4 2.4%
山梨大学 841 17 742 62 9.7%
信州大学 2017 96 1714 135 10.3%
富山大学 1745 48 1543 115 8.7%
金沢大学 1812 68 1568 139 9.5%
福井大学 898 56 743 69 11.2%
岐阜大学 1270 65 1105 70 7.6%
静岡大学 1884 18 1619 168 12.5%
浜松医科大学 184 16 154 9 8.3%
名古屋大学 2268 61 1946 198 11.6%
愛知教育大学 930 0 869 39 6.1%
名古屋工業大学 942 2 865 50 7.2%
豊橋技術科学大学 480 384 80 9 15.6%
三重大学 1399 79 1211 68 7.5%
滋賀大学 777 18 645 80 14.2%
滋賀医科大学 190 30 141 15 11.9%
京都大学 2963 37 2324 410 19.3%
京都教育大学 309 0 287 15 6.8%
京都工芸繊維大学 611 0 551 42 9.3%
大阪大学 3413 84 2556 624 22.3%
大阪教育大学 893 0 829 49 7.1%
兵庫教育大学 169 0 159 9 5.9%
神戸大学 2729 128 2118 371 17.6%
奈良教育大学 261 0 244 10 6.1%
奈良女子大学 524 22 464 28 6.8%
和歌山大学 947 29 804 79 11.4%
鳥取大学 1174 8 986 124 14.8%
島根大学 1158 43 964 110 13.5%
岡山大学 2176 75 1905 135 8.8%
広島大学 2378 50 2093 167 9.7%
山口大学 1936 29 1648 165 12.8%
徳島大学 1246 50 1029 131 13.5%
鳴門教育大学 106 0 98 7 7.5%
香川大学 1222 44 1060 91 9.7%
愛媛大学 1767 65 1510 142 10.8%
高知大学 1098 33 948 83 10.3%
福岡教育大学 654 3 586 44 9.1%
九州大学 2360 30 2088 162 9.4%
九州工業大学 961 80 773 70 11.4%
佐賀大学 1316 49 1102 111 12.4%
長崎大学 1588 27 1355 144 12.2%
熊本大学 1743 55 1491 136 11.1%
大分大学 1089 28 911 106 13.2%
宮崎大学 1008 10 899 65 9.6%
鹿児島大学 1943 52 1607 220 14.7%
鹿屋体育大学 199 18 173 3 3.9%
琉球大学 1392 29 1085 188 19.7%

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 東京外国語大学の留年率が突出して高いですが、おそらく、海外留学等で留年あるいは休学する学生が多いからだろうと推測します。国立大学全体の平均留年率は12.8%、東京外国語大学を除くと12.4%でした。

男女別の留年率

 続いて、性別による留年率を確認します。

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 男女別の留年率は上記グラフのとおりです。女性のほうが留年率が低い傾向にあることがわかります。なお、平均留年率は男性14.9%、女性9.5%でした。

学部別の留年率

 続いて、学部別の留年率を確認します。

順位 大学 学部名 卒業生 編入生 標準修業年限内卒業生 標準修業年限外卒業生 留年率
1 大阪大学 国語学 604 3 197 404 67.2%
2 東京外国語大学 国際社会学 354 18 123 213 63.4%
3 東京外国語大学 言語文化学部 350 15 130 205 61.2%
4 神戸大学 国際文化学部 160 0 85 75 46.9%
5 東京大学 教養学部 184 0 104 80 43.5%
6 宇都宮大学 国際学部 121 10 69 42 37.8%
7 東京大学 文学部 338 16 202 120 37.3%
8 徳島大学 歯学部(専門課程) 48 3 29 16 35.6%
9 筑波大学 社会・国際学群 208 11 129 68 34.5%
10 大阪大学 歯学部 62 0 41 21 33.9%
11 京都大学 総合人間学部 134 1 89 44 33.1%
12 琉球大学 観光産業科学部 112 0 75 37 33.0%
13 長崎大学 歯学部 53 0 36 17 32.1%
14 東京大学 法学部 395 2 276 117 29.8%
15 京都大学 法学部 336 8 231 97 29.6%
16 京都大学 文学部 223 1 158 64 28.8%
17 東京大学 教育学部 90 0 65 25 27.8%
18 一橋大学 経済学部 273 1 197 75 27.6%
19 一橋大学 商学部 298 1 220 77 25.9%
19 九州大学 歯学部 58 0 43 15 25.9%

 留年率が高い学部は上記表のとおりです。なお、学生募集を停止した学部や卒業生がいない学部は除外しています。

 やはり、国際系の学部が多いという印象です。また、歯学部も留年率が高い傾向にあるようですね。東大法と京大法が並んでいるのは、微笑ましくもあります。なお、留年率0%の学部は、学生募集停止学部を除くと、10個以下でした。つまり、国立大学であっても、標準修業年限を超えて卒業する者がいることはごくごく余り前のことだと言えると考えます。

学部分野別の留年率

 続いて、分野別の留年率の違いを確認します。

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 分野別の留年率は上記グラフのとおりです。分野の分類は学校基本調査の学科系統分類表により区分しました。分野別にみると人文科学と商船の留年率が高いことがわかります。分類上、外国語学部が人文科学に分類されますので、その影響も多少あるのでしょう。

標準修業年限による留年率

 続いて、標準修業年限(4年制か6年制か)による留年率の違いを確認します。

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 4年制と6年制の教育課程の違いによる留年率は上記グラフのとおりです。この場合の6年制とは医歯薬獣医の学部(あるいは学科)を指します。6年制の教育課程が存在する大学が離散しているためわかりにくいですが、4年制と6年制でそれほど大きな違いはないように感じます。なお、平均した留年率は4年制14.9%、6年制12.7%でした。

養成学部による留年率

 続いて、養成学部とそうでない学部の留年率の違いを確認します。

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 養成学部の留年率は上記グラフのとおりです。教育学部(教員養成)や医学部(医学科及び看護学科)、歯学部(6年制)、獣医系学部(農学部6年制)などを養成学部と整理し、区分しました。学部名称のみにより判断したため、若干の誤差が含まれている可能性があります。こちらも離散したグラフになっていますが、養成学部の方が留年率が全体的に低いように感じます。留年率が高い歯学部はありましたが、大学で平均すればその影響が消えるのでしょう。平均した留年率は、養成学部が8.6%に対し、非養成学部が 14.1%でした。

 

 様々な点から留年率(標準修業年限外卒業者の割合)を確認してきましたが、国立大学においては概ね10%前後は標準修業年限を超えて大学を卒業する者がいるという相場感を得ることができました。