文部科学省行政実務研修生に思う 〜私感編〜

(業務編から続く)

5.研修生制度の是非

 このような研修生制度については、「文科省の労働力を大学が負担している」と批判する声も聞いたことがあります。実際、大学はその場にいない者に対し給与を支払っている訳ですから、その意味では理解できる批判です。ただ、国立大学が法人化し組織として単独化するとともに国からは職員の能力開発に言及されているなかで、このような外部機関への研修の機会というのは大切なものでもあると考えます。人件費が削減される中でどのような対応を取っていくかは難しいところではありますが、文科省研修制度も一定程度の役割を果たしているのではないでしょうか。(制度的には全く異なるのですが、なんとなく、異動官職の存在とトレードオフな関係である気がしています。)

 文科省から帰ってきた者がどのようなパフォーマンスを示しているのか、法人としてどのようなフォローアップをしているのかは気になるところですね。

6.研修への参加について

 相談を受ける際、いつも最後に言われるのが「文科省研修に行った方が良いでしょうか?」ということです。決めるのは貴方ですので私からは特に言うことはありませんが、それでも言うとすれば「積極的に行かない理由がないのであれば、行くことを考えてみてもいいのではないか。」ということです。

 業務編ではいろいろ言葉を重ねましたが、研修生であろうとも求められる業務の量や質、速度は厳しいですし、実際にかなりハードな部署もあります。だからこそ、物事に対する考え方や対応力など、仕事に対する基礎体力のようなものが鍛えられます。長い職業人生の中で、一年くらいそのような環境に身を置いてみるのもいいのかもしれません。

 また、全国から研修生が集まりますので、人脈形成には最良の機会になります。前回述べた関係機関見学会もそうですが、特に地方から一人で来た研修生なども多いですので休日のつきあいなども楽しんでもいいのではないでしょうか。また、大学関係のイベント等の企画運営なども機会があるかもしれません。最近はfacebookなどのSNSも普及していますので、大学に帰った後も継続してつきあうことができます。

 いろいろ大変なこともありますが、経験を積むという意味では有益な機会だろうと思います。研修のオファーがある年齢も20代中頃〜30代前半という限られた期間が多いと思いますので、一度機会を逃すともう巡ってこないということも考えられます。研修への参加について、前向きに検討しても良いかもしれません。ただし、もし研修に行ったとしても、転任するかどうかは慎重に検討した方が良いでしょう。

 

 ここまで、3回にわたり文科省研修について言及してきました。これら以外にも、地域手当や赴任旅費などのお金の問題、残業時間管理などの人事労務上の問題など、各大学により対応が異なる事項がたくさんあります。また、そもそも文科省研修を行っていない大学や学内選考がある大学など、研修制度に対する姿勢も大学それぞれです。その他、今回は言及しませんでしたが、通勤や宿舎・住居など生活に関することも、特に関東圏以外の方にとっては気になる情報でしょう。学内の人事部署の方や文科省研修経験者に話を聞いてみても良いかもしれません。

 何にせよ、研修に関する情報がほとんど共有されていない状況はフェアではないなと常に感じていたところです。今回の記事が少しでも判断の一助となれば幸いです。