文部科学省行政実務研修生に思う 〜業務編〜

(制度編から続く)

3.研修生の業務について

 文科省研修について、私が受けた相談の中で最も多い質問は「毎日深夜まで仕事するんですよね?仕事についていけるか分かりません。不安です。」ということです。ほぼ例外無く、皆がこの点を気にしています。この質問に対しては、正直貴方の業務キャパシティを知らないので何とも言えないところもありますが、「どういう仕事をするかは運次第で分からないけれど、一年目ならきっと何とかなるだろうし何ともならなくなっても救済手段はある。」と回答をしています。

 まず、大前提として、研修生として文科省に赴任した際にどの部署に配属されるかは、例え希望を伝えていたとしてもほぼ運次第であり、直前になるまで分からないということがあります。そのため、具体的にその仕事がどのようなものでどのような忙しさなのかは、赴任してみるまで分かりません(一応、引き継ぎの説明は受けると思いますが。。。)。さらに、研修生にどのような仕事をさせるかも各局各課各係で異なっており、ハードな業務を行う場合も考えられます。配属や業務範囲はほぼ運次第であり、研修生の業務が忙しいかどうかは一概には判断できないということです。その上で、私個人としては、一年目研修生ならば大丈夫だろうと思っています。

 普通に考えれば、赴任にして間もない、何の権限も有していない(他機関の職員であるため文書管理上は決裁の起案すらできない)研修生に対し、省や国が傾くような業務を任せるわけがありません。ここから、各機関等から提出された書類のチェックや会議の設営、調査物の取りまとめや資料作成などがだいたいの1年目研修生の主な業務になると想像できますが、もちろんこれらは上司の指示を受けて行うことになります。(※あくまで推測であり、実際の業務とは異なる場合があります。)

 語弊を恐れずに言うと、1年目研修生の業務は時間を掛ければ質を担保できる業務が中心となると考えられます。つまり、ある程度の基準をクリアした者(少なくとも大学で数年間働いた者)であれば、なんとか対応可能な業務であると言うことです。だいたい、文部省時代から続くこの制度において、研修生が国が傾くような失敗をした例を私は聞いたことがありません。このようなことから、業務の内容は「一年目ならきっと何とかなるだろう」と考えています。楽観的な見方だと自覚していますが、研修候補生自身が配属に影響を与えられない以上は、事前に考えても仕方ない部分もあるでしょう。(もちろん、どのような業務であろうとも、研修生側は全力を尽くし様々なものを吸収する姿勢が大切なことは言うまでもありませんが。)

 何時まで仕事をするのか、所謂「忙しさ」についても、1年目研修生に対して配慮されているところもあります。今も続いているかは知りませんが、特に国立大学法人からの研修生が多い高等教育局(もしかしたら課単位だったかもしれません)では、○○時までに研修生を帰宅させるという目安があると聞いたことがあります。1年目研修生は量的戦力にはなったとしても本来は質的戦力にはなり得難いと思いますので、配慮の名の下に様々な対応をされているのでしょう。

 ただ、冒頭にも述べたとおり、研修生の業務は各局各課各係で異なっており、場合によってはかなり多くの業務を対応することもあり得ます。私が見聞きした範囲内では、その時の国会審議や世論の時流に乗ったホットなテーマに関連する部署では1年目研修生もかなり忙しくしていました。ただし、繰り返しますが、どの部署に配属されるかは運次第であり、研修生側が心配してもそれは決定に対し影響を与えられるものではありません。総じて見ると1年目ならば大丈夫だという私の考えです。

 なお、国立大学法人から文科省へ研修へ来た色々な方に話を聞くと、大学と仕事の仕方で違うと感じた点は以下の2点と答える方が多かったです。

  1. 仕事のスピードの速さ。午前中に照会が来て締め切りは午後すぐという場合もザラ。
  2. 受信メールの多さ。部署によっては一日百通超の場合もある。

 しかし、総じて見ればそのような背景にあると考えるものの、業務量や人間関係などにより、かなりやられる研修生も実際にいます。そのような研修生の中には、それでも「あと◯ヶ月我慢すれば」と思い出勤し続け、研修期間を全うする者もいます。期間が決まっていると言うことは、先が分かっているということであり、当事者にとってはそれだけでとても大きな意味を持ちます。また、研修期間終了を待たずして所属大学に帰る者もいます。恐らく、毎年一定数はこのような者がいるのではないかと思いますし、私の身近でも理由はどうであれ1年を待たず帰った者が何人もいます。

 研修期間を全うしない者が悪いと言っているのではありません。研修生には、研修期間中にも関わらず所属大学に帰れるような救済手段があるということが言いたいのです。理由はどうであれ、課内や局内にいる研修生担当課長補佐や所属大学の担当者に困っていることを相談すれば、基本的には様々な手段を講じてくれます。場合によっては、所属大学の上の方(部長や理事などの異動官職)から文科省へ口添え等があり、様々な配慮が行われることがあります。とにかく、強調したいことは、「研修生には帰れる場所がある」ということです。

 以上から、研修生の業務について質問をした者に対しては、「どういう仕事をするかは運次第で分からないけれど、一年目ならきっと何とかなるだろうし何ともならなくなっても救済手段はある。」という回答をしています。なお、これらは1年目研修生に関することであり、2年目研修生や転任待ち研修生についてはまた少し事情が異なります。端的に言うと、1年目よりは、文科省職員としての業務に近くなるというところでしょうか。

4.研修生の研修プログラムについて

 研修生として赴任していますので、実際の業務を行うというOJTに加え、研修生向けの研修プログラムや文科省職員の研修プログラムへの参加の機会が設定されています。その代表的なものが、概ね1,2ヶ月に一度程度、研修生を対象として行われる文科省関連機関への見学会です。この時ばかりは、高等教育局や大臣官房、初等中等教育局等バラバラに配属されている研修生が、(業務都合により欠席者はいるものの)一同に会することになります。

 見学先ですが、高等教育局各課が所掌する機関として国立大学、私立大学、高等専門学校、医系大学等やその他局が所掌するスポーツ関係施設や生涯学習関係施設など、毎年異なるようです。1年目研修生であればこの見学会への参加に対し配慮される場合が多いですし、見学会後には懇親会が行われることもあり、研修生にとっては日頃の業務から離れた楽しみになっているのでしょう。特に、見学先は都内各所ですので、地方からの研修生にとってはなかなか普段訪れられない施設の内部を見ることになり、とても良い機会になると思います。

(私感編へ続く)