大学設置制度の見直しに思う 〜認可か届出か〜

保健衛生と学際領域で、大学届出設置制度を見直し : カレッジマネジメント : リクルート進学総研

 来年4月に設置される学部・学科数は、12月16日の答申時点で118件。そのうち6件に1件が看護学科で、ご存じのとおり、看護学科の設置ラッシュが続いている。このような中、文部科学省は、来年4月以降、(1)看護師や理学療法士などの「保健衛生学関係」の目的養成分野と、(2)複数の学位の分野が含まれる「学際領域」について、届出設置制度を見直す予定だ。

 大学の設置制度を見直す旨の記事が出ていました。既に大臣から中央教育審議会への諮問とそれを受けての答申が終わっており、決定路線でしょう。中央教育審議会大学分科会にも資料が出ていました。

大学分科会(第116回) 配付資料:文部科学省

資料2-1 学位の種類及び分野の変更等に関する基準の改正について(諮問)

 大きく言うと、保健衛生学関係分野から看護学関係とリハビリテーション関係を切り分けること、学際領域について認可の基準を明確にすることの2点のようですね。後者について、改正後は届出から認可になる案件が例として示されていますが、届出と認可にどのような違いがあるのでしょうか。国立大学以外の公私立大学を対象としてみていきましょう。

 そもそも大学や学部の設置とは、学校教育法が根拠法令となっています。

学校教育法(昭和二十二年三月三十一日法律第二十六号)

第三条  学校を設置しようとする者は、学校の種類に応じ、文部科学大臣の定める設備、編制その他に関する設置基準に従い、これを設置しなければならない。

第四条  次の各号に掲げる学校の設置廃止、設置者の変更その他政令で定める事項(次条において「設置廃止等」という。)は、それぞれ当該各号に定める者の認可を受けなければならない。これらの学校のうち、(中略)大学の学部、大学院及び大学院の研究科並びに第百八条第二項の大学の学科についても、同様とする。

一  公立又は私立の大学及び高等専門学校 文部科学大臣

(中略)

2  前項の規定にかかわらず、同項第一号に掲げる学校を設置する者は、次に掲げる事項を行うときは、同項の認可を受けることを要しない。この場合において、当該学校を設置する者は、文部科学大臣の定めるところにより、あらかじめ、文部科学大臣に届け出なければならない。

一  大学の学部若しくは大学院の研究科又は第百八条第二項の大学の学科の設置であつて、当該大学が授与する学位の種類及び分野の変更を伴わないもの

二  大学の学部若しくは大学院の研究科又は第百八条第二項の大学の学科の廃止

三  前二号に掲げるもののほか、政令で定める事項

3  文部科学大臣は、前項の届出があつた場合において、その届出に係る事項が、設備、授業その他の事項に関する法令の規定に適合しないと認めるときは、その届出をした者に対し、必要な措置をとるべきことを命ずることができる。

4  第二項第一号の学位の種類及び分野の変更に関する基準は、文部科学大臣が、これを定める。 

 この条文を受け、大学設置基準や設置の手順が定められているわけですね。

大学等の設置認可・届出制度:文部科学省

大学設置室

 大学設置の手順等については、文部科学省HPに掲載されています。また、各大学から申請・届出のあった書類についても、文部科学省内に設置された大学設置室HPにて確認することができます。

主な各種認可・届出事項等一覧:文部科学省

学位の種類及び分野の変更等に関する基準:文部科学省

 主な認可・届出事項の一覧表も掲載されており、どの事項が認可・届出に当たるのかが一目でわかるようになっています。なお、学際分野について、本来ならば当該大学が授与する学位の種類及び分野の変更を伴う場合は認可事項にも関わらず、学位の種類及び分野の変更等に関する基準(文部科学省告示第39号)により、設置される学科等の教員数の半数以上が既設の学科に所属していた教員で占められる場合は届出事項としていました。それを、改正により、構成分野が特定できる場合には、「学際領域」としては取り扱わず、構成する学位に変更があれば認可事項とするようです。近年の質保証の流れにそった改正だと感じています。

大学の設置等に係る提出書類の作成の手引き(平成25年度改訂版):文部科学省

 大学の設置等に係る提出書類の作成の手引き(平成25年度改訂版)P8には、手続きの種類と提出書類の関係が明記してあります。ここから、認可事項と届出事項で大きく違うのは「教員個人調書」の有無、つまり教員審査があるかないかであると感じています。

 同手引きP98から、教員個人調書等の書き方が記してあります。教員個人調書は、以下の書類で構成されます。

  • 履歴書
  • 教育研究業績書
  • 担当予定授業科目
  • 教員就任承諾書(教員就任同意書)
  • 印鑑証明書(申請前3か月以内に取得したもの)

 かなり細かく記載の指定がある上、各書類に自筆及び押印が必要という、なんとも事務泣かせの書類になっています。しかも、押印する印の印鑑証明書まで必要です。(どうでもいいですが、印鑑証明書の手数料は誰が負担するのでしょうか。。。)

 ここまで書類を準備し提出しても、大学設置分科会による教員審査の結果、業績等により教員として不適切と判断される場合もあります。そうなった場合、新しい教員予定者を探したり、授業の割当が変更になりますよね。認可になるか、届出になるか、担当者にとっては胃の痛い話ではないでしょうか。

 大学院の新設等の場合は、研究指導教員か研究指導補助教員かの判定も併せて行われます。所謂、○合教員・合教員の判定ですね。この○合・合という言葉は、現在の大学院設置基準等のどこにも記載がありません。この言葉は一体どこからでてきたのでしょうか。

 元々、○合・合という言葉は「大学院設置審査基準要項(昭和49年9月27日大学設置審議会大学設置分科会決定)」が出所です。以下に、該当部分を引用します。

4 教員組織

(1)教員組織の判定については、次の記号を用いることとする。なお、「研究指導教員」とは、告示第175号に定める研究指導教員をいい、「研究指導補助教員」とは、同告示に定める研究指導補助教員をいう。

D○合(※○の中に合の文字。以下同様。):博士課程の研究指導教員(研究指導及び講義担当適格者)

D合:博士課程の研究指導補助教員(研究指導の補助並びに講義(及び実験)担当適格者)

M○合:修士課程の研究指導教員(研究指導及び講義担当適格者)

M合:修士課程の研究指導補助教員(研究指導の補助並びに講義(及び実験)担当適格者)

不:担当不適格者

 同要項は、平成3年度の設置基準大綱化に伴い、廃止になりました。しかし、○合・合という言葉は、大学の設置等に係る提出書類の作成の手引き(平成25年度改訂版)P123など、現在の提出書類にも残ることになり、多くの人にとって出典不明のまま生き続けています。

大学設置認可制度:文部科学省

 今回は公私立大学にも関連した大学設置の話でした。ただ、国立大学は、大学設置に関する手続きが公私立大学と異なります。現に、文科省HPには、「公私立大学等を設置する場合には,学校教育法私立学校法規定により,文部科学大臣の認可が必要となっています。」となっています。

 これは国立大学が国立大学であるためなのですが、そのお話しはまた次回に。