大学教員は更新講習を受講することができない。

 最近、教員から何件か教員免許状更新講習(更新講習)に関する相談を受けています。その内容は、講習の内容ではなく、「自分の持っている教員免許状が修了確認期限を迎えるのだがどうすれば良いか」「今年の更新講習で講師を務めたが、講習は免除されるのか」といったものです。結論から言うと、そもそも大学教員が更新講習を受講できるケースは少なく、結果として保有する免許状は一時的な休眠あるいは失効状態になることが多いと考えます。

 まずは根拠法を確認します。

教育職員免許法(抄)

(効力)
第九条 普通免許状は、その授与の日の翌日から起算して十年を経過する日の属する年度の末日まで、すべての都道府県(中学校及び高等学校の教員の宗教の教科についての免許状にあつては、国立学校又は公立学校の場合を除く。次項及び第三項において同じ。)において効力を有する。

(有効期間の更新及び延長)
第九条の二 免許管理者は、普通免許状又は特別免許状の有効期間を、その満了の際、その免許状を有する者の申請により更新することができる。
3 第一項の規定による更新は、その申請をした者が当該普通免許状又は特別免許状の有効期間の満了する日までの文部科学省令で定める二年以上の期間内において免許状更新講習の課程を修了した者である場合又は知識技能その他の事項を勘案して免許状更新講習を受ける必要がないものとして文部科学省令で定めるところにより免許管理者が認めた者である場合に限り、行うものとする。

(免許状更新講習)
第九条の三 
3 免許状更新講習は、次に掲げる者に限り、受けることができる。
一 教育職員及び文部科学省令で定める教育の職にある者
二 教育職員に任命され、又は雇用されることとなつている者及びこれに準ずるものとして文部科学省令で定める者

教育職員免許法施行規則(抄)

第六十一条の四 免許管理者は、免許法第九条の二第一項の規定による申請をした者(免許法第九条の三第三項各号に掲げる者に限る。)が次の各号のいずれかに該当する者(第一号、第二号及び第五号に掲げる者については、最新の知識技能を十分に有していないと免許管理者が認める者を除く。)であるときは、免許法第九条の二第三項の規定により、免許状更新講習を受ける必要がないものとして認めるものとする。

三 免許状更新講習の講師

四 国若しくは地方公共団体の職員又は次に掲げる法人の役員若しくは職員で、前二号に掲げる者に準ずる者として免許管理者が定める者

イ 国立大学法人法(平成十五年法律第百十二号)第二条第一項に規定する国立大学法人及び同条第三項に規定する大学共同利用機関法人

ロ 地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第六十八条第一項に規定する公立大学法人

ハ 私立学校法(昭和二十四年法律第二百七十号)第三条に規定する学校法人

免許状更新講習規則(抄)

(講習を受講できる者)

第九条 免許法第九条の三第三項第一号に規定する文部科学省令で定める教育の職にある者は、次に掲げる者であって、普通免許状若しくは特別免許状を有する者、普通免許状に係る所要資格を得た者、教員資格認定試験に合格した者、免許法第十六条の三第二項若しくは第十七条第一項に規定する文部科学省令で定める資格を有する者又は教育職員免許法施行法(昭和二十四年法律第百四十八号)第二条の表の上欄各号に掲げる者とする。

一 校長、副校長、教頭、実習助手寄宿舎指導員、学校給食法(昭和二十九年法律第百六十号)第七条に規定する職員その他の学校給食の栄養に関する専門的事項をつかさどる職員のうち栄養の指導及び管理をつかさどる主幹教諭並びに栄養教諭以外の者並びに教育委員会の事務局において学校給食の適切な実施に係る指導を担当する者並びに免許法施行規則第六十九条の三に規定する幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校又は就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律(平成十八年法律第七十七号)第二条第七項に規定する幼保連携型認定こども園(以下「幼保連携型認定こども園」という。)(次項第一号において「学校」という。)において専ら幼児、児童又は生徒の養護に従事する職員で常時勤務に服する者

二 指導主事、社会教育主事その他教育委員会において学校教育又は社会教育に関する専門的事項の指導等に関する事務に従事している者として免許管理者が定める者

三 国若しくは地方公共団体の職員又は次に掲げる法人の役員若しくは職員で、前号に掲げる者に準ずる者として免許管理者が定める者

イ 国立大学法人法第二条第一項に規定する国立大学法人及び同条第三項に規定する大学共同利用機関法人

ロ 地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第六十八条第一項に規定する公立大学法人

ハ 私立学校法(昭和二十四年法律第二百七十号)第三条に規定する学校法人

ニ 社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)第二十二条に規定する社会福祉法人(幼保連携型認定こども園を設置するものに限る。)

ホ 独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第一項に規定する独立行政法人であつて、文部科学大臣が指定したもの

四 前三号に掲げる者のほか、文部科学大臣が別に定める者

2 免許法第九条の三第三項第二号に規定する文部科学省令で定める者は、次に掲げる者であって、普通免許状若しくは特別免許状を有する者、普通免許状に係る所要資格を得た者、教員資格認定試験に合格した者、免許法第十六条の三第二項若しくは第十七条第一項に規定する文部科学省令で定める資格を有する者又は教育職員免許法施行法第二条の表の上欄各号に掲げる者とする。

一 学校の校長、副校長、教頭又は教育職員であった者であって、教育職員となることを希望する者(前項第一号から第三号までに該当する者を除く。)

二 次に掲げる施設に勤務する保育士(国家戦略特別区域法(平成二十五年法律第百七号)第十二条の四第五項に規定する事業実施区域内にある施設にあっては、保育士又は当該事業実施区域に係る国家戦略特別区域限定保育士)

イ 就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律第二条第六項に規定する認定こども園(幼保連携型認定こども園を除く。)

ロ 児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第三十九条第一項に規定する保育所

ハ 児童福祉法第五十九条第一項に規定する施設のうち同法第三十九条第一項に規定する業務を目的とするもの(幼稚園を設置する者が設置するものに限る。)

三 教育職員に任命され、又は雇用されることが見込まれる者

  おそらく、教育職員免許法施行規則第61条の4第1項第3号に更新講習の講師は更新講習を受講する必要がない旨規定されているため、講師を務めた自分自身の取り扱いについて疑義が生じているものと推測できます。ただし、そもそも、更新講習規則第9条第1項及び第2項に定める更新講習を受講できる者に「大学教員」は含まれていません。そのため、「大学教員」という立場だけでは、基本的には更新講習を受講できず、免許状を更新することができないと考えます。

 ちなみに、教育職員免許法施行規則第61条の4第1項第4号には大学の職員に関する言及がありますが、教員免許更新制の実施に係る関係省令等の整備について(通知)(平成20年4月1日文部科学事務次官)では、

具体的には以下の職にある者が想定されるが、この他の職にある者についても、上記の観点から各都道府県の判断により適切に定めること。

学校法人の理事長

学校法人の理事

第61条の4第1項第1号及び第2号に定める職に就いたことのある者であって、国等の学校教育又は社会教育に関する専門的事項に関する職にある者

と例示されています。また、例えば和歌山県教育委員会の例を見ると、大学等に派遣されている元学校教員などが想定されているのだと思われます。この点は各都道府県教育委員会によって異なると思われますので、必要に応じて確認が必要でしょう。

 さて、基本的には大学教員は更新講習を受講できないとしましたが、以下の場合においては、現在の立場が「大学教員」であっても更新講習を受講できると考えます。

  1. 過去に学校にて教育職員として勤務した経験がある者(更新講習規則第9条第2項第1号)
  2. 学校の教育職員を兼務している者(例:教育学部教授が附属学校長となっている場合、大学教員が同一法人内の学校で非常勤講師として勤務している場合など)(更新講習規則第9条第1項第1号)
  3. 教育委員会や学校法人等との協議の上、当該機関等で勤務する者を一括して「教育職員となることが見込まれる者」と取り扱う場合に含まれる者

 3番目のケースについては、教員免許更新制の実施に係る関係省令等の整備について(通知)(平成20年4月1日文部科学事務次官)において

また、大学、高等専門学校、研究機関、青少年教育施設その他の特定の機関等に勤務する者について教員になる可能性が高いと認められる場合には、当該機関等と教育委員会や学校法人等との協議の上、当該機関等で勤務する者を一括して「教育職員となることが見込まれる者」として認めることも可能とすること。

とあるため、対応は不可能ではないと考えています。ただし、私はこの例を適用している機関を知りません。もしかしたら、教育単科大学にて教育委員会との協議の上対応している例があるのかもしれません(しかし、この場合は受講対象者である証明を誰からもらうのでしょうか)。

 もし、上記の3ケースに該当し、かつ、更新講習受講期間(修了確認期限または有効期間満了日の2年2ヶ月前から2ヶ月前までの間)に更新講習の講師を務めた場合は、更新講習の受講が免除される可能性があります(厳密に言えば、旧免許状所持者の場合は、2番目のケースのみ免除される可能性があり、1番目と3番目のケースは免除の対象となりません)。免除を受けるには各都道府県教育委員会に申請が必要となりますので、忘れずに問い合わせる必要がありますね。

 このように、教員免許更新制から大学教員は除外されていると感じますが、良し悪しもあるなと思っています。特に、国立大学の教員養成系学部においては「ミッションの再定義」にて学校現場で指導経験のある大学教員の割合を向上させる目標を記載している(実質的には書かされた?)こと、また、教員需要の減少期における教員養成・研修機能の強化に向けて―国立教員養成大学・学部、大学院、附属学校の改革に関する有識者会議報告書―において教育学部と附属学校との連携の重要性が記載されている状況の中で、附属学校の教育活動に大学教員が携わる際に必ずしも教員免許状が必要ではないとは言え、そもそも大学教員は更新講習の受講すらできないということはもう少し何とかならないかと感じています。