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国立大学の予算配分に反映する評価等(素案)に思う 〜どのような指標が示されているのか〜

 国立大学法人は平成27年度に第2期中期目標期間の最終年度を迎えます。現在は、平成28年度から始まる第3期中期目標期間に向け、各法人で中期目標・中期計画の策定が進められていることと思います。併せて、文部科学省内では第3期における国立大学運営費交付金の配分についても検討が進められており、その検討の中心となっているのが「第3期中期目標期間における国立大学法人運営費交付金の在り方に関する検討会」です。

 2月16日に行われた第6回検討会では、予算配分に反映するための評価等について(素案)が示され、評価指標等が徐々に明らかになっているところです。 まだ素案段階であるものの、どのような枠組みや指標で評価が行われるのでしょうか。

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 図に、第3期中期目標期間における国立大学法人運営費交付金の在り方に関する検討会(第6回)配付資料3をもとに作成した予算配分に反映するための評価等について(素案)の概要を示します。大きく分けて、「機能強化の方向性に応じた重点支援に係る評価」と「学長の裁量による経費に基づく活動等による実績評価」の2種類あり、それぞれの評価結果が予算配分に反映される設計であることがわかります。

 まず「機能強化の方向性に応じた重点支援に係る評価」から確認します。ここには、文科省が支援項目を決定し各大学がそれにアプライするタイプと、3つの重点支援の枠組みの中から各大学が自主的に枠組みを選びアプライするタイプの2種類があることがわかります。ここでいう「3つの重点支援の枠組み」とは、財政制度分科会(財政制度分科会の資料に思う 〜国立大学はどうなってしまうのか〜(後編) - 大学職員の書き散らかしBLOG)や本検討会の「運営費交付金の見直しの基本的な方向性」でも示されている

  1. 地域活性化・特定分野の重点支援を行う大学(地域活性化の中核となりつつ、特定の分野で世界ないし全国的な教育研究を目指す大学)
  2. 特定分野の重点支援を行う大学(特定の分野で世界ないし全国的な教育研究を目指す大学)
  3. 世界最高水準の教育研究の重点支援を行う大学(国際的スタンダードの下、全学的に世界最高水準の教育研究を目指す大学)

の3種類のことでしょう。それぞれについて、評価指標の例が示されています。なお、「地域活性化・特定分野の重点支援を行う大学」の枠組みについては、「地域活性化」にかかる指標と「特定分野の教育研究」にかかる指標を組み合わせて設定できるとされています。

 指標例をみると、ちょっと難しいなと感じたものがあります。それは、

*地域における新たな産業の創出を図っているか
・地域内の大学発ベンチャーの設立、活動状況

です。地方創生と関係があるのでしょうが、従来ほとんどの地方大学がうまく手を出せてこなかった部分であると認識しています。帝国データバンクが実施した大学発ベンチャー企業の実態調査(2014年)を見ても、ベンチャー企業のうち25%が東京都に設置されており、社数上位に研究大学が並んでいるなか、地方大学がどのように対応できるか考えるところがあります。

 また、

*全学的に国際レベルの質の高い教育を行っているか

・安定的な研究職等への就職状況

も文脈によって意味合いがだいぶ違ってくるなと感じています。

 この評価は毎年行われるようです。評価指標と言っていますが、おそらく目標値を設定することが求められ、その進捗状況で評価を受けるのではないかと考えます。ただ、数値を毎年出すことは可能だと思いますが、特に前半は数値のトレンドが把握できないために、もしかしたら不安定な評価になるのかもしれないとも思っています。

 次に、「学長の裁量による経費に基づく活動等による実績評価」を確認します。こちらは学長裁量経費による効果を評価するものです。評価指標は全大学共通のようですね。すでに平成27年度予算(案)において、一般運営費交付金対象事業費の中に大学改革促進係数対象事業費×5%分の「学長裁量経費」を新たに区分されていますので、同じ流れで第3期においても全大学対象となるということでしょう。

 ただ、指標例が示されている以上、ある程度裁量経費の使途の方向性が統一される可能性があります。国立大学の改革の方向性は、なんだかんだで国によりある程度規定されるものなのだということを改めて感じました。また、ここで示されている指標が必ずしもすべて学長裁量経費により賄わなければならないのかは定かではありませんが、どちらかといえば学長のリーダーシップによる取組およびその成果を評価するものではないかと考えています。となれば、これまで取り組んできたもの、今からでも取り組めるものの実績も活かすことができるのでしょう。

 全般的にまだ明らかではないことが2点あると感じています。まずは評価の体制です。評価指標のみの評価は文脈を無視することになり、手段の目的化が生じます。「有識者の意見を踏まえつつ」とありますが、どうも従来から中期目標中期計画に基づく評価を行っている国立大学法人評価委員会とは別の動きをする見込みのようですし、評価の体制をどのように構築するかはこれからの検討課題でしょう。また、最終的に予算配分に反映とありますが、2種類ある評価結果をそれぞれ反映させるのか両者を合わせて総合的に評価し反映させるのか、反映方法もまだ明らかではありません。第3期の国立大学法人評価の方法と合わせて今後とも注視していく必要があると感じています。

 大学間連携協働推進事業による教学マネジメントシステムに関するシンポジウムでも言及されていましたが、量的指標の背景には質的情報があるという認識は大切であり、量的指標はその質的な背景を共有するコミュニティにおいて価値があるということが原則なのだろうと思います。一方で、国等が行う公式な評価においては、公平性透明性の観点からどうしても量的な部分のみ表出することがままあります。

 各大学においては、それぞれの取組におけるロジックモデルの中で、どの工程でどの指標をアセスメントし、それが何を意味しているのか何に影響を受け与えているのかを認識することが大切なのだろうと思います。また、目標設定の際には現状確認が必要ですので、今のうちから各指標の情報を整理し現状の数値を算出しておいた方が良いでしょう。可能ならば、第3期中期目標や認証評価基準など、他評価事項と関連付ける形で指標を整理すれば、ある程度効果的に指標を取り扱うことができるのかもしれませんね。