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学校教育法及び国立大学法人法の改正案に思う 〜結局、教授会は何を話し合うのか〜

学長主導の大学改革促す 関連法改正案を閣議決定 :日本経済新聞

 政府は25日、学校教育法国立大学法人法の改正案を閣議決定した。学長主導による大学改革を促すため、多くの大学で運営に大きな影響力を持つ教授会の権限を限定。国立大学では重要事項を審議する会議の過半数を外部委員とし、チェック機能を強める。今国会に提出し、2015年4月の施行を目指す。

 学校教育法国立大学法人法の改正に関するニュースが出ていました。同法案は、文部科学省HPに掲載されています。

学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案:文部科学省

学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案(概要)
学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案(要綱) 
学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案(案文・理由)  
学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案(新旧対照表)
学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案(参照条文)

 同法律案は、中央教育審議会大学分科会及び同運営組織部会での審議を受けてのものでしょう。

「大学のガバナンス改革の推進について」(審議まとめ)(平成26年2月12日 大学分科会):文部科学省

 これらについては、弊BLOGでも言及してきたところです。

組織運営部会審議まとめ(素案)に思う 〜50年経っても変わらないこと〜 - 大学職員の書き散らかしBLOG

教授会の役割制限の検討に思う 〜教授会の祈り〜 - 大学職員の書き散らかしBLOG

 本法案の趣旨ですが、

 大学運営における学長のリーダーシップの確立等のガバナンス改革を促進するため、 副学長・教授会等の職や組織の規定を見直すとともに、国立大学法人の学長選考の透明化等を図るための措置を講ずる。

とあります。

 また、同法律案を国会に提出する理由として、

 大学の組織及び運営体制を整備するため、副学長の職務内容を改めるとともに、教授会の役割を明確化するほか、国立大学法人の学長の選考に係る規定の整備を行う等の必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

とあります。

 後者の「理由」にある「大学の組織及び運営体制を整備する」ということと、副学長の職務内容を改める等具体的整備内容とが対応しているのか、いまいちピンときません。一方、「趣旨」にある「ガバナンス改革を促進するため」というのは、これまでの中教審での審議内容を踏まえたものであるということがわかります。「改革を促進」とあるのは、あくまで改革を行うのは各大学であり、法律によりそのきっかけを作るということかな、と考えます。

 特に気になる点について、内容を確認します。まず、学校教育法の改正案では、副学長の職務が以下のように変化しています。

学校教育法

(旧)

第92条

三 学長は、校務をつかさどり、所属職員を統督する。 

四 副学長は、学長の職務を助ける。

(新)

第92条 

三 学長は、校務をつかさどり、所属職員を統督する。

四 副学長は、学長を助け、命を受けて校務をつかさどる。

 副学長の職務範囲が拡大したと判断できます。第92条3号及び4号に「公務をつかさどる」と同一の文言がありますので、学長の一部職務を命を受けた副学長が請け負うというイメージでしょうか。これは、「「大学のガバナンス改革の推進について」(審議まとめ)(平成26年2月12日 大学分科会)」の以下の部分に関することでもあります。

 このため,副学長,学長補佐,学長室スタッフなどの形で各部局の事情に通じた教職員を大学執行部に加える等,学長の意思決定をサポートする体制の強化を図ることが重要である。大学の判断により,縦割りの分掌業務ではなく,米国のプロボスト(Provost)のように,大学全体の予算,人事,組織改編の調整権を持ち,学長を統括的に補佐する副学長(総括副学長)等の設置も有効であると考えられる。(P18)

 ひとつ飛ばして、次は国立大学法人法の改正案を確認します。まずは、学長選考の基準・結果等の公表について、学長選考会議が学長選考の基準を定め、それを公表することになっています。大学設置基準には、

(学長の資格)

第13条の2  学長となることのできる者は、人格が高潔で、学識が優れ、かつ、大学運営に関し識見を有すると認められる者とする。

とあります。これと整合性を取るように、もう少し具体的な基準を定めるのでしょうか。ただ、具体的にどのような基準を定めるかは、ちょっとイメージがわきませんね。

 また、同じく国立大学法人法の改正案では、経営協議会の外部委員について、

国立大学法人法

(旧)

第20条 3 前項第三号の委員の数は、経営協議会の委員の総数の二分の一以上でなければならない。

(新)

第20条 3 経営協議会の委員の過半数は、前項第三号の委員でなければならない。

と、その人数の下限値が引き上げられました。と言っても、二分の一以上から過半数への改正ですので、せいぜい1名上昇といったところでしょう。とは言いつつも、経営協議会の議決条件が過半数になっていた場合、賛成が外部委員のみであっても議決が成立するということになりますね。

 実際に、各国立大学の中には、経営協議会の外部委員がちょうど全人数の半分という大学があります。もし過半数に見たない場合は、今年度中に経営協議会の外部委員を1名追加(あるいは就任予定の決定)をしないといけないわけです。

 さて、飛ばしてきた項目に触れます。学校教育法の改正案では、旧来からの法律に比べ、教授会の役割が大きく変化しています。

学校教育法

(旧)

第93条 大学には、重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない。

(新)

第93条 大学に、教授会を置く。 

2 教授会は、学長が次に掲げる事項について決定を行うに当たり意見を述べるものとする。

一 学生の入学、卒業及び課程の修了

二 学位の授与

三 前二号に掲げるもののほか、教育研究に関する重要な事項で、学長が教授会の意見を聴くことが必要であると認めるもの

3 教授会は、前項に規定するもののほか、学長及び学部長その他の教授会が置かれる組織の長(以下この項において「学長等」という。)がつかさどる教育研究に関する事項について審議し、及び学長等の求めに応じ、意見を述べることができる。

学校教育法施行規則

第144条 学生の入学、退学、転学、留学、休学及び卒業は、教授会の議を経て、学長が定める。

 法律案第2項より、教授会の役割が「重要な事項を審議」から「学長が決定を行うに当たり意見を述べる」と変化しており、決定権がないことをより明確にした記述になっていることがわかります。さらに、教育研究に関する重要な事項(この「重要な事項」が改正前条文の「重要な事項」と一致するかは不明です。)であっても、学長から必要性を認められなければ意見を述べることすらできなくなっています。なお、同条文は現行の学校教育施行規則と齟齬がありますので、法律案施行に合わせ、施行規則も改正されるものと考えます。

 法律案第3項においては、これまでなかった部局長と教授会との関係について明記されています。部局長のリーダーシップを高めるということも期待されているのでしょうか。

 法律案にある教授会の在り方については、「大学のガバナンス改革の推進について」(審議まとめ)(平成26年2月12日 大学分科会)」でも触れられています。

 下部機関への委任がない限り,学生の入学の判定や学位の授与といった大 学の判断は,法律上は,学長の責任において行うこととされており,仮に, 教授会等における判断が適切でない場合であっても,教学面の事項について 責任を問われるのは,大学の責任者である学長である。

 権限と責任が一致することは,あらゆる組織におけるガバナンスの基本で あり,その観点から,各大学において,ガバナンスの在り方を見直していくことが是非とも求められる。(P11)

 この法律案は、事前の新聞報道等と少し印象が異なると感じています。というのも、事前の新聞報道等では、教育活動に関して教授会の権限は残るという形だったと記憶しています。しかし、今回の法律案では、前述のとおり教授会は意見を述べるという権限に留められており、予想以上に教授会の権限が縮小しているという印象です。(もっとも、法の趣旨は以前からそうだったと言われればなんとも言えませんが。。。)このような教授会の役割改正に対し、批判的な意見も出ています。

教授会の審議権奪う/学校教育法改悪案を閣議決定

 安倍内閣が提出した学校教育法等改定案は、教授会を「学長が必要と認める場合に意見をのべる」だけの機関に矮小(わいしょう)化し、それも教育研究に関する事項に限定し、大学経営(予算・人事・組織)には意見も言わせないとしています。教授会の審議権をなくし、「大学の自治」を骨抜きにするもので、「学問の自由」を脅かす重大な改悪です。

学校教育法改正に反対するアピール署名をすすめる会

 しかし、「教育研究に関する(重要な)事項」が一体何を指すのか、明らかではないなと感じています。例えば、教育研究外の予算配分(施設関係など)は、該当するのでしょうか。教授会が意見を述べられる範囲を明らかにしなければ、かなり大変なことになるのではないでしょうか。

 と言うのも、各大学においては、同法律案の施行までに、同法律案を基に各学部等の教授会規程を見直すことになります。さらに、教授会規程のみならず、全規程等において教授会に言及している箇所を洗い出し、必要に応じてそれらも改正することになるでしょう。想像しただけでも、かなり大変な作業になりそうです。その際、教授会が意見が述べることができる範囲を特定しておかなければ、そもそも当該事項を教授会で話して良いものかのか、あるいはどのタイミングで当該事項を話し合うのかが明らかにできず、規程等の改正が行えません。各大学が混乱することになります。

 今回はあくまで同法律案を閣議決定したに過ぎず、今後国会で審議が行われ成立するかどうかが決まります。今後、衆参委員会での質疑など、両院の審議状況もチェックする必要があると感じています。