学校教育法及び国立大学法人法等の改正に関する実務説明会の概要 その1

 改正学校教育法及び国立大学法人法等が成立し、平成27年4月1日の施行を待つだけとなりました。本件については、弊BLOGでも、関連する独立行政法人通則法の改正も含め、改正案の段階から言及してきたところです。

 さて、改正法成立を受け平成26年9月2日に行われた学校教育法及び国立大学法人法等の改正に関する実務説明会の模様がYouTubeで公表されていました。既に議事録も公表されているところですが、特に国立大学の部について、その内容の中から一部を簡単にまとめてみました。なお、本記事は全文起こしではなく、私見に伴う解釈が含まれる可能性があります。正確に内容を知りたい方は、元の動画をご確認ください。


【国立大学の部】「学校教育法及び国立大学法人法等の改正に関する実務説明会」(法律改正の概要について) - YouTube

配付資料、議事録:大学ガバナンス改革:文部科学省

  •  中教審の審議まとめでは、社会環境の急激な変化や大学に対する社会への期待の高まりを受け、大学にガバナンス改革が必要であるとされている。改革を行う際に、しっかりした議論をベースに大学全体として動くことは大切であるが、なかなかうまくいかないことも耳にしている。大学の中で議論が過ぎ改革が進まない状況で困る。文科省としても基本的には大学が自主的自律的に改革に取り組むことが前提であると考えており、その支援のために法令改正を行う。
  •  特に国立大学においては、学長は教学面及び経営面を所掌している。学長と教授会の関係、副学長と理事の関係等は混同されがちだが、教学面と経営面で役割が異なる。両者が一体となって大学を形成している。施行通知はその解釈を示すもの。
  •  大学の内部規則をどのように考えれば良いか。学則のもとで各規則が構成されているということが基本的な理解。学則の中で学長の役割をきちんと見直すことが必要。
  •  法人化した大学では、学長の責任と権限のもとで教員の採用等の手続きを整備できる。教育公務員特例法は適応されないが、運用上は現在も適応されている例もあると聞く。法の趣旨から言うとそれは適切な状況ではなく、総点検・見直しが必要と判断する。法人化前は任命権者である文部科学大臣が大学からの意見を聞くような法体系であったが、法人化により教育公務員特例法の適応除外となっても教員の意識は変わっていないのが現状であろう。
  •  中教審の審議まとめでは、学長の補佐体制として総括副学長の設置や専門性の高い職種の創出など、学長本人がより高度なマネジメントに携わることができるような提言がされている。学長が行うことと教授会が行うことを整理する必要がある。どの部局にどの程度ポストを置くのかを決めるのは学長だが、そのポストに誰を選ぶのかは教授会が学長に申し出ることができるといったような例。
  •  学長の選考や業績評価について。国立大学では学内選挙の実施が多いが、学長選考会議が主体性を持った選考を行うことが大切。学内の意向を聞くことは想定されるが、決めるのは学長選考会議である。教授会は教員によって構成される会議体であり、審議対象は学位の授与、学生の身分などと定義できる。それらの審議結果を考慮した上で、学長が決定を行う。
  •  ここでの教授会とは、旧来ある学部の会議体である教授会というよりは、教員による専門的な組織と解釈する。
  •  学長の権限については、今回は改正されていない。学長は校務に対する最終決定権を有しており、教職員への指揮権を有しているというのは法律制定当初からの考え方。
  •  副学長の職務については、学長から指示を受けて学長の業務を分担することができるという趣旨で改正を行った。法改正のより、総括副学長を権限を持って設置することができる。学長を補佐するということを明らかにした。
  •  教授会の役割について。教授会は審議機関であり「教授会は重要な事項を審議する」とされていたが、その内容を整理する改正を行った。事項によっては教授会が意見を述べるように義務を課しており、学長が学生の入学等を決定する際に意見を述べなければならない。また、さらに教育研究に関する重要事項については、教授会の意見を聞くべき事項を学長が個別に定めることをできるようになっている。教授会は教学面の中において役割を果たすことが本来的な役割である。この第三号の事項を決める際には、教授会に対し意見を述べるという義務を課すことになるため、学長は教授会の意見を聞く必要があると考える。決めた場合は必ず教授会に周知してほしい。
  •  教育課程の編成や教育研究業績の審査等は、第三号により教授会の意見を聞くことができるが、各大学の事情を踏まえて学長が決定する必要があると考える。教授会と意思疎通を図り、円滑な大学運営を行うことを期待している。
  •  学長や組織の長が決定するような業務の中で、教育研究に関する事項について教授会が審議することは今まで通り行える。それに加え、学長が求めたときに意見を述べることができる。学長が求めない場合は法律で規定していないが、審議結果等を学長に伝えることは差し支えない。教授会は経営に関する事項を審議する機関ではない。
  •  施行規則も併せて改正する。学生の入学・卒業・課程修了について、教授会は学長に意見を述べることができる。4月1日から運用が変わる点に留意が必要。退学、転学、留学、休学について、もともと学生の身分の取扱いを慎重にするため教授会での審議が必要としていたが、本人の希望が優先されるようなことも想定される事項でもあるため、今回の改正では条文から削除した。ただし、懲戒としての退学については、別の条文にて慎重な取扱いを求めているところ。
  •  国立大学法人法の改正について。学長の選考については、学長選考会議が定める基準により行うこととする。また、それらの情報については公表することとしている。4月1日からの施行だが、前倒しで基準決定・公表してもよい。選考理由やプロセスも併せて公表してもらう。
  •  学長選考については学長選考会議が主体的に行うものであり、意向投票結果など過度に学内の意見に左右されるのは適切ではない。学長選考会議は、学内外の意見を対等なものと踏まえて選考が行われるようにするという法律の趣旨を意識してほしい。
  •  経営協議会の学外委員は過半数にしてもらう。社会の声をより反映するという考え方。
  •  教育研究評議会は、副学長も評議員とできると改正している。副学長は校務を司る者であり、複数の場合は学長が指名する者を評議員とする。
  •  施行規則の改正では、学部長等の任命は学長の定めるところにより行うようにしている。
  •  通則法改正により監事機能の強化も行っている。監事の任期延長など。
  •  大学のガバナンス改革は、学長のリーダーシップがきちんと発揮できるように機能し、大学本来の目的が発揮され、社会から期待される役割が果たせるようになるというのが大目標である。学内規則の改正においては、学長のリーダーシップがきちんと発揮できるように機能するようになっているかという点がポイント。

(その2へ続く)