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アセスメントプランに思う 〜これからのキーワードになりうるか〜

大学一般

大学教育部会(第25回) 議事録:文部科学省

 9月に行われた中央教育審議会大学分科会大学教育部会(第25回)の議事録が掲載されていました。大学教育分会は「(1)大学教育の質の保証・向上について(設置基準,設置認可審査,認証評価の改善を含む)(2) 関連して,大学の機能別の分化や連携の在り方について」を審議するために設置されています。

資料2 第6期大学分科会における部会等の設置について:文部科学省

 9月に開催された会議の議事録が12月に出ているのは、恐らく議事録の出席者確認等を経た結果です。もう少し早く出してほしいとも思いつつ、大学分科会全体を一つの室で担当しているため、なかなか難しいところもあるのでしょう。

 さて、当該議事録で特に注目したのは、以下の発言です。

【濱名委員】  

 幾つか気になるところがあります。各大学のFD等に呼ばれて,実は大変不安に感じるのは,大学の教員自身が,自らの成績評価に対して強い自信を持っていない。つまり,アセスメントに対して大学教員が自信を持っていないということが顕著であるということです。(中略)質保証をやっていくときには,外形的な調査をいろいろやってもしようがないわけで,個々の大学の教員の評価能力が高まっていくことと,そのプログラムであるとかインスティテューショナルなレベルでの評価というものを,どう構造的につくりあげていくかです。昨年8月の答申のときに評価の位相(いそう)を整理したと思うのですけど,それを進めていくしかないのではないかと思います。

 その中で,一つは,アメリカの大学を最近見ていると,アセスメントプランというものが明確につくられているのです。アセスメントプランというのは,達成目標を,どういう尺度で,どういうデータを集めて,どのぐらいのサイクルで見るのか。4年間のサイクルの中で,このデータは2年に一度集めるとか,そういったことですが,何によって,自ら掲げた目標を証明しようとするのかということをあらかじめ明らかにすることです。それには常に定量的なデータだけではなく,ルーブリックを使って卒業研究の内容を評価していくというものもあれば,定量的な評価だけを使っている場合もあって,どのようなストラテジーでやるかは各大学にゆだねられていいと思います。

 今の状態でいうと,設置基準であろうが,認証評価の基準であろうが,自己点検評価体制はとっていますけれども,アセスメントプランが問われていないというところは不十分で,そこを突っ込まない限りにおいて,サイクルの問題だけではないと思います。やはり評価の尺度を,自らどう作るのかが重要です。

 「アセスメントプラン」という言葉がありますが、これまであまり言及されてこなかった概念ではないかと思います。これに先立ち、平成24年8月に出された「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~(答申)」では、「アセスメントポリシー」に関する言及があります。

 課題の解決には以下の諸点の改善が求められる。まず、成熟社会において学生に求められる能力をどのようなプログラムで育成するか(学位授与の方針)を明示し、その方針に従ったプログラム全体の中で個々の授業科目は能力育成のどの部分を担うかを担当教員が認識し、他の授業科目と連携し関連し合いながら組織的に教育を展開すること、その成果をプログラム共通の考え方や尺度(「アセスメント・ポリシー」 (※) )に則って評価し、その結果をプログラムの改善・進化につなげるという改革サイクルが回る構造を定着させることが必要である。

 プログラム共通の考え方や尺度(アセスメント・ポリシー)に則った成果の評価、その結果を踏まえたプログラムの改善・進化という一連の改革サイクルが機能する全学的な教学マネジメントの確立を図る。

(用語集)【アセスメント・ポリシー】(p17、20)

 学生の学修成果の評価(アセスメント)について、その目的、達成すべき質的水準及び具体的実施方法などについて定めた学内の方針。英国では、高等教育質保証機構(QAA:Quality Assurance Agency for Higher Education)が中心となって質保証に関する規範(※)を策定し、各大学が満たすべきアセスメントの質的水準や手法などについて規定している。各大学では、これを踏まえて学内の方針を定めている。

※ 「英国高等教育のための質規範」(UK Quality Code for Higher Education)。2011年に同規範が策定される前は、「高等教育の質及び水準保証のための実施規範」(Code of practice forthe assurance of academic quality and standards in higher education)が同様の役割を担っていた。

 用語集にあるQQAの指針とは、以下URLのことです。

The Quality Code

 アセスメントの具体的なことについては、UK Quality Code for Higher Education Part B: Assuring and enhancing academic quality Chapter B6: Assessment of students and the recognition of prior learning に詳しく書かれています。

UK Quality Code for Higher Education

 国内の各大学でのアセスメントポリシーの策定状況を調べてみたのですが、なかなかヒットしませんでした。その中で見つかった愛媛大学は、カリキュラム評価の確認表として「カリキュラム・アセスメント・チェックリスト」を策定しているようです。

http://web.iess.ehime-u.ac.jp/kensyukai/itiran.html

カリキュラム評価手法の策定 愛媛大学教育・学生支援機構教育企画室副室長・准教授 佐藤浩章

 また、各国の学習成果アセスメントの状況については、以下の文献に詳しく書かれています。

学習成果アセスメントのインパクトに関する総合的研究(研究成果報告書)

http://www.oecd.org/edu/skills-beyond-school/41771582.pdf

 今後、学習成果を含めた様々な状況をどのように把握していくかということは、重要性が増してくると思います。特に、所謂「調査もの」は担当者が変わればその制度設計や回答内容等が変わる場合もあり、継続的に状況を把握するためには、調査の趣旨や定義・手法等を明文化しておく必要があります。もしかしたら、認証評価にかかる大学評価基準の中に、アセスメントポリシーの策定状況についての言及が加わるかもしれないとも思っています。

 翻って、冒頭の大学教育部会での言及があったアセスメントプランですが、海外の大学webページには言及があり、中にはプランの作り方を解説しているページもあります。以下にある日本語は、原文サイトを基に私が拙く訳したものです。

Designing an Assessment Plan | Assessment Website | Vanderbilt University

アセスメント・プラン(AP)のつくりかた

1.APが果たす使命(mission statement)を確認する。ない場合は作る。

2.目的、ゴール、成果を明確にする。

目的:なぜアセスメントを行うのか?通常、アセスメントには主に2つの目的がある。

a.改善のため

b.効果を証明するため

ゴール:使命により強く要求されている成果は何か?うまく作られたAPでは3~5つのゴールに焦点を当てている。

成果:定められたゴールの達成を実証するため、測定できることはなにか。主に2つのタイプ - 経営的な成果と学生の学習成果 - がある。

3.成果を達成する計画を立てる

 求める成果をどのように達成するのか。outcome deliverly mapを完成させることで、その問いに対してさまざまなポイントを考慮する良い練習になる。

4.既存の方法や測定手法を識別し、測定方法を設定する。

 それぞれの成果をどのように測定するのか?アセスメント手法は2つに分類できる。

直接測定:知識や能力、行動など定められたゴールを達成する指標を、個々人や集団から直接測定する。

間接測定:ゴールや目標を達成できたかを、各個人の認識を基に間接的に測定する。

5.アセスメント実施に向けた計画を立てる。

 評価の各段階を責任をもって実行できるのは誰なのか?実施の際のスケジュールはどうなのか? 他にどのようなプログラムや部署が、評価の各段階を支援してくれるのか? 誰がデータを解釈して、誰が報告書作成や意思決定に参加するのか?

6.結果をどのように伝えるか計画を立てる。

 アセスメントの結果をどのように伝えていくのか。

 アセスメントプランの作り方や測定方法等わかりやすく書いてあります。その他にも、"university assessment plan"でweb検索すると、山のようにヒットします。それだけ米英の大学では一般的なのでしょう。例えば、以下のページなどはその情報量に圧倒されます。

http://www2.acs.ncsu.edu/UPA/archives/assmt/resource.htm

 国内の大学に前例がない以上、海外の大学の先行事例を調査し自大学に適応できる形を検討する必要があります。その辺りは、教員でなくとも、職員でも対応できるところはたくさんあるでしょう。この件については、恐らく回り回って現在の本務と関係してきそうですので、継続的に調査を進めていきたいと思っています。