それは研修なのか?説明会なのか?
先日学内のとある研修会に出席した際、研修会と名前が付いているにも関わらず、終わってから「う〜ん、これは果たして研修だったのだろうか」という思いになりました。学内の研修や説明会に参加する際あるいは自分自身も企画運営に関わる際にちょっと考えているのが、それが説明会的な性質を持っているのか、研修的な性質を持っているのかということです。
説明会とは、なんらか説明が必要なものに対し、関係する者を集めて開催するものです。ここで大切なのが、「説明が必要なもの」が先にあって、説明会が開催されているということです。具体的には、なんらか調査への対応や報告書等の作成、様々な手続きなど、行わなければならないものがあり、それへの対応方法を説明するようなことですね。つまり、説明会では、参加者がその後の具体的な手法、方法を理解し、行動できるようにしなければなりません。説明会が十分うまくいったかは、その後の行動(例えば、提出された報告書の内容や問い合わせ状況)によって判断できると考えます。
一方、研修とは参加者の能力や知識を向上させるために開催されるものであり、必ずしも喫緊の業務による必要性によってのみ開催されるものではありません。そのため、研修の開催にはそれ相応の背景・理由が必要であると考えます。例えば、組織としての研修計画等に掲載されていること、来たるべき未来に備えて職員の能力や知識を向上させる必要があること、などなど、組織としてその内容で開催が必要であると判断するだけでの合理的な理由があるということですね。説明会と異なり、研修の場合は、直後にその成果を活かせる場が準備されていないことがほとんどです。そのため、説明会のように今後の業務で成果を測るのではなく、目的や到達基準を設定しそれの達成状況の測ることが必要になります。多くの場合はアンケート等での自己評価や簡単なテスト・パフォーマンスなどで測定されることと思いますが、研修の効果測定についてはカーク・パトリックの4段階評価やジャック・フィリップスのROIがよく知られています。
カークパトリックの4段階評価法 | 日本イーラーニングコンソシアム
アメリカの経営学者のカークパトリック博士が1959年に提案した教育の評価法のモデル。教育の評価は、教育プログラムの改善や教育品質、効率向上のために重要であり、カークパトリックの4段階評価法が世界的に定着している。4段階モデルとは、
- レベル1:Reaction(反応):受講直後のアンケート調査などによる学習者の研修に対する満足度の評価
- レベル2:Learning(学習):筆記試験やレポート等による学習者の学習到達度の評価
- レベル3:Behavior(行動):学習者自身へのインタビューや他者評価による行動変容の評価
- レベル4:Results(業績):研修受講による学習者や職場の業績向上度合いの評価
このように並べてみると、説明会と研修会の違いは、その目的性の違いが大きいなと感じます。説明会は必要に迫られて行うものであり、ある意味で企画者はその目的についてあまり深く考えなくて良いものです。一方、研修会は目的と到達目標から設計する必要があり、それらの達成を企画者側の責務とするためにも目的と到達目標を参加者と共有するとともに、適切な達成度測定方法を検討・実施しなければなりません。冒頭の会についても、得られた知識を自己確認する仕掛けは設けられていたものの、この研修に参加した者がどのように変化するかという到達目標が参加者側に示されていなかったため、ちょっと違和感を抱いたのだろうと思っています。
説明会であろうと研修会であろうと、両者とも参加者のために行うことには違いありません。参加者の知識・能力向上、行動促進のために、自分たちが今できることをやるのではなく、参加者のために自分たちは何ができるのかを考える必要性を改めて感じた次第です。