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Glyndwr Universityの留学生受け入れ停止措置に思う 〜大胆な試験不正〜

大学一般

BBC News - Glyndwr University's foreign student recruitment freeze

Glyndwr University has been suspended from recruiting overseas students after a Home Office investigation into alleged visa fraud.

 イギリスのグリンドゥール大学が海外留学生の受け入れを停止されられるというニュースがBBCに出ていました。この件は日本ではほとんど報道がなく、私も衛星放送のニュースでちらりと聞いたきりです。いったい何が起こっているのでしょうか。

Glyndŵr University - Home

 グリンドゥール大学はイギリス・ウェールズ地方、リバプール近くの都市レグザムに位置する大学です。学生は9000名、うち大学院学生が1500名程度であり、芸術、工学、保健科学、コンピューターコミュニケーションなどの分野での教育研究が行われているようです。MBAコースもあるようですね。ガーディアン紙のランキングでも、教育のランキングで建築学、都市計画学が全英3位、芸術学が5位と、近年特にランキングを向上させているみたいですね。日本では群馬大学と国際交流協定を締結しているようです。

 では、なぜ活発に活動している大学が海外留学生の受け入れを停止されられたのでしょうか。原因は、どうも組織的と疑われている試験不正行為にあるようです。

BBC News - Glyndwr University's foreign student recruitment freeze

Nearly 50,000 immigrants may have obtained English language certificates in the UK, despite not being able to speak it.(略)There are 230 Glyndwr-sponsored students with invalid language test results, which rises to 350 when questionable results are included.(略)The "systematic cheating" typically involved invigilators supplying or reading out answers to rooms of gangs of imposters being allowed to step into the exam candidates' places to sit the test, he said.

 イギリスでは、50,000人の移民が、英語を話すことが出来ないにも関わらず語学力証明書を受け取っている可能性があります。(略)疑わしい試験結果である350人の中で、グリンドゥール大学が受け入れている学生が230人にのぼります。(略)試験会場へ立ち入ることが出来る詐欺師の集団によって、回答の配布や読み上げにより、組織的に不正が行われました。

 まずは、イギリスの学生ビザに関する基本的な情報と最近の状況について、整理します。

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現在の英語レベルを証明できる書類
IELTSなどの成績表 *Tier4学生ビザ目的で学校お申込みする場合には、必ず英語力証明が必要となります。
語学コースでは、IELTS=Reading 4.0 Listening 4.0 Writing 4.0 Speaking 4.0 をマークする必要があります。
専門学校、大学で学ぶにはそれぞれが最低5.5以上マークしていなければいけません。
TOEIC及びTOEFLは2014年4月以降は承認されなくなりましたので、ご注意ください。

 イギリスの学生ビザは、Tier4 General Student Visaと呼ばれ、申請にはパスポートや入学許可書に書かれた番号、資金証明書に加え、語学力を証明する書類が必要になります。英語の語学力と証明する試験と言えば、TOEICTOEFLがすぐに思い浮かぶところですが、2014年4月から両試験の成績証明書はTier4の申請時に認められなくなったようです。これは、BBCの取材によって、試験時の不正行為が明らかになったためです。

TOEICでのイギリスビザ、取得不可に TOEFLもダメ

 きっかけは、2月の英BBCの報道。ロンドンであったTOEIC試験で、替え玉受験や試験監督が解答を読み上げる不正が行われていたと報じました。

BBC News - Student visa system fraud exposed in BBC investigation

Panorama saw candidates for tests set by ETS, one of the largest language testing firms in the world, being replaced by "fake sitters" and having answers read out to them.
 BBCのドキュメンタリー番組である「パノラマ」の調査により、世界で最も大きな言語試験会社の一つであるETSが行う試験において、替え玉受験や回答読み上げが行われていることが発覚しました。

"Someone else will sit the exam for you. But you will have to have your photo taken there to prove you were present."The researcher was told a "guaranteed pass" would cost £500 - about three times the proper fee for the exam.After paying, she was sent to sit the exam at Eden College International in east London, a government-approved exam centre.She was set up on a computer to sit the visa application test, called TOEIC, but never actually took the exam.Instead, each of the 14 candidates had a "fake sitter" who took the spoken and written tests for them.
 入国コンサルタントは「あなたの代理人に試験を受けさせることができる。ただ、受験した証明に写真を撮影してもらう必要があるが。」と言いました。覆面調査人は、試験通過の保証として、通常の試験料金の3倍にあたる500ユーロを請求されました。費用を支払った後、政府公認の会場である東ロンドンにあるエデン大学に行きました。そこで、TOEICの試験を受験するコンピューターの前に座りましたが、実際に受験することはありませんでした。14名の受験者それぞれに替え玉受験者がおり、代わりに彼等がスピーキングとライティングの試験を受験しました。

A week later, the undercover applicant returned to the college to sit another, multiple-choice, exam.This time she had to take it herself, but the invigilator simply read out all the correct answers.It took the two dozen or so candidates just seven minutes to complete the two-hour exam.

 1週間後、覆面調査人はマークシート試験を受験するため、大学にいました。このときは、実際に自分で受験する必要がありましたが、会場にいた試験監督は全ての正解をその場で読み上げました。およそ20名程度いた受験者は、2時間の試験を7分間で終えました。

She said the government was taking action to change an immigration system "which was out of control when we inherited it", and 700 colleges had already been stopped from bringing students in from outside the EU.
 内務大臣のTheresa Mayは「私たちの管理外にあった」入国管理システムを変更すると言い、すでに700の大学がEU外からの学生の受入を停止していると述べました。

 今回のBBCの調査では、入国コンサルタントにより、不正行為が行われていたようです。試験運営を担う下請け会社も共謀しているみたいですね。私もTOEICTOEFLを受験したことがありますが、かなりシステマチックに試験が行われているという印象であり、このようなことが行われていたとは全く想像できません。

 この事実が発覚したのは2014年2月ですが、その後の調査により、かなり問題のある状況であったことが6月に報告されています。

BBC News - Scale of student visa fraud condemned as 'truly shocking'

Immigration Minister James Brokenshire told the Commons that an inquiry into abuse of the student visa system had found evidence of criminal activity, which would now be investigated fully.Of the 48,000 certificates, 29,000 were invalid and 19,000 were "questionable".Labour said the scale of the abuse was "truly shocking".Mr Brokenshire continued: "It is likely that the true totals will be higher."

 移民大臣のJames Brokenshireは、議会下院での学生ビザに関する質疑に対し、調査が完了し犯罪活動の証拠が見つかったと発言しました。語学力証明書のうち、29,000が無効であり、19,000がその効力を疑わしいと考えられるものでした。労働党は、この結果は「とても衝撃的だ」と言いました。Brokenshireは「実際には無効割合はもっと高くなるかもしれない」と続けました。

Officers uncovered evidence of "serious concern" at some campuses, and the government has downgraded Glyndwr University in north-east Wales from its status as a "highly-trusted sponsor" of student visas.In addition, 57 private further education colleges had also had their licences for admitting foreign students suspended, Mr Brokenshire said.
 「深刻な懸念」があった幾つかのキャンパスを明らかにするとともに、政府は北東ウェールズにあるグリンドゥール大学に対し、ビザの「highly-trusted sponsor」を格下げしました。さらに、Brokenshireは、57の私立大学についても同様の懸念があると続けました。

A representative of Glyndwr University said: "The university is deeply upset that its sponsor licence has been suspended by UK Visas and Immigration and is working with them to investigate the issues raised."We have partnerships with a number of suppliers and are incredibly disappointed to have been the subject of any deception or activity that would put that licence under threat."To be put in this position by external partners is frustrating as Glyndwr University takes its responsibility as a highly trusted sponsor very seriously and is committed to supporting the continuing education of those genuine international students who demonstrate full compliance with their immigration requirements."
 グリンドゥール大学の代表者はこう言いました。「大学は、政府からビザのスポンサー資格を停止されていることに対し深く憂慮し、政府に協力して調査を行っている。私たちはたくさんの提携先があり、彼等からこの問題に関して非常に失望されている。このように外部提携先から失望されている状態から抜け出すために、Highly Trusted Sponsorとしての責務を果たし、移民に求められている高いコンプライアンスを持った留学生に対する教育を行っていきたい。」

イギリス留学|higher tursted に関して

Highly Trusted Sponsorとは?
 しっかりとした管理体制を持つ、質の良い学校の証明です。この資格はイギリスのUKBA(入国管理局)が認めた資格で、出席率をしっかりと取っている学校で、不法滞在者を出さないように努力しているような、質の管理をきちんと行っている学校に与えられます。Highly Trusted Sponsor の資格を持つ学校は、それ以外の学校に比べて、政府から大きく優遇されています。2012年の4月からはこの、Highly Trusted Sponsorの資格を持つ学校以外は、学生ビザ(T4ビザ 11ヶ月を超える留学の場合必要)を取得することができなくなるので、現在多くの語学学校はこの資格を取るために全力を挙げています。

 政府によりビザに関連する格付を低下させられたため、グリンドゥール大学は学生の受入が出来なくなったようですね。しかし、毎年10,000程度学生ビザを発行している中で、これまでに発行したうち50,000が疑わしいというのは、かなり規模が大きいなという印象です。確かに政府が早急に動いたのも納得ですね。冒頭記事でも、教育大臣が深い憂慮を示しています。

Education Minister Huw Lewis told AMs on Wednesday he has asked the Higher Education Funding Council for Wales (HEFCW) to look into the matter, saying it had "potentially serious implications not just for the institution but for the reputation of the higher education sector as a whole".
 教育大臣のHuw LewisはAMに対し、HEFCWにこの問題を諮問したこととともに、本件は単独の機関だけの問題ではなく高等教育全体の評判に対し深刻な影響を与える可能性があると話しました。

 冒頭記事に戻ると、特にグリンドゥール大学で学ぶ留学生にこの疑いがある者が多く、大学全体として措置を受けたということでしょうか。大学として組織的に不正に関わった確証的な証拠があったのかは気になるところです。大学上層部への不信任の動きも出ているようですね。

BBC News - Glyndwr University task force tackles student visa problem

Two unions have passed no confidence motions in university heads.
 二つの組合は、大学上層部に対する不信任を表明する活動を起こしています。

 現行で、日本の留学ビザ発行に際し言語証明書は必要ありませんので、このような問題は発生しないと思います。

外務省: ビザ(査証) 就労や長期滞在を目的とする場合 一般ビザ:留学

一般:留学

旅券:1通
ビザ申請書:1通(ロシア・CIS諸国・グルジア人は2通)
写真:1葉(ロシア・CIS諸国・グルジア人は2葉)
在留資格認定証明書(注)原本及び写し1通

中国籍の方はこの他に,
戸口簿写し
暫住証又は居住証明書(申請先の大使館又は,総領事館の管轄地域内に戸籍を有しない場合)
質問票(在中国公館窓口で入手できます)
卒業証明書
経費支弁者の在職証明書

 ただ、少し観点が違いますが、日本でも留学生の受け入れに関する問題はたびたび聞かれるところです。ニュースにもなった事案ですと、以下の事例でしょうか。

青森大学、「偽装留学」中国人留学生140人を除籍処分 2011/01/17(月) 15:58:25 [サーチナ]

 青森大学はこのほど記者会見を開き、偽装留学などの理由で、中国人留学生140人を除籍処分にしたと発表した。環球網、国際在線などでは、「同事件が日本で大きな反響を呼んでいる」などと報じている。

 同大学によると、2008-2010年までに同大学を除籍処分となった中国人留学生は現時点で140人。除籍処分の主な理由は、アルバイト活動に従事しすぎるあまり、授業の欠席が続いたことなどによる。中には、東京都などの首都圏や、愛知県など中京圏に移り住む留学生もいたという。

 同大学の末永洋一大学長は、除籍処分となった中国人留学生の約3分の1が収入証明を偽造していたほか、入学の条件となる日本語能力についても、同大学の日本語テストに合格したはずの学生が、実は日本語を一切話せなかったことなどを明らかにし、同大学における留学生の入学基準の“緩さ”を陳謝した。同大学では現在、中国からの留学生受け入れを中止しており、これまで提携していた北京や内モンゴル日本語学校3校との協力関係も解消している。

 大学が組織的に不正を行った場合、それを発見・是正することは非常に困難だと感じています(だからこそ、公益通報制度などがあるのでしょうが。。。)。留学生の受入を促進するほど、習慣が異なるステークホルダーや彼等の母国などにいる関係者等が増えることになり、大学にとって困難な状況が発生することも予想できます。関係国の情報や他大学での対応状況を細やかに収集することが、まずもっての対応策でしょうか。