本年度後期や次年度の各授業科目の実施方法に係る留意点について

https://www.mext.go.jp/content/20200727-mxt_kouhou01-000004520_1.pdf

本年度後期や次年度の各授業科目の実施方法に係る留意点について

 文科省より、本年度後学期や次年度の授業に係る通知が出されました。いくつか気になる点がありますので、ここに明記しておきます。

1.大学設置基準第25条第1項について

 本年度後期や次年度の各授業科目の実施方法を検討するに当たっては,大学設置基準第25条第1項が,主に教室等において対面で授業を行うことを想定していることに鑑み,

 コロナ関係の通知でこの文言は初めて見た気がします。関連条文を確認します。

大学設置基準

(授業の方法)

第二十五条 授業は、講義、演習、実験、実習若しくは実技のいずれかにより又はこれらの併用により行うものとする。

2 大学は、文部科学大臣が別に定めるところにより、前項の授業を、多様なメディアを高度に利用して、当該授業を行う教室等以外の場所で履修させることができる。

3 大学は、第一項の授業を、外国において履修させることができる。前項の規定により、多様なメディアを高度に利用して、当該授業を行う教室等以外の場所で履修させる場合についても、同様とする。

4 大学は、文部科学大臣が別に定めるところにより、第一項の授業の一部を、校舎及び附属施設以外の場所で行うことができる。

 第2項から第4項まではできる規定であるため、原則としては第1項の対応であり、それは対面授業を想定しているとのことです。大学設置基準の解釈が通知に出てくることはそれほど多くないため、覚えておきたいところです。

2.面接授業の実施検討について

地域の感染状況や,教室の規模,受講者数,教育効果等を総合考慮し,今年度の授業の実施状況や学生の状況・希望等も踏まえつつ,感染対策を講じた上での面接授業の実施が適切と判断されるものについては面接授業の実施を検討していただき,授業の全部又は一部について面接授業の実施が困難と判断される際には,「2 遠隔授業等の実施に係る留意点」を踏まえた上で,遠隔授業等(面接授業との併用を含む。)の実施を検討いただくようお願いいたします。

 この文章からは、まずは対面授業の実施を検討し、実施が困難である場合は遠隔授業等の実施を検討するように読み取れます。

 前学期前に発出された「令和2年度における大学等の授業の開始等について(通知)」(元文科高第1259号令和2年3月24日)では、

面接授業に代えて遠隔授業を行う場合にも,大学は当該授業科目を履修した学生に対しては試験の上単位を与えることになるが,その方法は,一斉に実施する定期試験等に限られるものではなく,レポートの活用による学習評価等,到達目標に応じた適切な成績評価手法を選択することができること。

とあり、あくまで遠隔授業は面接授業の代わりであることとなっています。

 今回の通知ではそれが一層明確な印象を受け、面接授業の軸足を置くというコロナ以前の状態に回帰気味なのではないかと思っています。

 ちょっと気になるのは「学生の希望」という文言が含まれているところです。本来であれば、授業の実施形態は、最も教育効果の上がり到達目標は達成される方策を選択すべきだと考えますが、「学生の状況」はともかく、ここで「学生の希望」という文言が含まれた意味を考えてしまいます。

 この文言は、本通知中にもう一度出てきます。

ただし,感染の状況は日々刻々と変化しているものであることから,一度実施方針を決定した後においても,地域の感染状況や,学生の希望等も踏まえ,必要に応じてその実施方法の見直しや更なる改善に努めるようお願いいたします。

 「地域の感染状況」と「学生の希望」が並列で明記されています。この取り扱いは慎重に検討していきたいです。

3.受験生への情報提供について

以上を踏まえ,各授業科目の実施方法について御検討いただいた結果,本年度後期や次年度の授業の実施方法としては,面接授業のみ実施,面接授業と遠隔授業の併用実施,遠隔授業のみ実施等多様な授業の実施形態が考えられますが,いずれの場合も,授業計画(シラバス)等に明示し,学生に対して丁寧な説明に努めるとともに,その実施方針等については、受験生の進学先の参考となるよう,できる限り早めにインターネット等により公表していただくようお願いいたします。

 「受験生の進学先の参考」という言葉が出てきました。

 文章上は、「本年度後期や次年度の授業の実施方法としては,(中略)その実施方針等については、受験生の進学先の参考となるよう,できる限り早めにインターネット等により公表していただくようお願いいたします。」となるため、必ず各授業の形態を公表するというよりは、実施方針を公表するという取り扱いができると考えています。ただ、一度決定した後も見直しや改善に努めよとあるなかで、都度都度変更を公表することは、どの程度受験生の進学先の参考になるのか判断ができないと感じています。

4.レポート課題の不正防止措置について

その際,課題の提出や定期試験等の代替として行われるレポートの活用による学習評価等の際の不正防止対応方策を講じていること。

 レポート課題の不正防止対応方策が唐突に出てきました。当然、従前から何らか対応していると思いますが、ここでいう「対応方策」が個々の教員の努力で足りるものなのか、剽窃防止システムの導入など組織的な対応のみ該当するものなのかは判断が難しいところです。