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COC事業の申請状況に思う 〜公表資料から申請・採択傾向を探る〜

大学一般

平成26年度「地(知)の拠点整備事業」の申請状況について:文部科学省

 平成26年度「地(知)の拠点整備事業」の公募について、各大学長・短期大学長・高等専門学校長あてに通知を行ったところですが、このたび、各大学等からの申請状況を別添のとおりまとめましたので、お知らせいたします。

 文部科学省HPに、平成26年度「地(知)の拠点整備事業」の申請状況が掲載されていました。各大学から237件の申請があったようで、昨年度の申請数319件と合わせると、多くの大学が同事業に申請していることがわかります。同事業は申請状況及び採択状況(申請大学名、事業名など)が公表されていますので、それを基に申請及び採択の傾向を考えてみます。

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 まずは、基本的な情報からです。H25の設置形態別採択状況を図1に示します。同事業は、1大学のみの申請である「単独申請」と複数の大学が共同で申請する「共同申請」の2種類の申請ができます。図1の共同申請における校数には、申請した大学等毎の数を示しますので、事業数とは一致しません。

 図1から、単独申請において、国立大学が40%以上という採択率である一方、私立大学は10%以下に留まっていることがわかります。なお、全体の採択率は、単独申請が16.1%、共同申請が18.6%でした。

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 本事業は、各大学が地域と連携して行う事業であり、事業名を見てもかなり地域色豊かであることが確認できます。そこで、各都道府県別に申請と採択の状況を見てみます。図2に各都道府県別のH25申請件数を、図3に各都道府県別のH25採択件数を、図4に各都道府県別のH26申請件数を示します。なお、各大学の本部所在地の都道府県を計上するとともに、共同申請の場合は各大学の本部所在地の都道府県にそれぞれ計上しています。

 申請状況について見てみます。図2及び図4より、H25及びH26ともほぼ全ての都道府県から同事業に関する申請があったことがわかります。なお、唯一申請がなかったのは、H26の佐賀県だけでした。また、図2及び図4より、申請数に偏りがあり、特に北海道や都市圏において申請数が多いことがわかります。H25の東京都は31件の申請(うち28件は私立大学)とかなり多くの申請がありました。なお、H24からH25にかけて、多くの都道府県では申請数が減少しました。

 

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 採択状況について、図3から、各都道府県に広く採択されていることがわかります。最大は兵庫県の4校(4事業)でした。図2と図3を見比べると、多く申請を出している都道府県ほど多く採択されているとは言えないようです。そこで、図5に、各都道府県別の申請数及び採択数、採択率(採択数/申請数)を示します。図5から、申請数と採択数が比例していないことが明らかです。これだけ申請数にばらつきがあるにも関わらず、採択数が各都道府県とも概ね同じような数であることを考えると、一都道府県当たりの採択数上限があるのではないかとも思えます。と言うことは、H26の採択については、H25で採択されていない都道府県が有利になるのかもしれません。

 ここまで、単独申請や共同申請、あるいは全ての設置形態について言及をしてきました。以降は、話を単純にするため、国立大学、公立大学、私立大学の単独申請に限定して、話を展開します。

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 図6に、H25とH26の申請数の変化を示します。3形態とも申請数が減少していますが、H26の申請数にH25の採択数を加えると、H25の申請数とかなり近づくことがわかります。ここから、H25に非採択だった大学が、H26に再度申請している可能性が示唆されます。特に、公立大学においては、H26の申請数とH25の採択数を加えた数(49校)が、H25の申請数(51校)とかなり近似します。

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 図7に、H26の申請数の内訳を示します。「単独再申請校」とは、H25に単独申請し不採択になったもののH26に再度単独申請を行った大学の数です。また、「単独新規申請校」とは、H25に単独申請しておらず、H26に初めて単独申請した大学の数です。H25の「単独申請不採択校」の一部が「単独再申請校」として、H26に申請を行っています。これを見ると、特に、国立大学や公立大学において、「単独申請不採択校」と「単独再申請校」が近しい値であることがわかります。

 表1に、単独再申請校/単独申請不採択校を再申請率として計算した値を示します。特に、公立大学において75%の大学が再申請を行っています。他の補助事業における再申請率は不明ですが、かなり高い再申請率だという印象を持ちました。私立大学においても、半数以上の大学が再度申請を行っていると言うことで、各大学において同事業採択への意欲を感じます。なお、再申請を行った各大学は、概ね事業名や関連自治体の変更を行っており、申請内容をブラッシュアップしていることも想像できます。

 同事業は、都道府県や市町村等と連携して事業を実施するようになっており、申請状況一覧及び採択状況一覧には、各事業の連携する自治体等が掲載されています。そこで、申請状況及び採択状況における連携自治体等の状況を確認します。なお、都道府県及び市町村以外の教育委員会やその他組織を連携自治体として掲げた大学は少数であるため、「連携自治体等」欄における都道府県及び市町村の状況を確認します。

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 図8に、国公私立大学の申請、採択状況における都道府県及び市町村との平均連携数を示します。国立大学では、H25からH26にかけて市町村との平均連携数が増加しH25採択大学の平均数を上回っていることがわかります。一方、私立大学では、H25からH26にかけて市町村との平均連携数が減少しておりH25採択大学の平均数を下回っていることがわかります。これは、採択された私立大学のうち8自治体等及び13自治体等と連携している大学がありますので、私立大学のH25採択大学の平均値が高く算出されたものと考えます。

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 図9に、H25採択大学の連携自治体等数を示します。ここから、各大学により連携数がバラバラであり、一概に連携数により採択を決定しているわけではないことが推測できます。ただ、都道府県との連携については、国公私により差があることが示唆されます。

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 図10に、国公私立大学における都道府県との連携の有無をH25申請校、H25採択校、H26申請校に分けて示します。図10から、申請・採択ともに、国立、公立、私立大学の順で、都道府県との連携をする大学の割合が減少していることがわかります。特に、国立大学においては、H25採択校の全てが都道府県との連携を前提に計画を立てており、ここから、国立大学におけるCOC事業の役割は設置都道府県全域に行き渡るものであるという審査側の意図も感じることができます。

 ここまで、申請状況及び採択状況を基に、COC事業の都道府県別の状況や連携自治体との状況を確認してきました。もちろん、事業の審査は計画調書により行われるものであり、これら外形的な情報から見えてくるものはほとんどないと言って良いでしょう。今回の様々なグラフ等も、私の好奇心を満たす以上のものではありません。ただ、このようにすでに公表されている情報を整理・分析し、何らかの傾向を見いだすというトレーニングにもなり、いくつかの示唆も得ることができたなという感想です。

 気になるのは、H25に申請・不採択でありH26に申請しなかった大学です。基本的に、補助事業とは、各大学で実施される事業を補助するということです。つまり、申請が採択されなくとも各大学で(規模の縮小等はあるにせよ)実施されることが前提であり、だからこその「受託事業」ではなく「補助事業」だという認識です。COC事業も、同事業の目的に合う各大学の取組に対し、「大学改革推進等補助金」を用いて補助を行います。不採択だった各大学の取組は実施されているのでしょうか。

 ここで述べているのは理想論的であることは承知しています。しかし、補助金を理想論で語らなければ、ただ資金を獲得する目的のみになり、補助金への依存体質に拍車がかかると思っています。もちろん、資金を得て取組を行うことは大切ですが、それは常に教育研究の延長線上で語られなければなりません。その意味で、本事業の再申請率が高いということは、一年間自治体等との連携を推進してきた結果としての申請である可能性もあると思っています。