(私見注意)免許法改正に伴う「学力に関する証明書の発行」に関する整理

本エントリーは現時点の情報を踏まえた私見であり、誤りを含む可能性があります。安易にこの整理に従わず、自己責任で判断してください。

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 教育職員免許法(以下、「免許法」という。)が改正され、教職課程を有する大学等は、現行の教職課程の認定を再度受けるための再課程認定申請の真っ最中です。免許法の改正は、大学等の教職課程のみならず、都道府県教育委員会が発行する教育職員免許状授与にも大きな影響を与えます。つまり、免許状授与のために大学等が発行する「学力に関する証明書」にも影響を与えるということです。特に、免許法改正に伴う「旧課程」と「新課程」の発生、また、改正前後の「経過措置」により、どのような形で学力に関する証明書を発行すれば良いのかが、非常に分かりにくくなっています。

 今回、学力に関する証明書を発行する際に必要な留意点について、整理を試みましたので、以下に記します。なお、あくまで現時点での私見ですので、誤りを含む可能性があることをご承知おきください。また、学力に関する証明書や改正免許法・旧課程・新課程の説明は省略します。

経過措置の原則

教育公務員特例法等の一部を改正する法律の公布について(通知):文部科学省

教育公務員特例法等の一部を改正する法律 抄

教育職員免許法の一部改正に伴う経過措置)

第五条

 附則第一条第三号に掲げる規定の施行の際現に大学又は第二条の規定による改正前の教育職員免許法(以下「旧免許法」という。)別表第一備考第三号の規定により文部科学大臣の指定を受けている教員養成機関、旧免許法第五条第一項の規定により文部科学大臣の指定を受けている養護教諭養成機関若しくは旧免許法別表第二の二備考第二号の規定により文部科学大臣の指定を受けている教員養成機関に在学している者についての免許状の授与の所要資格については、第三号施行日以後においても当該者がこれらを卒業するまでは、新免許法別表第一、別表第二及び別表第二の二の規定にかかわらず、なお従前の例による。

第六条

 第三号施行日前に大学又は旧免許法別表第一備考第三号の規定により文部科学大臣が指定した教員養成機関、旧免許法第五条第一項の規定により文部科学大臣が指定した養護教諭養成機関若しくは旧免許法別表第二の二備考第二号の規定により文部科学大臣が指定した教員養成機関に在学した者で、これらを卒業するまでに旧免許法別表第一、別表第二又は別表第二の二に規定するそれぞれの普通免許状に係る所要資格を得たもの(前条の規定によりなお従前の例によることとされる免許状の授与の所要資格を得た者を含む。)は、新免許法別表第一、別表第二又は別表第二の二に規定する当該普通免許状に係る所要資格を得たものとみなす。

 上記や文部科学省が作成した質疑応答集を踏まえると、改正免許法の経過措置はおおむね以下の原則に整理できると考えます。

  1. 2019年3月31日から4月1日にかけて学籍が継続されるのであれば、旧課程が適用される。(転入学を含む)
  2. 2019年4月1日以降に新たに学籍が発生する場合は、新課程が適用される。(編入学を含む)
  3. 2019年3月31日以前に在学していた場合でも、2019年4月1日以降に改正前免許法別表第一、第二又は第二の二に定める所要資格(以下、「所要資格」という。)を得ずに卒業・退学した場合は、以降の免許状取得において新課程が適用される。
  4. 2019年3月31日以前に旧課程で所要資格を得ていれば、新課程での所要資格を得たものとみなされる。

 ただし、他学部聴講や科目等履修など、上記の原則に当てはまらないケースも多々考えられます。本エントリーにはあまり影響を与えないので詳しく言及しませんが、引き続きケース別の取り扱いに係る情報収集が必要であると認識しています。

免許法改正に伴う学力に関する証明書の発行に関する問題

 前述のとおり、免許法改正には経過措置が設けられ、新課程適用学生(卒業・修了生)と旧課程適用学生(卒業・修了生)が発生します。新課程と旧課程で免許状の取得要件が異なりますので、免許状取得のために発行する学力に関する証明書も、学力に関する証明書の発行を申請する者(以下、「申請者」という。)の適用課程に合わせて作成しなければなりません。

 教員免許状を発行する免許管理者は都道府県教育委員会であり、適用課程は教育委員会が判断するものとも思われます。ただ、私の印象では、申請者は教育委員会に事前に相談することなくいきなり大学に来る場合が多いと感じています。申請者(卒業・修了生など)の利便性を考えると、何度も教育委員会と大学を行き来させるよりは、可能な限り大学側でも適用課程の判断ができるようにする必要があるのではないかと思っています。

 では、学力に関する証明書を発行する大学等として、申請者の適用課程をどのように判断すればよいのでしょうか。

申請者の適用課程の判断

入学年度 条件1 条件2 適用課程
2019年度以降 新課程
2018年度以前 所要資格を得ずに卒業・退学した者 新課程
所要資格を得て卒業した者 2019年度以降に新たな種類の免許状取得を目指す者 新課程
上位以外の者 旧課程

 上記に、私が考える申請者の適用課程の判断表を示します。なお、2019年度以降に証明書を発行することを前提に考えています。

 学力に関する証明書は免許状の授与申請に使用されるため、申請者は証明書の受領後に免許状授与申請を行うものと想定しています。また、新卒者ではなく、卒業・修了後に個別に申請してくる例を想定しています。

1.2019年度以降に入学した者

 前述の原則2により、2019年度以降に入学した者は、新課程の適用になります。そのため、そのような者から申請があった場合は、新課程に係る学力に関する証明書を発行することになります。

2.2018年度以前に入学した者

 2018年度以前に入学した者は、以下の条件により適用する課程が分けられます。

2−1.所要資格を得ずに卒業・退学した者

 前述の原則3により、2018年度以前に入学した者で、かつ、所要資格を得ずに卒業・退学した者は新課程の適用になります。そのため、そのような者から申請があった場合は、新課程に係る学力に関する証明書を発行することになります。

 このような場合は、在学中に取りきれなかった単位を何らかの方法(科目等履修生など)で取得し、在学中の取得単位と合わせて免許状授与申請を行うことが多いと思われます。新課程での免許状授与申請となりますので、新課程に係る学力に関する証明書が必要でしょう。

2−2.所要資格を得て卒業した者
2−2−1.2019年度以降に新たな種類の免許状取得を目指す者

 前述の原則1または4により、卒業時点で所要資格を得ていれば旧課程が適用されます。しかし、卒業後に新たな免許状取得を目指す場合は、当該免許状の取得は新課程の適用となりますので、もし学力に関する証明書の発行申請がある場合は新課程に係る学力に関する証明書が必要でしょう。

 このような場合は、例えば専修免許状取得を目指して大学院に入学した場合や教育職員検定(いわゆる6条申請)に必要な単位を科目等履修生で取得した場合などで、何らかの理由で学力に関する証明書が必要になった場合を想定しています。

2−2−2.2−2−1以外の場合

 前述の原則1または4により、卒業時点で所要資格を得ていれば旧課程が適用されます。その後、新たな免許状取得を目指さない場合、もし学力に関する証明書の発行申請があれば旧課程に係る学力に関する証明書が必要でしょう。

 このような場合は、卒業・修了後しばらくを経てから免許状授与申請を行う場合などが想定できます。

さらに検討が必要な事項

 上記の通り、2019年度以降の学力に関する証明書の発行においては、申請者の学習履歴に応じた対応が必要となります。当然ながら、学習履歴のみならず、証明書を請求する理由や今後の免許状授与申請予定等も把握しなければならないでしょう。その他、気づいた範囲ではありますが、さらに検討が必要と思われる事項を以下に羅列します。

1. 多様なケースに応じた対応

 上記の通り整理を試みたのですが、いまいち、MECEではない気がしています。特に、2018年度以前に入学し所要資格を得て卒業・修了した者については、更なる条件付けが考えられるところです。

2.みなし(読み替え)への対応

 旧課程から新課程へのみなし(読み替え)については、読み替え表の作成などを通じて、更なる整理が必要です。

 本エントリーとは直接関係ありませんが、旧課程のみを有する大学等は新課程に係る学力に関する証明書を作成できませんので、もし編入学生が元所属校から旧課程に係る学力に関する証明書のみを発行された場合は、現所属校で読み替えを行わなければならないのではないかと考えています。

3.免許管理者との連携

 前述の通り、適用課程の判断は免許状授与者である免許管理者(都道府県教育委員会)が行う判断でもありますので、必要に応じて、免許管理者との連携や連絡についても検討が必要かもしれません。