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大学経営人材の養成に思う

大学一般

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 さて本日は、高等教育業界では知らない人はいないだろう、山本眞一先生(以下、筆者)の研究報告(以下、本報告)の中で特に気になった点をひもときながら、いつものようにオチのない話を展開していきます。報告の概要ではなく、気になった点のつまみ食いですので、本記事で本報告の全容はつかめません。是非、原典をご一読ください。

 これからの時代の大学経営を担い、あるいはそれを支える人材(以下、これを「大学経営人材」と呼ぶ)は、事務職員や外部人材だけではなく、大学経営に意欲と能力を有する教員からも求めることが重要で、これに役員を加えた三者(職員・教員・役員)の密接・有機的な関連の中で大学経営を行う必要がある。(はじめに)

  ここで、筆者は、大学経営人材を定義付けするとともに、職員・教員・役員(以下、三者)という視点を明らかにし、本報告をはじめます。本報告は、これまでの大学職員に関する研究に新たに教員・役員という視点を加え、アンケート分析結果をそれぞれの職階毎に示しながら、大学経営人材の養成に関する検討を行っています。筆者は、「これら三者の組み合わせこそが「教職協働」と表現すべきものであるが、それは様々な課題の実行と解決を目指し三者が共通の目的をもつことを意味する」と記しています。ここから、三者の意識・視点を認識すること、つまり本報告の重要性についての筆者の考えが垣間見れます。

 能力の裏づけのない職員の存在は、大学経営のパワーを減殺する。たとえば国立大学の管理職職員を考えるとよい。(中略)文部省の動向に従い、かつ前例踏襲に心がけることによって、国立大学は結構うまく運営できたものであった。しかし、法人化後の国立大学はそれでは済まなくなってきている。管理職には経営マインドが必要であり、(中略)大学の現在や未来は、過去からの延長ではありえない時代になってきている。(P3)

 なぜ「国立大学はそれでは済まなくなってきている」のかをもう少し詳しく聞きたいところですが、それは本報告の趣旨から外れるのでさらっと流します。国立大学の管理職職員については、本BLOGでも記事「異動官職について思う」にて触れましたが、文部科学省人事に基づく「異動官職」が一定数数含まれます。本報告によれば、その方々はそれまで在職していた官僚制型組織では養成されてこなかった能力を求められることになり、配属後それを自覚的に養成しなければ「大学経営のパワーを減殺する」とも考えられます。

 まず総務系については、部局長や一般教員は「教職協働」を挙げる者が一番多いが、幹部職員や一般職員は「職員の企画」を一番に挙げる者が多い。(P10)

  一読すると、確かに結果に違和感がありますが、これは調査票によるものと思われます。巻末の調査票を確認すると「総務(企画、人事、庶務など)系」とあり、恐らく教員は「企画」と言う言葉に影響を受け教職協働を選択したのではないでしょうか。対し、一般職員は日常業務での「総務」という言葉から、職員が担うものと判断した可能性があります。所謂「企画」という業務をどのように考えるのか、総務系とひとくくりにして良いのかという課題が示唆されます。

 自己啓発の実施状況について、(中略)一般職においてその比率が相対的に低い状況が現れている。(中略)一部熱心な職員がいることは承知しつつも、このことは将来の大学経営人材養成のあり方を考える上で、職員にはその役割にふさわしい能力開発が必要であることを改めて想起させるものである。(P11)
 能力開発に係る自己啓発については、(中略)一般教員や一般職員は低調である。ただし一般職員は、「大学経営を扱う大学院での学習」を行う割合が7%と他の職位よりも高い。(中略)自己啓発に関して一般職員における二極化の端緒と考えられなくもない。(P18)

 ここは重要な指摘だという認識です。二極化と言いつつも、両極はかなり不均等な人的規模でしょうし、実際には人的規模について両極の間にグラデーションがあるでしょう。今後職員の能力開発を検討する際は、両極の間にいる人たちをどのように動かしていくのか、動かしていけるのかを考える必要があります。

 興味深いのは部局長では国立・公立・私立の順に教育・研究・診療に使う割合が少ないのに対して、一般教員ではこの順番で、教育・研究・診療に使う時間が多くなっていることである。(P11)

 図4(P12)を見ると、国立大学の部局長は他の設置者のそれに比べ「役割に応じた業務」に多く時間を割かれています。また、図3(P17)を見ると、経営・管理能力の必要性に関するアンケート結果から、国立大学の部局長は他の設置者のそれよりも明らかに経営・管理能力の必要性が低いと認識されています。ここから、国立大学の部局長は経営・管理能力よりも調整能力を必要が認識されており、実際も役割に応じた調整業務を行っているのではないかと推測されます。現在中央教育審議会で議論されている「大学のガバナンス」にも関連しますが、部局長の置かれている状況を見ると、各学部等においてどの程度リーダーシップを発揮しているのか不明であり、主として調整業務を行っているのではないでしょうか。

 職員が教員の活動の下働きをし、定型的な事務的労務にさえ従事していれば良いという時代は、もはや過去のものである。(中略)職員の立ち位置の確立とこれを裏付けする能力の開発が必要不可欠になってきているのである。(P102)

 ここが、本報告に一貫している主張だと認識しています。ここで職員の能力開発について触れられていますが、「職員の専門性」については別の機会に書き散らしたいと思います。

 問題は、その役職にふさわしい能力を養えているかどうかである。(中略)公務員時代の地位は必ずしも新たな役割にふさわしい能力の保証にはならない。(中略)今後は急いで「役員」クラスの人材の教育訓練にも視野を広げる必要がある。(P103)

  現在、国立大学協会でトップセミナーなど役員等を対象とした研修は行われていますが、各大学単独で開催している大学はなかなかないのではないでしょうか。近隣大学や同規模大学などとうまく手を組んで進めていく必要があると思っています。

 さて、ここまで読んできてやっぱりわからないのが、大学経営人材とはどのような働きをする人材なのか、その人材がいれば大学がどのように良くなるか、その人材はどのような能力を持つのか、です。また、大学経営人材とその他の人材という分け方が可能なのかどうかも、定かではないと感じています。現状、大学経営人材にふさわしい人は誰でどのような働き方をしているのか、も気になるところですね。

【参考文献】

職員調査にみる大学経営人材育成の現状と課題-私立大学職員に着目して(大学経営政策研究第1号(2011年3月発行):39-53)

http://ump.p.u-tokyo.ac.jp/journal/2010-1/

 私はまだ、国立大学における「経営」が何を指すのか、理解が足りないようです。もちろん、国立大学法人法第二十条第四項に定められた経営協議会の審議事項がその一端であることは理解しており、実際にその業務にも関わっています。

 経営協議会は、次に掲げる事項を審議する。
一  中期目標についての意見に関する事項のうち、国立大学法人の経営に関するもの
二  中期計画及び年度計画に関する事項のうち、国立大学法人の経営に関するもの
三  学則(国立大学法人の経営に関する部分に限る。)、会計規程、役員に対する報酬及び退職手当の支給の基準、職員の給与及び退職手当の支給の基準その他の経営に係る重要な規則の制定又は改廃に関する事項
四  予算の作成及び執行並びに決算に関する事項
五  組織及び運営の状況について自ら行う点検及び評価に関する事項
六  その他国立大学法人の経営に関する重要事項

 ただ、どうにも具体的にイメージできないというのが正直なところです。まだまだ勉強が必要だと、本報告を読んで再認識しました。