ブログを書くときに気をつけている4つのこと

 気がつけばこのブログも長い間続けることができました。最近は特に大学職員への転職系ブログが増えてきたなと感じていますが、それは私には書くことができません。引き続き、高等教育政策や大学よもやま話で個性を出していきたいと思っているところです。

 とりとめもなく書き散らかしているわけですが、それでも記事を書くときに気をつけていることはあります。

1.可能な限り一次資料を引用する

 個人的には、論文のように事実を積み上げて結論を出すような書き方を好んでいます。そのため、可能な限り、記事中に一次資料を引用するようにしています。他の方のブログも含め、必ず事実に基づいていなければならないとも思っていませんが、少なくとも自分が書く範囲においてはそのように心がけています。

2.考える・思う・感じるを使い分ける

 考える・思う・感じるの使い分けについては以前にも言及したところです。ある程度の根拠に基づいて特定の理由により導かれることを考える、明確な理由は考えつかないがおそらくこうだろうと推測できることを思う、事実関係を明確にしていないが自分の観測範囲ではこのようなことだろうということを感じる、と大まかに分けています。これにより、当該事象に対する自己の思考段階を整理しているつもりです。

3.広く公表されているものを取り上げる

 資料の分析や講演会説明会等の内容を記事にしていますが、基本的には、webで公表されているものや無料の講演会説明会等を対象としています。内容の担保を図ることもそうですが、主催者側が有料としたものをブログという無料媒体で書くのもどうかなと思っているので、その点には気を払うようにしています。

4.読み手のことをあまり考えない

 元々このブログは他のSNSと連携しないという前提で始めたものです。そのため、読み手の反応をあまり収集しておらず、記事を書く時にも読み手のことをあまり考えていません。そのため、唐突に書籍や映画の紹介があったり、一条文の解釈があったり、我ながら統一感のない感じで書き進めているところです。

6年目を迎え、カテゴリーを細分化しました。

 弊ブログを始めた頃、どうせ続くわけないと思い、カテゴリーを「大学一般」「その他」「ネタ」の3つのみに設定しました。結局、中断も含みつつ弊ブログも6年目に入り、現在では360を超える記事、総アクセスは140万近くをいただいています。

 そんなわけで、6年目を迎えたことを機に、これまでの全ての記事を見直し、改めてカテゴリーを細かく付け直しました。昔の記事になるほど区分が難しく、非常に大雑把なカテゴリー分けとなっていますが、何かの折に参照される際の参考にいただければ幸です。

<カテゴリー一覧>

(私見注意)免許法改正に伴う「学力に関する証明書の発行」に関する整理

本エントリーは現時点の情報を踏まえた私見であり、誤りを含む可能性があります。安易にこの整理に従わず、自己責任で判断してください。

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 教育職員免許法(以下、「免許法」という。)が改正され、教職課程を有する大学等は、現行の教職課程の認定を再度受けるための再課程認定申請の真っ最中です。免許法の改正は、大学等の教職課程のみならず、都道府県教育委員会が発行する教育職員免許状授与にも大きな影響を与えます。つまり、免許状授与のために大学等が発行する「学力に関する証明書」にも影響を与えるということです。特に、免許法改正に伴う「旧課程」と「新課程」の発生、また、改正前後の「経過措置」により、どのような形で学力に関する証明書を発行すれば良いのかが、非常に分かりにくくなっています。

 今回、学力に関する証明書を発行する際に必要な留意点について、整理を試みましたので、以下に記します。なお、あくまで現時点での私見ですので、誤りを含む可能性があることをご承知おきください。また、学力に関する証明書や改正免許法・旧課程・新課程の説明は省略します。

経過措置の原則

教育公務員特例法等の一部を改正する法律の公布について(通知):文部科学省

教育公務員特例法等の一部を改正する法律 抄

教育職員免許法の一部改正に伴う経過措置)

第五条

 附則第一条第三号に掲げる規定の施行の際現に大学又は第二条の規定による改正前の教育職員免許法(以下「旧免許法」という。)別表第一備考第三号の規定により文部科学大臣の指定を受けている教員養成機関、旧免許法第五条第一項の規定により文部科学大臣の指定を受けている養護教諭養成機関若しくは旧免許法別表第二の二備考第二号の規定により文部科学大臣の指定を受けている教員養成機関に在学している者についての免許状の授与の所要資格については、第三号施行日以後においても当該者がこれらを卒業するまでは、新免許法別表第一、別表第二及び別表第二の二の規定にかかわらず、なお従前の例による。

第六条

 第三号施行日前に大学又は旧免許法別表第一備考第三号の規定により文部科学大臣が指定した教員養成機関、旧免許法第五条第一項の規定により文部科学大臣が指定した養護教諭養成機関若しくは旧免許法別表第二の二備考第二号の規定により文部科学大臣が指定した教員養成機関に在学した者で、これらを卒業するまでに旧免許法別表第一、別表第二又は別表第二の二に規定するそれぞれの普通免許状に係る所要資格を得たもの(前条の規定によりなお従前の例によることとされる免許状の授与の所要資格を得た者を含む。)は、新免許法別表第一、別表第二又は別表第二の二に規定する当該普通免許状に係る所要資格を得たものとみなす。

 上記や文部科学省が作成した質疑応答集を踏まえると、改正免許法の経過措置はおおむね以下の原則に整理できると考えます。

  1. 2019年3月31日から4月1日にかけて学籍が継続されるのであれば、旧課程が適用される。(転入学を含む)
  2. 2019年4月1日以降に新たに学籍が発生する場合は、新課程が適用される。(編入学を含む)
  3. 2019年3月31日以前に在学していた場合でも、2019年4月1日以降に改正前免許法別表第一、第二又は第二の二に定める所要資格(以下、「所要資格」という。)を得ずに卒業・退学した場合は、以降の免許状取得において新課程が適用される。
  4. 2019年3月31日以前に旧課程で所要資格を得ていれば、新課程での所要資格を得たものとみなされる。

 ただし、他学部聴講や科目等履修など、上記の原則に当てはまらないケースも多々考えられます。本エントリーにはあまり影響を与えないので詳しく言及しませんが、引き続きケース別の取り扱いに係る情報収集が必要であると認識しています。

免許法改正に伴う学力に関する証明書の発行に関する問題

 前述のとおり、免許法改正には経過措置が設けられ、新課程適用学生(卒業・修了生)と旧課程適用学生(卒業・修了生)が発生します。新課程と旧課程で免許状の取得要件が異なりますので、免許状取得のために発行する学力に関する証明書も、学力に関する証明書の発行を申請する者(以下、「申請者」という。)の適用課程に合わせて作成しなければなりません。

 教員免許状を発行する免許管理者は都道府県教育委員会であり、適用課程は教育委員会が判断するものとも思われます。ただ、私の印象では、申請者は教育委員会に事前に相談することなくいきなり大学に来る場合が多いと感じています。申請者(卒業・修了生など)の利便性を考えると、何度も教育委員会と大学を行き来させるよりは、可能な限り大学側でも適用課程の判断ができるようにする必要があるのではないかと思っています。

 では、学力に関する証明書を発行する大学等として、申請者の適用課程をどのように判断すればよいのでしょうか。

申請者の適用課程の判断

入学年度 条件1 条件2 適用課程
2019年度以降 新課程
2018年度以前 所要資格を得ずに卒業・退学した者 新課程
所要資格を得て卒業した者 2019年度以降に新たな種類の免許状取得を目指す者 新課程
上位以外の者 旧課程

 上記に、私が考える申請者の適用課程の判断表を示します。なお、2019年度以降に証明書を発行することを前提に考えています。

 学力に関する証明書は免許状の授与申請に使用されるため、申請者は証明書の受領後に免許状授与申請を行うものと想定しています。また、新卒者ではなく、卒業・修了後に個別に申請してくる例を想定しています。

1.2019年度以降に入学した者

 前述の原則2により、2019年度以降に入学した者は、新課程の適用になります。そのため、そのような者から申請があった場合は、新課程に係る学力に関する証明書を発行することになります。

2.2018年度以前に入学した者

 2018年度以前に入学した者は、以下の条件により適用する課程が分けられます。

2−1.所要資格を得ずに卒業・退学した者

 前述の原則3により、2018年度以前に入学した者で、かつ、所要資格を得ずに卒業・退学した者は新課程の適用になります。そのため、そのような者から申請があった場合は、新課程に係る学力に関する証明書を発行することになります。

 このような場合は、在学中に取りきれなかった単位を何らかの方法(科目等履修生など)で取得し、在学中の取得単位と合わせて免許状授与申請を行うことが多いと思われます。新課程での免許状授与申請となりますので、新課程に係る学力に関する証明書が必要でしょう。

2−2.所要資格を得て卒業した者
2−2−1.2019年度以降に新たな種類の免許状取得を目指す者

 前述の原則1または4により、卒業時点で所要資格を得ていれば旧課程が適用されます。しかし、卒業後に新たな免許状取得を目指す場合は、当該免許状の取得は新課程の適用となりますので、もし学力に関する証明書の発行申請がある場合は新課程に係る学力に関する証明書が必要でしょう。

 このような場合は、例えば専修免許状取得を目指して大学院に入学した場合や教育職員検定(いわゆる6条申請)に必要な単位を科目等履修生で取得した場合などで、何らかの理由で学力に関する証明書が必要になった場合を想定しています。

2−2−2.2−2−1以外の場合

 前述の原則1または4により、卒業時点で所要資格を得ていれば旧課程が適用されます。その後、新たな免許状取得を目指さない場合、もし学力に関する証明書の発行申請があれば旧課程に係る学力に関する証明書が必要でしょう。

 このような場合は、卒業・修了後しばらくを経てから免許状授与申請を行う場合などが想定できます。

さらに検討が必要な事項

 上記の通り、2019年度以降の学力に関する証明書の発行においては、申請者の学習履歴に応じた対応が必要となります。当然ながら、学習履歴のみならず、証明書を請求する理由や今後の免許状授与申請予定等も把握しなければならないでしょう。その他、気づいた範囲ではありますが、さらに検討が必要と思われる事項を以下に羅列します。

1. 多様なケースに応じた対応

 上記の通り整理を試みたのですが、いまいち、MECEではない気がしています。特に、2018年度以前に入学し所要資格を得て卒業・修了した者については、更なる条件付けが考えられるところです。

2.みなし(読み替え)への対応

 旧課程から新課程へのみなし(読み替え)については、読み替え表の作成などを通じて、更なる整理が必要です。

 本エントリーとは直接関係ありませんが、旧課程のみを有する大学等は新課程に係る学力に関する証明書を作成できませんので、もし編入学生が元所属校から旧課程に係る学力に関する証明書のみを発行された場合は、現所属校で読み替えを行わなければならないのではないかと考えています。

3.免許管理者との連携

 前述の通り、適用課程の判断は免許状授与者である免許管理者(都道府県教育委員会)が行う判断でもありますので、必要に応じて、免許管理者との連携や連絡についても検討が必要かもしれません。

教育職員免許法第5条第2項(所要資格を得た日から10年以上を経過した者への免許状授与)に関する整理

 今回は非常にニッチな話題であり、個人的な整理文章です。

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教育職員免許法

第五条 普通免許状は、別表第一、別表第二若しくは別表第二の二に定める基礎資格を有し、かつ、大学若しくは文部科学大臣の指定する養護教諭養成機関において別表第一、別表第二若しくは別表第二の二に定める単位を修得した者又はその免許状を授与するため行う教育職員検定に合格した者に授与する。ただし、次の各号のいずれかに該当する者には、授与しない。(略)

2 前項本文の規定にかかわらず、別表第一から別表第二の二までに規定する普通免許状に係る所要資格を得た日の翌日から起算して十年を経過する日の属する年度の末日を経過した者に対する普通免許状の授与は、その者が免許状更新講習(第九条の三第一項に規定する免許状更新講習をいう。以下第九条の二までにおいて同じ。)の課程を修了した後文部科学省令で定める二年以上の期間内にある場合に限り、行うものとする。

 教育職員免許法第5条第2項の規定には、以下の2つの場合が考えられる。

1.失効した免許状を再取得する場合

1−1.新免許状所持者の場合

  • 更新手続きを行わずに有効期間の満了日を過ぎた場合、保有する全ての免許状が効力を失った状態(失効)となる。
  • 教育職員免許法第5条第2項により、免許状が失効となった場合でも、教員免許状更新講習(以下、「更新講習」と言う。)を必要な時間数修了し免許管理者へ申請を行えば、新たな有効期間が定められた新たな免許状が授与される。
  • この場合、失効後に受講する更新講習の受講資格としては、免許状更新講習規則第9条第2項のいずれかが該当すると思われる。

1−2.旧免許状所持者の場合

  • 教育職員免許法附則第2条第5項により、旧免許状所持現職教員が修了確認期限までに免許管理者による更新講習修了確認を受けなかった場合には、保有する全ての免許状が効力を失った状態(失効)となる。

    旧免許状所持現職教員(知識技能その他の事項を勘案して免許状更新講習を受ける必要がないものとして文部科学省令で定めるところにより免許管理者が認めた者を除く。)が修了確認期限までに更新講習修了確認を受けなかった場合には、その者の有する普通免許状及び特別免許状は、その効力を失う。

  • この場合、教育職員免許法附則第2条第6項により、当該免許状を免許管理者へ返納しなければならない。

    前項の規定により免許状が失効した者は、速やかに、その免許状を免許管理者に返納しなければならない。

  • 教育職員免許法附則第2条第1項により、旧免許状所持現職教員が免許状を失効した場合、教育職員免許法第5条第2項が適用される。よって、新免許状所持者と同様に、更新講習を必要な時間数修了し免許管理者へ申請を行えば、有効期間が定められた新免許状が授与される。この段階で、当該者は、旧免許状所持者から新免許状所持者となる。
  • この場合、失効後に受講する更新講習の受講資格としては、免許状更新講習規則第9条第2項のいずれかが該当すると思われる。
  • なお、現職教員(受講義務者)ではない旧免許状所持者が修了確認期限までに免許管理者による更新講習修了確認を受けなかった場合、教育職員免許法附則第2条第7項により、免許状は失効せず、免許管理者による更新講習修了確認を受けなければ教育職員になることができないこととなる。

    旧免許状所持者(旧免許状所持現職教員を除く。)が更新講習修了確認を受けずに修了確認期限を経過した場合には、その者は、その後に、第三項第三号に規定する免許管理者による確認を受けなければ、教育職員になることができない。

2.初めて免許状を取得する場合

  • 教育職員免許法第5条第2項により、普通免許状に係る所要資格を得た日の翌日から起算して十年を経過する日の属する年度の末日を経過した者が初めて免許状を取得する場合、免許状を取得する前に更新講習を必要な時間数受講・修了しなければならない。なお、この場合の所要資格には、教育職員免許法施行規則第66条の6に定める科目及び介護等体験は含まれない。
  • 一般的に、更新講習は現在所持している免許状の効力を更新するために行われるものである。そのため、免許状を所持していない者が更新講習を受講できるのか、受講できる場合はどのような根拠によるものか、受講する場合はどのような対応が必要かを整理しておく必要がある。

 

 前述の通り、免許状を所持していない者に係る更新講習の受講について、以下の通り整理する。

1.根拠法

  • 更新講習の受講者は、教育職員免許法第9条の3第3項並びに免許状更新講習規則第9条第1項及び第2項により規定されている。
  • 免許状更新講習規則第9条第1項及び第2項には、受講対象者として、

    普通免許状若しくは特別免許状を有する者、普通免許状に係る所要資格を得た者、教員資格認定試験に合格した者、免許法第十六条の三第二項若しくは第十七条第一項に規定する文部科学省令で定める資格を有する者又は教育職員免許法施行法第二条の表の上欄各号に掲げる者

    とあり、免許状を有する者のみを受講対象者としているわけではない。
  • よって、免許状を所持していない者であっても、所要資格を得ており、免許状更新講習規則第9条第1項及び第2項の各号に定められる立場にあれば、更新講習を受講することができる。

2.免許状を所持していない者が更新講習を受講する際の対応

2−1.受講対象者としての資格

  • 免許状を所持していない者は、その時点では教員としては勤務しておらず、免許状更新講習規則第9条第2項第2号又は第3号に定められるいずれかの立場にあるものと考えられる。
  • 教員免許更新制の実施に係る関係省令等の整備について(通知)により、講習開設機関は受講資格の確認が必要であるため、当該者の受講資格やその証明先について、当該者及び都道府県教育委員会と十分に調整する必要がある。

    免許状更新講習の開設者は、受講申込時に、受講申込を行う者が更新講習規則第9条に規定する受講対象者に該当するか否かについて、証明者が証明した書類の提出を求めることなどにより確認すること。なお、証明者については受講申込を行う者が勤務する学校の校長等が考えられるが、各任命権者等により適切に運用されたいこと。

2−2.申し込み条件

  • webフォームで更新講習を申し込む際、所持する免許状の登録を必須事項としている場合は当該者が同フォームを使用して講習に申し込むことができない。そのため、当該者からの申し出により、柔軟に対応する必要がある。
  • 一方で、一度も免許状を所持していない者が更新講習を受講する事例は極めて数が少ないと考えられる。そのため、このような自体を想定しシステム改修を行うのではなく、運用において柔軟に対応できる方法を検討すべきであると考える。

2−3.講習内容

  • 一般に、更新講習は現職教員を主眼においた内容となっており、免許状を所持していない者の受講を想定していない。また、当該者は今まで更新講習を受講したことがないと考えられ、更新講習の内容や進行、修了試験などについての知識は乏しいものと思われる。
  • そのため、必要に応じて、当該者に対し、更新講習は現職教員を主眼においた内容であることや修了試験のことなどを説明しても良い。

(10月10日更新)中教審グランドデザイン答申(案)への2,3の所感

(10月10日更新)

パブリックコメント:意見募集中案件詳細|電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申(案))」に関する意見募集の実施について

 本件に関するパブリックコメントが募集されています。提出締切は10月26日です。

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大学分科会(第143回)・将来構想部会(第9期~)(第26回)合同会議 配付資料:文部科学省

 中央教育審議会の会議資料が公表されており、その中で「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申案)」(以下、「本答申案」と言う。)があります。これは、平成29年3月の文部科学大臣からの「我が国の高等教育に関する将来構想について(諮問)」を受けての答申です。

 これは今後の大学教育や大学設置、大学規模等に係る非常に重要な答申です。前回と同じく、ザッと眺めて気づいた点や疑問点を以下に記しておきます。

誰に向けた文章なのか

 中央教育審議会が行う答申とは文部科学大臣からの諮問を受けたものであり、基本的に答申の受け手は文部科学大臣であろうと思います。一方で、答申はその後の政策誘導や規制緩和につながるものであり、大学関係者等も注目しているものである。

 本答申案は、大学運営や大学教育の微に入り細に入り記載されており、まるで大学に対する指南書のようになっています。

本答申が提言した高等教育のグランドデザインは、全ての学修者が自らの能力の伸長を実感できる高等教育改革の実現であり、それができない機関は社会からの厳しい評価を受けることとなり、その結果として撤退に至ることもあり得ることを覚悟しなければならない。(P49)

と大臣相手に凄んでみても仕方なく、答申の書き方として合致しているのかどうか私にはわかりませんでした。

学修者とは誰か

 本答申案は、

高等教育は、学修者が、予測困難時代に自らの能力を最大限に発揮し、多様な価値観を持つ人材が協働して社会と世界に貢献していくため、学修者にとっての「知識の共通基盤」 となるという視点に立ち、「何を学び、身に付けることができるのか」を中軸に据えた多様性と柔軟性を持った高等教育への転換を引き続き図っていく必要がある。(P7)

とし、学修者中心主義への転換を述べています。その通りに、答申案には「学修者」と言う言葉が26ヶ所も出てきます。

 ただ、これだけ学修者中心主義を打ち出しつつも、そもそも「学修者」とはどのような者を指すのかが全く述べられていません。どのような属性や意欲、能力などを持つ者をこの答申案で学修者と言っているのか、単純に入学者のことなのか、学修者中心主義を掲げつつもその「学修者」が定義されていないため全体的に空虚に感じます。

超人を育てるのか

 本答申案では、今後必要な人材として、

予測困難な時代の到来を見据えた場合、専攻分野についての専門性を有するだけではな く、思考力、判断力、俯瞰力、表現力の基盤の上に、幅広い教養を身に付け、高い公共性・倫理性を保持しつつ、時代の変化に合わせて積極的に社会を支え、論理的思考力を持って社会を改善していく資質を有する人材、すなわち「21 世紀型市民(「我が国の高等教育の将来像(平成17 年1月28 日 中央教育審議会答申)」以下「将来像答申」という。)」 が多く誕生し、変化を受容し、ジレンマを克服しつつ、さらに新しい価値を創造しながら、様々な分野で多様性を持って活躍していることが必要である。

特に、AI などの技術革新が進んでいく中においては、新しい技術を使っていく側として、読解力や数学的思考力を含む基礎的で普遍的な知識・理解と汎用的な技能を持ち、その知識や技能を活用でき、技術革新と価値創造の源となる飛躍知の発見・創造など新たな社会を牽引する能力が求められる。(P5) 

と述べられています。

 これを見ただけで、こんな人間いるわけないだろとツッコミたくなりました(現に弊記事でツッコんでいるわけですが…)。必要な能力を、その水準や測定方法等も考慮せず、とりあえず盛ったと言う印象です。これを審議している中教審委員や文科省官僚の皆さんはこの能力を全てお持ちなのでしょうか、また、ご自身のお子さんなどには、これらの能力を全て身に付けるように育てられているのでしょうか。

地域社会への丸投げではないか

 本答申案では、地域における高等教育の将来像として、

高等教育の将来像を国が示すだけではなく、それぞれの地域において、高等教育機関が産業界や地方公共団体を巻き込んで、それぞれの将来像が議論されるべき時代を迎えていると考えられる。(P39)

とし、

地域の単位は、各高等教育機関が結びつきの強い地域を中心に、歴史や文化に裏打ちされた、経済圏や生活圏といった関わりで捉えることが適切である。その際は、必要な関係者と議論していく必要がある。

そのために、地域の高等教育機関が高等教育という役割を越えて、地域社会の核となり、産業界や地方公共団体とともに将来像の議論や具体的な連携・交流等の方策について議論する「地域連携プラットフォーム(仮称)」を構築することが必要である。(略)その際には、地域の高等教育機関の経営戦略が重要であり、学長等、トップの力量と覚悟が求められる。(P39)

としています。

 ただ、地域連携プラットフォーム(仮称)はどのような姿であるのか本答申案では十分に語られず、同プラットフォームに関する国の関与としても情報収集・提供や精度整備などを記すに留まっています。これは、実質的に、グランドデザインの地域社会への丸投げではないかと考えます。

 現実として、各大学は他大学を総括するような気概もそのために費やせる労力・コストもなく、都道府県市町村も大学行政は所管外であるため非常に及び腰であると言う印象があります(一部の地域は異なるのかもしれませんが…)。大学行政を都道府県や道州の所管とするなど大胆な権限移譲を行わなければ、各地方が一律に高等教育の将来構想を行うことは難しいのかもしれません。

再設置認可申請への布石か

 本答申案では、国が行う質保証システムの改善として設置審査と認証評価の関係について述べられており、

現在の設置基準を時代に即したものとして、 例えば、定員管理、教育手法、施設設備等について、時代の変化や情報技術の進歩、大学教育の進展を踏まえ、学生/教員比率の設定や、編入学や転入学などの学生の流動性への対応、教育課程を踏まえた教員組織の在り方、情報通信技術を活用した授業を行う際の施設設備の在り方など、抜本的に見直す必要がある。 なお、この見直しについては、新たに設置される大学のみならず、既存の大学も含んだ全ての大学を対象として、我が国の大学教育全体の質保証を担保する観点から行うものであり、今後、専門的な審議を経た上で行うべきである。(P30)

と設置基準の見直しに関する言及があります。

 ここで注目したいのは、「全ての大学を対象として」と言う点です。まさに、教育職員免許法改正に伴う再課程認定と同様に、全ての大学等を対象として再設置認可申請の可能性を感じさせるものだとニヤニヤしました。まぁ流石にそのようなことにはならないだろうと思いますが、設置基準が大きく変わったときに既存の大学がどのような影響を受けるのかは注視しておく必要がありますね。

国の役割とは何か

 高等教育への投資における国の役割として、

いかに高等教育機関が社会に貢献し、その便益を高めていくか、 また、それにより得られる経済効果をいかに高等教育に還元していくか、ということを示しつつ、必要な投資を得られる機運の醸成を国は後押ししていく必要がある。(P47)

とあります。

 この部分は本当に驚きました。本来、今後の国の教育政策を示すべき答申において、国の役割は機運醸成の後押しであると精神論で押し通そうとしています。ここは、高等教育に必要な投資につながるような政策の方向性を示してほしかったです。

 一応、この後の部分では給付型奨学金の拡充等に触れつつ、

高等教育における教育や研究への投資の在り方や、限られた財源の中で、公的な支援、民間からの投資と社会からの寄附等の支援、個人負担のバランスの在り方について、国のあるべき姿の一環として引き続き、議論をしていく必要がある。(P47)

と引き続き検討していくべきとしています。

視点が様々で構成が不明

 全体的に、大学規模や将来構想といった大きな話と、大学教育の手法や教育情報公開といった細かい話が同一に語られており、構成のレイヤーに統一性が無いように感じました。恐らく、審議会の中であった様々な話を詰め込んだ結果なのだろうと思います。

 答申案が示された段階で、委員から「多様な議論をまとめていただきありがとございます」のような発言が出ることがありますが、答申として多様な意見をただ”まとめる”ことが良いことなのかは、私にはわかりません。

些細な点ですが

教学マネジメントの確立に当たっては、個別の教育改革に係る手法を効果的に活用しつつ、各大学が学長のリーダーシップの下で、卒業認定・ 学位授与の方針、教育課程編成・実施の方針、入学者受入れの方針(以下「三つの方針」 という。)に基づく体系的で組織的な大学教育を、学位を与える課程(プログラム)共通の考え方や尺度(アセスメント・ポリシー)を踏まえた点検・評価を通じて、不断の改善に取り組むことが必要である。(P28)

とありますが、「尺度(アセスメント・ポリシー)」と言う言葉の使い方には非常に違和感があります。

 質的転換答申の用語集では、

【アセスメント・ポリシー】

学生の学修成果の評価(アセスメント)について、その目的、達成すべき質的水準及び具体的実施方法などについて定めた学内の方針。英国では、高等教育質保証機構(QAA:Quality Assura nce Agency for Higher Education)が中心となって質保証に関する規範を策定し、各大学が満たすべきアセスメントの質的水準や手法などについて規定している。各大学では、これを踏まえて学内の方針を定めている。

とあり、これを尺度と捉えるには無理があると感じます。せめて、評価の方針(アセスメント・ポリシー)や学修成果の点検方針(アセスメント・ポリシー)でしょうか。

中教審制度・教育改革WG審議まとめ(案)への2,3の所感

制度・教育改革ワーキンググループ(第19回) 配付資料:文部科学省

 中央教育審議会大学分科会将来構想部会制度・教育改革ワーキンググループの審議まとめ(案)が公表されています。本件は、平成29年3月の文科大臣諮問を受けて審議が行われているものです。今後の大学行政を左右するものだと思われますので内容を確認していたのですが、2,3疑問や感じたことがありましたのでここに記しておきます。

将来が予測できるのか

「第4次産業革命」が進展し、産業構造の変化が激しくなる中、必要とされる分野の中長期的な予測に基づいて学部等を設置することが困難な時代になっていることから、将来生まれるニーズに応じて新たな学部等を迅速かつ柔軟に設置できるようにすることが必要となっている。(P4) 

 ここでは、学部等の設置の迅速さが必要であることが強調されています。ただ、"中長期的な予測は困難"としつつも、"将来生まれるニーズに応じて"とあり、結局将来が予想できないと考えているのかできると考えているのか、明確ではないなと感じました。

 一般的に、4年制学部の設置には、構想段階から卒業生輩出まで7年ほどを要すると考えます。今流行っていること・流行りつつあることを踏まえて学部等を設置しても、最初の卒業生が卒業する頃には当該事項は廃れているかもしれません。このタイムラグと社会環境の変化との関係をどのように考えるのか、十分に検討しなければならないですね。

主語が不明瞭ではないか

 全般的に文章の主語が明確ではないと感じました。特に、

IT技術等の進展に伴う産業構造の変化や長寿命化社会の到来といった経済・ 社会の急速な変化に応じて、職業や働き方の在り方が様変わりしている中で、一人一人の国民が生涯を通して社会で活躍できる社会や、また我が国の労働生産性の向上を実現するためには、すべての国民が社会に出た後も学び続けることにより、新たに必要とされる知識や能力、技術を身に付け、またそれを更新していくことが、これまで以上に求められている。(P10)

では、"すべての国民が社会に出た後も学び続けることにより、新たに必要とされる知識や能力、技術を身に付け、またそれを更新していくこと"という非常に大変なことが一体誰から求められているのか不明であり、学び続けなければならないということへの説得力が少ないですね。おそらく、"一人一人の国民が生涯を通して社会で活躍できる社会や、また我が国の労働生産性の向上を実現する"という目的なのでしょうか、それが"すべての国民が社会に出た後も学び続けること"により達成されるという関係性は自明ではありません。

各大学の状況は把握できているのか

大学教育改革については積極的に改善の努力を行っている大学と努力が不十分な大学に二極化しているのではないかという指摘もあり、一律に取り組まれているとは言い難い状況にある。(P24)

 ここである"二極化している"という指摘が果たして正しいのものなのか、現状が適切に把握できているのか、疑問に感じました。一般的に良いもの・悪いものはマスコミ等に取り上げられやすいと思われますが、逆に言えば、最もボリュームが多いであろう中間層はあまり表に出ることはありません。"積極的に改善の努力を行っている大学と努力が不十分な大学に二極化しているのではないか"ということは、つまり、マスコミや書籍、講演会等レベルでしか大学の現状を把握できていないのではないか、単なる印象論に終始しているのではないかという疑念すら抱かせます。

 もっと言うと、"大学教育改革に〜〜一律に取り組"む必要があるのか、と言う点も必ずしも是とは言えないでしょう。ここで言う"大学教育改革"が何を指すのか、本審議まとめ(案)にはどこにも明記されていませんが、まるで「改革は全て善である悪い改革などない」と言っているようです。

教学マネジメントに係る指針はどのようなものか

今後、各大学の教学面での改善・改革に係る取組を促していくために、必要な制度改正に加え、各大学における取組に際してどのような点に留意しどのような点から充実を図っていくべきかなどを網羅的にまとめた教学マネジメントに係る指針を、大学分科会のもとで作成し、各大学へ一括して示す必要がある。(P24)

 教学マネジメントに係る指針を作成し、公表するようです。ただ、"単に在るべき姿を提示するのではなく、各大学の取組の実態を考慮した提示の仕方を考える必要""教学マネジメントに係る指針は特定の取組を大学に強制するものではないこと、各大学が創意工夫を行い学士課程の質的転換に向けた取組を確立することが重要"とあります。

 国立大学への対応や私立大学等改革総合支援事業の調査票などを見ていると大学へのマイクロマネジメントが進展していると考えており、このように言いつつも、当該教学マネジメントに係る指針がどの程度の実質的拘束力を持つものなのか、気になります。教職課程コアカリキュラムのようにたくさん内容を詰め込んで、結果として大学側はコスト的に指針に示された内容しかできないようにならなければ良いのですが。

リカレント教育に関する諸々

 全般的に、審議まとめ(案)で書かれている「リカレント教育」は学部教育を想定しているのか、大学院教育を想定しているのか、その他プログラムを想定しているのか、明確ではないと感じました。なお、大学院への社会人入学者は入学者全体の18%程度はおり、一定程度の結果は上がりつつあるものと考えています。

 また、

そのためにも、企業等は、どのような知識やスキルを社員に求めているのかを具体的に明らかにし、高等教育機関と連携してプログラムの開発・実施に結びつけていくことを進めていくことが必要である。(P11)

とある通り、リカレント教育については教育関係者のみで議論しても効果的な施策は打ち出せないようにも感じます。

多様な大学は実現されるのか

カレッジマネジメント【212】Sep.-Oct.2018「進学ブランド力調査2018」|カレッジマネジメント|リクルート進学総研

 カレッジマネジメント212では、蛯名高等教育企画課長が「今後の高等教育の将来像の提示に向けた中間まとめ」について寄稿しています。その中では、

高等教育機関は、今まで以上に「多様な価値観を持つ多様な人材が集まることにより多様な価値が想像される場」=「多様な価値観が集まるキャンパス」となることが求められる。

とあり、これ自体には異論はありません。ただ、審議まとめ(案)やその他の状況を踏まえると、多様な価値観を持つたくさんの大学ではなく、単独の価値観や特定の方向性を持った大学観が透けて見えます。

 これまでの大学教育の運営が各機関により差が生じているため、一定程度の指針を打ち出すという趣旨はわからないでもありません。ただ、ここに書かれたことを全て過不足なくできる大学は多くはないでしょう。研究や社会連携、学生支援などを全て投げ打って取り組めばあるいは、と言ったところでしょうか。

 同じくカレッジマネジメント212では、吉武公立大学法人首都大学東京理事が「政策を見据えつつ 現場主導の改革を」の中で

 学長・副学長は政策の背景や目的を理解するとともに、それに対する自身の考えを持ち、政策をどのように運営に活かせば大学をより良い方向に向かわせることができるか考え、学内の理解を得ながら実際の活動に落とし込んでいかなければならない。

 その一方で、政策担当者と対話する機会を持ち、大学改革を進める上で真に必要な政策の提言も積極的に行うべきであろう。自校の中で進む具体的な取り組みを示し、成果と課題を明らかにしながら、如何なる支援があれば、その活動レベルを引き上げ、学内に広く展開できるかを説明する。それらは政策立案に資する貴重な材料になるであろう。

 政策に対して受け身の姿勢に終始することなく、ある時は学内改革に巧みに活用し、ある時は政策形成に積極的に働きかける。学長・副学長がそのような役割を果たすことで、政策と現場を繋げることができる。

 学生を基点に、政策を活かし、政策に働きかける。今の大学に必要なのは、このような姿勢ではなかろうか。

と述べており、基本的にはこのようなスタンスで臨むことになるだろうなと感じています。

セミナー「学長のリーダーシップとその能力養成」に参加してきました。

名古屋大学 高等教育研究センター

第91回客員教授セミナー

講演題目:学長のリーダーシップとその能力養成

講演者:両角 亜希子 氏(東京大学大学院教育学研究科・准教授)

日時:2018年9月26日(水)15:00~17:00

場所:名古屋大学 東山キャンパス 文系総合館5階 アクティブラーニングスタジオ

講演概要

近年のガバナンス改革では、学長のリーダーシップを強化するために、その権限強化が図られてきた。大学が教育活動の質を維持・向上させていくために学長の役割が重要であるのは確かだが、学長のリーダーシップとは具体的にどういうことなのか、そうした手腕を学長たちはどのように身につけてきたのだろうか。発表では、教育改革を進めていると思われる大学の学長に対するインタビュー調査等の結果から、この問題を検討する。

 名古屋大学高等教育研究センター第91回客員教授セミナー「学長のリーダーシップとその能力養成」に参加してきました。平日の午後ということで参加者は必ずしも多くなかったですが、遠方からの参加者や理論から実務レベルまで活発な質疑応答など、参加者の問題意識の高さが感じられました。

 以下に、私が理解できた範囲でのみですが、記録を示します。なお、今回の発表は学長へのインタビュー調査が元になっておりますので、インタビュイーが特定されないよう、発表及び質疑応答の一部を記録からカットしています。

発表

  • 学長のリーダーシップへの期待は大きい。政策的には20年ほど同じ議論を行っている。大学教員も執行部には高い期待を抱いている。学部の専任教員への調査では、学長に対し、自大学の理解とビジョンの提示、構成員の調整などが期待されている。
  • 政策的には、学長への権限の集中が図られ、法改正など通じた制度面の支援と補助金など予算面の支援が行われ、学長がリーダーシップを発揮しやすい環境の整備が図られてきた。
  • 学長は業務の範囲が広く、業務に必要な能力も多いことが調査により明らかになった。昔ならば名誉職であったが、現在は非常に難しい仕事に取り組む専門職となっていると考えられる。
  • 諸外国の研究では、学長には合意形成を促すリーダーシップが必要であることやそのリーダーシップの多様性等が指摘されている。リーダーシップとはフォロワーシップとの関係で成立するものであり、権限強化だけでは成しえない。
  • 現在では上級管理職向け研修も多くある。個人的には、他の設置主体と比較しても国立大学はより厳しい状況に置かれていると思うが、そのためか国立大学の上級管理職向けの研修が増えてきている印象である。研修内容も高度化している。ただ、参加しているのは一部の大学・上級管理職であり、リーダーシップの更なる発揮のためには人材育成という観点は不可欠であると考える。
  • 学長は自身のリーダーシップをどのように考えているのか、どのように身につけてきたのかを明らかにするため、10人の学長に対するインタビュー調査を行った。
  • (以降、インタビューの内容等への言及は省略)
  • インタビュー調査をまとめると、リーダーシップには個人差もあるが、その発揮には大学の置かれた環境によるところも大きいと考えられる。外部環境が厳しい大学は学長が引っ張っていかざるを得ない。改革の方向性についてあらかじめ構成員の賛同を得ておくと、後々やりやすくなる。
  • 学長と必要な能力を整理すると、やりきる力(胆力)や自分の考えをわかりやすく短時間と伝える力、丁寧に話を聞く力が重要であると各者が認識していた。大学の方向性を理解してもらうためのコミュニケーションが大切である。
  • 執行部や学部長経験は学長の業務に有効であったようだが、ただ漫然と業務をこなすのではなく、それぞれの立場で独自の勉強をしていた点が大切である。
  • 仲間を作ることは将来のトップを育成するうえでも有効である。資質のある者をどのように育成していくかという課題もある。
  • 各大学の事情にあった質の高い学内経験が重要であり、経験をいかに積ませるのかという発想が必要である。
  • ガバナンスが多様な私学だからか、私学の学長研修が手薄であるという印象である。

質疑応答

  • Q.インタビューを行った学長は職員に対し大学運営にどのようにコミットしてほしいと言っていたか
  • A.教員は教育研究に専念し、職員は管理運営に積極的に関与してほしいと言っていた。大学運営から職員が除外されている文化を変えていきたいようだ。
  • Q.学長の選抜方法についてどのように考えるか。
  • A.選抜方法が就任後の学長としての在り方に影響を与える可能性はある。今回のインタビューでは学部の利害代表者のような意識をもった学長はいなかった。推薦者が退職し後ろ盾がなく苦労した話も聞いた。誰が学長である自分自身をサポートしているのかという視点は、どのような改革を行えるかということに影響を与えているのかもしれない。
  • Q.学部長の選抜方法として、学長が指名すべきか、学部から選出されるべきか、どのように考えるか。
  • A.一般論で言えば、学長が指名することにより一貫した改革が実現できると考える。学部長の選抜方法を変更した大学もある。ただ、大学による文化の違いも重要であり、自分たちで選んだということを重要視する組織文化もあり得るだろう。教員の自律性を育てながらそれを引き出していくことが大切であるという発言をした学長もいた。
  • Q.インタビューを踏まえて学長の現状をどのように認識しているか。また、私立大学長へのインタビューが多く、昨今の国の政策を踏まえると、国立大学長への調査もさらに行うべきではないか。
  • A."学者のリーダー"から"大学の顔"という立場の変化は強くなっており、学長自身もそれを自覚しているように感じた。ただ、併せて、実際には"学者のリーダー"としての個性を持った者が選抜されているようにも感じた。個人的には、国立大学の学長は政策で示された方向性に対応しているのみに感じており、ビジョンを打ち出して実現する学長のリーダーシップについてはどのように把握すべきか検討が必要だと思う。
  • Q.副学長との業務分担などで特徴的な事例はあるか。
  • A.副学長を新たに設置した学長もいた。副学長の配置や役割は多様であり、大学ごとの特性や学長自身が何を実現したいかにもよるだろう。学長が副学長を指名できることが大切だと考える。
  • Q.副学長をどのようにうまく活用していけばよいか。
  • A.副学長への権限の委譲が行われていないことがある。副学長にどのような仕事をしてもらうのかを明確にしていくことが必要。
  • Q.学長へのフォロワーシップはどのように考えるのか。
  • A.フォロワーとは大学の構成員を考えている。構成員は学長のブレーキ役足りうる場合もある。
  • Q.学長選抜の宗教的条件(クリスチャンコードなど)についてどのように考えるのか。
  • A.選抜が非常に限定的になってくると、選抜条件を変更することもあり得るのではないか。
  • Q.学長や学部長の任期はどれほどが適切だと考えるか。
  • A.学長の任期が4年では短く、6年くらいはあっても良いのかもしれない。学部長の任期も2年が多いが、学長からすれば短いという意見もあった。
  • Q.学長へのインタビューにおいて今の高等教育政策への意見はあったか。
  • A.私学の学長が多かったからか、そのような意見はなかった。ただ、法改正などで学長の権限を強化しても大学内の文化は変わっておらず、丁寧にやっていかなければならないという意見はあった。

所感

  • 両角先生が(理由は不明ながらも)国立大学がもっとも環境が厳しいと言っていたのが印象的でした。一方で、国立大学が国の施策に対応しているのみという点は、(もし「国立大学の経営」という言葉があるとすれば)国立大学の経営の限界を感じさせるところだと思いました。
  • 副学長がいない大学があることに驚きました。国立大学では複数名の副学長がそれぞれの役割(〜〜担当)を担っていることが多いです。

参考文献