数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度(リテラシーレベル)公募説明会に参加しました。

www.mext.go.jp

 令和3年3月3日に開催された数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度(リテラシーレベル)公募説明会に参加しました。リテラシーレベルにおけるプログラム認定が開始されたところであり、それなりに参加者があったように感じました。

 以下に、私が理解できた範囲での記録を記します。

<挨拶>

  • デジタルトランスフォーメーションがますます進展しており,学生に数理・データサイエンス・AI教育を行う必要がある。大学のブランド力向上にも利用してほしい。

<制度説明>

リテラシーレベル

  • リテラシーレベルについては,2月24日に公募を開始したところである。MDASHとして普及させていきたい。
  • 申請受付は3月17日から開始し,5月14日まで受け付ける。4月末日頃からはWebフォーㇺを用いて申請を受け付けるが,それまではメールにて受け付ける。早く提出された申請は早めに審査し,随時認定結果を大学に通知していきたい。7月末までには,すべての大学等に認定を出す予定である。順次認定は本年度限りとするが,毎年同様のスケジュールとしたい。
  • 応用レベルのモデルカリキュラムは3月末にとりまとめ予定である。
  • 文科省HPにてQ&Aも掲載しているため,確認してほしい。個別の質問にすべて回答するものではなく,随時Q&Aに反映させていきたい。
  • 申請要件①として,申請プログラムは大学等の正規プログラムである必要があり,大学が機関として1つのプログラムを申請することになる。ただし,リテラシーリテラシープラスの両方に申請することは可能である。
  • 申請要件②として,プログラムは全学開講であり,履修者数・履修率などの目標等を設定する必要がある。年度ごとにプログラムの履修者数・履修率の目標値を設定し,それを達成する取り組みを明記する必要がある。また,希望者全員が受講可能となるような体制である必要がある。また,学生への周知方法も記載する必要がある。
  • 申請要件③として,プログラムの情報(身に着けることのできる能力や修了要件など)がまとまって公表されている必要がある。申請時点で,それらの情報がインターネット等で公表されていなければならない。
  • 学部等により修了要件が異なればそれを明記し,学部等ごとに具体的な修了要件を記載する必要がある。また,情報公表されているURLやプログラムの学修成果(身につけられる能力)も明記する必要がある。プログラム実施体制を定める規則名称や体制の設置目的,具体的な構成員も記載してほしい。
  • 申請要件④として,プログラムの体系性を担保するために,5つの審査項目ごとにプログラムの内容との対応関係を明記してほしい。5つの項目すべてを満たすような科目配置や修了要件を付す必要がある。
  • プログラムを構成する授業科目名称を一覧表にする必要がある。修了要件が異なる場合は,修了要件ごとに作成してほしい。また,各項目ごとに,授業概要及び各項目に対応する授業科目名称やテーマを記載する必要がある。テーマは,各科目の何回目の授業において実施したのかも明記してほしい。
  • モデルカリキュラムの「選択」部分はリテラシープラスにおいて確認する。
  • 申請要件⑤として,プログラムの履修を促す取り組みを明記してほしい。履修のサポート体制や質問を受け付ける仕組みも記載する必要がある。
  • 申請要件⑥として,自己点検・評価の体制や議論の内容,情報公表などを記載する必要がある。全学的な自己点検・評価の中で行われており,申請時点までで公表されていない場合は,未定として6月に改めて申請することもできる。
  • 申請要件⑦として,1年以上実施した実績がある必要がある。令和2年度に授業を実施した実績があるのならば,あてはまると考えてよい。履修者数の設定はないが,複数学部等からの履修者が存在する必要がある。学部別に実績を記載する必要がある。

リテラシーレベルプラス

  • 申請要件①として,リテラシーレベルとして認定された必要がある。ただし,リテラシーレベルとリテラシーレベルプラスを同時に申請することも可能である。
  • 申請要件②として,履修者が収容定員の50%を満たしている必要がある。ただし,3年以内に50%を達成できるプログラムであれば,申請可能である。その場合は,具体的な計画を明記する必要がある。詳細はQ&Aを確認いただきたい。
  • 申請要件③として,各大学に応じた特色ある取り組みである必要がある。地域との連携や海外大学との連携など,各大学の特色を明記してほしい。

<主なQ&A>

  • 毎年申請することは可能である。2回目以降の認定期間は3年である点に留意いただきたい。
  • 申請要件が消失した場合は必ず再申請が必要である。それ以外の変更は,再申請は不要であり,認定が継続される。
  • オンデマンド型授業でも認定の対象となる。
  • 履修者数の制限があっても認定の対象となる。
  • 卒業単位として認められる科目でなければ,プログラムの対象とならない。自由科目だけで編成されるプログラムは認定の対象とはならない。
  • 対象年次が限定されている場合も認定の対象となる。
  • 修了証の発行は必須要件ではないが,発行の検討をいただきたい。
  • 成績要件を付しているプログラムは認定の対象とならないわけではない。ただし,学生が希望すればプログラムを履修できる仕組みを検討してほしい。
  • 大学全体の自己点検・評価において当該プログラムの自己点検・評価を実施する場合も認定の対象となる。
  • 学部学科により修了要件が異なる場合は,それぞれのプログラムにおいて全ての審査項目を満たしている必要がある。また,プログラム全体の学修成果も定める必要がある。各学部の学生しか履修できない授業科目であっても,全体の学修成果が定めプログラムとしてとりまとめてあれば,全体で開講しているとみなすことができる。
  • プログラムの認定件数に上限はない。
  • 事前相談は行わない予定である。

就職・転職支援のための大学リカレント教育推進事業オンライン説明会に参加しました

www.mext.go.jp

 第三次補正予算にかかる事業として公募される「就職・転職支援のための大学リカレント教育推進事業」のオンライン説明会に参加しました。本事業については各大学等からの反応はあまりよくないとの話も聞いていたのですが、同時接続数は180程度とそこそこの数がありました。特に、質疑応答の時間を長くとっていたのは非常に好感を持ちました。

 以下に、当方が理解できた範囲で記録を記します。

<説明概要>

  • 157大学・短大・高専に参加申し込みをいただいた。学びなおしを開始する人が多くなっていることも聞いており,第三次補正予算においてはデジタルトランフォーメーションを担う人材育成や生産性向上を推進することとしている。非正規雇用労働者,失業者,希望する就職ができていない若者等の支援として,教育から就職まで,入口から出口までを支援するため,就職・転職支援のための大学リカレント教育推進事業を実施する。
  • 算額は最大5千万円で25の採択を予定しているが,プログラムの内容を鑑みて各公募金額を設定している。
  • 公募は2月中旬から3月末まで行い,4月末には採択結果を公表する予定である。その後,1月末までに各大学にてプログラムの開発・実施を行うこととなる。
  • 本事業は3つのコースにより実施するが,共通の要件として,失業者を主な対象としており非正規雇用労働者や希望する就職が出来ていない若者,転職希望者等も受講対象としていること,事業に3つのコースを設けること,就職や転職に資するプログラム設計とすること,労働局やハローワークなどと連携すること,社会人が受講しやすい環境とすること,受講料は無料とすること,受講生に対する就職相談や支援を行うことが挙げられる。
  • 本事業は,a)求職者支援制度の職業訓練受講給付金対象コース,b)職業実践力育成コース,c)地域の実情に応じたコースの3つに分類する。
  • aコースは受講者数30名程度,1拠点3500万円を想定している。本事業の趣旨に鑑み,他のコースに優先して採択を行う。総授業時間数は1か月60時間以上であり,最短でも2か月間のプログラムとする。対象は主として失業者を想定しているが,非正規雇用労働者や希望する就職が出来なかった若者も対象とし得る。職業訓練給付金の受給も可能であるが,事務処理が発生する。
  • bコースは受講者数30名程度,1拠点1000万円を想定している。総授業時間数は60時間以上であり,対象は主に失業者に加え,非正規雇用労働者,転職希望者等も想定している。職業実践力育成プログラムへの移行も見据えていただきたい。
  • cコースは1拠点650万円,総授業時間数は60時間程度を想定している。60時間未満や以上の提案も可能である。対象は失業者,非正規雇用労働者,転職希望者,起業希望者等幅広い層を想定している。
  • 「1か月で60時間以上」について,aコースの場合は2か月で120時間を行う必要がある。4か月の場合は240時間以上となる。
  • e-Learningによるオンライン教育を含めてもよいが,aコースの場合は双方向型に限っている。
  • 次年度以降の継続について,本事業は令和4年3月までの取り扱いとなっている。
  • 成果物は大学等に帰属するよう検討している。
  • 事業期間終了後の取り扱いについて,期間終了後の事業実施を義務付けているものではない。
  • 1プログラム当たりの目標人数であるが,cコースについては複数回プログラムを実施し合計を人数とすることも検討している。
  • 目標人数に達しなかった場合,委託費の減額は検討していないが,目標人数に達するように努力してほしい。必要に応じて,委託費の返納が生じる。
  • ハローワークとの連携について,ハローワークや労働局のいずれか一方の連携でも可とする。
  • 連携の程度について,受講者の就職・転職につながるような連携を行ってほしい。事業実施委員会において労働部局の担当者に加わってもらうことも想定できる。厚生労働省に協力を依頼しているところである。
  • 厚生労働省からハローワークに協力依頼を行う予定であり,申請に際しては事前にハローワークや労働局と相談し,採択後速やかに事業が実施できるようにしてほしい。
  • 各コースに予算額を設定している。
  • 当該年度に必要な物品を購入するための委託費であり,より経済的な使い方をしてほしい。
  • 補助対象経費は事業終了まで対象となり,事業実施期間は令和4年3月20日までを予定している。
  • 広告費を計上することは可能だが,過度な広告にならないよう必要最小限となるよう配慮いただきたい。
  • プログラムに必要な経費は計上可能であるが,各大学において適切に処理してほしい。再委託の条件などは現在検討中であり,別途提示する予定である。
  • 資格取得に係るプログラムが優先的に採択されるわけではない。分野に関して制限は特にない。
  • 公募期間開始後に募集説明会を開催する予定である。

<質疑応答>

Q:「自己負担」とは受講者が負担するのか,大学が負担するのか,どちらか。

A:受講者が負担することを想定している。実費に係る部分は募集要項に記載してもよい。

Q:他のリカレント事業に採択されていることは本事業の採択に影響があるのか。

A:これまでの取り組みも審査の際の判断材料になり得る。

Q:再来年度以降は,大学の裁量で受講料を徴収することは可能か。

A:可能である。

Q:受講生に貸し出すPCを委託費で購入することは可能か。

A:検討中であるが,レンタルか購入かいずれか安価な方で対応いただきたいと考えている。

Q:各コースの予算額はどのように想定されているのか。

A:総授業時間数などが異なるため,ある程度の費用の差が生じると考えている。

Q:各コースの組み合わせ申請も許可されているが,複数のプログラムの内容をまとめてbコースとして申請してもよろしいか。1拠点あたり複数の申請は可能か。

A:可能である。それぞれのコースに対して所定の予算額を申請いただければよい。

Q:すでにBPに認定されているプログラムから抜粋して本事業のコースに組みなおして申請することは可能か。審査に影響はあるのか。

A:可能である。審査への影響はない。

Q:各コースの採択件数の目安を教えてほしい。

A:現時点では設定してないが,予算上限に応じて採択する予定である。

Q:aコースについて,4か月で120時間以上となるプログラムは申請できるか。

A:申請できない。2か月120時間が下限値である。

Q:連携体制の構築について,大学の立地自治体でない自治体等と連携することは可能か。

A:可能である。

Q:申請時点で成果目標を明確にする必要があるのか。

A:就職率を成果目標とすることを想定している。これには,非正規労働者正規雇用になった場合も含むと思っている。

Q:成果目標が達成できなかった取り扱いは想定しているか。

A:達成できなかった場合には,その理由を確認することはあり得る。事業報告書によりフォローアップを行う。

Q:公募要領などはいつ公表されるのか。また,どのように公表されるのか。

A:文部科学省HPに公表する予定であり,公募が開始した旨を各大学等に周知する。なるべく早く公募要領を公表したい。

Q:aコースはキャリアコンサルティングが必須とのことだが,企業と個人どちらを想定しているのか。

A:キャリアコンサルタントなどの有資格者と連携し,受講者のキャリア相談を可能といただきたい。

Q:他の職を持っている受講者が副業のためにプログラムを受講することは可能か。

A:対象となり得る。

Q:総授業時間数について,講座全般に係るオンライン教育の上限はあるか。

A:特段設定していないが,aコースは双方向で行う必要がある。

Q:既存のキャリアセンターとは異なる体制により,受講者のキャリア支援を行えばよいのか。

A:本事業の対象者は失業者などであり一般的な学生への就職指導とは異なる面もあると思うが,既存の体制で対応可能であれば活用いただきたい。

Q:aコースの双方向オンライン教育について,LMS等で本人確認を行うことは可能か。

A:リアルタイムでの出席確認を行っていただきたい。合理的に学生管理を行っていることを説明いただきたい。

Q:受講者の年齢制限はあるのか。

A:年齢制限はない。

Q:プログラムの質保証に係る基準はあるのか。

A:事業実施委員会の中でプログラムの成果検証等を行ってほしい。

Q:外部講師をクロスアポイントメントで招聘することは可能か。

A:大学分の経費を委託費で支出することは可能である。

Q:bコースやcコースではオンデマンド型教育は許されるのか。

A:可能であるが,受講確認等の体制は必要である。

Q:ハローワークとの連携について,受講者の居住地のハローワークと連携する必要があるのか。

A:受講者の増加に伴い,連携先が増えていくことは想定されるところである。

Q:労働局とハローワークとの連携の違いなどはどのように想定されているか。

A:労働局を中心としてハローワークとの連携を拡充していることを想定している。

Q:受講者の募集について,各大学等に委ねられているのか。

A:その通りである。広く大学として公募している形が必要である。

Q:民間人材紹介業を利用して職業あっせんを行うことは可能か。

A:可能である。

Q:プログラム終了後に就職するまでの期限はいつか。

A:終了後3か月以内に就職いただくことを想定している。

Q:総授業時間数の算出について,演習の時間を含めることは可能か。

A:実授業時間数を算入いただくことになる。通常の授業科目と同等の設計で実施いただきたい。

「デジタルを活用した大学・高専教育高度化プラン」公募説明会(第2回)に参加しました。

www.mext.go.jp

 「デジタルを活用した大学・高専教育高度化プラン」公募説明会(第2回)に参加しました。Youtubeでのライブ配信として行われましたが、同時接続数は前回より若干減少し1500件程度でした。まず公募開始の遅れに関する謝罪がありましたが、締め切りは変わらないということで相当タイトな申請になりそうだなという印象です。

 以下に、説明会の記録を記します。

  • デジタルを活用した大学・高専教育高度化プランの公募に当たっては現在財務当局と調整中であり,今回の説明会で説明した内容が変更になる可能性がある。また,補正予算の成立を前提として説明を行う。申請書の作成に当たっては,最新の情報を確認してほしい。
  • 公募のスケジュールについて,調整次第速やかに公募を開始し,公募締め切りは2月1日17時必着の予定である。3月初旬には採択先を決定し,3月末までに交付決定手続き等を行う。補正予算と本予算を合わせた15か月予算となることから,次年度に向けた繰り越しの手続きも必要である。公募の開始日時に関わらず,締め切りは変更しない。
  • 申請様式については,文部科学省のウェブサイトに掲載することとし,各大学にメールによる送付は行わない。
  • 申請書は,デジタルを活用した大学・高専教育高度化プラン事業委員会の審査資料になる。誤記入や記入漏れ等があれば,審査の対象外となる可能性がある。様式の改変はできない。
  • 紙媒体での申請書の提出は不要であり,締め切りまでに文部科学省サーバに申請書のメールが到着している必要がある。また,添書や押印も不要である。
  • 当局にて受信確認を行い,2月3日までに受領通知を送信する。受領通知が届かない場合は,至急連絡をいただきたい。受領通知に関する連絡はご遠慮いただきたい。
  • 申請書の様式は,①申請期間の基本情報,②計画調書,③所要額の積算内訳の3点を予定している。DX推進計画は②に記載いただくことになるが,②はA4で5枚以内で記載いただきたい。取り組みの参考となる資料として,体制がわかる資料などを別添としてA4で3枚程度提出いただきたい。
  • DX推進計画について,大学等の特定の学部等を対象としたものではなく,大学全体の計画としていただきたい。また,補助金の効果が大学全体に波及する計画といただきたい。併せて,申請時点の令和3年度の授業実施計画(実験実習や学年などを踏まえたもの)や感染防止計画に関する基本的な考え方を記載いただきい。
  • 計画の観点として,①DXに係る現状及びDX推進に向けた目標と課題,②DX推進計画の具体的な内容(①を踏まえた推進計画(期間や実施体制など)であり,補助期間終了後の継続的な遂行(人員や財源確保を含む)など),③DX推進計画の先導性・先駆性及び普及可能性(今後の技術革新を踏まえた点を考慮されているか,自機関や他機関のこれまでの取り組みと比較して優れている点など),④DX推進計画の実施による全学的効果,⑤感染対策に関する基本的な考え方(申請時点のものであり,令和3年度の授業実施計画や感染防止計画の内容,感染防止計画が学生や保護者に周知されているかといった内容),⑥その他特記事項(他機関と連携した取り組みの場合は連携機関との役割分担を記載)の6点が挙げられる。国公私立の大学や高専を申請対象機関とする。大学共同利用機関法人を連携相手先に含めることは可能である。
  • DX推進計画を踏まえ,補助事業で取り組む内容を明確にしてほしい。大学全体のDX推進や教育の高度化につながる取り組みとしてほしい。補助事業の対象となるのであれば,特定の学部等を対象とした取り組みを補助事業として申請することは可能である。
  • 申請書の観点として,①取り組みの具体的内容及びDX推進計画における取組の位置づけ(実施体制を含める。教育の高度化を目指すものであるため,単なる機器の導入は対象とならず,大学全体の高度化につながるものである必要がある。また,補助期間終了後の継続性についても記載してほしい。),②取り組みの先導性,先駆性及び普及可能性(自機関や他機関の既存の取り組みに対して優れている点を記載いただきたい),③教育効果の測定及びその検証方法(事業終了時における成果を把握しその内容を検証して次につなげていく取り組みであることが重要である。授業終了時における達成目標やその評価方法をできる限り多面的に行う内容を少なくとも1つ以上は記載いただきたい。達成目標は可能な限り定量的な目標としていただきたい),④その他特記事項(機関と連携した取り組みの場合は連携機関との役割分担を記載)の4点が挙げられる。
  • 質問がある場合は質問フォームでお寄せいただき,随時Q&Aに更新していく。何点か回答例を挙げる。
  • 取組①はLMSを活用した取り組みが前提となること,ただしポートフォリオの活用は必須ではないこと,LMS等のシステムを既に導入していなければならないものではないことを回答している。
  • 取組②については,VRの導入を必須とするものではない。
  • 繰り越しについては,設備費以外にも人件費やクラウドの使用料,役務費など,極力柔軟な形で繰り越しできるように財政当局と調整中である。繰り越しに係る「真にやむを得ない事由」の該当事例を一つ一つ判定できない。一般的な例として,仕様策定や調達に時間を要した場合が挙げられる。

「デジタルを活用した大学・高専教育高度化プラン」公募説明会に参加しました。

www.mext.go.jp

 「デジタルを活用した大学・高専教育高度化プラン」公募説明会に参加しました。Youtubeでのライブ配信として行われましたが、同時接続数は1700件以上と各大学の関心の高さが伺われました。第三次補正予算のみの措置ということで、設備をどんと導入する申請になりそうだなと感じたところです。いずれにしろ、申請書の公表を待ちたいところです。

 以下に、説明会の記録を記します。

<前段>

  • 新型コロナウイルス感染症により生活が大きく変化している。当面の間、感染症と向き合いながら生活しなければならない。遠隔授業は広まっているが、長所短所も明らかになってきたところであり、世界的に見てもMOOCs等により高等教育の在り方も変わってきている。デジタルを活用すれば他機関との連携も容易に行える。デジタルを活用した学習者本位の教育への転換を図るため、第三次補正予算も含めて予算措置ができるようになった。
  • 調整中の内容も含まれており、第三次補正予算の成立を前提に話をする。内容が変更になる可能性もある。

<事業概要>

  • コロナ枠を活用して90億円を概算要求した。デジタルとフィジカルを組み合わせた高等教育を開発・普及する趣旨である。多様なニーズや取り組みに対応できるように要求した。結果として、第三次補正予算にて対応することとなった。
  • 事業は①学習者本位の教育の実現と②学びの質の向上の2種類とし、①はLMSの導入や高度化、教学データと組み合わせた解析により学習者に最適化された教育を目指した取り組み、②はVRを活用した教育の実現などを掲げている。他大学とコンテンツを共有することも想定している。①は1件1億円で30件程度、②は1件3億円で10件程度の採択を予定している。

<申請の留意事項>

  • 申請にあたっては、DX推進計画を策定する必要がある。DX推進計画は特定部局のみを対象としたものではなく、大学全体の計画とする必要がある。その中で補助金を活用する計画部分であれば、特定の学部等の取り組みであっても問題ない。
  • 令和3年度における授業の実施計画(クラスサイズや学年による実施方法や学生への説明の方向性など)を調書の中で記載する必要がある。令和2年度中の授業実施状況は、現時点では説明不要である。

<今後のスケジュール>

  • 1月頭に公募を開始し、1月末に公募を締め切る。その後、有識者による審査を行い、3月頭に採択先を決定する予定である。
  • 検討中・調整中の内容や変更になる内容、より詳細な内容については、1月中旬に開催する第2回公募説明会にて説明する。

<よくあるご質問>

  • 一つの大学から①と②の両方に申請できるか?

可能とする予定

  • 他大学との連携は必要か?

必須とはしない予定

  • すでに取り組みを実施している場合には申請の対象となるか?

既存の取り組みを発展・高度化させる取り組みは申請の対象とする予定

  • ②は理工系や医歯薬保健系の学部のみが対象か?

教育内容の高度化につながる取り組みであれば学問分野は問わない予定

  • 審査はどのように行われるのか?

外部有識者で構成される検討会にて審査を行う予定

  • 審査の際の評価の観点はどのようなものか?

次回の説明会までにお示しする。現時点では、実施体制や計画・取り組みの実現可能性。先導性、普及可能性、効果の測定方法などが考えられる。

  • 補助金はどのような経費に充当できるのか?

主に環境整備費(設備費)を中心に考えている。人件費やソフトウェア費に当てられるかは調整中だが、令和2年度中に支出する経費にはあてられるように調整したい。

  • 令和3年度への繰越は可能か?

真にやむを得ない場合位には繰越可能とする方向で調整中である。

  • 令和3年度当初予算案における対応は?

令和3年度当初予算には計上されていない。

  • ①について、LMSの更新(システムの変更)し新たに教学データを利活用する取り組みは申請可能か?

既存の取り組みを基礎とし発展した取り組みは対象となる。データ利活用を行う場合は、データ管理・運用に係る契約形態や学内におけるデータ利活用の運用方針は明確にしておく必要があると考えられる。

<その他>

  • 質問がある場合が文科省の質問フォームから送信いただきたい。個別の回答は行わないが、随時Q&Aの形で公表していく。個別事業の事前相談は行わない。

兵役に伴う休学の対応について

※個人的なメモです。

1.背景

 2019(令和元)年度外国人留学生在籍状況調査結果*1によれば、韓国からの留学生は18,388人であり、国別でみても第4位の多さである。一方、韓国には徴兵制が存在し、検査に合格した者は定められた年齢までの一定期間中に兵役に従事しなければならない*2。本邦に入学している韓国人留学生においても同様に兵役に従事する義務があり、対象となった学生は休学等により一時帰国し兵役に従事しているものと推察される。また、韓国以外に徴兵制度が存在する国からの留学生においても、在籍期間中の兵役については同様に対応していると思われる。

 昨今の新型コロナウイルス感染症の世界的流行により、本邦では、出入国管理及び難民認定法第5条第1項第14号に指定する外国人として、特段の事情がない限り、上陸の申請日前14日以内に所定の国・地域に滞在した者の上陸を拒否している*3。各大学においては、上陸拒否の対象となっている国・地域からの留学生に対し、インターネットを活用した教育・研究指導活動を行うとともに、場合によっては当該者を休学として学籍を維持しているものと思われる。この休学措置について、一部の大学においては、入国拒否期間が長期化するに伴い、本人の責に帰さないものとして、当該休学期間を各大学が定めた休学期間の上限に算入しないこととしている*4

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う上陸拒否と各国が定めた兵役とは本人の責に帰さず本邦に滞在することができないという点では同意であり、兵役に伴う休学においても新型コロナウイルス感染症に係る上陸拒否に伴う休学と同様に休学期間の上限に算入しない取り扱いとすることができる可能性があると考える。

 本稿では、その判断のための予備的調査として、各大学における兵役に伴う休学の対応を確認するものである。

2.方法

 ウェブ検索において「○○大学」「兵役」「休学」と検索し、各種規定類を確認する。対象はすべての国立大学(86大学)とする。

3.結果

 上記2.の結果、長岡技術科学大学及び東京工業大学広島大学において、兵役に伴う休学は学則が定める休学期間の通算年数に算入しない旨の規定を確認した。

国立大学法人長岡技術科学大学学則第27条第2項ただし書き及び第59条第2項ただし書きに規定するその他の別に定める理由による取扱いを定める細則 抄

(休学の理由)

第1条 国立大学法人長岡技術科学大学学則(以下「学則」という。)第27条第2項ただし書き及び第59条第2項ただし書きに規定するその他別に定める理由は次の各号のいずれかに該当するものとする。

三 学生が本籍国において兵役に服するため

(休学期間の取扱い)

第2条 2 前条第2号及び第3号の理由により許可された休学期間のうち、3年を超える期間については、学則第27条第2項本文及び第59条第2項本文に定める通算年数に算入するものとする。

東京工業大学学則第17条及び東京工業大学大学院学則第21条の規定に基づく休学等に関する申合せ 抄

1 休学の事由について

東京工業大学学則(平成23年学則第3号。以下「学則」という。)第17条及び東京工業大学大学院学則(平成23年学則第4号。以下「大学院学則」という。)第21条の規定に基づき休学を許可するに当たっては,次の事由のいずれかに該当する場合に限るものとする。ただし,次の事由に該当する場合であっても卒業又は修了の見込みがない者については,原則として休学を許可しない。

(5) 外国人留学生が,出身国における兵役に就く必要のあるもの。(事情を証明する書類を必要とする。)

4 休学の期間について

休学の許可に当たっては,休学期間の終期を学期の末日までとする。なお,第1項(5)の事由に該当する場合の休学期間は,学則第17条第4項及び大学院学則第21条第4項の規定にかかわらず,2年6月以内とする。また,第1項(5)及び前項の事由による休学期間は,学則第17条第4項ただし書及び大学院学則第21条第4項ただし書に規定する休学期間の通算年数に算入しない。

広島大学通則 抄 

 (休学)

32条 学生が疾病その他やむを得ない事由により引き続き3月以上修学できないときは,当該学部長の許可を得て,休学することができる。

2 休学の期間は,引き続き1年を超えることができない。ただし,特別の事情があるときは,更に1年以内の休学を許可することがある。

5 第1項及び第2項の規定にかかわらず,文部科学省が実施する日韓共同理工系学部留学生事業により受け入れた韓国人留学生が兵役に服するときは,当該学部長の許可を得て,休学することができる。

6 前項の休学期間は,兵役に服する期間とする。

第33条 休学期間(前条第4項及び第6項に規定する休学期間を除く。)は,通算して所属学部の修業年限を超えることができない。

 長岡技術科学大学においては、兵役に伴う休学が3年を超えない場合には休学期間の通算年数には算入しない取り扱いとなっている。3年を超えた場合は、3年を超えた年月のみを算出するものと考えられる。

 広島大学においては、「文部科学省が実施する日韓共同理工系学部留学生事業*5により受け入れた韓国人留学生が兵役に服するとき」という限定的な取り扱いとなっている。このような限定的な取り扱いとしている背景には、政府の交流に基づき受け入れた留学生に対する特段の配慮が必要と大学側が判断したためと推察される*6

 その他、私立大学で同様に休学期間に通算しない取り扱いとしている主な大学は、以下のとおりである。また、一部の私立大学においては、兵役に伴う休学の場合、休学期間中の費用(在籍料等)を免除している場合も存在する*7

早稲田大学 兵役義務による休学願

5. 兵役による休学期間は、通常の休学期間には算入しません。

東京造形大学学則 抄

(休学の期間)

第25条 2 休学の期間は、在学期間内に通算して、4年を超えることはできない。ただし、休学の理由が本籍国での兵役と認められた場合は(以下、「兵役による休学」という。)は、当該の期間を、第14条に定める在学期間、及び休学の期間に算入しない。

4.考察

 Web検索結果より、兵役に伴う休学を休学期間の上限に算入しないとしている国立大学は少数であることが推測された。また、一部の私立大学においては、兵営に伴う休学者に対して徴収費用を免除することで、経済的な支援を行っていることもわかった。

 一方、今回の調査はWeb検索でのみ行ったため、内規等Webに掲載されていない規定類を確認することはできなかった。網羅的に調査を行うのであれば、各大学への調査依頼が必要である。

 兵役に伴う休学を休学期間の上限に算入しない場合は、休学期間の管理が通常よりも困難になることが想定されるため、学籍管理上の適切な取り扱いについて方策を検討する必要があると考える。

*1:2019(令和元)年度外国人留学生在籍状況調査結果|外国人留学生在籍状況調査|留学生に関する調査|日本留学情報サイト Study in Japan

*2:参考情報として、徴兵制~韓国の軍隊制度 | 韓国の軍隊 | 韓国文化と生活|韓国旅行「コネスト」またはKポップファンのための兵役知識1「兵役延期」

*3:新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否について

*4:例えば、筑波大学関西学院大学など

*5:岡山大学基幹教育センターのWebページでは「日韓共同理工系学部留学生事業は1998年の日韓共同宣言に基づき創設され、2000年に開始されました。これは、高校を卒業した韓国人学生を日本の国立大学の理工系学部へ招致し、日本の大学の学部生として4年間学ばせるという事業です」とあります。

*6:千葉大学の報告書では、「日韓共同理工系学部留学生事業では、長い間、学部在学中に兵役に行くために休学することが認められていなかったが、変更があり、千葉大学では、2012 年度より兵役休学が可能となった。」とある。

*7:例えば、青山学院大学など。

文科大臣の言う「余地」とはなにか。

mainichi.jp

萩生田光一文部科学相は19日、国立大学協会など国公私立の大学4団体の会長らと東京都内で面談した。新型コロナウイルス感染症の影響で中退した学生に配慮し、復学できる余地をつくるよう要望。各大学の事情に応じて対面授業を実施することも改めて求めた。面談後、記者団に明らかにした。

 この記事を読んで、あれっと思った箇所があります。それは「復学」です。

1.復学とは

東京大学学部通則 抄

(復学)

第22条 休学期間内に、その理由がなくなったときは、学部長の許可を得て、復学することができる。

  大学において復学とは、一般的には、休学が解消された学生(場合によっては、停学が解除された学生)が正課教育に復帰することを指します。そのため、元記事にある

新型コロナウイルス感染症の影響で中退した学生に配慮し、復学できる余地をつくるよう要望。

について、そもそも退学した学生は復学できません。

2.正しくは再入学である

東京大学学部通則 抄

(再入学)
第9条 本学を退学した者、第24条若しくは第25条の規定により退学を命ぜられた者又は第49条第7項の規定により学生の身分を失った者が、再び同一学部に入学を志願したときは、選考のうえ、再入学を認めることができる。

 退学した学生が再び同じ大学の同じ学部等に入学することを再入学と言います。おそらく、元記事の文科大臣の発言はこのことを指していたのでしょう。

弘前大学再入学に関する規程 抄

(再入学志願の手続)

第3条 再入学を志願する者は,次の各号に掲げる書類に学則に定める額の検定料を添えて,学長に願い出るものとする。

(1) 再入学願書

(2) 履歴書

(3) その他別に指定する書類

(再入学許可)

第5条 前条の選考の結果に基づき合格の通知を受けた者は,学則に定める額の入学料を納入しなければならない。

2 学則第35条第3号又は第4号の規定により除籍された者にあっては,前項の手続きのほか,未納の入学料又は授業料相当額を納入しなければならない。

(再入学年次)

第6条 再入学年次は,退学時又は除籍時の年次とする。ただし,第8条で認定された単位数により退学時又は除籍時の年次に再入学させることが適当でないと認められる者については,学長は,相当年次に再入学させることがある。

(既修得単位の取扱い及び在学期間の通算)

第8条 既修得単位の取扱い及び在学期間の通算については,教授会の議を経て,学部長が認定する。

(修業年限及び在学期間)

第9条 再入学を許可された者の修業年限は,学則第9条に定めるところによるものとし,在学期間は,退学又は除籍以前の在学年数を差し引いた年数とする。

 再入学時には、退学等前の履修単位の認定が行われるとともに、それを踏まえた学年への編入が検討されます。

3.余地は何か

 元記事では「復学できる余地をつくるよう要望」とありますが、この「余地」とは何を指すのか、はっきりしません。前述のとおり学修上の配慮はある程度可能となっていますので、可能性としては、コロナで退学した学生が再入学する際に検定料や入学料を再徴取しないことでしょうか。

 ただ、最近の文科省等の調査でも「コロナを原因とした退学~~」と言われていますが、退学等の要因をコロナに限定することは退学願い等を精査しても容易ではないと感じています。この点で、もし前述のような不徴収対応を求められた場合、コロナを原因とした退学等者からの再入学希望とそうでない者からの再入学希望をどのように分けるのか、難しい対応となりそうです。

国立大学の学長選考はどのように在るべきなのか。

www3.nhk.or.jp

任期満了に伴う筑波大学の学長選考が20日行われ、永田恭介学長が再任されることになりました。この選考について、一部の教員グループは「過程が不透明だ」と訴えていて、有識者などで作る会議が21日午後、選考の理由を説明することにしています。

www.tokyo-np.co.jp

東京大の来年度からの学長(総長)を決める選考会議で「選考プロセスの透明性や公平性に疑義がある」として、教員有志6人が大学側に公開質問状を出した。5人まで選べる最終候補者が理系の男性ばかり3人とされたことや、氏名が30日の学内投票終了まで外部には非公表となっていることなどを問題視している。

 国立大学法人の学長選考が(悪い意味で)話題になっています。特に、平成27年国立大学法人法改正から、学内の投票の取り扱いなどを巡ってニュースになることが増えてきたように感じています。今回は、国立大学法人の学長選考を考えてみます。

なぜ混乱が生じるのか

 なぜのこのような事態が生じるのか、これは国立大学法人の学長という地位が持つ2面性が原因ではないかと考えています。

国立大学法人法 抄

(役員)

第十条 各国立大学法人に、役員として、その長である学長(当該国立大学法人が設置する国立大学の全部について第三項に規定する大学総括理事を置く場合にあっては、理事長。次条第一項並びに第二十一条第二項第四号、第三項及び第五項を除き、以下同じ。)及び監事二人を置く。

(役員の職務及び権限)

第十一条 学長は、大学の長としての職務(大学総括理事を置く場合にあっては、当該大学総括理事の職務に係るものを除く。)を行うとともに、国立大学法人を代表し、その業務を総理する。

2 理事長は、国立大学法人を代表し、その業務を総理する。

 大学総括理事を置いていない限り(現時点では東海国立大学機構(岐阜大学及び名古屋大学を設置する法人)のみ設置)、国立大学の学長は、国立大学法人の理事長と国立大学の学長を兼ねることになります。つまり、法人の経営者としての姿とファカルティーの代表としての姿の2面が一人の学長に同居しています。

 ということは、どちらが正しいというわけではありませんが、学長選考会議は経営者としての姿を、学内意向聴取(学内投票)は従前の通りファカルティーの代表としての姿を評価している可能性を考えています。学長選考会議が学長としての資質を公表してはいるものの、国立大学の学長が内包する多重性のため、結果としてすれ違いが生じているのかもしれません。(ただ、国立大学法人における経営の本質は私もまだ理解できてないところです・・・)

 この考えを検証するためには、国立大学の理事長と学長との選考方法の違い等を検討する必要があり、それが叶うのは現時点では東海国立大学機構のみです。しかし、現時点では東海国立大学機構の理事長は名古屋大学総長(学長)が兼ねているため、今後の同機構の理事長及び学長選考の状況に注目していきたいです。

では、どうすれば良いのか

 では、どのようにすればより良い国立大学法人の発展に繋がる学長選考が実現できるのでしょうか。以下は、現行法をベースにした私案です。

<学長選考会議の権限を強化し、構成員からの評価も踏まえ学長を評価する機能を実質化する>

 国立大学の学長は、学長選考会議が選出し文部科学大臣に申し出るとともに、文部科学大臣が任命することになっています。また、同会議は、学長選出の際の基準を定めることになっています。 法改正時の通知においても、同会議は学長の業績を確認(評価)することになっています。

国立大学法人法 抄

(役員の任命)

第十二条 学長の任命は、国立大学法人の申出に基づいて、文部科学大臣が行う。

2 前項の申出は、第一号に掲げる委員及び第二号に掲げる委員各同数をもって構成する会議(以下「学長選考会議」という。)の選考により行うものとする。

一 第二十条第二項第三号に掲げる者の中から同条第一項に規定する経営協議会において選出された者

二 第二十一条第二項第三号又は第四号に掲げる者の中から同条第一項に規定する教育研究評議会において選出された者

3 前項各号に掲げる者のほか、学長選考会議の定めるところにより、学長又は理事を学長選考会議の委員に加えることができる。ただし、その数は、学長選考会議の委員の総数の三分の一を超えてはならない。

4 学長選考会議に議長を置き、委員の互選によってこれを定める。

5 議長は、学長選考会議を主宰する。

6 この条に定めるもののほか、学長選考会議の議事の手続その他学長選考会議に関し必要な事項は、議長が学長選考会議に諮って定める。

7 第二項に規定する学長の選考は、人格が高潔で、学識が優れ、かつ、大学における教育研究活動を適切かつ効果的に運営することができる能力を有する者のうちから、学長選考会議が定める基準により、行わなければならない。

8 国立大学法人は、第二項に規定する学長の選考が行われたときは当該選考の結果その他文部科学省令で定める事項を、学長選考会議が前項に規定する基準を定め、又は変更したときは当該基準を、それぞれ遅滞なく公表しなければならない。

9 監事は、文部科学大臣が任命する。

学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律及び学校教育法施行規則及び国立大学法人法施行規則の一部を改正する省令について(通知) 抄

2.国立大学法人法及び同法施行規則の一部改正

 国立大学法人法及び同法施行規則の改正は,全ての国立大学法人等に適用されるものである。

(1)学長又は機構長の選考の透明化(国立大学法人法第12条及び第26条関係)

④ 学長等選考会議は,選考した学長又は機構長の業務執行の状況について,恒常的な確認を行うことが必要であること。業務執行の状況についての確認を行う時期については,各国立大学法人等の実情に応じて,学長等選考会議において適切に判断すべきものであること。

3.改正の基本的な考え方

(2)権限と責任の一致

② 学長に対する業績評価

 校務に関する決定権を有する学長が,その結果について責任を負うことは当然であり,学長の業務執行の状況(副学長等への指示・監督状況,意思決定の手続を含む。)について,学長選考会議や理事会等の学長選考組織,監事等が恒常的に確認すること。

 特に国立大学法人の監事については,独立行政法人通則法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律(平成26年法律第67号)により国立大学法人法が改正され,監事機能の強化が図られたところであり,適切な予算・人員面の手当をするなど,その機能が適切に発揮されるようにすべきこと。

1.学長選考会議委員の任命権者を文科大臣にする。

 今回の様々な騒動は学長を監視する者がいないという点が問題だとも言われています。株式会社ならば株主により執行部が監視されているが国立大学ではその仕組みが働いていない、とのことです。国立大学と株式会社を比較する意味はあるのかという疑問もありますが、まぁ話はわかります。

 選考した学長に責任を持つのは、任命権者は文科大臣ですが、やはり学長選考会議だろうと思います。しかし、現実には、学長選考会議にはそこまでの責務を負うことができる機能はなかろうと思います。法令上も、学長選考会議委員の任命権者は明確ではありません(一部の国立大学法人の規定を確認したところ学長になっています)。

 学長を監視する力を持たせるのであれば、最低限、学長と同等の任命権者でなければなりません。そのため、まずは学長選考会議の委員の任命権者を文科大臣にし、それを法令上も明記すべきです。

2.学長選考会議の委員の資質能力を明確にする。

 現在の学長選考会議は、お付き合いで委員になった者が、総務部署が作成し事前に学長まで了解をとった資料に基づき、粛々と議事を進行していく場なのかもしれません。それは言い過ぎにしても、選考した学長の行動に責任を持ってもらうためには、学長選考会議の委員に対しても、それなりの資質能力が求められるのは必然です。また、なぜのその学長が選ばれたのかだけではなく、なぜ他の候補者が選ばれなかったのかも学長選考会議の各委員が説明できなければなりません。学長選考会議の委員としてふさわしい資質能力を明確にして、委員を選出すべきだと考えます。

3.学長選考会議が学内構成員の学長への評価も踏まえ学長を評価する。

 学内意向聴取(学内投票)は学長選考の時点でしか行われませんが、常々私はそれが不満でした。学長の任期中においても、学長選考会議が主体となり学長の働きを学内構成員(学生を含む)に意見聴取する機会を設けるべきであり、また、学長選考会議はそれ(またはそれへの対応状況)を踏まえて学長の業績評価を行うべきだと考えます。

 学長を解任できるのは学長選考会議のみであり*1、学長と学長選考会議は良い緊張関係・牽制関係を維持していかなければなりません。学内の評価が低い学長には、はっきりとそれを言って自覚させるべきなのです。

 また、この業績評価の際には、当然、監事も加わる必要があります。監事の任命権者は文科大臣であり、国立大学法人内で唯一、監事は学長と同等の立場にあるのですから*2

 

と、私案は以上なのですが、これを果たすには現在非常にエフォートの少ない委員の雇用(委嘱)の在り様も検討しなければなりません。

学長の任期は無限になるのか

 冒頭の記事にあった筑波大学のケースでは、学長の任期上限が撤廃されたとなっていました。この言い方は若干不正確であり、国立大学法人法では学長の任期上限に関する規定があるため、恐らく、筑波大学内規の再任上限回数が撤廃されたのだろうと思います。(改正前の規則は見つけることができませんでした。)

国立大学法人法 抄

(役員の任期)

第十五条 学長の任期は、二年以上六年を超えない範囲内において、学長選考会議の議を経て、各国立大学法人の規則で定める。

5 役員は、再任されることができる。この場合において、当該役員がその最初の任命の際現に当該国立大学法人の役員又は職員でなかったときの前条の規定の適用については、その再任の際現に当該国立大学法人の役員又は職員でない者とみなす。

国立大学法人筑波大学の学長の任期に関する規則 抄

(任期)

第2条 学長の任期は、国立大学法人筑波大学(以下「法人」という。)の運営における中期計画の重要性に鑑み、その策定及び実施と連動させることを基本とし、その始期は中期計画期間開始の1年前とする。

2 学長の任期は、3年とし、引き続き再任されることができる。

 なお、国立大学協会の平成29年の提言では、各国立大学の学長の任期について、以下の言及があります。当時の状況ですが、学長の在任期間の上限が6年間を超える大学は一定数存在しています。

国立大学のガバナンス改革の強化に向けて(提言)平成29年5月23日一般社団法人国立大学協会

(学長の任期)

今回の調査結果では、任期4年が53大学(62%)で最も多く、次に6年が18大学(21%)、3年が15大学(17%)となっている。再任については、4年任期の場合は54%が2年、3年任期の場合は全大学が3年であり、6年任期の場合は3大学を除いて再任なしである。再任回数は1回がほとんどであるが、2大学が2回、6大学が無制限としている。これらの結果、再任を含めると、学長の在任期間の上限は3大学が4年と短期間であるが、6年が66大学、6年を超えるのが17大学となっている。

また、各大学の考える望ましい学長任期としては、基本の任期を6年に延長したり、再任期間・回数の制限を緩和したりするなど、現在よりも若干の長期化を図る意見が比較的多かった。また、中期目標期間との連動を意識し、学長の選出時期について、次期学長が次期中期目標の策定が行えるよう、就任1年前に次期学長を選出することが望ましいとの意見もあった。(P5)

  一番怖いのは、本人も周りの者も辞め時がわからなくなることでしょう。今回の筑波大学のケースではひとまず3年間の再任ということで、そこでさらに再任か否かを判断されるのだろうと思います。 

学内選挙による学長選考は復活するか

 平成27年国立大学法人法改正以降、学内選挙はどんどんなくなっています。大学教員は言われたことを素直にやらない人間が多いのでリスクヘッジも兼ねて学内選挙があったのだろうと思いますが、学内選挙がないと学問の自由が〜〜大学の自治が〜〜と言われると選挙以外の方法で学長を選考していることが多い私立大学*3のことを思い出してモヤっとします。国立大学は特に国の統制を受けやすのでよりシビアに考えなければならないと言われれば、はぁそうですかと言う程度ですが。

 私個人としては、国立大学法人の発展により資する学長の選考方法であるべきだと思いますが、それが選挙によるものか選考会議によるものかどちらなのかはよくわかりません。最近は申し出のあった学長候補者を文科大臣が任命しない可能性もあると言われていますし・・・

*1:国立大学法人法第17条第4項 前二項の規定により文部科学大臣が行う学長の解任は、当該国立大学法人の学長選考会議の申出により行うものとする。

*2:国立大学法人法第12条第9項 監事は、文部科学大臣が任命する。

*3:文部科学省資料では、平成25年8月の段階で、7割程度の私立大学が選挙以外の方法で学長選考を実施していると回答