読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

何を読めば良いか迷っている大学職員の方へのちょっとした書籍紹介

その他

 そろそろ国立大学法人等職員統一採用試験の結果が出始める頃でしょうか。ということで、今回は採用試験に合格し大学職員になる方や特に若手職員で何か大学に関する本を読みたいけど何が良いかよく分からないという方に向け、ちょっとした書籍紹介を行おうと思います。なお、無条件に提案してもあまり現実味がありませんので、以下の条件のもと本の選定を行いました。

【主たるターゲット】

  • 採用試験に合格し大学職員になる者
  • 1〜3年目の若手職員で、何か大学に関する本を読みたいけど何が良いかよく分からない者

【条件】

  • 特定の業務分野に著しく偏らずに広く大学や大学職員全般に言及しているもの
  • 新書等比較的読みやすいもの
  • Amazonにて定価1,000円以下で購入できるもの

 少し出版年が古いものもありますが、あまり現在と状況が変わっていない(それもどうかと思いますが。。。)ため、そんなに現状と異なるものではないと思います。また、基本的に国立大学法人職員である私が読んだことのあるものを紹介しますので、私の興味範囲によりカバーしていない分野(私学財政など)があることはご了承願います。

大学破綻 合併、身売り、倒産の内幕 (角川oneテーマ21)

 淘汰が始まる2010年代、価値ある大学の条件とは?日米の大学経営実態から喝破する大学危機の裏側と再生の方途。

 大学を取り巻く状況を具体的に説明しながら、既存の大学像からの脱却などを述べています。

文学部がなくなる日―誰も書かなかった大学の「いま」 (主婦の友新書)

 「進学できないから就職する」時代から、「就職できないから、とりあえず進学する」時代へ。いまや高校生の二人に一人が大学に進学。一方で少子化が進行し、定員割れの大学が増加している。生き残りをかけ、大学は改革に必死だ。さまざまな矛盾や課題を抱えながらも変わっていく大学のリアルな「いま」を、当事者の視点で語る。

 大学を取り巻く状況や大学の変化を具体的に説明しながら、特に大学選びの面から大学が今後とるべき姿を述べています。

潰れる大学、潰れない大学 (中公新書ラクレ)

 大学淘汰時代を迎え、どこが姿を消すのか。全国津々浦々の大学に調査・取材を行い、現場の危機意識の大きさと、生残りへの模索を明らかにした決定版。経営危機の実態とは。教授力の優劣は。

 新聞連載を基にした内容であり、各大学の具体的な取組がわかりやすく紹介されています。 

世界の大学危機―新しい大学像を求めて (中公新書)

 大学が危機に直面しているのは日本だけではない。先進国の大学は、第二次大戦後に拡張政策をとったために、それぞれ構造的な問題が生じている。古典的な高等教育を維持しようとするイギリス、平等な公立大学の限界から脱出しようとするドイツ、大学以外の高等教育機関との調整に苦慮するフランス、そして、大学院化が一層進むアメリカ。それぞれに事情の異なる各国の対処法から日本の大学が学ぶべきことは何か。

 各国の大学の状況を述べながら、日本の大学はどのようにあるべきか述べています。 

大学の教育力―何を教え、学ぶか (ちくま新書)

 社会が変われば大学も変わる。大学全入時代をむかえ、いま大学の理念や組織のあり方が大きく揺らいでいる。今後も大学が未来の社会を考える場であり続けるためには、何が必要なのか。そして、学生は大学でいったい何を学ぶべきなのか。高等教育が直面する課題を、歴史的かつグローバルな文脈のなかでとらえなおし、大学が確実な「教育力」をもつための方途を考える。大学関係者、受験関係者、必読の一冊。

 大学を教育という面から捉え、中世に大学が生まれた歴史やと日米の大学の違い、大学教育の在り方などを述べています。

大学とは何か (岩波新書)

 いま、大学はかつてない困難な時代にある。その危機は何に起因しているのか。これから大学はどの方向へ踏み出すべきなのか。大学を知のメディアとして捉え、中世ヨーロッパにおける誕生から、近代国家による再生、明治日本への移植と戦後の再編という歴史のなかで位置づけなおす。大学の理念の再定義を試みる画期的論考。

 中世から現代に至る大学の流れを振り返り、現代における大学の意義を述べています。

 冒頭条件付けにより予想できたとおり、新書系の比較的内容が浅く広い書籍が並びました。ただ、後ろ3つは若干学術的な部分もあるという印象です。どれか一つと言われれば、もしかしたら少し難しいかもしれませんが、一番最後の「大学とは何か」でしょうか。もちろん、これら以外にも条件に合致する書籍はたくさんありますので、Amazonのキーワード検索で「大学」「高等教育」など入力して、結果を眺めてもいいですね。

 条件からは外れますが、是非一冊紹介したい書籍がありますので、それも併せて明記しておきます。

大学事務職員のための高等教育システム論―より良い大学経営専門職となるために

 大学を巡る環境変化の中で、大学経営を担い、あるいは支える人材に対する注目度が上がってきている。大学経営専門職を志す人のために、知っておくべき高等教育の基礎知識と、事務職員の心構えについて解説する。

  大学の歴史や大学を取り巻く環境、職員に必要とされる能力、教職協働など、大学職員のキャリア初期に知っておきたい知識や情報は一通り網羅されているという印象です。

 単なる大学の取り組み紹介に留まらず、大学の関係者への丹念な取材あるいは大学関係者自らにより、大学の内情を記した書籍もあります。特に、特定の国立大学名を出して記された書籍について、私が読んだことがあるものの中の一部を紹介します。なお、東京大学についてはかなり数がありますので、直近で出版された一冊のみ紹介します。

東京大学

東大教授 (新潮新書)

 現役教授だからこそ、ここまで書けた! 「東大教授」とはどのような職業なのか? 給与、適性、学歴、勤務時間から、キャリアの積み方、研究や教育の醍醐味、入試突破法や有名人との交際などまでを徹底解説。

京都大学

京都から大学を変える(祥伝社新書)

 従来の入試とは根底から異なる「高大接続型京大方式特色入試」、教養教育を一元化した「国際高等教育院」、リーダーの育成を目的とした新しい大学院「思修館」…次々と改革を実行する京都大学が注目されている。なぜ、日本のトップ大学が改革を行なうのか。その背景には、学生の劣化、大学の世界的競争の激化、沈む日本の大学事情などが横たわる。このまま日本は“先衰国”になってしまうのか。これから求められる人材の条件とは何か。京都大学第25代総長が提言する。もう、先送りはできない。大学も、企業も、国も、そして日本人も、今こそ変わる時である。

東北大学岩手大学福島大学

被災大学は何をしてきたか 福島大、岩手大、東北大の光と影 (中公新書ラクレ)

 「地方国立大学不要論」を払拭すべく、法人化後の大学はここぞの危機で社会貢献ができるよう地域の中核的存在をめざしてきた。震災前からの中長期の改革の流れを視野に入れながら、個々の取り組みを大学ウオッチャーが徹底取材。活躍した人・組織の成功の理由は? 巨額の復興予算に潜む問題とは? 地方国立大学はいま何をすべきか? 

宮城教育大学

教育の冒険 林竹二と宮城教育大学の1970年代 (仙台文庫e)

 「教員を養成する大学」としての理想を徹底的に追求したがゆえに、時代の波と激しくぶつかり合った宮城教育大学。 入学試験で受験生に民謡を踊らせる。高名な演出家を招いて、学生に表現の本質を学ばせる。 学長自らが、教育のあるべき姿に迫ろうと小学校での授業を重ねる。そうした〝冒険〟の数々を掘り起こした、卒業生による貴重なレポート。 

岐阜大学

落下傘学長奮闘記―大学法人化の現場から (中公新書ラクレ)

 40年間研究だけをしてきた基礎医学者が、突然、地方国立大学の学長に。法人化の混乱、抵抗する教員、文科省の圧力、予算削減のなかで奮闘する落下傘学長。データを駆使した現場報告。

 さて、自分の業務とは直接関係のない業務関連書籍を読むということは、どのような意味を持つのでしょうか。職業人として業界のことを知っておくのは当然だということ、業務の変更・異動に備えるということ(関連弊BLOG記事:人事異動での担当業務変更に思う 〜専門性を連続させる〜 )、ただ書籍を読むのが好きだということ、いろいろあると思います。私自身は、それに加え、信頼を得るために知識・情報をインプットするということを意識しています。

 例えば、他大学の取組やこれまでの大学政策の流れなど、大学業界に関係することを教職員や学外者など他者から質問された際に適切に答えられると相手からの信頼度が向上し、それが積み重なることにより様々な局面で自分自身が有利になる可能性が高まると感じています。有利不利の損得勘定で書籍を読むわけではなくただ単純に新しいことを知るのが楽しいからということもありますが、このように知識をインプットし適切なタイミングでアウトプットを行うことを繰り返すことで、他者に対して着実に効用が発生するということですね。(大学職員になって間もない頃、親戚から勤務校の入学式の日程を聞かれてうまく答えられず恥ずかしい思いをしたことも、多少なりとも影響しています。。。)

 今回紹介した書籍は、冒頭条件にもあるAmazonもそうですが、勤務先や居住地域の図書館でも探すことができると思います。蔵書検索にはカーリル | 日本最大の図書館蔵書検索サイト等が便利ですね。特に、大学職員の方であれば、勤務先の図書館をご利用してはどうでしょうか。教育学部がある大学ならば教育学関係や高等教育関係の棚があると思いますし、そうでなくとも新書として蔵書されている可能性があります。是非、勤務先のリソースを使い倒してください。

 また、今回紹介した書籍は、冒頭条件にもあるとおり、あくまで初任者向けのスタートアップと思っています。これらを読まれた後は、今回紹介しなかった特定の分野に特化した新書を読むのもいいでしょうし、大学関係の書籍を図書館で探して読むのもいいでしょう。なんにせよ、「自分が保有している知識はどんどん古くなっており、何もしないとどんどん使いものにならなくなる」と考えた方が無難だと思っています。