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URAシンポジウム「大学の研究経営システムの確立に向けて~経営を担う・支える人材確保にどう取り組むか~」に参加してきました。

大学一般

文部科学省委託調査研究 URAシンポジウム 大学の研究経営システムの確立に向けて ~経営を担う・支える人材確保にどう取り組むか~:一般向けセミナー:セミナー・イベント:三菱総合研究所1

大学等においてはURA(University Research Administrator)の必要性の認識が進みつつありますが、URAと同様に研究企画立案、研究資金の調達・管理、知財の管理・活用等を行う研究経営人材の職種も多様なものへと変化し、業務内容についても多様化が進んでいます。そこで、URAシステムの自立的運営に向けて取り組むべき内容・課題、各種ネットワーク組織の現状・課題・成果、我が国のURAシステムの現状認識や課題意識、あるべきURAシステム構築へ向けたプロセスや必要な施策等を議論します。

  URAシンポジウムに参加してきました。会場には、ほぼ満員の300名程度がいたと思います。内容はURAに限らずかなり多岐にわたるもので、集中して聞いているだけで大変でした。特に上山先生から事務職員の在り方について考えていることを伺えたのは、良かったですね。

 以下に、本会での発言を記します。なお、あくまで私が理解できた部分を一部のみ掲載していることに留意ください。また、個人的に気になった箇所に下線を引いています。

基調講演1「日本の科学技術駆動型イノベーション創出能力の強化に向けて ~URAの使命と大学の挑戦~」(柘植 公益社団法人科学技術国際交流センター会長)

  • 本日は3点のお話をする。1.日本の再生と持続可能な発展には「科学技術・学術力」と「イノベーション力」と「教育力」の三位一体推進が必須であること、2.限られた財政下で「教育・研究・イノベーションに向けた一石三鳥的な投資効果の最大化」を行う大学は生き残るということ。3.学長と部局の経営力強化が要でありURAはクロスファンクショナル機能に挑戦すべきであるということ。
  • 日本再生に向け経済や社会保障を立て直さないといけない。歳入は改善傾向にあるが歳出は依然として大きく、イノベーション・エコシステムの構築は必要である。その要は、次世代を担う人材教育と科学技術とイノベーションの三位一体振興が必要であり、これは大学人の社会的使命を再認識しなければならない。
  • 科学技術の広がりを横に、社会経済的創造のステップを縦軸に取ると、大学と公的研究機関、産業が繋がっていなければならないことがわかる。URAは大学経営中核人材に不可欠である。三位一体推進に向けて橋渡し機能の発揮を担っていくことになり、URAは多様な価値と人材の結合による新たな価値創造プロデューサーとなる。URAの活用はIRの重要経営課題であり、大学を取り巻く社会的環境条件の変化と大学の対応能力の強化を、学長と全部局、研究者・教育者及び事務組織の全員が認識し、共有化できるかがIRの調整である。また、URA人材育成とシステム改革は、この危機感の下で全学的IR活動の下で行われることが肝要である。
  • 文部科学省の資料にある定義にとどまらず、URAは学術研究のプレ・ポストアワードを支援するだけでは不十分であると考える。URAとは、世界に生き残る大学の「学術研究力と教育力と社会貢献力とを三位一体的に発揮する大学力の強化に必須の高度アクティング・マネージメント人材群」である。ある大学では研究科長直下の研究支援総括室の中にURAを配置しているが、この形では新たな価値創造のためのプロデューサーではあり難い。大学本部と各部局が共同で実践しなければならない「全学的IR」のもと「URA機能・職種の充実と定着化に向けた設計と具体的な改革」への障害になる可能性がある。
  • URAには全学的クロスファンクショナル機能のリーダーになってほしい。URAが執行部や事務職員、教員の価値を結合することで、新しい価値を創造することができる。これからの大学経営の要として、三位一体推進マネージメントを掲げる。国における教育振興や科学技術・学術振興、イノベーション振興に係る各種方針を踏まえ、大学に投下される資金と人財の一石三鳥的投資効果を狙った施策を行わなければならない。イノベーション創出への要求はますます高まっている。大学の中で仕組みを作っていかなければならない。
  • 学長が優秀なURAをいかに確保できるかで生き残りが決まると考える日が来る。また、各部局構成員も、大学の存続の危機感のもと、各部局の論理を越えて全学的IRの実質化・可視化に参加することが不可欠である。そのため、学長は教員・職員、研究者の全員参加の下で、”領空侵犯を恐れぬ”優秀なURAの育成とキャリアパス構築に注力することが必要である。近い将来URAから学長が出てくることを予測している。
  • Q:どのように教育に”領空侵犯”していくのか?
  • A:経済的支援など、博士課程学生の教育活動にアプローチすることが考えられる。
  • Q:明確なURAの定義はあるのか?また、博士課程修了者にもキャリアパスとしてURAを提示できるか?
  • A:URAをどのように活用するのかは、各大学で強み弱みを把握し学内で意思を統一することになる。定義は各大学で定めれば良い。博士課程修了者のURAへのキャリアパスには期待している。研究とイノベーションの現場がよく見えるのは大学のアドバンテージである。大学のためにも、博士課程学生に対してURAを有力なキャリアパスとして位置付けてほしい。

基調講演2「大学の未来と求められるアカデミアの戦略~大学経営を担う人材の計画的な育成と確保に向けて~」(上山 政策研究大学院大学副学長)

  • 海外大学には分厚い事務組織があり、そこが日本の大学とは違うところ。スタンフォード大学には、PresidentOfficeとProvostOfficeがあり、役割分担をしている。PresidentOfficeは財務の責任や寄附、人事、大学戦略、ファンドレイジングの司令塔という役割、ProvostOfficeは各スクールとの調整や研究方針、バジェット、教育、FDという役割がある。特に、ProvostOfficeは部局のすべてのバジェットを把握し調整をしており、ここは日本と大きく違う点である。
  • それぞれプロフェッショナルな人材が雇われており、各Officeはマネジメント層と連携が取れている。予算は各部局でうまく動かしており、日本の大学との大きな違いでもある。URAは今後各分野のプロフェッショナルの人材に分かれていくだろう。アメリカの大学でも、事務的なマネジメントの経験がある人材がプロフェッショナルとしてProvostOfficeで働いている。
  • スタンフォード大学では財務にかかる組織が様々なところに配置されているところも特徴である。財務的な背景がなけれ戦略的な取り組みができないが、日本の大学はこのような状態にはなっていない。
  • 日本の大学では、学長にガバナンスが集中している形になっているが、その意思決定や行動を支える専門性人材がいない為、何も動かないことになる。事務とマネジメント層をつなぐ人材がいない。また、財務部門が弱く、戦略的に検討できる体制になっていない。日本の組織はデータを並べてることができるかもしれないが、その先の部分ができていない。事務組織とマネジメント層が分断している。これは総合大学であればあるほど難しい問題である。役割分担ができておらず、各者の専門性が発揮できていない。
  • 大学の中の資源配分こそが大学のマネジメントのキモである。アメリカの大学では、資金をUnrestricted funds,Designated funds,Restricted fundsの3つに分け、特定の目的に使用する使途制限のないDesignated fundsを戦略的に用いる資金を定めた。これにより、戦略的マネジメントが可能になった。スタンフォードで大学は、各教員と専門人材によるバジェットグループを形成し、線略的な計画を立てProvostOfficeに提案している。ProvostOfficeが使用するのは全予算の3割程度であり、競争的資金が取れないところなどに戦略的に配分している。ProvostOfficeの役割が大きく、URAのような者が配置されている。ここから見ると、日本の大学は経営判断ができる組織体ではないと考える。
  • 日本の大学の事務部門が非効率的なのは、うまく動かすマネジメント体制ができていないためでもある。例えばURAに対しうまく指示できるマネージャーはおらず、使いこなすだけのマネジメント層が形成できていない。URAは専門が細分化し、大学の将来ビジョン策定に関与していかないといけない。また、優秀な事務職員が適切にキャリアパスを形成し、経営に参画できる体制にしなければならない。
  • アメリカの大学は人材の専門性が細分化している。これはここ30年くらいのことであり、日本の大学が巻き返せないくらい遅れているわけではない。ハーバード大学は80年代に入ってからアドミニストレーションの予算が急激に増加しており、またUCバークレーの管理部門の人件費は80年代と00年代では大きく伸びている部署がある。アメリカの大学の進展はマネジメント体制の劇的な変化にある。URAはこのような体制に吸収されていくものと思う。

事例紹介「大学経営を研究等の側面から支える体制、人材、その役割について」

「大学マネジメントとIR」(西郡 佐賀大学IR室長)

  • IRは大学の規模によって方向性や位置付けが変わってくる。佐賀大学版IRは1.学長主導であり執行部支援が中心であること、2.全学的な組織であること、3.経営基盤・教学・学術・社会貢献という四つの視点があること、4.機能先行主義として結果を出してマネジメントに機能させることを意識していること、5.Quality Indicator(QI)の導入、6.影響機能の6点が特徴である。
  • 手段としてのマネジメントにおいて、コンセンサスをとる際にIR情報の提供や影響機能の提供をしている。また、経営層が根拠に基づいた大学経営を行うことを宣言して取り組んでいる。意思決定の支援に関わる情報を提供することを重要視している。また、それによる合意形成にも影響を与えている。
  • 佐賀大学IR室は、専任職員1名のもと、学内の各教職員を室員とするとともに、現場でデータを扱っている事務職員を拡充メンバーとしている。運営データを扱っているのは事務職員であり、教職協働でないと機能させるのは難しい。会議では、学長や理事等が陪席し、報告や情報共有を行っている。この会議は役員会の直前に行っており、必要に応じて役員会で議論される。横串としてのIRを意識しており、各部局のデータ分析の交通整理を行っている。
  • KPIは様々あるが、モニタリングすべき指標をQIと位置付け、IR室の各部会はQIの作成・精査を担当している。会議におけるルールとして根拠のあるデータを掲載することを前学長の時から全学的に推進しており、それらの情報をIR室が収集している。IR室が執行部にQIの状況を報告するとともに、執行雨の判断により原因と対応策を検討することになる。
  • 各指標については、学内のIRデータから各部会が抽出・精査し、意思決定者が指標を設定・実行している。収集したデータは学内ウェブサイトにて公表している。
  • 計画を立てる際には、大学の現在の立ち位置をデータを用いて明らかにしている。また、「影響機能」とは指標自体が持つインパクト機能のことであり、各指標の状況を踏まえ評価反映特別経費として実績に応じて学長裁量経費を配分している。例えば、オンラインシラバスの入力率は100%にならないと部局配分経費の減額対象にしている。認証評価の必要性などに応じて、各指標を評価反映特別経費に含め、改善している。
  • 本学では生データをわかりやすい形で可視化すること、当事者意識の喚起のため学科単位でデータフィードバックの実施などを行っている。改善のためのデータとは都合の悪いデータであり、評価のためのデータとは異なる

「これからの大学に求められるリスクマネジメント体制の構築」(岡田 九州大学国際法務室副室長・教授)

  • 日本の大学にはリーガルデパートメントが欠けている。日本の企業が法務部門が作られたのは30年程度前であり、日本の大学はそれを追いかけることになるのかもしれない。
  • 日本の大学の環境の変化は大きい。それに対応するのはガバナンスであり、ガバナンスがあってこその経営である。ガバナンスは、コンプライアンスとリスクマネジメントの両輪体制である。日本の大学は特許件数を競っているが、アメリカの大学はライセンスにつながる有望な技術のみをプロテクトしている。
  • 大学では国際化や国際戦略が重要になっており、アメリカの大学の法務部門に関する調査を行った。海外の大学では法務部門のトップであるGeneral Counselが大きな権限を持っており、彼がYesとしないと学長がサインできない。また、企業法務をやっている者が大学の中で働いており、業界団体もある。日本の大学で国際法務室があるのは九州大学だけである。
  • 国際法務の中で大切なことは、国際プロトコールの策定であり、海外企業との共同研究のやり方や契約方法を教えている。また、契約書のやり取りを通じた契約交渉も重要である。日本の大学では、法的背景のない担当事務職員や教員、URAが先方大学の法務部門の者とやり取りをせざるをえず、交渉に負け不利な条件での共同研究などを行うことになる。このような事態は国際化という波で生じている。
  • 国際安全保障輸出管理においても、留学生や外国人研究者を受け入れるリスクはあり、身分を調べながら受け入れていかなければならない。外国人研究者にとっては、内定通知と承諾書だけでは雇用が成立していないと思われる可能性もある。
  • 様々な体制を構築する際には、法務人材がいなければならず、これは法務のミッション・組織の土台の上に構築されるものである。日本の大学にはこの2つがない。法務の素地を持ったURAや人材が必要になる。外部人材を使う際にも、外部人材を使うノウハウを持った者が組織内にいなければならない。これにより、教育と研究の自由を守ることになる。海外調査の際には、教員はKingであり法務部門はKnightであると言われた。

「求められる大学の広報戦略~大阪大学の挑戦」(伊藤 大阪大学准教授クリエィティブ・ユニット)

  • クリエイティブユニットとは、学内と学外をつなぐ組織である。興味を持ってもらうところから始め、注目へとつなぎ、イメージを作る「ブランディング」に取り組んでいる。これは、優秀な学生や教職員を集めるためであり、活動の活性化やreputationの向上、サービスの向上、愛校心の醸成といったポジティブループを構成するためである。
  • ブランディングとは好感を得るということであり、好感を持ってもらうことで大学とのコミュニケーション機会を増大させ、寄附などの行動につなげるために行う。ブランディングのターゲットとして、縦軸(入る人、中の人、出た人)、横軸(社会、学生、コニュニティ)の9象限で考えている。それぞれ正しいリーチメディアを用いてアプローチしていく。
  • 以前の広報活動は、各部局の独自展開や費用対効果の低下、専門人材の不足などの問題が発生しており、広報横断的部署の必要性が当時の総長から出された。そのためクリエイティブユニットという教員組織を作った。大学本部事務組織と同じ場所で仕事をしている。独立した組織とすることで、縦割り回避や事務組織横断的対応が可能になる。また、事務組織と場所を共有することで連携体制が構築できる。
  • デザイン・ブランドマネージやメディア企画・対応に取り組んでいる。具体的には、受験生に対するウェブ、ビデオ作成やtwitterYouTube対応、職員に対する採用サイトやビデオ作成、研究に関するリリースなどに取り組んでいる。
  • 研究を通じて感動を伝えるコンテンツを作ること、スター研究者をどのように生み出しプロモーションするか、そもそも研究の広報にひっかりをどう作るかということを考えている。大学とのコミュニケーションチャンネル・トリガをどう作るかということである。

委託調査研究の紹介「リサーチ・アドミニストレーター業務の自立的運営に向けた調査・分析」(山野 株式会社三菱総合研究所主任研究員)

  • URAの実態やあるべき姿を調査するため、アンケートやインタビューを実施した。
  • 多様な要求に応えられる専門的人材としてのURAについて、1.学内の認知度(役割メリット必要性)、2.キャリアパス、3.人材の確保育成、4.今後の展開の4点を問題意識を位置付けた。
  • 1.について、プレアワード関連やIR、研究戦略がURAに期待されている。また、URAの配置により外部資金の導入や政策動向の把握について役に立っているが、戦略的配分などについては現状では役立ったという回答が高くなかった。認知度については、近隣者以外には認知度はあまり高くなかった。学内の中で認知されていることが必要である。
  • 2.について、URA全体の8割が任期付きであり、キャリアパス不足がネックになっている。給与水準は教員に準拠しているところが多いが、教員とも職員とも異なる給与水準である場合もあった。キャリアパス全体では、学内で再配置する場合と他機関を行き来する場合の二つがある。
  • 3.について、大半の大学が人材の不足感を持っている。募集をしても確保できないことや人材確保の競合先が増えたことが挙げられた。URAの背景として、39歳以下が一番多く、前職として3割程度がアカデミア、4割程度が民間企業出身である。若手でアカデミア出身、シニアで民間企業出身という二つの人材が確認でき、ミドル層が抜けている。
  • 4.について、URAは資料作成等形式的な業務が中心になっており、経営に関わっていくには経営層へのアプローチが必要である。多くの大学でURAの財源については明確に回答できておらず、URAが獲得に貢献した外部資金の一部を人件費に当てるという回答する大学もあった。URAの維持・発展のためには経営への関与や事務組織との連携が必要という発言があった。
  • 1.については学内への認知度向上や大学戦略へのURAの位置付け、2については雇用の安定化とキャリアパスの明確化、3.についてはミドル層の配置や生え抜きURAの必要性、4.についてはアドミニストレーターとして認知される必要性を踏まえ長期的計画停な育成、事務組織との連携が大切である。

URAシステムの構築に向けて ~各団体等の活動紹介~

「研究力強化に資する大学・研究機関ネットワークの構築とその活動」(小泉 自然科学研究機構研究力強化推進本部特任教授)

  • 共同して行うべきところは共同して行うという精神のもと、大学研究力強化ネットワークを形成している。課題を解決するためのタスクフォースを作り、活動を行っている。各タスクフォースには、興味関心を持っている大学が自主的に参加している。様々なことをまとめ、国に提言として提出している。
  • 各タスクフォースでは、各大学の課題を共有し、共同でその解決に取り組んでいる。JSPS等他機関とも協力している。また、国際情報発信に関し、AAASが提供するプレスリリース配信プラットフォームにグループとして参画し、EurekAlert!japan Portalを設立して世界中の科学記者にプレスリリースを提供している。これにより、プレスリリースがロイターや有名科学サイトに取り上げられた。
  • 大学ランキング指標についてもタスクフォースを立ち上げ、ランキング指標の適切な利用を目指し、TimesHigherEducationや行政に提言を行っている。
  • これらタスクフォース活動はオープンであり、メンバー以外にも公表されている。ぜひ参加してほしい。

「リサーチ・アドミニストレーター協議会の創設と期待する取組み」(山崎 金沢大学学長)

  • 1年ほど前にリサーチ・アドミニストレーター協議会を設立した。同協議会にはURAの自主的な能力開発や相互支援に力点を置いている。指定国立大学や卓越大学院とURAとの関わりも気になるところである。
  • JST事業がきっかけとなり、金沢大学がRA研究会を2009年から開始した。また、2011年からはURAシンポジウムも開催し、2013年から合同開催とした。2015年に年次大会を行い、年1回の大会や分科会、ワーキンググループでの活動に取り組んでいる。
  • RA協議会では、研究会・講習会の開催や情報交換の促進などに取り組んでいる。RA協議会は、運営委員会の下に三つの専門委員会と一つのワーキンググループを設置している。現在は21機関、350名の会員である。

「医歯薬系URAに求められる役割とmedU-net の活動」(飯田 medU-net 事務局長・東京医科歯科大学教授)

  • medU-netとは医療系産学連携を支える人材を育成する組織であり、各種リソースの共有による標準化・スキルアップや産業界や行政と連携した政策提言に取り組んでいる。医療系には研究期間やガバナンス上の配慮事項、特許の完成度など特徴的な研究活動上の特性があり、その課題を攻略しなければならない。現在249機関404名の会員がおり、アカデミア法人会員としては24法人が加盟している。
  • medU-netにURAの参画が増えており、医療系URAワーキングを設立した。医療系特有の業務として臨床研究のサポートが求められており、医療系URAとして他分野と異なる業務がある。また、機関ごとにも求められる役割が異なる。医師経験者や製薬企業OBがURAとして求められているとともに、人材育成に関する意見もあった。医療に特化したスキルアップできる場がないことは課題であり、情報も散在している。中長期的なプロジェクトであるため安定した雇用が必要である。
  • 医療系URAのモデル構築や情報共有の場の設置に取り組んでいきたい。

 パネルディスカッション「大学の研究経営におけるURAの位置づけ(今後、URA の更なる機能高度化のために取り組むべきアカデミアの課題とは何か)」

(司会)上山 政策研究大学院大学 副学長

(パネリスト)
川端 北海道大学理事・副学長
野口 立命館大学研究部事務部長・立命館大学産学官連携戦略本部副本部長
向 金沢大学理事・副学長
森田 東京医科歯科大学理事・副学長
山本 岡山大学 理事・副学長

事例紹介(北海道大学

  • URAとしてパーマネントポストを準備し幹部候補生を育成している。国立大学は組織としての個性をどう作るかが課題であり、大学側が企画・資金調達・実施をしなければならない。強みを社会的要請に落とし込んだ中で、資金配分等を行わなければならず、これが大学経営である。
  • URAはプロデューサーとして働くことになるが、これは必ずしも新しい話ではなく、企業でも研究所に入って以降企画・マネジメントの道に進む者がいる。北大では、個別研究者支援だけではなく、プロデューサー機能などを付加し、URAが大学を改革するシステムを作っている。
  • URAを大学の経営を担う幹部候補生として育成するため、学内でしっかり育成して最終的に理事にまで持っていく。今は12名のURAであり、教員でも職員でもない職として位置付けている。

事例紹介(立命館大学

  • URAを事務改革の旗頭としたいと思っている。私立大学は学部学生が多いが、だからこそ高度・効率的な研究支援の必要性がある。私立大学ならではのURAのミッションとして、1.学費依存体質からの脱却、2.人的研究支援環境の充実、3.研究高度化戦略への寄与が重要であり、「士業」クラスの地位・位置付けの確立が重要であると考える。
  • 高度専門職として、URAと特定業務専門職を設けた。導入の際には文系の教員にも丁寧に説明した。

事例紹介(金沢大学)

  • URAは先端科学・イノベーション推進機構に15名を配置している。本部型の配置であり、部局には配置していない。教員と事務職員と研究員が混在している。大学の研究力強化につながる企画・実施・支援が目的であり、学部資金獲得支援や研究IRの実施などに取り組んでいる。
  • データに基づき企画立案・提案できる人材を育成するため、大学改革推進委員会への同席や学内競争的資金の審査員などにURAを配置している。大学執行部とURAとの距離を近くすることを大切に思っている。

事例紹介(東京医科歯科大学

  • 病院収入が多く、病院における診療を無視して戦略を立てることはできない。また、外部資金は企業からくる資金が多く、臨床研究が重要になってくる。マネジメントや臨床研究の推進にも、URAを導入しなければならなかった。URAがIRを行い、学部改革につなげる体制を整備している。また、先進医療や臨床研究を支援するという役割もある。

事例紹介(岡山大学

  • 文科省の公募に落ちても定員をつけて推進してきた。URAとは研究マネジメントを行う人材であり、研究環境の改善など8つの役割がある。岡山大学では企画業務型裁量労働性を適応している。研究推進本部とは異なり、トップ研究者の牽引などを担っている。また、高度な研究成果を生み出し社会につなげる体制を整備している。
  • グローバルURAとして海外研究者を雇用し、4月から副学長になる予定である。現在は5ポストであり、内閣府への出向や副理事への就任などキャリアパスを示すとともに、事務職員への良い影響も与えていきたい。

パネルディスカッション

  • (司会)URAの定義が定めにくいのは、まだURAとしての姿が見えていないためだろう。URAの果たすべき役割や直面している課題、維持などが焦点である。URAの業務もより細分化していくのかもしれない。まず役割について聞きたい。
  • (川端)研究経営ではなく大学経営を担うことを期待している。IRをベースとした時、国立大学は財務が不透明であり、このあたりをどうにかしていきたい。
  • (森田)病院を持っている国立大学は経営自体が厳しくなっており、重要になっている。
  • (向)研究の後方支援が基本であり、俯瞰的にものを見る立場になって欲しい。執行部と議論する中で新しいものが出てくる。まず大学のビジョンがあって、従来の教員とは違う立場でものを見て、取り組んでいくことになる。
  • (山本)現時点では順調にいっていると思う。研究科長がURAに相談に行くこともある。企業経験者や外国人をURAや執行部に入れることで、改革を進めていきたい。
  • (野口)立命館では、大学改革は大学職員が担うとおもっている職員が多いのではないか。課長級としてURAを配置しマネジメントをさせたかった。
  • (司会)評価に使うIRと未来に向かうIRは異なる。IR組織をマネージする役割が重要であると考える。
  • (川端)URAがIRを持つと、各部局へ照会することをやめた。こちらの方が詳しくなった。大学経営の凄さを教員が実感しないとURAが何をやっても動かない。このためには財務IRが重要であり、それに基づき資源配分を行わないといけない。国立大学法人会計制度の壁もありまだうまくいっていないため、小技を繰り返して効果を示している状態である。
  • (司会)財務活動とURAまたはIRとの関係をどう考えるか。
  • (山本)財務とURAとの関係性について、監査人や監事との連携のもとで取り組んでいかなければならない。成功すれば教員の態度が変わった。財務会計のURAはヘッドハンティングしないといけない。
  • (森田)国際的な資金獲得については、他部署において対応している。過程においてどのようにURAやIRを活用していくかが今後論点になる。
  • (向)国際的な展開を踏まえ、広くIRに取り組んでいきたい。
  • (野口)執行部に危機意識を持ってもらうことである。URAにはまず研究プロジェクトのマネジメントを担ってほしい。個人として評価にはアレルギーがあるが、組織としての評価には比較的受け入れられやすく、IRや指標を用いて定量的な目標を立てやすくなった。
  • (司会)キャリアパスを含め、URAを経営としてどう捉えていくか?
  • (川端)今いる教員や事務職員でもダメで経営などに関する知識を持った人材が必要であり、URAとしてパーマネントな地位を準備した。URAとは別にコーディネーターなどがいるが、最終的に統合して組織化し、キャリアパスを形成していきたい。
  • (野口)URAを増やしていきたい。定数化の提案をしていきたい。他部署からの評価を得て、初めて動く話もある。
  • (向)教員と事務とでURAの組織を作っており、事務職員はローテーション人事の一環である。事務職員のトレーニングという意味もある。教員の数、職員の数、URAの数のどこに重点を置くかを学内で議論していきたい。URAの効果は学内で認識されており、学長の思いもあり、URAの導入を推進していきたい。
  • (森田)教員とURAのどっちを取るかと聞かれた時にURAをとるというような人が出るように育成をしていきたいと思っていた。医療系URAを育てるプログラムのようなものも想像したい。経営の専門職を学長の補佐としてつけたいという思いもある。
  • (山本)パーマネントポストを準備するとともに、URA独自の俸給表や規定を作り、キャリアが見えるようにした。URAの仕事が目に見える形になると、学内で信頼関係ができる。そのために2年かかった。ポスドク雇用とのバランスは難しく経営判断になる。
  • (司会)URAの事務職員への影響はどうか?
  • (川端)URA部門のトップは事務職員であり、事務職員も含めた研究推進部全体の仕事の速度感が上がった。
  • (野口)職種は分かりやすい事務職員にURAを置いて、それが成果を出す方がインパクトがある。
  • (向)同じフロアで仕事をしており、化学反応が起こっている。
  • (森田)特定分野に特化した事務職員を育てるため、URAとして雇用している者もいる。
  • (山本)最初は事務職員から敵視されていたが、時間をかけて変わってきた。