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国立大学改革プランに思う 〜質の低い効果想定〜

国立大学改革プランについて:文部科学省

 文部科学省において、今後、国立大学改革の方針や方策、実施行程をまとめた「国立大学改革プラン」を策定しましたので、お知らせいたします。

 国立大学改革プランが公表されました。これは、平成24年6月に公表された大学改革実行プランの一貫であり、国立大学の改革方針及び改革行程を示すものです。

「大学改革実行プラン」について:文部科学省

 そのため、日本が直面する課題や将来想定される状況をもとに、目指すべき社会、求められる人材像・目指すべき新しい大学像を念頭におきながら、大学改革の方向性を「大学改革実行プラン」としてとりまとめました。この「大学改革実行プラン」により、大学の持っている本来の役割を社会全体に認めてもらえるよう、精力的に大学改革に取り組んでいきます。

 さらに言うと、これらの流れは、平成23年度予算案策定時に、当時の神田主計官と文部科学省との間の「合意」からスタートしています。

平成23年度予算政府案 : 財務省

「平成23年度文教・科学技術予算のポイント」(平成22年12月)

大学改革について文部科学省と以下の合意がされた。

 時代の要請に応える人材育成及び限られた資源を効率的に活用し、全体として質の高い教育を実施するため、大学に於ける機能別分化・連携の推進、教育の質保証、組織の見直しを含めた大学改革を強力に進めることとし、そのための方策を一年以内を目途として検討し、打ち出すこと。

 この合意の基、平成23年度国立大学運営費交付金と施設整備費補助金の予算額は、前年度とほぼ同額という破格の扱いになりました。しかし、平成24年度予算案策定時に大学改革が遅々として進んでいない状況であったため、国立大学運営費交付金は前年度1.4%の削減となるとともに、改革推進のため新たに「国立大学改革強化推進事業補助金(138億円)」が設けられました。それに併せ、平成23年12月に、文部科学省内において、文部科学副大臣をトップとした「大学改革タスクフォース」を設置し、平成24年6月に「大学改革実行プラン」が公表されました。その後、内閣府の教育再生実行会議や中央教育審議会などでの議論もあり、現在に至るという流れです。

 つまり、今回の国立大学改革プランは3年越しで示されたということですね。

 さて、そんな国立大学実行プランですが、中身はどうなのでしょうか。概ね、どこかで見たことのあるような施策ばかりだなという印象ですが、これまでの教育再生実行会議などでの議論を踏まえた結果なのでしょう。アンブレラ方式がきれいさっぱり消えているのは、政治的な意図があるのかもしれません。

 本プランを眺め、大きく2つ気になったことがあります。

 1つは、国立大学法人化の成果についてです。資料中では、規制の緩和等により、共同研究や特許実施料収入が増加したと書いてあります。逆に言えば、これだけしか書かれていません。例えば、論文産出数がどうなったか、大学運営がどのように効率化したかすら書かれていません。法人化の功罪を論じる資料ではないため、最小限の記述に留めたのだと思いますが。。。

 国立大学が法人化して、そろそろ10年が経ちます。その間、どのような変化があり、どのような変化がなかったのか。文部科学省は検証が必要な頃でしょう。もちろん、その際には、国立大学で教育研究管理運営に携わっている教職員の意見を最大限聴取することが必要です。

 2つめは、全体的に効果の裏付けが見えないなということです。例えば、年俸制やリーダーシップなどは、労働社会学や経営学の分野で研究が進んでおり、先行研究も一定程度行われています。そこから、国立大学にこれらの施策を導入することによる功罪をある程度推定できるはすです。そのような引用文献が見えず、効果の推定も極めて貧弱であるため、上司や外部から言われたことを何となくまとめたような感じがします。

 特に国家の行政職員においては、国の業務を担っているわけですから、担当者一人一人がその分野において、最も知識が豊富で勘が働く者であるべきだと思っています。そのためにも、様々な機会を通じて勉強を重ね、業務や知識の質を向上させる必要があります。だからこそ、行政官庁から大学等へ教員として出向する者がいるという理解です。つまり、行政官一人一人が担当分野に関して研究マインドを持つということが大切だと思っています。(もっと言うと、大学職員もそうなのですが、それはまたの機会に。)

 その意味では、今回のプランは効果の裏付けの質が低く、作成に携わった者がどの程度考えて作成したのかわかりません。恐らく、文部科学省高等教育局の担当課が初期の作成を担当したのではないかと思いますが、論理性ではなく肌感覚で仕事をしているのではないかとも邪推してしまいます。上司へ諮っていくうちに内容が変化していった可能性もありますが、結局説得できなければ意味がありません。

 本プランは、特に中央教育審議会などで検討をせず、省内のみで決定したため、このような質の低いものになったという認識です。実際、10月に発表された「大学院段階の教員養成の改革と充実等について」(報告)は、「教員の資質能力向上に係る当面の改善方策の実施に向けた協力者会議」の協力の基、かなりしっかりとした内容になっており、施策を審議会等で検討することの重要性を痛感します。

「大学院段階の教員養成の改革と充実等について」(報告):文部科学省

 文部科学省では、平成24年9月、初等中等教育局長及び高等教育局長の下に「教員の資質能力向上に係る当面の改善方策の実施に向けた協力者会議」(主査:村山 紀昭 北海道教育大学名誉教授)を設置し、検討を行ってきましたが、このたび、その報告書が取りまとめられましたので、公表します。

 なんにせよ、プランが公表された以上、これに沿った大学の動きが求められていきます。うまくプランを利用して、前向きに対応していきたいです。