異動官職について思う

   「異動官職」という言葉をご存知でしょうか?主に国立大学法人高専機構所属高専など(以下、大学等)において、地域ブロック内の大学等の課長部長職や文科省からの出向のような形で全国の大学等の課長部長理事事務局長などに配属する方を指します。それに対する言葉としては、その大学等生え抜き職員である「プロパー職員」などがあります。国立大学が法人化して以降、以前よりは減少しているという印象はありますが、運営権限が大きい管理職を外部の者に委ねることについては、その是非など議論の遡上にのぼることもしばしばです。

   異動官職について最も問題だと思うのが、情報の非対称性です。たいていの場合、大学側は面接による選考などをせず、ただやってくる異動官職を受け入れのみです。やってくる人がどのような人格でどのような能力を持っているのかすら精々履歴書程度であり詳細な事前情報を与えられませんし、実質的に人を見て拒否することは困難ではないかと思います。
 
   さて、そんな異動官職ですが、なんとなく二つのタイプがいるかな、という印象です。一つ目は他機関での経験を活かし主体的に改革を行うタイプ、もう一つはプロパー職員のやることを尊重して助言を行おうというタイプです。
 
   前者は既存の既得権に風穴をあけ良い効果を与えることもありますが、前からいる職員の反感により身動きがとれなくなったり、その異動官職がいなくなると元に戻ったりする場合があります。後者は一見良いようにも見えますが、権力発現の場が挙がってきた案件を右に分けるか左に分けるかしかなく、土壇場になって「気分で」変更を指示することもあります。ずっと執務室にいて、書類でしか状況を判断しないこともあるかもしれません。
 
   どっちのタイプが望ましいと思うか、実は私はどちらでも良いと思っています。ただ、どちらにしろ、とにかく他の職員、特に大学の未来を担う若手中堅職員へ対し積極的に話に行って欲しいと思っています。大学を良くするためには、とにかく様々なコミュニケーションが土台となります。年下から話しかけるのが礼儀だ、などそんなことは捨て、大学を良くするためにも、個室に閉じこもるのではなく学内各所に足を運んで話をしてください。実際、事務局内全ての職員の顔と名前を覚えている異動官職の事務局長もいます。
 
   改革を進めるにしろ、それを定着させるにしろ、数年経てばその異動官職がいなくなることは確実ですし、学内の者と話し議論をして、異動官職の良い経験や知見を学内に広めてほしいな、と思っているところです。