修学支援新制度における学生等の確認要件を整理する。

 前回、前々回に引き続き、修学支援支援新制度について整理します。今回は、支援措置の対象となる学生等の認定要件(以下、「支援認定要件」という。)についてです。

1.根拠法 

大学等における修学の支援に関する法律 抄

第三条 大学等における修学の支援は、確認大学等に在学する学生等のうち、特に優れた者であって経済的理由により極めて修学に困難があるものに対して行う学資支給及び授業料等減免とする。

第八条 確認大学等の設置者は、当該確認大学等に在学する学生等のうち、文部科学省令で定める基準及び方法に従い、特に優れた者であって経済的理由により極めて修学に困難があるものと認められるものを授業料等減免対象者として認定し、当該授業料等減免対象者に対して授業料等の減免を行うものとする。

第十二条 確認大学等の設置者は、文部科学省令で定めるところにより、当該確認大学等に在学する授業料等減免対象者が偽りその他不正の手段により授業料等減免を受けた又は次の各号のいずれかに該当するに至ったと認めるときは、当該授業料等減免対象者に係る第八条第一項の規定による認定(以下この条において単に「認定」という。)を取り消すことができる。

  1. 学業成績が著しく不良となったと認められるとき。
  2. 学生等たるにふさわしくない行為があったと認められるとき。

2 確認大学等の設置者は、前項の規定により認定を取り消したときは、文部科学省令で定めるところにより、その旨を当該確認大学等に係る確認をした文部科学大臣等に届け出なければならない。

3 第一項の規定により認定を取り消した確認大学等の設置者に対し減免費用を支弁する国等は、前項の規定による届出があった場合において、当該認定を取り消された学生等に対する授業料等減免に係る減免費用を既に支弁しているときは、国税徴収の例により、当該確認大学等の設置者から当該減免費用に相当する金額を徴収することができる。

4 前項の規定による徴収金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとする。

独立行政法人日本学生支援機構法 抄

第十七条の二 第十三条第一項第一号に規定する学資として支給する資金(以下「学資支給金」という。)は、大学等における修学の支援に関する法律(令和元年法律第八号)第二条第三項に規定する確認大学等(以下この項において「確認大学等」という。)に在学する優れた学生等であって経済的理由により修学に困難があるもののうち、文部科学省令で定める基準及び方法に従い、特に優れた者であって経済的理由により極めて修学に困難があるもののと認定された者(同法第十五条第一項の規定による同法第七条第一項の確認の取消し又は確認大学等の設置者による当該確認大学等に係る同項の確認の辞退の際、当該確認大学等に在学している当該認定された者を含む。)に対して支給するものとする。

第十七条の三 機構は、学資支給金の支給を受けた者が次の各号のいずれかに該当するに至ったときは、文部科学省令で定めるところにより、その者から、その支給を受けた学資支給金の額に相当する金額の全部又は一部を返還させることができる。

  1. 学業成績が著しく不良となったと認められるとき。
  2. 学生等たるにふさわしくない行為があったと認められるとき。

 なお、政省令の案は公表されていません。

2.概要

1.採用時の支援認定要件 

 説明会資料により、支援認定要件は以下のとおりです。

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 大きく整理すると、以下の4点ですね。

  1. 家計の経済状況に関する要件
  2. 学業成績・学修意欲に関する要件
  3. 国籍・在留資格に関する要件
  4. 大学等に進学するまでの期間に関する要件

 この際の手続きについて、説明会資料に大まかに記載されています。

(4)支援措置の対象となる学生等の認定に関する手続(別紙3参照)

○ 支援措置を受けようとする者は、学資支給(給付型奨学金の支給)については独立行政法人日本学生支援機構(以下「機構」という。)に、授業料等減免については(2)の確認を受けた大学等(以下「確認大学等」という。)に対し、それぞれ申込を行うことについて定める。

○ 学生等からの申込を受けて、学資支給については機構が、授業料等減免については確認大学等が、(1)の認定要件に基づき選考を行うことについて定める。

○ 機構及び確認大学等は、(1)の認定要件に基づく選考の結果を学生等に通知することについて定める。

○ 学資支給の対象者として機構の認定を受けた学生等については、授業料等減免の対象者として認定を受けることができる者とみなすことを定める。

2.継続時の支援認定要件(適格認定の基準)

 ここまでの要件は、学資支給金や授業料等減免に係る”採用時の”要件です。これとは別に、採用後に支援を継続するための”継続時の”要件も存在します。継続時の審査のことを「適格認定」と言い、継続時の要件を満たしていなければ、学生は支援を打ち切られてしまいます。説明会資料により、継続時の試験認定要件や手続きは、以下のとおりです。

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 継続時(適格認定)の手続きも、説明会資料に大まかに記載されています。

(6)支援措置の実施に関する手続等(別紙6参照)

○ 支援対象者は、各学年において継続して支援措置を受けようとするときは、学資支給については毎年一回、授業料減免については毎年二回、それぞれ申込を行うことについて定めるとともに、申込を行わない場合は支援措置を打ち切る(支援対象者の認定を取り消す)ことについて定める。

○ 機構及び確認大学等は、毎年一回、支援措置の対象者が学業成績・学修意欲(以下「学業成績等」という。)に関する基準及び収入・資産額に関する基準に適合するかどうかの判定(以下「適格認定」という。)を行う(高等専門学校及び修業年限が二年以下の確認大学等は、学業成績等に関する適格認定を毎年二回行う)ことについて定める。

○ 収入・資産額に関する適格認定において、機構がその基準に適合することの判定を行った学生等については、確認大学等がその基準に適合することの判定を行った者とみなすことについて定める。

○ 機構及び確認大学等は、適格認定の判定の結果、支援措置を見直す必要があるときは、毎年四月又は十月に、支援措置の廃止、停止又は額の変更を行うことについて定める。

○ 機構及び確認大学等は、適格認定の結果、支援対象者の学業成績・学修意欲がその基準に照らして警告区分に該当するときは、その支援対象者に学業成績等が不振である旨の警告を行うことについて定める。

○ 偽りその他不正の手段により支援措置を受けた場合、確認大学等から退学・無期又は三か月以上の停学の懲戒処分を受けた場合等における支援措置の打ち切りについて定める。

○ 確認大学等から休学を認められた場合、三か月未満の停学の懲戒処分を受けた場合等においては支援措置を停止することとし、復学時に(1)の認定要件を満たす場合、学生等からの申込に基づき、支援措置を再開することについて定める。

○ 機構及び確認大学等は、支援措置の打ち切り又は額の変更を行うときは、あらかじめ、その支援対象者に通知することについて定める。

○ 確認大学等は、学業成績・学修意欲に関する適格認定の判定の結果を機構に通知するとともに、支援対象者に対する懲戒処分、休学の認定等について機構に通知することについて定める。

○ 確認大学等の設置者は、授業料等減免の対象者の認定を取り消したときは、遅滞なく、取消しの年月日、人数、減免の額等を(2)の確認をした文部科学大臣等に届け出なければならないことについて定める。

○ 機構法第十三条第一項第一号の業務の実施に当たり、その対象となる学生等及びその生計を維持する者のマイナンバー(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律第二条第五項に規定する個人番号をいう。)の提出を求めることについて定める。

3.支援要件確認の整理

 前述のとおり、学資支給金(給付型奨学金)はJASSOが、授業料等減免は確認大学等が要件確認を行うこととされています。これは、学資支給金(給付型奨学金)と授業料等減免とがワンセットの制度であると言いながらも、それぞれが別の法律により定められているためでしょう。以下のとおり、想定される支援要件確認の主体について、整理しました。                                                                                           

    学資支給金 授業料等減免 備考
採用時 家計の経済状況 JASSOが確認 確認大学等がJASSOの結果を反映  
学力・学修意欲 JASSOが確認 確認大学等がJASSOの結果を反映?  
継続時(適格認定) 家計の経済状況 JASSOが確認 確認大学等がJASSOの結果を反映 夏頃確認→10月反映
学力・学修意欲 JASSOが確認大学等の結果を反映? 確認大学等が確認 学年末確認→翌学年当初繁栄
高専・2年制学校は年2回(夏頃及び学年末に確認)

 JASSOが行う経済状況の判定結果により確認大学等の判定とみなすことができるため、経済状況の判定はJASSOの結果にゆだねることになるでしょう。また、採用時の学力判定についても、高校3年生時の状況ですので、JASSOの判定(生徒が在籍する高等学校の判定?)に委ねることになるのかなと思っています。一方、確認大学等においては、在学中の適格認定における学力の判定は必ず行うことになります。高専や2年制の学校(短大など)は、年2回学力判定を行わなければならないため、すこし大変かもしれません。

 本件については、Q&Aにも記載があります。

Q 所得や資産に関する要件の確認は、誰が行うのでしょうか。

A 給付型奨学金の申込者が、所得の要件を満たしているのか、申込者から提出されたマイナンバーを活用してJASSOが市町村民税の課税状況などの情報を確認しますので、申込者本人とその生計維持者(原則、父母)のマイナンバー関係書類をJASSOに送付する必要があります。資産についても、JASSOに申告する必要があります。
給付型奨学金と授業料等減免を受けるための要件は同一ですので、授業料等減免の申込者については、給付型奨学金の対象者として認定されていることをもって、授業料減免の対象者の認定を受けられますので、大学等において重ねて所得や資産を確認することは不要とする制度になる予定です。給付型奨学金の支援区分等の情報は、本人の同意のもと、JASSOのシステムを通じて授業料等減免を実施する大学等と連携する予定です。

Q 授業料等減免の申込みにおいて、大学等の入学時に改めて高校等の成績や学修意欲の確認が行われるのでしょうか。

A 授業料等減免の申込者については、給付型奨学金の対象として認定されていることをもって、授業料等減免の対象者の認定を受けられますので、大学等において重ねて同じ要件に関することを確認する必要はありません。 

4.スケジュールの推測

 個人支援の申請スケジュールについて、説明資料では以下の通り記載があります。

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 ざっくりと下図のとおり整理しました。

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 これを作成している際にどうなるかわからないなと思ったことが、確認大学等が行う授業料等減免の申請スケジュールです(上図の授業料等減免スケジュールはおそらく誤っています)。本件について、Q&Aには以下の通り記載があります。

Q 授業料や入学金の減免に関する申込手続(スケジュールや方法)について教えてください。

A 2020年度に進学予定の方は、各大学等が定める手続きに従って、進学時に各大学等で申込みを行っていただくことになります。(給付型奨学金の予約採用の申込手続は、本年6月頃から開始されます。詳しくは、給付型奨学金に関するQ&Aを参照。)

現時点で既に、大学等に在学されている方についても、2020年度から支援を受けるためには、在学している大学等に申込みを行うことになります。本年(2019年)の秋以降、減免に関する最初の申込みの手続が始まる見込みです。(給付型奨学金の手続も本年秋以降に始まる見込みです。)

申込後、各大学等で審査が行われ、結果が出たら速やかに本人に対して通知されることになります。学業成績等や家計状況の要件は給付型奨学金と同じですので、給付型奨学金(新制度)の対象となる方は、授業料等減免の対象にもなります。(給付型奨学金の対象となった方の支援区分の情報は、本人同意のもと、JASSOを通じて各大学等に情報連携する仕組みとなる予定です)。

減免の対象者として認定を受けた後は、毎年(ただし2年制以下の大学等については、毎年2回)、支援継続に関する手続を行う必要があります。 

 授業料等減免の申請は確認大学等が担当するとなっており、統一スケジュールや様式は現時点で公表されていません。特に近年では、定員充足100%を目指し各大学等が補欠合格等を繰り返し、最終的に入学する大学等が確定することが非常に遅くなっている印象があります。どのようなスケジュールを組むかは悩ましい問題と感じています。

 ここまで記載したのは予約申請など代表的なかつ大まかな整理にとどまっており、在学申請や高認試験を経た申請など、若干条件が異なる対応が多く存在します。このあたりも留意していきたいところです。


 3回にわたり、修学支援新制度の整理を行ってきました。言及できなかったことも多々あるので、引き続き文部科学省からの通知等を注視しつつ、学んでいきたいと思っています。