国立大学のスクールカラーに思う 〜同じ色はあるのか?〜

 前回は国立大学の広報活動について、特に大学公式キャラクターに着目しました。今回は、同じ広報活動でも、スクールカラーに着目します。

 校風という意味合いでも使用されることがあるスクールカラーという言葉ですが、実際に「色」で以て表現している大学もあります。箱根駅伝で順位を表示する際に大学名とともに色を表示しよりわかりやすく表現することが、大学と色の関係を示す一例でしょうか。(ただ、あの色はスクールカラーではなくタスキの色であると思いますが。。。)スクールカラーの有名どころと言えば、早稲田大学のエンジ色でしょう。このサイトによれば、その由来は

 そして、大隈講堂が竣工された1927(昭和2)年。講堂の舞台には、高島屋よりえび茶色の緞帳が調製された。これに関して市島は再び、手記『雅間録(がかんろく)』八(1927年11月25日の条)に、次のように記載している。「この色が校色である。偶然シカゴ大学の校色と同一であるのも一奇だ。此色はマルーンというのだが、早稲田の各科には、紅・白・紫・緑さまざまある。それを交ぜ合わせると、此の海老茶、即ちマルーンの色(えび茶色)になるのである」と。

だそうです。

 広報活動においては、大学としてのブランドイメージを固めアピールするということは大切なことであり、視覚的にもわかりやすくキャラクターよりも使用しやすいスクールカラーは有効なツールであると考えます。そこで、国立大学のスクールカラーの程度状況を調べてみました。

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 図1に国立大学におけるスクールカラーの設定状況を示します。なお、大学公式ホームページにて「スクールカラー」「カラー」と検索してヒットするなど、きちんと「スクールカラー」と明記しているもののみ計上しています。また、「スクールカラー」と明記がなく、シンボルマークに「メインカラー」として設定されているものは計上していません。図1から、約半数に当たる40大学がスクールカラーを設定していることがわかります。また、このうち、2色以上をスクールカラーとして設定している大学は11大学ありました。

 調べていくうちに、てっきりスクールカラーを設定しているだろうと思っていた大学が実は公式にはスクールカラーとして明記していない事例がいくつか見つかりました。例えば、ホームページを見ればわかるとおり金沢大学は「茄子紺」色を前面に押し出していますが、大学公式ホームページにはそのものずばり「茄子紺がスクールカラー」という明記が見つかりませんでした。また、お茶の水女子大学の公式ホームページではピンクを前面に押し出しているにも関わらず、それがスクールカラーである明記は見つけられませんでした。学内では常識になっているものの、それが外部には公表されていない可能性がありますね。ある程度統一された見解があるのならば、カラーのストーリー性や意味合いをアピールしても良いのかもしれません。

 少し変わった対応をしているところでは、富山大学はロゴマークに用いるメインカラー・サブカラーを定めていますが、それとは別に学部別カラーとして10種類、キャンパス別カラーとして3種類が設定されています。学内の方は使い分けられているのでしょうか。

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 さて、各国立大学は具体的にどのような色をスクールカラーとして設定しているのでしょうか。図2に、各国立大学のスクールカラーを地図上に配置したものを示します。なお、各カラーはRGB値で近似し表現していますので、実際の色とは若干異なる場合があります。また、配置位置は厳密に所在地を示したものではありません。

 図2から、各国立大学のスクールカラーは、緑や紺など比較的落ち着いた色が多いことがわかります。その中でも、東京大学東京医科歯科大学のゴールドや岐阜大学和歌山大学のオレンジ、京都教育大学の若葉色、熊本大学のうこん色は目立ちますね。

 ところで、図2の中で房総半島の付け根に位置する色と三浦半島に位置する色が似ていると思いませんか?この2色は東京工業大学横浜国立大学のスクールカラーですが、両者ともDIC641という濃い青色であり、全く同じ色です。もちろんその由来は異なりますので、偶然同じになったということでしょうか。なお、制定年は横浜国立大学が2010年に対し東京工業大学は2004年であり、東京工業大学が先に制定していたようです。

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 なんとか各国立大学のスクールカラーの傾向がつかめないかと全体的に図示できる計測方法を考えてみたのですが、どうも色の集合を全体的に表現することはかなりむつかしいらしく、簡単に色相の偏りを見ることにしました。図3に、各国立大学のスクールカラーを色相でプロットしたものを示します。なお、色相の計算は、色相 - WikipediaRGBを用いた計算式により行いました。

 図3から、緑や青系にプロットが集中していることがわかります。また、紫系やオレンジ系にもプロットが見られます。真っ赤な部分にはプロットがありませんので、これからスクールカラーを決める国立大学には狙い目なのかもしれません。(もっとも、真っ赤なスクールカラーは使いにくいかもしれませんが。。。)

 前回弊BLOGで言及した公式キャラクターに比べ、スクールカラーは様々な媒体で使用することが可能ですので、使いやすいのかなと思います。ただし、あくまでただの「色」ですので、それが表現する意味をアピールするというよりは、その効果は大学として統一感を出すということに留まるものでしょう。スクールカラーそのものはホームページや名刺等のメインカラーとして常に同じ印象付けを行いつつ、どのような内容をどのような人々に向けどのように提供していくのかが大切なのでしょうね。あるいは、部活やサークル活動のユニフォーム等に使用してもらい、観客に印象づけていくということも一つの活用方法かもしれません。