夏期一斉休業に思う 〜国立大学法人職員の夏休みは長いのか?〜

 さて、夏休みですね。大学職員をしていると「大学は休みが多くて良いよね。」と言われることはもはや大学職員あるあるネタでしょうし、恐らく教員もそうなのだろうと思います。ところで、実際、大学職員の夏休みって多いんでしょうか?

 国立大学法人ではちょうど今くらいの時期に「夏期一斉休業」を設けているところが多いと認識しています。これは、職員のリフレッシュという意味に加え、大量のエネルギーを使用する大学活動を一時的に押さえることで省エネ効果を狙ってのことだと推測できます。ただし、いろいろ話を聞いていると、この夏期一斉休業は各大学により日程や期間など対応が異なっていることにも気付きます。さらに、夏期一斉休業に加え、職員個人の夏期休暇を設けているところが多く、国立大学法人職員の夏休みは夏期一斉休業と夏期休暇の合算であると考えます。ということで、今回は各国立大学法人における夏期一斉休業と夏期休暇の状況を見てみます。

f:id:samidaretaro:20140812233913p:plain 図1に、各国立大学法人における平成26年度の夏期一斉休業の日数を示します。8月の同日に各法人の公式ホームページでの言及やGoogle検索を用いて調べた結果、法人全体としての平成26年度の夏期一斉休業日が明らかになった数を計上しています。基本的には、事務局本部が該当する期間を計上しています。また、一斉休業の期間で休日を含む法人(東京芸術大学)があったため、一斉休業に該当する営業日(平日)の数を計上しています。

 「不明」は公式ホームページなどで夏期一斉休業への言及がなかった法人数です。「0日」ではなく「不明」としたのは、公式ホームページでの言及がなくとも夏期一斉休業を実施している可能性を考慮してのことです。(一斉休業を実施するのに公式ホームページで告知しないというのは大学の情報発信の姿勢としてふさわしくないと思いますが。。。)

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 また、図2に、夏期一斉休業の日数について、不明を除く法人に関するヒストグラムを示します。

 図1及び図2から、全86法人のうち50%を超える50法人において3日間の夏期一斉休業があること、夏期一斉休業の最大期間は7法人(秋田大学山形大学筑波大学東京芸術大学富山大学和歌山大学香川大学)の5日間であること、夏期一斉休業を1日としている法人はないことがわかります。各法人のホームページを確認する中では、医学部や附属病院は夏期一斉休業の範囲外である法人が見受けられました。そりゃ、病院が一斉休業しても困りますよね。

 不明とした法人の中には、東京大学のように、法人全体としては明確に設定していないものの各部局にて設定していると見受けられる事例もありました。ただ、公式ホームページにて明確に実施期間が見つけられなかったため、不明と計上しています。

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 図3に、各法人の平成26年度の夏期一斉休業日の分布を示します。これも、営業日ベースで計上しています。

 図3から、概ねお盆期間に当たる8月13日から15日に休業日が集中していることがわかります。日本の風習から言っても、これは妥当なことなのでしょうね。一方で、もう少し遅い期間に休業日を設けている法人(琉球大学)もあります。
 これらから、夏期一斉休業については、各法人により違いはあるものの、概ねお盆期間の3日程度であると考えることができます。

 夏期休暇については、各法人の就業規則や「勤務時間及び休日休暇に関する規則」などに明記があります。規則が確認できた法人では、概ね、7月から9月の間の連続した3日間、もしくは6月から10月の間の連続した3日間という指定でした。ただし、単純に夏期一斉休業と夏期休暇の合算が職員の夏休みになるとは限らないこともわかりました。

 例えば、お茶の水女子大学の規程には、以下のとおり記されています。

国立大学法人お茶の水女子大学職員勤務時間、休暇等に関する規程

(特別休暇)

第28条 特別休暇は、別表第7中欄に掲げる事由により職員が勤務しないことが相当である場合における休暇とし、その期間は、同表右欄に掲げる期間とする。

別表第7(第28条関係)

十五

職員が心身の健康の維持及び増進又は家庭生活の充実のため勤務しないことが相当であると認められる場合

(期間)

一の年の7月から9月までの期間内における6日の範囲内の期間。ただし、当該期間のうち3日については、休日を除いて学長が指定する連続する日、3日については、休日を除いて原則として連続する3日の範囲内の期間

 つまり、夏期休暇の日数の中に夏期一斉休業の日数を含んでいるということです。このような運用をしていると思われる法人が幾つか見つかりました。就業規則や「勤務時間及び休日休暇に関する規則」については概ね各法人とも同様の内容なのですが、夏期休暇の運用という細かい部分については、各法人により若干の違いがあると推測できます。(なお、両規則内に夏期一斉休業への言及がない法人も見受けられました。どこか別の条文で解釈するのでしょうか。。。)

 ただ、規則が確認できる法人を見た限りでは、夏期休暇の日数は連続した3日間という法人が多いという印象です。

 以上から、各法人での夏期休暇の運用が異なるため厳密に定量的に把握することは困難ながら、夏期一斉休業及び夏期休暇を合算し、国立大学法人職員の夏休みは6日間程度が平均であろうと推測できます。

 さて、民間企業の夏休みはどの程度なのでしょうか。民間企業の夏期休暇日数については、いくつかの調査結果が見つかりました。

結果の概要(1 労働時間制度)|平成24年就労条件総合調査結果の概況|厚生労働省

(5) 特別休暇制度

 1企業平均1回当たり最高付与日数をみると、「夏季休暇」4.2日、「病気休暇」112.6日、「リフレッシュ休暇」6.4日、「ボランティア休暇」49.1日、「教育訓練休暇」15.7日となっている。

業種別の休日数ランキング -全80業種 |転職ならDODA(デューダ)

 年間休日数の全体平均は121.9日で、夏季休暇は4.4日、 年末年始休暇は5.4日、 有給休暇の実取得日数は9.1日という結果になりました。

民間企業の夏休み「連続休暇」平均で5.6日、昨年より下回る見通し ニュース−転職・派遣・キャリアのオリコンランキング

 全国労働基準関係団体連合会は29日、『平成21年 夏季における連続休暇の実施予定状況調査』の結果をまとめた。その発表によると、民間企業の今年の夏休み(7月1日~8月31日)「連続休暇」日数は平均5.6日で、前年(5.8日)より0.2日下回っていることがわかった。

 調査年や回答者により各調査の結果は異なるものの、民間企業の夏期休暇は4〜5日といったところでしょうか。これと比較し、推測した国立大学法人職員の夏休みの平均日数6日間は若干多いと言えますね。ただ、民間企業も業種により夏期休暇の日数が異なるでしょうし、国立大学法人も各法人により状況が異なりますので、一概には言えないところもあります。事実、私の勤務校の夏休み(夏期一斉休業と夏期休暇の合算)は5日間であり、民間企業に比べ必ずしも多いとは言えないと考えます。

 今回は、夏休みの日数から国立大学法人の状況を見ました。網羅的に把握することができなかったとは言え、ある程度の推測はできたかなと思います。このように、大学に関して一般に流布している言説が正しいのかどうか確かめることは大切だと改めて感じました。