学校教育法及び国立大学法人法の施行規則改正案に思う 〜改正の影響は少ないが。。。〜

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 学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律(平成二十六年法律第88号)の成立に伴う,学校教育法施行規則及び国立大学法人法施行規則の一部を改正する省令案に関するパブリックコメント意見公募手続)の実施について

 先日成立した学校教育法及び国立大学法人法の改正(以下、「改正法」という。)に伴い、施行規則を改正するためのパブコメが出ていました。改正法については、弊BLOGでも言及してきたところです(学校教育法及び国立大学法人法の改正案に思う 〜結局、教授会は何を話し合うのか〜 改正学校教育法等に思う 〜審議過程から分かること、分からないこと〜)。なお、改正法は、文部科学省HPに掲載されています。

 改正法により教授会の扱い等が変更になったため、それに併せ施行規則を改正するということですね。施行規則の改正については国会審議の際にも言及されていたことで、大学のガバナンス改革の推進方策に関する検討会議にて審議が行われています。ということで、同検討会議の資料と併せ、施行規則改正案を見てみましょう。

 まずは、学校教育法施行規則改正案です。改正箇所は、学生の入学、退学、転学、留学、休学及び卒業について、教授会の議を経て、学長が定めることとしている現行規定を削除(現行第144条)を削除し、退学停学及び訓告の処分の手続を定めなければならないことを規定(改正第26条)する点です。改正法では、学生の入学卒業修了について、教授会が意見を述べ学長が決定するとなっているため、それに合わせて当該条文を削除するということですね。しかし、転学、留学、休学は条文から消えてしまいますが、それは支障がないという判断なのでしょうか。

 本論点については、検討会議第1回配付資料5に以下の言及があります。

 第93条第2項第1号で規定された以外の、学生の退学、転学、留学、休学については、本人の希望を尊重すべき場合など様々な事情があり得ることから、教授会が意見を述べることを義務付けておらず、学校教育法施行規則(昭和22年文部省令第11号)第144条は削除すること。

 ただし、懲戒としての退学処分等の学生に対する不利益処分については、教授会や専門の懲戒委員会等において多角的な視点から慎重に調査・審議することが 重要であることから、学長が、学生の懲戒に関する適切な手続を定めるよう、学校教育法施行規則で別途規定すること。

 なお、学校教育法施行規則の改正を受け、退学、転学、留学、休学、復学、再入学その他学生の身分に関する事項について、各大学において、大学への届出、審査等の新たな手続を定める必要があるか点検し、必要があれば定めることとなること。(P3)

 転学、留学、休学については条文からは削除するけれども各大学でちゃんと手続きを定めておいてね、ということでしょう。

 続いて国立大学法人法施行規則改正案です。改正箇所は、学長選考の公表事項を定めることと学部長等の決め方を学長が決めておくことですね。学長選考の公表事項については、必要最小限に留まっているという印象です。学長選考基準については、改正後の国立大学法人法第12条第8項で公表が定められていますし、こんなものなのかもしれませんが。

国立大学法人法(改正後)

第十二条 8 国立大学法人は、第二項に規定する学長の選考が行われたときは当該選考の結果その他文部科学省令で定める事項を、学長選考会議が前項に規定する基準を定め、又は変更したときは当該基準を、それぞれ遅滞なく公表しなければならない。

 学部長等の任命手順については、以下の条文案です。

(学部長等の任命)

第七条の二 法第三十五条において読み替えて準用する独立行政法人通則法第二十六条に規定する職員の任命について、学部、研究科、大学 附置の研究所その他の教育研究上の重要な組織の長の任命を行う場合にあっては、学長又は機構長の定めるところにより行うものとする。

 学長と異なり学部長等の任命方法は法令上定められておらず、中教審資料では学内の選挙の結果によって決定する場合が多いと指摘しています。

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「大学のガバナンス改革の推進について(審議まとめ)」(平成26年2月12日中央教育審議会大学分科会)参考資料 より

 条文案では、学部長等の任命方法は学長が定めるように条文上に明らかにしています。本論点については、検討会議第1回配付資料5に以下の言及があります。

 学部長その他研究科、研究所等の組織の長においても、基本的には各組織に関する校務の決定権を有する場合があることから、学長と同様に教授会との関係を明確化したこと。(P4)

 ちょっとわかりにくいなという印象です。恐らく、学部長等は、学部等のみが選ぶのではなく学長の意向も含めて選ばれるということを明らかにし、学部長と教授会との関係を明確化するということでしょうか。

 関連して、「大学のガバナンス改革の推進について(審議まとめ)」にも、学部長等の選考方法について言及があります。

4.学部長等の選考・業績評価

 学部長は,「学部に関する校務をつかさどる」と規定されている(学校教育法第92条第5項)。学部長は,学部の教育研究に対して責任を負う立場にあり,学部教員の代表者であるが,同時に,国立大学法人等の学長や学校 法人の理事会から任命される立場として,全学の方針と学部との間の調整役としての役割が求められる。

 学長等は,学長のビジョンや大学の経営方針を共有して適切な役割を果たすことのできる学部長を任命することが必要である。しかしながら,現状の学部長の選考は,「当該学部の教授会の議に基づき,学長が行う。」としている教育公務員特例法に由来する慣行から,教授会での意向投票の結果がそのまま尊重される場合が多く,持ち回りになっている場合すら見られる。

 学部長についても,その職責を果たすにふさわしい人材を選考できる仕組みになっているかどうか大学全体で再点検すべきである。例えば,複数の候補者の中から学部長を指名するなど最終的には,理事会や学長の判断により学部長を任命すべきである。(P26)

 施行規則改正により、公私立大学では恐らく具体的にすぐに行わなければならないことは発生しないのではないかと考えています。さすがに「学生に対する退学、停学及び訓告の処分の手続」はどの大学も定めているでしょうし。国立大学では、学長選考や学部長等選考の規程などを見直し、整備しないといけなさそうですね。

 注目しているのは、本改正よりも、検討会議第1回配付資料6にある「大学における内部規則・運用見直しチェックリスト(案) (学校教育法の改正関係)」です。学内規程の見直しの観点がかなり具体的に書かれており、各大学の法規担当者は必見の内容となっています。これまでは各大学の自治に任せるとなっていたこともあり、ここまで各大学の規程等に踏み込む具体的な資料が公式に出たのはあまり聞いたことがありません。それが許容されるほど、時代が変わったということなのでしょうか。