スーパーグローバル大学創成支援事業の申請状況に思う 〜切実な国立大学〜

平成26年度「スーパーグローバル大学創成支援」公募申請状況について:文部科学省

 平成26年度「スーパーグローバル大学創成支援」公募申請状況について、結果をお知らせいたします。

 「スーパーグローバル大学創成支援」(以下、「SG」という。)の申請状況が公表されていました。COC事業については、弊BLOG(COC事業の申請状況に思う 〜公表資料から申請・採択傾向を探る〜 - 大学職員の書き散らかしBLOG)にて申請状況を分析したところですが、同様にSGについても各大学の申請状況を確認します。

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 図1に、設置者別タイプ別の申請状況を示します。図1から、タイプA(トップ型)は概ね国立大学が申請しているのに対し、タイプB(グローバルタイプ牽引型)は国立大学と私立大学が同程度申請していることがわかります。ここから、タイプAに比べタイプBの方が各大学にとって申請しやすい事業であったと考えます。公募要領を確認しても、タイプAに比べタイプBは、補助金基準額は半額程度ながら採択件数は2倍となっており、大規模大学以外にも申請が開けているという印象です。

 申請一覧を見ると、各大学とも工夫を凝らした構想名になっています。そこで、各構想名にどのような単語が出現しているのか、調べてみました。

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 図2に、構想名における出現頻度10以上の単語を示します。ここから、構想名において、SGの事業名にもある「グローバル」がもっと多く出現していることがわかります。なお、「Global」は5、「GLOBAL」は2出現していますので、同意語を含めればもっと増えます。さらに、図2から、「地域」「アジア」といった範囲限定的な言葉が出現していることがわかります。特に、グローバル事業にも関わらず「地域」という言葉が使われているのは興味深いですね。後にも述べますが、どのような点にターゲットを置くのかという事業内容を反映させた構想名にしているのだろうと思います。

 ところで、かなり個性的な構想名が並んでいますが、それぞれ英語名もきちんと考えられているのでしょうか。明らかにローマ字にて表記するしかないような単語も散見しますが。。。

 さて、ここからは国立大学に対象を絞って申請状況を確認します。

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 表1及び図3に、国立大学におけるタイプ別申請数及び未申請数を示します。ここから、概ね6割程度の国立大学が、同事業に申請していることがわかります。また、タイプBに申請した大学数がタイプAに申請した大学数の3倍程度であること、両タイプに申請した大学は4校(東京医科歯科大学広島大学九州大学熊本大学)であることがわかります。申請した国立大学が全国立大学中6割程度なのは、少し少ないなという印象です。世界展開力強化事業等他事業との関係もあり、申請を見送った大学もあるのかもしれません。

 ということで、国立大学におけるSGと他公募事業との申請の関係を確認します。比較対象としたのは、「地(知)の拠点整備事業(大学COC事業) 」(以下、「COC」という。)及び「大学教育再生加速プログラム」(以下、「AP」という。)の2公募事業です。

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 表2及び図4に、国立大学におけるSG及びCOCの申請未申請の別を示します。なお、COCは平成25年度及び平成26年度の単独・共同申請を合算しており、平成25年度及び平成26年度に同大学から申請があった場合は1と計上しています。

 ここから、少なくともSG、COCのどちらかに申請した国立大学が8割以上であることがわかります。また、SGかCOCどちらかに申請した国立大学が同数程度であることがわかります。各国立大学にとっては、SGとCOCのウェイトが同程度であり、各大学の特性に合わせどちらかを選択した結果、両方に申請あるいはどちらに申請したということが想像できます。

 地域の拠点たる大学を作るCOCと国際化を推進するSGは全く異なる領域であると考えられ、SGとCOCの両方に申請するのが自己矛盾なのではないかという思いも発生するかもしれません。しかし、SGの公募要領には、「グローバルな視点を持って豊かな地域社会の創造に積極的に貢献しようとする志を持った人材を育成する」ともあり、必ずしも矛盾するとは言えないのでしょうね。経費区分は分けられて然るべしですが、両事業の交流により、より効果的な人材養成が期待できるかもしれません。

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 表3及び図5に、国立大学におけるSG及びAPの申請未申請の別を示します。なお、APの申請数はタイプの区別なく計上しています。ここから、少なくともSG、APのどちらかに申請した国立大学が8割程度であることがわかります。また、SGのみに申請した国立大学の方が、APのみに申請した国立大学よりも多いことがわかります。図4と図5を比較すると、COCに申請しなかった国立大学が34大学、APに申請しなかった大学が43大学であり、各国立大学はCOCの方により積極的に申請した可能性が示唆されます。

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 SG、COC及びAPに対する国立大学の申請状況を図6に示します。各事業の枠の範囲内にある数が当該事業に申請した国立大学数であり、重なっている場合は複数の事業に申請していることを示します。

 図6から、最も多いのは3事業に申請した国立大学であり、続いてSGとCOCに申請した大学、SGのみに申請した大学であることがわかります。また、3事業に申請しなかった国立大学が8大学あることがわかります。この8大学は、教育単科大学や工業大学など小規模単科大学でした。

 SGとCOCへ申請した大学が一番多いのかなと思っていたので、この結果は意外でした。3事業に申請した国立大学が最も多いことは、各大学の予算獲得に対する切実性の高さを感じます。それだけ、各大学が必死ということなのでしょう。なお、旧帝国大学の状況を見ると、京都大学九州大学はSGとCOCへの申請、その他5大学はSGのみへの申請でした。余裕があるというよりは、公募事業の趣旨などを考慮しての対応なのかもしれません。

 財政基盤の脆弱化や国からの要請、空気感など、有象無象の影響により、特に中〜大規模国立大学にとっては公募事業へ申請しないという選択肢がない状況にあると感じています。実際、申請しないという選択を取ったところで、今より良くなる保証はなく、むしろ悪くなる可能性が高いかもしれません。正直、あまり健全な状況ではないとも若干思っているところです。

   一方で、特に全学に関わる公募事業には、学内を再構築しより良い方向に向かわせるという良い働きも(本来ならば)あります。「申請することに意味がある」とまで言い切ることができませんが、それでも申請しないよりはした方が良いと言う考えもわかります。バランスを取りながらやっていかないといけないところですが、今の国立大学の事情を見ると、「まずは申請する」というスタイルで臨んだ方が無難なのかもしれません。