学内リソースの有効活用に思う ~講義を履修する大学職員~

大学での起業家教育に思う ~学内リソースの有効活用~ - 大学職員の書き散らかしBLOG

 前回の幣BLOG記事では、学内のリソース活用の重要性について述べました。それに関連して、最近少し考えていることがあります。それは、職員が自大学の講義を履修するということです。

 近年、能動的な学修活動の推進という全国的な風潮もあり、各大学で以前にもまして多様な授業(講義、実習、実験等)が展開されています。ベネッセ教育総合研究所の「大学生の主体的な学習を促すカリキュラムに関する調査 アンケート調査」では、何らかの形で組織的に「主体的な学習」を促す教育方法をカリキュラムに取り入れていると回答した学科が、全体の85.2%だったそうです。

大学生の主体的な学習を促すカリキュラムに関する調査 アンケート調査編 [2013年]│調査・研究データ│高等教育研究室トップ│研究所について│ベネッセ教育総合研究所

 また、その内容も、従来の学問教授のみにとどまらず、自大学やファシリテーション方法、地域社会に関するものなど、多岐にわたっています。
たとえば、岡山大学では、教養教育科目として「大学と社会」という講義が開講されています。

平成25年度 教養教育シラバス - サイボウズ(R) デヂエ(R)

 また、九州大学では、チームビルディングやファシリテーションに関する講義が開講されています。

九州大学シラバス | 授業情報表示

 自治体等と連携し全学的に地域を志向した教育・研究・社会貢献を進める大学を支援するCOC事業に採択された大学では、地域社会や地域思考の教育活動が展開されることも想定できます。たとえば、同事業に採択された宮崎大学では、「食と健康を基軸として宮崎地域志向型一貫教育による人材育成事業」として、以下の教育カリキュラムを導入するようです。

  • 専門教育への流れを意識した地域志向型共通教育カリキュラムの設置
  • アクティブ・ラーニングを取り入れた地域課題解決科目(現場実習)の設置、及び専門教育と連携した地域志向型共通教育科目の設置

 このように、大学の講義の多様性は増してきており、我々職員の職務に役立つ領域にも及んできている可能性があります。

 一方、大学の講義と大学職員との関係においては、近年のキャリア教育の推進を受け、一部の大学では職員が教壇に立つことがあります。
 東京未来大学では、職員の担任が設定され、1,2年生向けの授業も担当しているようです。

asahi.com(朝日新聞社):職員も授業受け持ち担任も 学生指導に大きな役割/東京未来大学 - わが校イチ押し - 教育

 JASSO日本学生支援機構の冊子「大学と学生」平成23年1月号には、福岡工業大学短期大学部にて、学生の「変調」を早期に発見するため、「教養ゼミナール」への事務職員の参加を行った様子が描かれています。

平成22年度「大学と学生」1月号「メンタルヘルス」−JASSO

 名古屋大学では、キャリア形成論という講義の一環として、同大学職員が講義を行ったようです。

名大キャリア形成論 - Togetterまとめ

 このようなこともあり、職員育成・研修の一環として、自大学の講義を職員に開放できないかと考えています。

 職員は、学生に混じり、講義を受け、ディスカッションをし、授業評価アンケートも提出します。教員は、学生と同じように成績評価を行い、それが研修で身についた能力として研修受講完了の証になります。そこまでいかなくとも、講義を聴講することや、場合によってはTAのような形で参画することもできるでしょう。そうすれば、全回出席せずとも、スポットでの出席が可能になると考えます。

 たとえば、IRを担当する職員ならば統計学の講義などは業務に関係あるでしょうし、社会連携を担当する職員ならば地域風土の講義も参考になるかもしれません。職員としても、学生や教員の生の声、営みがわかる良い機会になるはずです。実際、知的財産の権利化を業務としている職員が、知的財産関係の講義を聴講している例を知っています(組織としての取り組みというよりは、課長への直談判により可能になったようですが。。。)。

 もっとも障害になるのは、学生と同じ立場で講義を受けるなんてという職員のマインドではないでしょうか。実際に同取組を行うとすれば、職員の階層別研修(特に初任者でしょうか。)として一部講義の参加を義務付けることや、放送大学のように開放する講義を明記して参加者を募ることが考えられます。つまり、人事施策の一環として同取組を行い、人事調書などに明記するなど組織として対応をすれば、より参加しやすく効果が上がると思っています。

 国立大学での職員研修といえば、地区ごとに特定の階層を集め行う研修や、外部講師を招いて行う学内の研修などがパッと思い出すところです。そうではなく、学内のリソースを使った、かつあまり新規のコストをかけない形での能力育成・研修ができないものかと考えています。

学内SDに思う 〜SDの効果を高めるためには〜 - 大学職員の書き散らかしBLOG

 以前、幣BLOG記事にも書いたとおり、もっともすぐに業務の役に立つ研修は、学内の係長級が講師となって行う分野を特定した研修だと思っています。それに先立ち、まずは、学内の教育活動を利用してみてはどうでしょうか。講義の内容はもちろん大学によって千差万別でしょうか、もしかしたら業務の役に立つ講義があるかもしれませんよ。