大学図書館に思う 〜機能別分化は可能か〜

第15回 図書館総合展

図書館総合展とは、図書館を使う人、図書館で働く人、図書館に関わる仕事をしている人達が、“図書館の今後”について考え、「新たなパートナーシップ」を築いていく場です。当日会場では、図書館にまつわる様々なフォーラムやプレゼンテーション、多様な団体によるポスターセッション、そして企業による最新の技術や動向が伺えるブース出展など、様々な企画が行われます。

 「図書館総合展」というイベントが開催されています。図書館に関する一大行事のようで、かなり規模大きく行われているようですね。twitterなどで参加者が積極的に情報発信している点は、こういう学術系イベントではなかなかないかなと思っています。

第15回 #図書館総合展 - Togetter

 さて今回は大学図書館について。

 大学に図書館を置くことは「大学設置基準」で定められています。

(図書等の資料及び図書館)

第三十八条  大学は、学部の種類、規模等に応じ、図書、学術雑誌、視聴覚資料その他の教育研究上必要な資料を、図書館を中心に系統的に備えるものとする。

2  図書館は、前項の資料の収集、整理及び提供を行うほか、情報の処理及び提供のシステムを整備して学術情報の提供に努めるとともに、前項の資料の提供に関し、他の大学の図書館等との協力に努めるものとする。

3  図書館には、その機能を十分に発揮させるために必要な専門的職員その他の専任の職員を置くものとする。

4  図書館には、大学の教育研究を促進できるような適当な規模の閲覧室、レフアレンス・ルーム、整理室、書庫等を備えるものとする。

5  前項の閲覧室には、学生の学習及び教員の教育研究のために十分な数の座席を備えるものとする。 

 ちなみに、平成3年の所謂「設置基準の大綱化」以前は、図書館に置く図書数は分野毎に定められていました。

一 一般教育科目に関する図書

 人文、社会及び自然の各分野についてそれぞれ八〇〇冊以上、合計三千冊以上

二 外国語科目に関する図書

 一の外国語について、千冊以上ただし、特別の外国語については、教育に支障のない限度において、この冊数を減ずることができる。

三 保健体育科目に関する図書

 三百冊以上

四 専門教育科目に関する図書及び学術雑誌

 (省略)

「国立学校設置法」など、過去からの経緯については、以下のHPに詳しく書かれています。

http://www.janul.jp/j/publications/reports/66/1.html 

 なんにせよ、大学に図書館を置くことは、大学設置基準の性格上、最低限の基準であるということです。

 一方で、その母体である大学は機能別分化を強く求められており、本BLOGでもCOC事業や私立大学等改革総合支援事業などについて言及したきたところです。平成17年に出された中央教育審議会答申「我が国の高等教育の将来像」では、大学が持つ機能として以下の7つを挙げています。

  1.  世界的研究・教育拠点
  2. 高度専門職業人養成
  3. 幅広い職業人養成
  4. 総合的教養教育
  5. 特定の専門分野(芸術や体育等)の教育研究
  6. 地域の生涯学習機会の拠点
  7. 社会貢献(地域貢献・産学官連携等)

 当該答申では、この7つの機能の比重の置き方が大学の個性となり、各大学は緩やかに機能別に分化していくことを求めています。また、「国や地方公共団体等は、各大学が重点を置く機能を自主的に選択できるように配慮しながら、財政面を含む幅広い支援を行うこと」とあり、競争的資金の配分などを通じ、各大学は自らの機能を自ら選択していくことが読み取れます。

 そんな中、大学内の施設も大学自身が選択した機能にフィッティングしていくことが求められるということは十分に想定でき、もちろん大学図書館も例外ではないでしょう。しかし、私が知っている限り、この7つの機能別分化に即した図書館の機能ということはあまり論じられていないように感じます。例えば、学術情報管理ツールなど高度な電子サービスはどの程度まで必要なのか、各大学の選択した機能により違いがあるところでしょう。

 もちろん、まず大学自体が選択した機能を強く押し出すことも大切です。そもそも自分の大学がどの機能を選択したのかわからないということも十分に考えられます。しかし、各機能に対し、大学図書館ではどの程度のサービスが必要であるかというルーブリック的なものが整備されれば、各大学においても参考なりますし、大学図書館同士の連携もある程度スムーズにいくのではないのでしょうか。

 大学図書館業界が非常に「熱い」界隈であることは図書館総合展や各種情報発信を見ているとよくわかります。そのような姿を見るたび、その勢いを大学全体に波及できないか、大学図書館の機能を大学の目的・目標達成にうまく活用できないかと考えています。併せて、そのような「熱い」姿がある中で、大胆な機能拡充等を指向せず粛々と従来とおりの業務をこなす大学図書館も多いのではないかと考えてしまいます。

 つまり、私が見ている「熱い」姿は氷山の一角ではなく氷山の大部分ではないかと。後者の様な大学図書館にとっては、その運営はより大学の意向が反映されると思われます。そんな大学図書館にとっては、国が示す大学の機能に対応する取組はどのようなものなのか、大学図書館業界で整理をしてもらえれば、ただ単に大学の意向を受けるのみではなく、業界スタンダードとしての主張もよりしやすくなるのではないかと考えています。そして、きっと大学図書館業界はそれができる場所でしょう。