大学評価に思う 〜評価は改善に役立つのか〜

イベント情報 | 大学マネジメント研究会

 大学創生エンジンは、大学マネジメント研究会の若手メンバーを中心とする大学創生エンジン2013実行委員会が企画・開催しています。(中略)第三回目となる今回は、外部評価、自己点検評価、学生からの評価、大学ランキングなど様々な大学への評価を採り上げ、「創造的な評価とその利活用」について考えてみたいと思います。 

  「大学創生エンジン」というイベントがあります。大学マネジメント研究会が中心となり行われていますが、第3回目となる本年は「大学評価」をテーマとするようです。私は残念ながら参加できませんが、盛会を祈っております。さて、今回は「大学評価」について。

 大学に対する評価は様々なものがあり、先行研究も他の高等教育分野に比べればたくさん行われているという印象です。特に、独立行政法人大学評価・学位授与機構では、セミナー等を始め様々な大学評価に関する取組が行われています。

我が国の高等教育の評価|大学評価情報ポータル|独立行政法人 大学評価・学位授与機構

大学評価・学位授与機構 | 学術誌「大学評価・学位研究」

 大学評価でいつも言われるは、「評価は改善の役に立たない」ということです。果たしてこれは正しいのでしょうか。私は「評価結果だけでは改善の役に立たない」と言うのが正解だと思っています。

 大学経営陣にとっては、外部の機関から受ける評価の結果はとても重要なものと捉えられ、その結果全てに対し何らかを対応を行うように各学部等に指示を出す場合が多いでしょう。しかし、学部等の所謂「現場」では、それに対しあまり熱意を持った対応をしない場合が多いのではないのでしょうか。それは何故なのか。

 大学とは常に「被評価機関」であり、故に評価結果は常に「外」から来るものです。しかし、私が考える限り、大学教員とは外からの指示に従うのが最も嫌いな職種であり、「現場」の「外」から来た評価結果に熱意を持って対応しないことは十分考えられます。このように、経営陣と現場には、評価結果の捉え方について大きな壁が存在していると思われます。

 では、「現場」にとって評価は全く無意味かと言えば、そうではありません。「現場」にとっては、「自己点検・評価」、もっと言うと自己の取組を振り返る「アセスメント」がとても重要です。「外」からの評価が嫌ならば、自分自身で根拠を以て内省してもらいましょうということです。この場合は、ある程度客観性を持って内省されているか、チェックする機構が必要でしょう。これが所謂「内部質保証」の取組の一部ではないかと思っています。また、IRというのは、このアセスメントにも重要な役割を果たすでしょう。

 なお、「外」が自分たちのポジションに近い場合には、比較的評価結果を基にした改善などを行われやすいのではないかとも考えられます。例えば、研究科自身が選んだ権威あるメンバーによる外部評価などが該当します。そう考えられば、国立大学法人評価委員会や認証評価機関というのは、「現場」からは距離が遠すぎるのでしょうね。この「評価者と被評価者の距離に依る改善の度合いの変化」については先行研究を見つけることができませんでした。

 さて、ここまで述べてきた「大学経営陣」と「現場」の差を埋めるためには、どうすれば良いでしょうか。要は、「評価結果」と「アセスメント」を接続すれば良いのです。大抵、評価結果は文章で示され、その根拠はグラフ等により明確に示されない場合が多いです。あるいは、一部の部局のみが出来ていないため全学的に指摘されるなど、必ずしも全ての部局に当てはまるものではないことがあります。そこで、評価結果を受け、それが本当に実情に合ったものなのか、まずはしっかりと判断する必要があります。そのため、評価結果に関するアセスメントのデータを見ながら、真に改善すべきものを経営陣と部局が議論する場が必要でしょう。こうすることで、ただ単に指示するだけよりも、より意思を共有しながら必要な改善に向かえるものと考えられます。

 国立大学法人の経営陣は、大抵その大学の教員であり、「外」から言われたことにはまじめに対応することが多いと感じています。しかし、全ての評価結果に対し脊髄反射的に対応するのではなく、評価結果に対する実情を把握するとともに真に必要な大学改革とは何なのか、深呼吸をして考える必要があるのではないでしょうか。