研究不正防止のニュースに思う

研究不正防止に連帯責任、補助金を一時停止も : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

研究費の流用や論文データの
捏造などが相次いだのを受け、厚生労働省は27日、研究不正の防止策を公表した。

 研究不正防止ならば文部科学省だろと思いますが、この記事は厚生労働省の研究不正防止に関するものです。なお、厚生労働省HPからはこの記事の元となるような資料は見つけられませんでした。これに先立ち、前日に文部科学省から同様のプレスリリースが出ています。記事内容を見る限り、両者はほぼ同様ですので、おそらく事前調整があったものと思われます。

研究者に「倫理教育」義務づけ…文科省中間報告 : 科学 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

研究費の流用や実験データの捏造

など研究不正が相次いでいる問題で、文部科学省の作業部会は26日、研究者に対し実験データの長期保存や倫理教育を義務づけることなどを盛り込んだ中間報告をまとめた。

 こちらは文部科学省HPに資料が掲載されていました。

「研究における不正行為・研究費の不正使用に関するタスクフォース」中間取りまとめについて:文部科学省

このたび、福井文部科学副大臣を座長とする「研究における不正行為・研究費の不正使用に関するタスクフォース」において、中間取りまとめを行いましたのでお知らせいたします。

 本中間とりまとめは、文部科学副大臣、文部科学審議官、政策評価審議官、3局長をメンバーとするタスクフォースにて策定されたようです。大学教員・研究者等に密接した議題にも関わらず、実地調査があったとはいえ文部科学省内部のみで検討を行ったことに少し危うさを感じます。少なくとも、大学教員・研究者・機関等のベネフィットとコストの関係がどの程度議論されたのかは、公表されている資料中からは読み取る事ができませんでした。

 以下、機関が行わなければならない事項・要請されている事項を簡単にまとめてみました。いかにも国が作ったらしい主語が分からない文章だらけなので、ちょっと自信がありません。。。なお、これらが全て直ちに実施されるわけではなく、あくまで「中間取りまとめ」の段階であるという認識です。

  • 構成員に対する倫理教育の実施
  • 不正事案の内容や対応策の公表(氏名公表含む)
  • 文部科学省への不正事案の中間報告や調査結果報告
  • 研究データの一定期間の保存・公表
  • ソフトウェア開発など特殊な役務に対する検収の導入
  • 不正事案が発生するリスクの高い部局・研究分野等への集中的機動的な監査の実施(リスクアプローチ監査の実施)
  •  取引業者に対する誓約書提出の義務づけ
  • 取引業者が不正の自己申告をしやすくなる環境作り
  • 倫理教育責任者の設置
  • 部局内における研究室の予算管理・執行 状況を横断的に監督する総括責任者の設置
  • 組織における規程の整備・公表
  • 機関による不正調査の期限設定(正当な理由なく期限を越えた場合、研究費執行の一部見合わせを行う等の措置執行など)
  • 調査等への第三者的な視点の導入(告発窓口を第三者に委託する、調査委員会に第三者委員を入れることなど)

 こうやって並べてみるとちょっと言葉が出ませんね。なお、個人的には、「いつ時点の不正まで遡るのか?」という点も気になるところです。

 本中間取りまとめが今度どのように実際の施策に反映されるのか、科学技術・学術審議会等との関係はどうなのかは明らかではありませんが、決定した場合は機関としての対応が求められると思いますので、今後とも注視が必要な事項だと思います。しかし、厚生労働省では既に「不正防止策として公表した」ということならば、府省庁間の並びを取る意味でも、本中間取りまとめが既定路線なのかもしれません。

【9月30日追記】

研究開発機関連携会議審議会資料 |厚生労働省

 平成25年9月27日に行われた平成25年度第1回研究開発機関連携会議の資料中に研究不正への対応に関する資料がありました。

厚生労働省は、文部科学省と連携して、以下の対応を行う事を検討している。

だそうです。ざっと内容を見たところ、文部科学省公表資料と同程度の対応を行うようですね。