修学支援新制度の機関確認要件を整理する。

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 前回に引き続き、修学支援新制度について整理します。今回は、特に機関確認要件に言及します。

1.根拠法

大学等における修学の支援に関する法律 抄

第七条 次の各号に掲げる大学等の設置者は、授業料等減免を行おうとするときは、文部科学省令で定めるところにより、当該各号に定める者(以下「文部科学大臣等」という。)に対し、当該大学等が次項各号に掲げる要件を満たしていることについて確認を求めることができる。

  1. 大学及び高等専門学校(いずれも学校教育法第二条第二項に規定する国立学校又は私立学校であるものに限る。第十条第一号において同じ。)並びに国立大学法人国立大学法人法(平成十五年法律第百十二号)第二条第一項に規定する国立大学法人をいう。第十条第一号において同じ。)が設置する専門学校 文部科学大臣
  2. 国が設置する専門学校当 該専門学校が属する国の行政機関の長
  3. 独立行政法人独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第一項に規定する独立行政法人をいう。以下この号及び第十条第一号において同じ。)が設置する専門学校 当該独立行政法人の主務大臣(同法第六十八条に規定する主務大臣をいう。)
  4. 地方公共団体が設置する大学等 当該地方公共団体の長
  5. 公立大学法人地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第六十八条第一項に規定する公立大学法人をいう。以下この項及び第十条第三号において同じ。)が設置する大学等 当該公立大学法人を設立する地方公共団体の長
  6. 地方独立行政法人地方独立行政法人法第二条第一項に規定する地方独立行政法人をいい、公立大学法人を除く。以下この号及び第十条第四号において同じ。)が設置する専門学校 当該地方独立行政法人を設立する地方公共団体の長
  7. 専門学校(前各号に掲げるものを除く。)  当該専門学校を所管する都道府県知事

文部科学大臣等は、前項の確認(以下単に「確認」という。)を求められた場合において、当該求めに係る大学等が次に掲げる要件(第九条第一項第一号及び第十五条第一項第一号において「確認要件」という。)を満たしていると認めるときは、その確認をするものとする。

  1. 大学等の教育の実施体制に関し、大学等が社会で自立し、及び活躍することができる豊かな人間性を備えた創造的な人材を育成するために必要なものとして文部科学省令で定める基準に適合するものであること。
  2. 大学等の経営基盤に関し、大学等がその経営を継続的かつ安定的に行うために必要なものとして文部科学省令で定める基準に適合するものであること。
  3. 当該大学等の設置者が、第十五条第一項の規定により確認を取り消された大学等の設置者又はこれに準ずる者として政令で定める者で、その取消しの日又はこれに準ずる日として政令で定める日から起算して三年を経過しないものでないこと。
  4. 当該大学等の設置者が法人である場合において、その役員のうちに、この法律若しくはこの法律に基づく命令若しくはこれらに基づく処分に違反した者又はこれに準ずる者として政令で定める者で、その違反行為をした日又はこれに準ずる日として政令で定める日から起算して三年を経過しないものがないこと。

3 文部科学大臣等は、確認をしたときは、遅滞なく、その旨をインターネットの利用その他の方法により公表しなければならない。

第十五条 文部科学大臣等は、次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該確認大学等に係る確認を取り消すことができる。

  1. 確認大学等が、確認要件を満たさなくなったとき。
  2. 確認大学等の設置者が、不正の手段により確認を受けていたとき。
  3. 前号に掲げるもののほか、確認大学等の設置者が、減免費用の支弁に関し不正な行為をしたとき。
  4. 確認大学等の設置者が、第十三条第二項の規定により報告又は帳簿書類その他の物件の提出若しくは提示を命ぜられてこれに従わず、又は虚偽の報告若しくは虚偽の物件の提出若しくは提示をしたとき。
  5. 確認大学等の設置者が、第十三条第二項の規定により出頭を求められてこれに応ぜず、同項の規定による質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したとき。
  6. 前各号に掲げる場合のほか、確認大学等の設置者が、この法律若しくはこの法律に基づく命令又はこれらに基づく処分に違反したとき。

2 第七条第三項の規定は、前項の規定による確認の取消しをしたときについて準用する。

 政省令の案は公表されていません。

2.要件確認者

 修学支援法では、授業料等減免を行う際には、大学等は要件の確認を求めることになっています。つまり、授業料等減免を行うにふさわしい要件を満たした機関であることについて確認(証明)を求める(以下、「要件確認」という。)わけです。この要件確認を行う者は、各機関により異なります。

No. 機関 確認者
1 大学(国立学校、私立学校に限る)及び高等専門学校並びに国立大学法人が設置する専門学校 文部科学大臣
2 国が設置する専門学校 当該専門学校が属する国の行政機関の長
3 独立行政法人が設置する専門学校 当該独立行政法人の主務大臣
4 地方公共団体が設置する大学等 当該地方公共団体の長
5 公立大学法人が設置する大学等 当該公立大学法人を設立する地方公共団体の長
6 地方独立行政法人公立大学法人を除く)が設置する専門学校 当該地方独立行政法人を設立する地方公共団体の長
7 上記を除く専門学校 当該専門学校を所管する都道府県知事

 ここで短期大学の名前がないことに違和感を覚える方もいると思います。おそらく、学校教育法として短期大学は”大学”の一部であるため、短期大学はNo.1(私立)又はNo.4,5(公立)に含まれるのでしょう。同じ考え方で、専門職大学及び専門職短期大学も大学に含まれると解せます。なお、大学院大学は今回の制度の対象外です。

学校教育法 抄

第八十三条の二 前条の大学のうち、深く専門の学芸を教授研究し、専門性が求められる職業を担うための実践的かつ応用的な能力を展開させることを目的とするものは、専門職大学とする。

第百三条 教育研究上特別の必要がある場合においては、第八十五条の規定にかかわらず、学部を置くことなく大学院を置くものを大学とすることができる。
第百八条 大学は、第八十三条第一項に規定する目的に代えて、深く専門の学芸を教授研究し、職業又は実際生活に必要な能力を育成することを主な目的とすることができる。

2 前項に規定する目的をその目的とする大学は、第八十七条第一項の規定にかかわらず、その修業年限を二年又は三年とする。

3 前項の大学は、短期大学と称する。

4 第二項の大学のうち、深く専門の学芸を教授研究し、専門性が求められる職業を担うための実践的かつ応用的な能力を育成することを目的とするものは、専門職短期大学とする。

大学等における修学の支援に関する法律 抄

第二条 この法律において「大学等」とは、大学(学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第百三条に規定する大学を除く。以下同じ。)、高等専門学校及び専門課程を置く専修学校(第七条第一項及び第十条において「専門学校」という。)をいう。

 どうでもいいですが、No.1の対象機関がA及びB並びにCという「法令の読み方」で最初に習うような形になっている点がおもしろいですね。なお、現時点では、国立大学法人が設置する専門学校は東北大学歯学部附属歯科技工士学校のみだと思います。

3.機関確認要件

 説明会資料により、機関確認要件は以下のとおり整理できます。

修学支援法第7条第2項第1号に定める要件

  1. 実務経験のある教員による授業科目が標準単位数(4年制大学の場合、124単位)の1割以上、配置されていること。
  2. 法人の「理事」に産業界等の外部人材を複数任命していること。
  3. 授業計画(シラバス)の作成、GPAなどの成績評価の客観的指標の設定、卒業の認定に関する方針の策定などにより、厳格かつ適正な成績管理を実施・公表していること。
  4. 法令に則り、貸借対照表損益計算書その他の財務諸表等の情報や、定員充足状況や進学・就職の状況など教育活動に係る情報を公表していること。

修学支援法第7条第2項第2号に定める要件

 次のいずれにも該当する大学等でないこと(国(国立大学法人及び独立行政法人を含む。)又は地方公共団体公立大学法人及び地方独立行政法人を含む。)が設置者である大学等を除く。)

  1. 直前の3年度のすべての収支計算書において「経常収支差額」がマイナス
  2. 直前の年度の貸借対照表において「運用資産と外部負債の差額」がマイナス
  3. 直近3年度のすべての収容定員充足率が8割未満

 以下、各要件の簡単な解説です。

1.実務経験のある教員による授業科目が標準単位数(4年制大学の場合、124単位)の1割以上、配置されていること。 

 本要件について、留意点は概ね以下のとおりです。

  • 必修科目、選択科目、学部専門科目、教養科目等は問わず、学生が履修できる科目であること。
  • 実務家を招くオムニバス科目などでも該当すること。
  • シラバス上に教員の実務経験や実務経験の授業内容への活用状況などを明記すること。
  • 学問分野の特性により要件を満たすことができない場合は合理的に説明・公表できれば要件を満たすとすること。

 2019年度申請における特例措置は、以下のとおりです。

  • 2019年度に要件を満たすことができない理由と2020年度から要件を満たす方向制について説明・公表することで、要件を満たすとすること。
  • シラバスとは別の資料(一覧表等)により学生に説明している場合は、要件を満たすとすること。

 この要件については、すでに言及しているとおり、それほど困難であるとは思っていません。強いて言えば、シラバスの構成を変更する必要があるため、システム改修などが発生する可能性があることが気がかりでしょうか。

2.法人の「理事」に産業界等の外部人材を複数任命していること。

 本要件について、留意点は概ね以下のとおりです。

  • 国立大学法人においては、理事の員数が3名以下の場合を除くこと。
  • 理事が置かれない場合は、学校運営に関わる組織体等に複数の外部人材が参画していること。

 2019年度申請における特例措置は、以下のとおりです。

  • 2020年4月1日までに要件を満たすことについて申請者の誓約がある場合には、要件を満たすとすること。

 この要件について、国立大学法人国立大学法人法が改正され外部理事の複数名化がすでに義務付けられていますので、気にもしていないのが正直なところです。

3.授業計画(シラバス)の作成、GPAなどの成績評価の客観的指標の設定、卒業の認定に関する方針の策定などにより、厳格かつ適正な成績管理を実施・公表していること。

 本要件について、留意点は概ね以下のとおりです。

  • シラバスの作成過程や作成・公表時期を申請書に明記すること。
  • シラバスにて成績評価の方法や基準を明確にしていること。
  • GPAの算出方法を定め、公表していること。
  • GPAの分布状況がわかる資料を作成していること。
  • DPを公表し適切に実施していること。
  • すべての学部等について記載を要するが、各学部等にて概ね同一の取り扱いであればその旨を申請書に明記すること。

 本要件について、2019年度申請における特例措置はありません。

 この要件については、GPAの分布に係る資料がポイントになりそうです。Q&Aでは、1学年分(原則として第1学年)のみの分布でよく、公表は必要ないとしています。

Q「客観的な指標に基づく成績の分布状況を示す資料」(添付書類) は、すべての学年について提出する必要があるのか。

A全学年分を提出する必要はなく、1学年分(原則として第1学年)のみの提出で差し支えない。(以下、略。)

 また、別Q&Aでは”学生の所属する学部等の中でどの位置にあるかを把握できるよう”とありますので、学部等ごとに作成することになると考えています。

4.法令に則り、貸借対照表損益計算書その他の財務諸表等の情報や、定員充足状況や進学・就職の状況など教育活動に係る情報を公表していること。 

  本要件について、留意点は概ね以下のとおりです。

  • 多くは学校教育法や同法施行規則等で公表が義務付けられている情報が対象であること。
  • インターネットの利用等により一般に公表されていることが必要であること。
  • 専門学校について特例があること。
  • 一部の項目は任意記載事項であること。

  2019年度申請における特例措置は、以下のとおりです。

  • 専門学校において、学校関係者評価の基本方式が定められていれば要件を満たすものとする。

 この要件についても、手持ちの材料でなんとなりそうなので、あまり気にしていません。記述欄や任意記載事項をどの程度まで書き込むかという点にちょっと迷う程度でしょうか。

4.機関確認申請時期

 説明会資料により、機関確認申請のスケジュールの要点は以下の通りです。

  • 2019年度の機関要件の確認手続のスケジュールについては、省令制定後、正式に申請書の受理を開始する(省令制定前までの間は、大学等からの事前相談を受け付ける)予定。申請書の提出期限は、7月中旬とする見込み。申請書の提出に関する具体的なスケジュールについては、別途、お知らせします。
  • すべての基準に適合することが確認された大学等については、2019年9月中下旬頃を目途として、確認者が公表を行う予定。
  • 確認を受けた大学等は、毎年度申請書の内容を更新し、確認者に提出することを要する。
  • なお、正式な確認申請書の受理の開始については、関係省令の施行日以後とする予定だが、2019 年度は提出期限までの期間が短くなることを踏まえ、確認申請書の受理の開始前に、準備行為として、確認を受けようとする大学等に確認申請書案の提出を求め、事前審査を実施することが望ましい。

 機関確認申請に係る申請書は、2019年は7月中旬に受け付けられる予定です。それ以前に、申請書の事前確認期間もあるようですので、まずは各大学等とも事前確認を目指して申請書案を作成していくことになるでしょう。なお、確認申請書は、各大学等のホームページ等で公表する必要があります。

確認大学等が確認を受けた年度の翌年度以降も機関要件を満たしていることを明らかにするため、確認大学等は、毎年6月末日までに確認者に対して、確認申請書の内容を更新したものを提出することを要する。確認者は、更新版確認申請書の内容について審査を行う。

 一度要件確認を行ったら終わりではなく、毎年、必要に応じて内容を更新し、申請をを行う必要があります。

 ここまで、期間確認要件を整理しました。大まかに整理したのみであり、学校種に応じて申請書が異なるなど細かい部分で違いがありますので、注意しなければなりません。

 

 次回は、個人確認要件について整理する予定です。