3つのポリシーは新参若手管理職のようなものである

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 前回の記事では教学マネジメントについて言及しましたが、教学マネジメントの中では3つのポリシー(特にDP)が重要であるとされています。改めて、3つのポリシーの性格や位置付けを考えていたんですが、まるで新参の若手管理職みたいだなと感じた次第です。今回は、そのことを記します。

1.3つのポリシーとは何か

 中央教育審議会大学分科会大学教育部会が策定した「「卒業認定・学位授与の方針」(ディプロマ・ポリシー),「教育課程編成・実施の方針」(カリキュラム・ポリシー)及び「入学者受入れの方針」(アドミッション・ポリシー)の策定及び運用に関するガイドライン」では、3つのポリシーは下記表のように整理されています。

語句 意味
ディプロマ・ ポリシー 各大学,学部・学科等の教育理念に基づき,どのような力を身に付けた者に卒業を認定し,学位を授与するのかを定める基本的な方針であり,学生の学修成果の目標ともなるもの。
カリキュラム・ ポリシー ディプロマ・ポリシーの達成のために,どのような教育課程を編成し,どのような教育内容・方法を実施し,学修成果をどのように評価するのかを定める基本的な方針。
アドミッション・ ポリシー 各大学,学部・学科等の教育理念,ディプロマ・ポリシー,カリキュラム・ポリシーに基づく教育内容等を踏まえ,どのように入学者を受け入れるかを定める基本的な方針であり,受け入れる学生に求める学習成果(「学力の3要素」についてどのような成果を求めるか)を示すもの。

 この3つのポリシーですが、文部科学省の文書で初めて大きく取り上げられたのは、平成17年に公表された中央教育審議会答申「我が国の高等教育の将来像」だと認識しています。

第2章 新時代における高等教育の全体像

3 高等教育の多様な機能と個性・特色の明確化

(3)学習機会全体の中での高等教育の位置付けと各高等教育機関の個性・特色

 高等教育の将来像を考える際には、初等中等教育との接続にも十分留意する必要がある。その際、入学者選抜の問題だけでなく、教育内容・方法等を含め、全体の接続を考えていくことが必要であり、初等中等教育から高等教育までそれぞれが果たすべき役割を踏まえて一貫した考え方で改革を進めていく視点が重要である。また、より良い教員養成の在り方についても検討していく必要がある。

 このため、各大学は、入学者受入方針(アドミッション・ポリシー)を明確にし、選抜方法の多様化や評価尺度の多元化の観点を踏まえ、適切に入学者選抜を実施していく必要がある。また、教育の実施や卒業認定・学位授与に関する方針(カリキュラム・ポリシーやディプロマ・ポリシー)を明確にし、教育課程の改善や「出口管理」の強化を図ることも求められる。

 生涯学習との関連でも、高等教育機関は履修形態の多様化等により、重要な役割を果たすことが期待される。 

 その後、平成28年には学校教育施行規則が改正され、平成29年度以降の3つのポリシーの策定及び公表が各大学等に義務付けられました。当時発出された通知では、改正の趣旨について、以下の通り記載されています。

今回の改正は,大学及び高等専門学校(以下「大学等」という。)が,自らの教育理念に基づき,育成すべき人材像を明確化した上で,それを実現するための適切な教育課程を編成し,体系的・組織的な教育活動を行うとともに,当該大学等の教育を受けるにふさわしい学生を受け入れるための入学者選抜を実施することにより,その使命をよりよく果たすことができるよう,全ての大学等において,その教育上の目的を踏まえて,「卒業の認定に関する方針」,「教育課程の編成及び実施に関する方針」及び「入学者の受入れに関する方針」(以下「三つの方針」という。)を策定し,公表することを求めるものです。

2.3つのポリシーの性質

 なぜ"3つのポリシーは新参若手管理職"であると感じたのか、以下の通り整理します。

2−1.新参

 3つのポリシーは、大学での策定・公表が義務付けられてまだ数年です。

2−2.若手

 3つのポリシーは、行政機関の公的文書に挙げられてからまだ10数年程度です。これは、多くの大学にとっては、建学の精神や教育目標、卒業認定単位などに比べて非常に歴史が浅いでしょう。

2−3.管理職

 3つのポリシーをもとにして教育課程を構築するのであれば、様々な教育活動が3つのポリシーにより規定されることになります。この役割は、事業に取り組む際の管理職と同じだと感じています。

3.3つのポリシーにどのように付き合っていくか

 3つのポリシーを新参若手管理職だと捉えると、以下のような状態だろうと思います。

  • 今までの文化(建学の精神、教育目的、教育課程、卒業認定基準など)がすでに定着している中で、外部から飛び込んできた新参者
  • 周りは老獪な先輩(建学の精神、教育目的、教育課程、卒業認定基準など)ばかり
  • これまでの経緯もよくわからず「君が中心となって立て直してくれ」と上から言われている
  • 「君自身の業務の達成度(ポリシーの到達度)も明確にしてくれよ」と上から言われている

 なかなか厳しい状況なのかもしれません。この場合は、古いものと新しいものがお互いを理解し歩み寄り譲り合いつつ、物事を成していかなければならないでしょう。同じように、既存の建学の精神、教育目的、教育課程、卒業認定基準などと3つのポリシーも、歩み寄り譲り合う形で関係性を整理した方がいいでしょうね。