平均給与などから見る国立大学職員の現状と変遷(その2)

 前回に引き続き、各国立大学法人が公表している役員の報酬等及び職員の給与の水準から、今回は事務・技術職員の職位別の状況を確認します。

 公表資料の中には、職位別年間給与の分布状況があり、代表的な職階(多くは課長、課長補佐、係長、主任、係員)の人員、平均年齢、年間給与額の平均値が記載されています。これを用い、職位別の状況を確認します。なお、課長より上の部長・次長級や局長については、記載の信頼性が乏しい(あくまで代表的な職位を記すため記載していない法人もある。)と判断したため、課長級以下を分析対象とします。また、各法人により職位名称が若干異なりますが、大きく課長級、課長補佐級、係長級、主任級、係員級と分類しました。

事務・技術職員の人員数について

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 平成28年度の職位別人数では、課長級以下の40%程度が係長級であることがわかります。法人別にみても、多くの法人は係長級の人数が多く、その前後は人数が比較的少ないことがわかります。なお、もっとも係長級が多い法人は東京大学です。

 これらから、係長級と言えども部下が少なくマネジメントのみではなく実務にも携わっていること(むしろ実務対応がメインである?)が推測できます。平均部下人数を見ても、係長級一人に対し部下は1.1人と、ほぼ一人係長に近しい状況であると考えられます(実際にはここに非常勤職員や派遣職員が加わるため、もっと増えるとは思いますが)。

事務・技術職員の平均年齢・給与について

 続いて、法人別の職位別平均年齢と平均給与を示します。給与は前回の定義と同様です。なお、グラフが途切れている部分は該当人数が少ないことなどを理由として情報が公開されていませんでした。

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 ここから、平均年齢は課長級と課長補佐級で近しいこと、平均給与は職位の順序により分かれていることがわかります。年齢については、定年時の職位、いわゆる"上がりのポジション"として、課長補佐級で定年を迎える者と課長級で定年を迎える者がいるのだろうと推測できます。また、一部課長級は異動官職(文科組及びエリア組)があてがわれるため、年齢が若干下がるのではないかとも思えます。これらの理由により、課長級と課長補佐級の平均年齢が近しいものと考えます。

 前回も述べましたが、基本的には国立大学職員の給与は年齢と在勤地の影響が大きいと考えています。それを確認するため、前回と同様に平均年齢と平均給与の関係を確認します。なお、前回と同様に、地域手当の割合を推測し、その分を平均給与から除した補正値を用いています。

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 平成28年度のデータでは、職位、平均年齢、平均給与が線形に並んでいることがわかります。年齢と給与の関係では、大学教員よりも事務・技術職員のほうが影響が大きいのかもしれません。なお、課長級では一部のプロットが上方に移動していますが、これはよくある高年齢者の昇給抑制とは矛盾しています。異動官職に係る地域手当の移行措置(以前の在勤地の地域手当が一定程度継承されること。各法人の給与規程に明記されていることが多い。)により当該法人の他職員よりも給与が高くなっている可能性が指摘できます。

平成16年度時点との比較について

 前回は、平成16年度(あるいはウェブ上で見つかるもっとも古い時点)と平成28年度の比較を行いました。今回も、職位別に、人員、平均年齢、平均給与の推移を示します。なお、平成28年度と比較が困難であった16法人は除いています。

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 係員級や主任級の人員は減少傾向にある一方、係長級や課長補佐級の人員は増加傾向にあること、各職位とも平均年齢が推移しており課長補佐級の平均年齢低下や課長級の平均年齢上昇などの傾向がみられることなどがわかります。管理職の内部登用を進めた結果、課長補佐級の平均年齢が下がり課長級の平均年齢が上昇したとも考えられますね。

 もう少し明確に平成16年度時点との差異が現れるかと思っていたのですが、それほど大きくは変化していないように感じます。平均化すると変化が現れにくいので、各法人の内部データを確認すれば、年齢構成などの変化がわかるのかもしれません。

 係員級の人員数は大きく減少している法人があります。これは東京大学なのですが、次回はみんな大好き東京大学の事務・技術職員の状況を経年変化から確認します。