なぜ更新講習の修了確認期限に係る生年月日は4月2日起算なのか。

 今回は非常にニッチな話です。

修了確認期限をチェック:文部科学省

平成21年3月31日までに授与された教諭免許状又は養護教諭免許状を持つ方(栄養教諭免許状を持つ方を除く)の最初の修了確認期限は、表1のように割り振られます。

 教員免許更新制が導入されて以降、平成21年度以降に取得した免許状(正確には、平成21年度以降に初めて免許状を取得した者の免許状)には有効期間が設定され、それを更新するために教員免許状更新講習を受講・修了し、免許管理者への申請を行わなければならないようになりました。また、平成20年度以前に免許状を取得した者(旧免許状所持者)には、生年月日に応じた修了確認期限が設定され、修了確認期限までに同様に更新講習を受講・修了し、免許管理者への申請を行わなければならないようになりました。

 文科省のウェブページでもわかるとおり、この生年月日は昭和○○年4月2日~昭和○○年4月1日と設定されています。何の気なしに運用していたのですが、ある日海外の研究者と日本の免許更新制に関する意見交換をしていた際、「生年月日により修了確認期限が設けられていることは理解したが、なぜ設定された生年月日は4月1日ではなく4月2日起算なのか?」と問われて答えられないことがありました。今まで当たり前のようにこのような生年月日対応表を使ってきたのですが、確かに言われてみればなぜ4月2日起算なのでしょうか。これは、法律上の年齢の数え方が大きく関係しています。

 まずは、根拠法を確認します。旧免許状所持者の修了確認期限については、教育職員免許法施行規則附則にて規定があります。

附 則 (平成二〇年三月三一日文部科学省令第九号) 抄
第五条 改正法附則第二条第三項第一号に規定する文部科学省令で定める年度の末日は、次の各号に掲げる者の区分に応じ、当該各号に定める日とする。
一 平成二十三年三月三十一日において、満三十五歳、満四十五歳又は満五十五歳である旧免許状所持者(改正法附則第二条第一項に規定する旧免許状所持者をいう。以下同じ。) 平成二十三年三月三十一日

二 平成二十四年三月三十一日において、満三十五歳、満四十五歳又は満五十五歳である旧免許状所持者 平成二十四年三月三十一日

三 平成二十五年三月三十一日において、満三十五歳、満四十五歳又は満五十五歳である旧免許状所持者 平成二十五年三月三十一日

四 平成二十六年三月三十一日において、満三十五歳、満四十五歳又は満五十五歳である旧免許状所持者 平成二十六年三月三十一日

五 平成二十七年三月三十一日において、満三十五歳、満四十五歳又は満五十五歳である旧免許状所持者 平成二十七年三月三十一日

六 平成二十八年三月三十一日において、満三十五歳、満四十五歳又は満五十五歳である旧免許状所持者 平成二十八年三月三十一日

七 平成二十九年三月三十一日において、満三十五歳、満四十五歳又は満五十五歳である旧免許状所持者 平成二十九年三月三十一日

八 平成三十年三月三十一日において、満三十五歳、満四十五歳又は満五十五歳である旧免許状所持者 平成三十年三月三十一日

九 平成三十一年三月三十一日において、満三十五歳、満四十五歳又は満五十五歳である旧免許状所持者 平成三十一年三月三十一日

十 平成三十二年三月三十一日において、満三十五歳以下、満四十五歳又は満五十五歳である旧免許状所持者 平成三十二年三月三十一日

 ここでポイントなのは、法令上は生年月日ではなく満年齢により修了確認期限が定められているという点です。つまり、文科省ウェブページなどにある生年月日は、法令上定められた満年齢を踏まえて、教員免許更新制の実施に係る関係省令等の整備について(通知)(平成20年4月1日文部科学事務次官)の別紙1にてより分かりやすくするために記載されているものと推測できます。それでは、この「満年齢」はどのように算出されるのでしょうか。

 法律上の年齢計算は、明治35年に制定された年齢計算ニ関スル法律及び民法第143条に根拠があります。

年齢計算ニ関スル法律

1 年齢ハ出生ノ日ヨリ之ヲ起算ス

2 民法第百四十三条ノ規定ハ年齢ノ計算ニ之ヲ準用ス

3 明治六年第三十六号布告ハ之ヲ廃止ス

民法

第143条 週、月又は年によって期間を定めたときは、その期間は、暦に従って計算する。
2 週、月又は年の初めから期間を起算しないときは、その期間は、最後の週、月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。ただし、月又は年によって期間を定めた場合において、最後の月に応当する日がないときは、その月の末日に満了する。

 この件で有名なのが、4月1日生まれの児童生徒の学年に関する対応です。

1.4月1日生まれの児童生徒の学年について:文部科学省

Q 4月1日生まれの児童生徒の学年についてどうなるのでしょうか。

 年齢の計算については、年齢計算ニ関スル法律民法第143条によりその考え方が示されており、それによれば、人は誕生日の前日が終了する時(午後12時)に年を一つとる(満年齢に達する)、とされています。これを4月1日生まれの子どもに当てはめると、誕生日の前日である3月31日の終了時(午後12時)に満6歳になることになります。
(中略)
 よって、4月1日生まれの児童生徒の学年は、翌日の4月2日以降生まれの児童生徒の学年より一つ上、ということになり、一学年は4月2日生まれから翌年の4月1日生まれの児童生徒までで構成されることになります。

法制執務コラム:4月1日生まれの子どもは早生まれ?

 それでは、子どもが満6歳になるのはいつでしょうか。生まれた日と同じ月の同じ日に誕生日を祝う日常生活の感覚からは、平成3年の4月1日に生まれた子どもは、平成9年の4月1日に満6歳になるようにも思われます。しかし、年齢計算ニ関スル法律という法律があって、その第1項には「年齢ハ出生ノ日ヨリ之ヲ起算ス」と規定されています。つまり、生まれた時刻が何時かを問わず、その生まれた日を第1日目として年齢を計算することになっているのです。そうすると、平成3年4月1日生まれの子どもは、平成9年3月31日限りをもって満6歳になり、翌日の4月1日から小学校に入学するため、「早生まれ」ということになります。

 つまり、4月1日生まれの者は、3月31日に満年齢を迎えるため3月31日が属する年度により対応するということですね。これを前述の修了確認期限に当てはめると、例えば平成23年3月31日において満35歳となる者の生年月日は、昭和50年4月2日から昭和51年4月1日となります。このように、修了確認期限の生年月日が4月2日起算なのは、法令上の年齢の数え方によるものとであると考えられます。

 このことについて、後日、意見交換をした者に対しメールにて、日本の不思議な慣習によるものであることを回答したところです。些細な点ではありますが、しっかりと根拠を確認することの大切さを感じることができました。