人事の凍結は人勧対応が一因である可能性からの財務コミュニケーションの話

 相変わらず国立大学界隈では景気の良い話を聞きません。退職した教育職員の後任人事の凍結も普通に聞かれるようになりました。その要因は各大学により様々でしょうが、一つには人事院勧告への対応ということもあるのだろうと思っています。

平成29年人事院勧告

  • 民間給与との較差(0.15%)を埋めるため、俸給表の水準を引き上げるとともに、給与制度の総合的見直しにおける本府省業務調整手当の手当額を引上げ
  • ボーナスを引上げ(0.1月分)、民間の支給状況等を踏まえ勤勉手当に配分

 法人化以降、給与の決定も各法人において行うこととなりましたが、程度の差はあるにしろ、人事院勧告による給与引き上げ・引き下げに準拠している大学も多いことと思います(もちろん、準拠していない大学もあることでしょう)。

独立行政法人通則法

(役員の報酬等)
第五十条の二  
3  前項の報酬等の支給の基準は、国家公務員の給与及び退職手当(以下「給与等」という。)、民間企業の役員の報酬等、当該国立大学法人の業務の実績その他の事情を考慮して定められなければならない。

(職員の給与等)
第五十条の十  
3  前項の給与等の支給の基準は、一般職の職員の給与に関する法律 (昭和二十五年法律第九十五号)の適用を受ける国家公務員の給与等、民間企業の従業員の給与等、当該国立大学法人の業務の実績並びに職員の職務の特性及び雇用形態その他の事情を考慮して定められなければならない。

国立大学法人法第35条により読み替え済

公務員の給与改定に関する取扱いについて(平成17年9月28日閣議決定)

独立行政法人の役職員の給与改定については、国家公務員の給与水準を十分考慮して適正な給与水準とするよう要請する。

 ただ、この給与の引き上げ・引き下げと運営費交付金の支給額は、連動していなかったはずだと記憶しています。そのため、引き下げの場合ならともかく、引き上げの場合はその原資は各大学の自助努力により賄われることになります。一時期から転じて最近は引き上げ傾向にあるため、各大学ともその原資の捻出が喫緊の課題となっており、だからこそある程度人件費の見込みが立たない限りは人事の凍結判断が行われるのでしょう。ひいては、人件費のために事業費を削減するという頭の痛い事態になっています。

 「自助努力」と言えば、概ね予想できるのが予算カットですね。私の所掌業務でも、次年度の予算について財務担当部署から一定割合カットの示唆が出ています。毎回不満に思うのが、「前年度比〇〇%カット」のみ示されて、収入見込みと支出見込み及びその差額から生じる総削減希望額などの全体像がなかなか明確に示されないことです。

 全体像を示さなければ、削減に対し納得感を持ってもらうこともできないでしょう。言いにくい数値もあるでしょうし数字が一人歩きするとはよく聞く言葉ですが、自分たちのコミュニケーション能力の低さと情報管理の甘さを言い訳にするんじゃねえぞ、とも感じます。

 査定部局と各部局はなかなか難しい関係にあるとは思いますが、各部局は各部局のセグメントでしか語れないわけですから、連結会計を把握している財務部門が財務情報を以って大学の教育研究等活動に貢献するためにも、財務情報を用いたコミュニケーションを構成員と積極的にとってほしいと思っている毎日です。