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世界大学ランキングに思う 〜何が評価されているのか〜

World University Rankings 2014-2015 - Times Higher Education

You can view the full World University Rankings 2014-2015 top 400 below and explore the criteria used to assess the world’s greatest universities, while our in-depth analysis of the results shines more light on the data.

 少し旬を過ぎた感もありますが、Times Higher Education社が毎年発表しているWORLD UNIVERSITY RANKINGが本年も発表されました。ちょうどスーパーグローバル大学創成支援事業の採択発表と同時期だったこともあり、毎年以上に様々な記事が書かれているという印象です。代表的なものを以下に記載します。

世界大学ランキング、アジアにおける日本の相対的な順位が低下 | リセマム

 三菱UFJリサーチ&コンサルティングは、英タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)の世界大学ランキングが10月2日(日本時間)に公表されたことを受け、速報レポートを発表した。アジアにおける日本の大学の相対的なポジションが低下しているという。

世界大学ランキング(1)東大23位死守も、日本は大幅後退

 タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(TIMES HIGHER EDUCATION、略称THE)世界大学ランキング2014-15年が1日午後9時(日本時間2日午前5時)に発表された。東京大学は前年と同じ23位で、アジア首位の座を何とか保ったが、26位から25位に順位を上げてきたシンガポール国立大学に手の届くところまで追い上げられている。このほかトップ200大学に4校が入ったが、京都大学が52位から59位に後退するなど、軒並み順位を下げた。

世界大学ランキング指標にみる危さ

 「世界大学ランキングトップ100に日本の大学が10件入ることをめざす」と安倍首相が述べたのは昨年(2013年)5月のことだ。今年、2月に下村大臣は『中央公論2014.2』の中で、ベスト100に10校入れるためには、評価基準にあわせた戦略が必要であり、その戦略のひとつが大学の国際化をめざしたグローバル大学事業(公的補助金)であると述べている。世界大学ランキングは政治家の間でもすっかりなじみになった。

 論考等も掲載されています。

国際的な競争力が求められている大学 −大学の国際競争力をめぐる学校教育法等改正案の審議などから(中村,立法と調査,pp62-71,357,2014)

 一方、ランキングの取り方、また、ランキングにとらわれすぎることへの懸念を示す意見もあることに留意が必要であろう。例えば、世界大学ランキングは「既存の知識」の枠内での評価であり、将来の創造的な知的活動を推計・評価したものではない等との指摘もある。

【速報】世界大学ランキング分析 | プレスリリース | 三菱UFJリサーチ&コンサルティング

 要点として、日本では「東京大」の順位は変わらず23位(2012年:27位、2013年:23位)、「京都大」は59位(2012年:54位、2013年:52位)と7つ順位を下げています。日本の大学は200位以内では5大学中4大学で順位が下がりました。 400位までの大学数は、日本は12大学(2011年:16大学、2012年:13大学、2013年:11大学)と1つ増加していますが、中国は2大学増え12大学となり日本と並び、韓国も2大学増え9大学となりました。

 その他、大学ランキングに関する論文等も多数書かれています。

 

 さて、そんなWORLD UNIVERSITY RANKINGですが、過年度からの推移を確認することで、日本の大学がどのように評価されてきたのか確認しようと思います。

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 図1に、2010以降の日本の大学の順位の推移を示します。なお、A-B位となっている大学は、一律A位として計上しました。図1から、東京大学京都大学の次に東京工業大学東北大学大阪大学が集団を形成して推移していること、その集団の順位が徐々に下降傾向にあることがわかります。東京大学京都大学はあまり順位に変動がありませんので、トップ2校と次の層との差が徐々に広がっていますね。

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 200位以内の大学は総合評価値(Overall score)が表示されますので、日本の大学におけるその推移を図2に示します。2010年から200位以内に位置しているのは、東京大学京都大学東京工業大学東北大学大阪大学の5校ですが、停滞か若干減少傾向にあるように見えます。

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 各指標についても、推移を確認します。各年の400位以内に位置している大学について、図3にTeaching、図4にInternational outlookを、図5にIndustry incomeを、図6にResearchを、図7にCitationsの推移を示します。なお、各指標の構成要素等については、表1に示します。

 これらから、International outlookは全ての大学で上昇傾向にあること、Citationsもどちらかと言えば上昇傾向にあること、その他指標は停滞か下降傾向にあることがわかります。特にresearchについては、前述した東京工業大学東北大学大阪大学の集団がかなりポイントを落としています。ただ、東京工業大学は持ち直しているようですね。

 各指標値は表1の要素から構成されていますが、具体的な計算方法等は不明です。ただ、全て最大値が100であることから、指標値とは各分野における相対値であると考えます。そのため、指標値が下降するということは、自大学の実績が落ちているか他大学の実績が上がっているかのどちらかであると判断できます。また、各指標の各年度における同一性は確認できませんでしたので、推移を示したとは言え、それらが確実に同一の定義によるものであるとは言えない点に注意が必要です。

 International outlookが上昇しているということは、各大学で国際化が推進された成果の一環だと思います。一方、TeachingやResearchが下降しているということは、自大学の成果が上がっていないのか、他大学が頑張っているのか、あるいはその両方かのどれかだと考えます。実際、日本の論文数が減少しているという話もありますので、様々な可能性が考えられます。謂わば、何かが上がれば何かが下がるというゼロサムのような状況にも思えますが、日本以外の大学でこの現象が確認できるのかは気になりますね。

 2011年からはWorld Reputation Rankingが公表されています。これは、世界中の優秀な研究者に対し、自分の研究分野で教育及び研究に優れた機関を尋ねた調査であり、地域及び研究分野のバランスに配慮して調査を行った結果をもとに順位付けしたランキングのようです。4年間にわたりTOP50にランクインしているのは、日本の大学では東京大学京都大学のみであり、両大学の順位の推移を確認します。

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 図8にReputation Rankを、図9にOverall reputationを、図10にReputation(teaching)とRepuation(research)の推移を示します。これらから、京都大学は概ね同じ値で推移している一方、東京大学は2012以降下降傾向にあることがわかります。前述のとおり、Reputation Rankingはピアレビューによる定性的な評価ですので、ちょっと曖昧なところがあると感じています。また、過年度の順位を確認しても、6位以上がほぼ同じ大学である上、7位以下との差がだいぶ大きいことがわかります。どの程度の意味合いを持つのかよくわからないランキングですね。

 今回は日本の大学の推移に注目しましたが、海外の大学も含め、資金による影響も気になるところです。学生一人当たりの教育経費とTeachingとの関係など、コストとランクの関係が明らかになれば政策形成の一つのエビデンスになるかもしれません。

 ただ、今回、ランキングの推移を確認すること通じて、ますます大学ランキングがよくわからなくなりました。結局、これらの値は極めて狭い範囲から見た場合の事実に過ぎないのでしょう。事実、大学ランキングに対する批判もありますし、RU11からは具体的な改訂要望が出ています。

 大学評価やランキングは基本的には結果論でしかありませんが、認証評価などの評価結果は「もの言う結果」であるのに対し、大学ランキングは「もの言わない結果」だと思っています。もの言わない結果であるということは、それを以て取組の改善に資するのは困難であるということです。逆に言えば、ただの数値だからこそ、政策目標として「100以内に10校」といったことが掲げやすいのでしょう。

 ただ、計画→取組→結果→成果→インパクトという計画評価の面から考えると、大学ランキングの数値とは施策の成果ではなくインパクト(予期しない成果)ではないかと考えています。インパクトを過度に重視した施策は、計画や結果、成果の在り方や見方を歪める可能性があり、少し不安でもあります。それがあってもなお、国民にとって分かりやすい成果指標なのでしょうね。